阿部彩のレビュー一覧
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今までの貧困対策では適応されなかった社会的弱者の包括的支援政策がメインの一冊です。
災害の一番の被害者は貧困層であるという指摘にはっとさせられました。
他者とのつながりや役割が、貧困対策の鍵であると著者は述べます。確かにそれらは必要だと思いますが、1970年代以降一貫して、人間関係の束縛を解放する方向に進んできたように思えます。近所付き合いやお中元・お歳暮、自治会、それらの煩わし人間関係を否定してきた時代だと言えます。そのような時代背景のなかで、今度は『絆が大事だ!』と叫ばれても、今一つピンときません。絆それ自体の重要性は理解しますが、果たして前時代のような人間関係に戻った方が良いのか、疑問が -
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『子どもの貧困』(岩波新書、2008年)のあと、子ども以外の貧困に関する内容で予定されていたものを、東日本大震災後、「社会的包摂」を中心として書き直され上梓された本。
震災の被害を受けた人々のなかでは、生活再建に大きな差が出てきている。自然災害の被害者のうちでも、もともと生活基盤の弱かった、社会的弱者が災害弱者となっている。このことから自然災害の多い日本では、社会的弱者を減らすことを目指していかないと、自然災害のたびに、孤立死や自殺者が現れるのではないか。
会社の経営者が一転してホームレスとなる場合があるかと思えば、他方、失業してもサポートを受け、生活再建へ歩むことができる人もいる。自然災 -
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ネタバレ最近よく目にする「下流」。いまや老人ではなく中年も入る。
私はいわゆる就職氷河期世代なのだが、当時は友達もなんだかんだと就職していて(地方の公立大学、文系)、実感としてそんなに氷河期だった覚えはないのだが、当時就職した人たちはだいたい5年の間に職を変えている。派遣で就職してうから試験受けて公務員に移行した子もいた。みんな留学したりと方向性を変えて、25年経った今、みんなそれなりに生活はしているが、50歳ともなると子供がいたら学費、独り身なら仕事できなくなったらどうしようなどという不安が重くのしかかってくるのである。自分の子供たちが成功できるように地ならしをしてあげるような余力は私にあるんだろう -
Posted by ブクログ
高齢者の貧困率は統計的に改善を見る一方で、深刻化しているのが40代中年層と子ども。
高齢者の改善は、終身雇用で年金を満額でもらえる層の増加。でも、バブル崩壊後リストラの煽りを受けた方々も多いでしょうし、一概にそう言えるのかはよく分からない。
下流中年の背景には、就職氷河期に遭遇し、雇用の調整弁として使われてきた世代であるということ。派遣労働から抜け出せず、給与も年金も低いまま推移。
決して個々人の能力の問題でなく、社会が作り出した作られた下流。この世代が高齢化する中で、社会の助けを必要としてくる。
このツケにどう向き合っていくのか?重たい課題。