阿部彩のレビュー一覧
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今を生きる日本人が向き合うべき、そして近い将来向き合わざるを得ない問題。
男女間格差が問題視されるようになって久しいが、世代間格差ももっと議論されるべき問題だろう。
✏所得制限(生活保護制度の生活保護基準額の1.1倍〜1.3倍)を下回る世帯は就学援助費(低所得世帯の子どもの義務教育にかかる費用を国と自治体が支援する制度)を受給できる。
公立小中学校に通う子どもたちの6人に1人が就学援助費を受給していることは、子どもの貧困が極一般的な世帯においても進行していることを表している。
✏貧困問題は「働けない」高齢者や障害者、母子世帯などの「特殊なケース」(と理解されてきた)における問題と理解されて -
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・母子世帯は124万世帯、父子世帯は22万世帯、子どものいる世帯数は1180万世帯。貧困の子どものうち、ひとり親世帯に属するのは2割程度と言われている
・貧困であることは、「生活に必要なお金が足りない」という物質的な困窮、「来月の家賃が払えるか?」というような生活の不安・不安定さのみではなく、負け組であることも加わった心理的ストレスがダブルパンチ
・先進諸国においては、自然に貧困層に「トリクルダウン」するわけではない。日本は、GDP比で見る品高層への社会支出は極めて小さいのである。そもそもが貧弱な貧困対策なので、GDPの増加と同じ比率で増加したとしても、急激にその貧困削減効果が大きくなるわ -
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貧困と格差は異なる。貧困撲滅を求めることは、完全平等主義を追求することではない。貧困はそのことを社会として許すべきではないと言う基準。価値判断である。機会の平等という比較の理念ではなく、子どもの権利の理念に基づく考え方である。
すべての親は「温かい家庭」を築こうとするのであろうが、親の年収によって子育ての環境は大きく異なっているのである。
晩産化が進んでいる。貧乏人の子沢山は少数派
子どもの貧困率は、親が中規模以上の企業に勤める常用雇用の場合のみ少ない
二人の就業世帯であっても、子どもの貧困率は10.6%。母親の就労が貧困率の削減にほとんど役に立っていないと言える。
0歳から2歳の乳幼児の -
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読み終えた上での、再配分に対する自分の考え
「成人するまでの機会の平等を担保するために、貧困世帯のこどもには機会への平等なアクセス権(無償化、学習支援など)、親には必要な額の支援(あくまで機会の平等のため)が必要である」
努力不足によって所得に格差が生まれることに問題はない。ただ、それでも結果として貧困になった個人には、最低限のセーフティーネット(生活保障)と、努力次第で再起できる機会(職業訓練 / 教育機関での学び直し)は与えるべき。また、その所得格差が次の世代の子どもにまで連鎖するのであれば、それは生まれた時点で差がつくため、機会の平等が保たれているとは言えない。
よって、連鎖が生 -
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貧困問題に取り組んできた著者二人による対談本。実際に現場に携わってきた為、出てくる事例が豊富である。特に、貧困が一部地域で連綿と受け継がれてきた、という事例は初見である。そういうことも漠然とあるだろう、と思ってきた所に実例を出されると、改めて考えさせられる。
この本で着目したポイントは三つ。
1.漠然とした世間でのイメージと現場との乖離。
2.税金による再配分の必要性
3.強制出費を強いる産業
1について、現場と世間のイメージ・無理解に苦しめられている業界は多いので、人々の共感を得られると思う。さらに、世間体を気にしがちな日本では、尚更貧困の現場は見え難い。
2について、応 -
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貧困という概念を、物質的・金銭的側面だけでなく、社会的排除の視点から捉えている。
人が尊厳を持って生きていくには、「つながり」「居場所」「役割」等の社会的包摂(社会に包み込むこと)が欠かせないが、経済的貧困が、社会の一員であることからの排除を誘発する。
単に施し的な救済でなく、一人一人が社会の中で自分の居場所や役割を見出していく過程への援助、またすべての人が暮らしやすい社会(ユニバーサル・デザインの社会)づくりなどの政策等が紹介されている。
格差が大きい社会ほど富裕層も含め住みにくい病的な社会であるとのこと。貧困・格差は「対象者」だけの問題でなく、社会全体のあり方が問われる問題なんだ。 -
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著者は中途半端だと書いているが、本書が提起した問題のありかと解決への道筋は十分にインパクトがあった。日本の財政も見据えながら、まずは何に取りかかれるのかが分かったからだ。
・ひとり親世帯の貧困率は日本は最低
・貧困層への自然なトリクルダウンはない。経済成長で。
・現代は習い事を通さないと豊かな経験が積めない。
・社会的地位ホルモンがセロトニン
・個別学習指導は学力向上だけでなく、大人社会への信頼感の回復、対話能力の向上、忍耐力の養生がある。
・選別主義のパラドックスから、再分配のパイの大きさへの注目
・現金給付に有意な効果はある
・放課後の子供の孤立は深刻
・子どもの学習費調査 -
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アメリカが酷いという認識はあったが、日本もここまで酷いとは、データは雄弁だ。貧困の概念も初めて本書で深まった。社会福祉士として恥ずかしい。
・非行と貧困
・15歳時の貧困と現在の低い生活水準の直接的な相関
・日本では母親の収入が貧困率の削減にほとんど役に立っていない。
・日本よりアメリカの方が家族政策に予算をつぎ込んでいる。
・教育支出も日本は最低。
・日本は唯一、再分配後の所得の貧困率の方が、再分配前よりも高い。
・日本の母子世帯はワーキングプア
・女性の貧困経験と学歴
・乳幼児期の貧困が、一番将来に影響がある。
・日本の一般の意識は大幅に低い。子どもの必需品調査から。
・所得にはある一定 -
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ネタバレチェック項目17箇所。「社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)」とは、従来の貧困の考え方をより革新した「社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)」に相対する概念で、平たくいえば「社会につつみこむこと」である。この震災を機に常日頃の生活において、すべての人が包摂される社会を構築しなければならないからである。本書は、どのようなショックにあっても、人々の暮らしを守るセーフティネットを構築していかなければならないという願いを込めて執筆された、本書で論じる「社会的包摂」とは、災害時だけでなく、平時においても社会政策の基本的な理念となる考え方である。
2007年の貧困率は15.3%、18歳未満の子 -
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日本の子どもでいられることの幸せと不幸な面を何となく感じてはいたけど、数値と様々なグラフで表される「子どもの貧困」のまぎれもない現実を見た。
原因としては経済状況の悪化もあるし、離婚後の母子家庭の生活境遇の困難もあり、一概に子どもの貧困の解決を提示できるものでもないと感じた。
ただそこに、政府としてできることがたくさんあり、これまでは政府は少子化対策としての育児手当を支給してきたが、子どもの貧困を減らすための方向性が間違っており、少子化対策ではなく、あくまでも子どもの貧困をなくすための子ども対策が必要であることを、本書から学ぶことができた。
よって今後の政治の舵取りと政策のいかんによって