阿部彩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
前著で子どもの貧困の実態を示した著者が、具体的にこの状況を解決していくにはどのような政策が考えられるか、調査や海外での実際の事例などを参考に挙げていっています。限られた財源の中で、数ある政策候補の中からどの政策を取っていけばよいのか、という視点も随所に現れています。
「第4章 対象者を選定する」では対象者を絞り込むことの利点・欠点や、対象者選定の考え方の様々が示されており、興味深かったです。ここにも書かれているとおり、日本においては対象者を選定しない給付型の社会政策は「バラマキ」と批判されることが多いと思いますが、安易に対象者を線引きすることで本来サポートが必要な層に給付が届かないのは本末転倒だなと思ってしまいます。社会政策の制度設計の難しさを感じられました。 -
Posted by ブクログ
刊行から15年経っていますが、多くのことを考えさせられる1冊です。一方で、15年経っても、国で行われている子ども政策の議論の内容は残念ながらあまり変わっていないように思われてなりません。
著者が最後に記しているように、「子どもの数を増やすだけではなく、幸せな子どもの数を増やすことを目標とする政策」をぜひ議論してもらいたいと思います。
親の貧困や学歴が子どもたちに大きく影響していることをデータで示されるとやはり大きなインパクトがあります。
子どもたちのスタートライン格差を少しでも縮め、希望を持って暮らせる国になってほしいなぁと思わずにはいられません。
※15年経っているので、現在のデータをいろいろと知りたい気持ちはとても出てきます。 -
Posted by ブクログ
日本の貧困の特徴はワーキングプアが多いこと。これは母子世帯の場合子どもを抱えながらの労働が難しく、非正規就労が多いことが実態としてある。
貧困層の子供は、学力と健康状態が低い傾向にある。
また、貧困層は、子どもの自己肯定感や将来への希望を持たない傾向にある。家庭内においてもストレスに溢れ、健全な成長を妨げる要因になる。その結果、貧困の親から生まれる子供も、将来貧困の親になる可能性が高い。
経済が成長すれば貧困層の所得も増える、という理論は先進国には当てはまらない。スゥェーデンやアイルランドといった高福祉国でも、低所得者の勤労所得自体は上がらず、GDPの拡大により国からの給付金の割合が上がっただけだった。
【家庭環境を介した経路】
親のストレス、親と過ごす時間、家庭内文化資本、親の孤立
逆に、遺伝子的経路は、そこまで重要な要素ではなく、むしろ家庭環境により子供の認知能力、身体能力が制限される可能性のほうが高い。
貧困には家庭環境や遺伝や地域差、親の遺産など、様々な要因があるが、一番相関関係のある経路は、
「子ども期の貧困→低学歴→非正規労働→現在の低所得→現在の生活困窮」である。
要因は一本一本が独立しているのではなく、様々に絡み合って影響している。
財政には限りがあるため、貧困対策は「社会に対する将来への投資」と読み替え、費用対効果の高い政策から実施していく。
日本はこの計測がまだ進んでいない。
そのため、長期的な収益性の観点を持ち、その収益性が測定できる制度設計、モデル事業を取り入れ、対象者を吟味して政策を行うべき。
貧困対策には、選別主義(生活保護のような、貧困の人だけを対象とする政策、小さな政府)と、普遍主義(義務教育のような、全員対象、大きな政府)のものがある。
選別主義の欠点は、政治的な批判、偏見の対象、選別にかかる費用、労働インセンティブの低下がある。
普遍主義の欠点は、財政負担の大きさがある。
結局、研究の結果、選別か普遍のどちらが優れている、というよりも、再分配のパイの大きさによることが分かった。
そして、日本では、普遍的な現金給付を「バラマキ」と感じる一方で、貧困層への給付も厳しい目にさらされた。しかし、現物の普遍的支給には批判はなかったため、結局、現金を配るといった札束ポリティクスにアレルギー反応を示しているだけに思える。
日本においては、現金外支給(教育の機会の拡充など)は、より普遍的に、現金支給に関しては、より選別的に行うのが望ましい。
また、年齢を絞るのが望ましい。特に、就学前(0~6歳)に対して貧困対策を行うのが、特に効果があるとの研究結果が出ている。乳幼児期に貧困を経験した子供は、その後貧困から抜け出せたとしても、乳幼児期の経験が悪影響を及ぼすという結果がある。
【現金給付vs現物支給】
現金給付の効果は、「ある」。
現金給付の利点は、効果が確実であること。現物支給は何をどのように給付するかによって大きく効果が異なるため、効果にばらつきがある。
現物支給であっても、教育プログラムへの投資といったものであれば、将来はかけた金の何倍ものリターンが得られることがある。一方、無駄になる恐れもある。現金は安全資産、モノは危険資産。
現金はかゆいところに手が届き、汎用性に富む一方、市場にそぐわないサービス(保育、教育)には効果が表れにくい。
日本では、富裕層→貧困層への所得再分配前と、所得再分配後の、貧困率の改善が低い。昔は再分配前のほうが所得が多いという逆転現象が起こっていた。
結論としては、現金給付は、児童手当や児童扶養手当など、特に未就学児、小さい子供のいる家庭への手当てを厚くするべきである。
【現物支給】
保育所の拡充は圧倒的に効果あり。子供だけではなく、親に働きかけるソーシャルワーカーの配置が◎。また、小中高学童保育の給食実施により、「バランスのある食」の拡充を。
また、放課後プログラムの実施により放課後格差を縮小する。「親が働いているから預ける」ではなく、より行きたいと思える「居場所」を提供する学童づくりが大切。
ビッグブラザー・ビッグシスタープログラムにより、ボランティアの大人と子供が一対一の関係になれる活動が、海外で効果を上げている。
また、親への現物支給として、貧困層妊婦への支援、親の疾患や障害への支援が上げられる。
【教育】
家族が負担する教育費の割合が先進国の中でかなり高い。費用の大部分は学校外教育。義務教育の授業料の無償化はもちろん、教科書代、給食費、クラブ活動費など、就学にかかる全般的な費用も援助していくべき。
費用のほかに、学力格差の縮小も貧困をなくす上では重要。
少人数学級に編成し直す、適切なカリキュラムによる落ちこぼれをなくす、など
学校生活への包摂(ひとりひとりが友達や先生から認められ、自分の居場所が学校にあると思える環境)の取り組みが重要。貧困層の子供は、対人関係の苦手意識、自己意識の欠如など、社会に必要なコミュニケーション能力が劣っていることが多いからだ。
【子供の貧困指標】
①相対的貧困率
②剥奪指標(毎日3食食べる、定期的なレジャー活動、行事への参加など、生活の質を具体的に測るもの)
【優先順位】
①実験的な枠組みにより効果が測定されている物
②長期的な収益性が確保できるもの
③とくに厳しい状況におかれている子供を優先するもの
また、現金給付は必要。家庭の経済状況は子供の生活状態にモロにでる。
①子どもの貧困率の逆転現象を解消する。
②乳幼児期の子供の経済状況を改善する。
現物支給は、所得制限方式ではなく、学区ごとの選別や、地域ごと、定時制高校への予算拡充、メンタープログラム、親へのサービスなど、プログラムごとに効果的に支給するのが良い。 -
Posted by ブクログ
とてもよく整理されて書かれていて、読みやすく、そしてぐっと迫ってくる内容だった。
この筆者の本はもっと読んでみたいと思った。
大人が、「子どもにとって最低限必要だと思うこと」が、日本では非常に厳しいという話が印象的だった。
確かに自分にもそういうところがあるかもしれない。
某野球少年の話とか、某おそばの話とか、「貧しいけど頑張る」的な、そういう話に慣れ親しみすぎているのかもしれない。
具体的に対処案も挙げられていて、きちんと対処されれば効果が上がっていくはずだという希望も感じながら、しかしこの書籍が書かれてからしばらく経つのにさらに大きな課題となってきている現状に、焦燥も感じる。 -
Posted by ブクログ
子どもの貧困について、客観的なデータをもとに論じられている一冊。
2008年に出版されている本なので、データはやや古いですが、わかりやすく整理されているため、基本的なポイントを押さえるのにとても助かる内容でした。
子どもの貧困と、学力、健康、家庭環境、非行、虐待の関係が、データとともに示されています。
大人たちが「子どもにとって最低限必要だと思うこと」の調査で、学習の機会や医療保障についての項目が私の予想よりもはるかに数値が低かったことに驚きました。
日本の大人が子どもを見る目の厳しさ、、それくらいは仕方ない、我慢すべきだ、とする姿勢に、調査に答えられた方ご自身の辛さの経験や生活の余裕のなさを想像しました。
経済的な問題、社会保障についても、もっと勉強しなくてはと思いました。 -
Posted by ブクログ
前作は子どもの貧困の現状がデータで語られることが中心だったが、今作は子どもの貧困の原因とその解決策を探ることが中心。
結論として、原因が複合的なので、解決策も多岐に渡り、それら全てを対策するのは時間と人手と、何より予算上難しい。だからこそ、優先度を見極めてやっていかなければならない。
対策として、政策なのか、対象者の選定方法なのか、現金給与・現物給付なのか、教育なのか就労支援なのか。それぞれにメリットもあれば、不透明な要素もある。またたとえば就労支援といっても色々な方法がある。
子どもの貧困は、就労の困難さにつながるので、国の税収としてロストが大きく、貧困対策は税収増加に対してコストパフォーマンスが大きいというのが、データとしても実証されており、対策していくことの有効性を語る上でとても分かりやすい。 -
Posted by ブクログ
母子家庭の貧困というニュースを目にする機会が増えてきたので、興味をもって手に取った。この本が書かれたのは2008年、どれだけ自分の目が開いていなかったのかがよくわかる。少子化対策がさらに取り沙汰されるようになったが、それ以前に子供の貧困は許容できないものであり、撲滅しなければならない。
この本は精緻に貧困の定義の測り方、日本と世界の比較から語る。そして日本の政策、母子家庭の経済状況、学歴社会における貧困の不利をデータで示す。さらに、子供の必需品とはなにかもデータで示すことで、より具体的な貧困の姿を目に見えるようにしてくれる。
この子供の必需品とは何か、で明らかになる世間の認識がまたすごいものだ。世間的に50%以上が必需品と考えるものが与えられていない状態を剥奪された状態として、貧困の具体的な姿を描くものとしてアプローチした結果、日本ではそもそも子供の必需品として考えるものが少なすぎるのだ。おもちゃも誕生日のお祝いもクリスマスプレゼントも、大学までの教育も、お古でない靴や文房具も、一年に一回遊園地や動物園に行くことも、与えられなくても仕方がないと認識されているのだ。なんて悲しい社会なんだろう。そんな子供の姿をしょうがないとして許容することはあり得ないと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ長い間「一億総中流」という意識を持っていたために「貧困」に対する想像力が欠如した。その結果、対策が非常に遅れている。特に子供については貧困との関連付けがタブー視されてきた経緯があり、親の自己責任論で片付けられてしまうことが多かった。そのため「子ども」を中心とした政策が必要である、という内容。
社会学系の文章はあまり読み慣れていないせいもあって、言っている内容が難しいなぁと思うことが多かった。また、統計学の知識をある程度は使う(中央値など)ので、そのあたりも必要なのかな?一番ショックだったのは第6章で、「金銭的に余裕がなければ、……は子供に与えられなくてもよい」という項目が、海外と比べて日本は低い傾向にあること。一概に比較はできないにしても、貧困に対する想像力が貧困なのかなぁ、と感じる結果だった。とはいえ、自分が同じアンケートを受けたら、どう答えるのだろうか不安ではある。