阿部彩のレビュー一覧
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貧困を学問的に追及すると、こうなるのね。貧困学入門。
貧困の定義、その測定の方法論、社会との関係、政策への反映のさせ方、等々単に貧困といっても色々な切り口があることを知った。
特に社会的排除と格差の理論はなるほど腹に落ちた。最も援助を必要とする人に基準を合わせれば皆が幸せな社会になる。情けは人の為ならず、と言うことか。
ただ格差是正の恩恵は目に見えにくいから負担とのバランスに社会の納得感が得られるだろうか?被生活保護者をナマポと呼んで差別する風潮が益々強くなっている現状を見ると、絶望的にならざるを得ない。日本人の民度はそこまで高くない。 -
Posted by ブクログ
とてもよく整理されて書かれていて、読みやすく、そしてぐっと迫ってくる内容だった。
この筆者の本はもっと読んでみたいと思った。
大人が、「子どもにとって最低限必要だと思うこと」が、日本では非常に厳しいという話が印象的だった。
確かに自分にもそういうところがあるかもしれない。
某野球少年の話とか、某おそばの話とか、「貧しいけど頑張る」的な、そういう話に慣れ親しみすぎているのかもしれない。
具体的に対処案も挙げられていて、きちんと対処されれば効果が上がっていくはずだという希望も感じながら、しかしこの書籍が書かれてからしばらく経つのにさらに大きな課題となってきている現状に、焦燥も感じる。 -
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子どもの貧困について、客観的なデータをもとに論じられている一冊。
2008年に出版されている本なので、データはやや古いですが、わかりやすく整理されているため、基本的なポイントを押さえるのにとても助かる内容でした。
子どもの貧困と、学力、健康、家庭環境、非行、虐待の関係が、データとともに示されています。
大人たちが「子どもにとって最低限必要だと思うこと」の調査で、学習の機会や医療保障についての項目が私の予想よりもはるかに数値が低かったことに驚きました。
日本の大人が子どもを見る目の厳しさ、、それくらいは仕方ない、我慢すべきだ、とする姿勢に、調査に答えられた方ご自身の辛さの経験や生活の余裕 -
Posted by ブクログ
前作は子どもの貧困の現状がデータで語られることが中心だったが、今作は子どもの貧困の原因とその解決策を探ることが中心。
結論として、原因が複合的なので、解決策も多岐に渡り、それら全てを対策するのは時間と人手と、何より予算上難しい。だからこそ、優先度を見極めてやっていかなければならない。
対策として、政策なのか、対象者の選定方法なのか、現金給与・現物給付なのか、教育なのか就労支援なのか。それぞれにメリットもあれば、不透明な要素もある。またたとえば就労支援といっても色々な方法がある。
子どもの貧困は、就労の困難さにつながるので、国の税収としてロストが大きく、貧困対策は税収増加に対してコストパフォー -
Posted by ブクログ
母子家庭の貧困というニュースを目にする機会が増えてきたので、興味をもって手に取った。この本が書かれたのは2008年、どれだけ自分の目が開いていなかったのかがよくわかる。少子化対策がさらに取り沙汰されるようになったが、それ以前に子供の貧困は許容できないものであり、撲滅しなければならない。
この本は精緻に貧困の定義の測り方、日本と世界の比較から語る。そして日本の政策、母子家庭の経済状況、学歴社会における貧困の不利をデータで示す。さらに、子供の必需品とはなにかもデータで示すことで、より具体的な貧困の姿を目に見えるようにしてくれる。
この子供の必需品とは何か、で明らかになる世間の認識がまたすごいものだ -
Posted by ブクログ
貧困や社会的排除・社会的包摂について、
くわしくわかりやすく説明する本です。
貧困については、自己責任論というのが、
現在主流になっているように感じられますが、
本書でも自己責任で話を終える人は多いとしている。
「日本人は冷たいのか?」の項で、
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すべての結果はその人の努力や能力の違いの当然の結果なので、
ある人が何かをもつことができなくても、
それはそれの人自身の責任なのでしかたがない、という考え方である。
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と、その自己責任論とはどういうものかについて説明していますが、
僕も実はそう考えてきているフシっていうのはあるなぁと思い到るところもあり -
Posted by ブクログ
ネタバレ長い間「一億総中流」という意識を持っていたために「貧困」に対する想像力が欠如した。その結果、対策が非常に遅れている。特に子供については貧困との関連付けがタブー視されてきた経緯があり、親の自己責任論で片付けられてしまうことが多かった。そのため「子ども」を中心とした政策が必要である、という内容。
社会学系の文章はあまり読み慣れていないせいもあって、言っている内容が難しいなぁと思うことが多かった。また、統計学の知識をある程度は使う(中央値など)ので、そのあたりも必要なのかな?一番ショックだったのは第6章で、「金銭的に余裕がなければ、……は子供に与えられなくてもよい」という項目が、海外と比べて -
Posted by ブクログ
社会的包摂についての導入本
社会的包摂とは、簡単にいえば「人を社会から追い出さず、包み込むこと」です。生活水準を保つための資源の欠如に着目していた従来の貧困概念に対し、人の社会的位置や人間関係に着目した概念です。
本書では日本の貧困・格差について論じながら、この社会的包摂を紹介しています。データなどにつっこみどころはありますが、わかりやすくていい本だと思います。すぐに読み終えることが出来ました。
個人的に、物質的欠如に着目した貧困論だとそのような状況に陥ることを自己責任とした上で「可哀想だから救済する」という色彩が強いと感じるのですが、社会的包摂概念は貧困をより社会構造と結びつけて捉え、