阿部彩のレビュー一覧
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日本では、何が「子どもの貧困」をもたらし、何が問題なのか、どのような対策をとるべきか、について書かれた本。図表を多く挿入して、解説を加えています。
第1章では、15歳時点の暮らし向きがその後の生活水準に影響を与えていることを示しています。子ども期の貧困は、その時点での学力や生活の質などへの影響に留まらず、大人になってからの就労状況などに影響を及ぼして。更に、その「不利」が次の世代(子)にも受け継がれていくことを述べています。
第2章では、「相対的貧困」について説明し、世帯タイプ別の貧困率、年齢別の貧困率を提示しています。特に心配されるのが、乳幼児の貧困率の増加です。低年齢での貧困が、子どもの健康やその後の成長に、大きく影響するからです。
第3章では、国際比較を通して、日本の政策を検証しています。税制度や社会保障制度には「所得再分配」の働きがあり、通常、その前後で貧困率が軽減されるのですが、日本は、先進諸国のなかで唯一、制度があるために、子どもの貧困率が悪化しています。「負担」と「給付」が、高所得層に優しく、低所得層に厳しい制度になっていると考えられます。
第4章は、子どもの貧困率が特に高い母子家庭の現状について書かれています。母子家庭では、働いて収入があるにもかかわらず生活保護を必要とする低所得層が多いことなどが問題となっています。そして、低所得であることは、第1章で提起された問題へとつながるわけです。また、女性の「ワーク・ライフ・バランス」が保障されないことは、女性の貧困問題でもあります。
第5章では、貧困層の子どもが低学歴であるのは、高校や大学の授業料が払えないから、ということだけではないといっています。貧困層の子どもは、意欲を失い、努力しなくなっているという、子どもの意識の差が生じていることをデータで示しています。学校や家庭環境、家族の意識などが、子どもの学習意欲に影響を及ぼしていることは明らかです。高卒でさえ、ワーキング・プアになってしまう現状にあって、就学前から支援する施策が必要になっているといえます。
第6章では、「相対的剥奪」という概念が紹介し、この相対的剥奪概念と「合意基準アプローチ」によって、子どもにとっての「社会的必需項目」を選び出しています。その各項目の支持率を調査して、どのような世帯の子どもが、「社会的必需項目」の欠如を強いられているか(必要であると支持され、本人も希望しているのに、家庭の事情などで与えられない状態)を示しているのですが、きわめて水準の低い最低生活が浮かび上がってきます。
第7章では、イギリスのマニフェストを参考にした「日本版子どもの貧困ゼロ社会へのステップ」という提言が示されています。 -
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ネタバレ噂に違わぬ「良書」。
さまざまな領域をクロスオーバーする「社会的排除」の問題および「社会的包摂」の意味を、余すところなく突っ込んでいらっしゃると断言していいと思う。
特に、社会的包摂を「所得」や「就労」といった(社会的)次元から、「その人の承認」という(存在論的)次元までひっくるめてきちんと語ろうと切り込む著者の姿は勇ましいと思う。勇気づけられる。
誰よりも著者自身がまだ言葉にならない歯がゆさを感じていると思われる点が二点ある(と思う)。ひとつは、社会的包摂による「承認」が「あなたと私のあいだの承認」であること、もうひとつは社会的排除や格差を生み出す「社会のありよう」、「社会のしくみ」は「包摂と排除」が社会のイニシャルロジックになっている機能分化社会だという点である。
(2点目は自分もはっきり言えてないですけど……)
あとがき214頁の「振り返り」と216頁の「危惧」は、「共感」と「不吉」という二つの意味で震えながら読みました。 -
Posted by ブクログ
母子家庭でしかもワーキングプアに陥っている世帯が多いことはショッキングです。
僕は子育ての経験がありますが(0~5歳)、お金がかかるのもありますが、それ以上に『一緒にいる時間』を大事にしていたので、それはそれは大変です(笑)ノイローゼになるのも頷けます。
お金で解決するのって、簡単なんですよね。だから僕はあまり好きじゃないんですが、それよりも、労力(時間)を提供することの方が尊くて、子育てもお金をかければ良いというわけではなくて、子どもの両親が一緒に過ごしたり遊んだり、スキンシップをとったり、子どもにとっても、そっちの方が喜びます。
ですから、母子家庭に必要なのは、所得の向上もさることながら、『子育てする時間』も確保しなければなりません。お金は代わりがききますが、子どもにとって、親というのは基本的に代替が不可能です。
政府支出にみる教育費の国際比較で、どの国よりも日本は支出が低いというのは知っていましたし、この現状を打開しなければと思いますが、ではどこから財源を持ってくるのかが問題で、広い視点から判断しなければならないと思います。また、『他国に比べて日本は~』云々を言い出したら、それはもう日本ではなくなるし、社会背景や歴史・文化的要因が各国によって置かれている状況・立場が違うので、何でもかんでも『教育費の公的支出を欧米並みに』とか言い出したら、『煙草税も欧米並みに』、『消費税も欧米並みに』『法人税も欧米並みに』となり、高齢社会には対応できなくなります。乱暴な議論だけは避けてほしいです。
本書は所謂『ゴネ得』で子どもの貧困に警鐘を鳴らしているのではなく、あくまで冷静に日本の悪しき現状を直視して論じているので好感が持てます。
子どもと言わず、大人も貧困なんですよね。自分が貧困だから未来に投資できない。そうなると、必然的にこれから生まれてくるであろう命にまで負担を強いることになります。負の遺産の継承は何としても避けなければなりません。
子どもが暮らしやすい、子ども主体の社会にすることは、ともすると「大人は子どものための奴隷になれ」と社会で強制しているのでは?と疑問を抱かざるを得ません。自分の人生は自分のもであるはずだし、子どものために大人が犠牲になるのは納得(国民的合意)が得られるでしょうか?僕は、これにプラスして、「もっと多様なライフスタイルを認めるべき」だと思います。フリーターはダメ、ニートはダメ、というようなレッテルを貼るのではなく、そういった人たちを受け入れる社会の寛容さ、そしてすべての人の生活水準が向上するように、社会の構造や認識が変わっていくことを強く望みます。
怠け者が野放しになるのは問題ですが、全体の割合でみるとそう高くはないと思うので、さしあたっては、生活保護の不正受給による厳しい目や上記のフリーターやニートへの偏見を改善していくことが先決です。
これを通じて僕が言いたいことは、「選択の自由を確保すべき」ということです。自己責任論の強い風潮には賛同できませんし、そもそも格差の継承や海藻の固定化が組織の循環を滞らせている現状が大いににあります。大学まで進学すれば多様な仕事を選べる、しかし、中卒では仕事の選択肢が限られている、というような、機会の平等をもっと確保し、そして失敗しても再チャレンジ可能な社会につくりかえていく。そんな社会が理想だと思います。
「子どもの貧困」を考える時、それは子どもだけに限定されず、僕を含むすべての日本人に関わる問題です。政府はこのことをもっと真摯に受け止めて議論を深めてほしいと思います。
感想が支離滅裂ですが、色々と考えさせられる、内容の詰まった良書中の良書なので、僕の評価はSにします。 -
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「障害の社会モデル」と「貧困の社会的排除」は似ているという。問題は当事者ではなく社会が内蔵している障壁にあるということ。すべての人は程度の違いがあれハンディや生きにくさを抱えている。いちばんしんどい人に焦点を合わせた社会が、結局はすべての人にとって暮らしやすい社会になるということ。(ユニバーサル・デザインの社会)
社会的包摂の一方法としてベーシックインカム(BI)なる言葉も想起している。この社会に生まれた運命を支えてくれる人権・生活保障になりうるのか。おカネへの執着や将来に対する不安は減るだろう。障害、難病、介護、育児などに対する生活不安も減るだろう。生活不安に縛られた意に沿わない労働から本来の仕事を含め思いっきり得意分野で自己創造希求の営みができるのではないか。社会的包摂としての「BI」、批判も含め改めて勉強する価値はありそうだ。 -
Posted by ブクログ
思いもよらないほどに日本の貧困度の高い事を知っておどろく
自分の視野の狭さがこれほどに実態を見損ねている無関心さに愕然とする
目の前に見えることでアップアップとなり
身の回りの事以外は見たくも触れたくもないのだろうか
先進国の動向と逆行している事に付いてもこれほどに身勝手な
縄張り根性が染み付いているとは思いもよらなかった
日本はいまだに後進国の意識を引きずったままで
明治以来の成り上がりのヤクザ稼業から成長できていないようだ
特に母子家庭のイジメラレ方は尋常でない
法律を初め職場や地域社会で目の敵のようにイジメの対象にして
恥ずかしげも無く搾取をむさぼっている
法律的にも行政的にも司法においてもいちじるしい憲法違反だし
各国との比較においてもはなはだしい格差であり
ビジョンの方向性すらソッポを向いて逃げている
この事をOECD2005年のデーターで見ると
誤魔化しで格差を広げてうそぶいていることが歴然としている
これは当然ながら母子家庭においても同じ状態で
弱い者イジメの典型なのだろう
「逆機能」と言う言葉を生んだ福祉対策と絡めた税制で
弱気をクジキ強気に媚びる大勢は
島国で濃縮された依存主義によって友食いしてきた民族のなれの果てなのだろうか
ユニセフが2007年「子供のウェルビーイング=幸福度」を公表している
物の過不足・健康と安全・教育・家庭と人間関係・行動とリスク・主観的満足度
の六項目による国別調査を行っている
それによるとオランダを筆頭とする北欧諸国が上位を占める中
イギリスが21位と最下位でアメリカが20位である
財政に苦しんでいるギリシャが13位で東欧のポーランドとチェコそれに続く
日本はデーターを出さず不参加であるけれど
OECDによる貧困率で見るとイギリスと日本は並んでいるので
同じく最下位の部類になるだろう
これに対して日本政府はこの調査を信頼できないし
改善もしていると言う見解を国会で述べ
調査することすらこばんでいると言う
見せ掛けのバラ蒔きはするけれど
トータルとしてはジワジワト貧困率を上げる政策に偏っている
それに引き換えイギリスではこの最下位を受けて
貧困撲滅のための10カ条を掲げて対応している
その第一に、すべての政党が貧困撲滅政策を目標にする事
第二に、すべての政策に貧困に対する観点を盛り込む事とある
OECD二〇〇五年・日本における母子家庭の就労率はスイスに次いで四位である
それに引き換え同じデーターによる貧困率はトルコに次いで二位である
まさに働けど働けど楽にならずどころかひどくなる一方である
そのくせ少子化によって搾取の相手が減ることには神経を尖らし
子供を増やせと動揺して気をもんでいる
少子化対策でなく貧困対策こそが健全な環境を創る事に気付いていないらしい
あるいは気付かない振りをしているようだ -
Posted by ブクログ
前著で子どもの貧困の実態を示した著者が、具体的にこの状況を解決していくにはどのような政策が考えられるか、調査や海外での実際の事例などを参考に挙げていっています。限られた財源の中で、数ある政策候補の中からどの政策を取っていけばよいのか、という視点も随所に現れています。
「第4章 対象者を選定する」では対象者を絞り込むことの利点・欠点や、対象者選定の考え方の様々が示されており、興味深かったです。ここにも書かれているとおり、日本においては対象者を選定しない給付型の社会政策は「バラマキ」と批判されることが多いと思いますが、安易に対象者を線引きすることで本来サポートが必要な層に給付が届かないのは本末転倒だなと思ってしまいます。社会政策の制度設計の難しさを感じられました。 -
Posted by ブクログ
刊行から15年経っていますが、多くのことを考えさせられる1冊です。一方で、15年経っても、国で行われている子ども政策の議論の内容は残念ながらあまり変わっていないように思われてなりません。
著者が最後に記しているように、「子どもの数を増やすだけではなく、幸せな子どもの数を増やすことを目標とする政策」をぜひ議論してもらいたいと思います。
親の貧困や学歴が子どもたちに大きく影響していることをデータで示されるとやはり大きなインパクトがあります。
子どもたちのスタートライン格差を少しでも縮め、希望を持って暮らせる国になってほしいなぁと思わずにはいられません。
※15年経っているので、現在のデータをいろいろと知りたい気持ちはとても出てきます。 -
Posted by ブクログ
日本の貧困の特徴はワーキングプアが多いこと。これは母子世帯の場合子どもを抱えながらの労働が難しく、非正規就労が多いことが実態としてある。
貧困層の子供は、学力と健康状態が低い傾向にある。
また、貧困層は、子どもの自己肯定感や将来への希望を持たない傾向にある。家庭内においてもストレスに溢れ、健全な成長を妨げる要因になる。その結果、貧困の親から生まれる子供も、将来貧困の親になる可能性が高い。
経済が成長すれば貧困層の所得も増える、という理論は先進国には当てはまらない。スゥェーデンやアイルランドといった高福祉国でも、低所得者の勤労所得自体は上がらず、GDPの拡大により国からの給付金の割合が上がっただけだった。
【家庭環境を介した経路】
親のストレス、親と過ごす時間、家庭内文化資本、親の孤立
逆に、遺伝子的経路は、そこまで重要な要素ではなく、むしろ家庭環境により子供の認知能力、身体能力が制限される可能性のほうが高い。
貧困には家庭環境や遺伝や地域差、親の遺産など、様々な要因があるが、一番相関関係のある経路は、
「子ども期の貧困→低学歴→非正規労働→現在の低所得→現在の生活困窮」である。
要因は一本一本が独立しているのではなく、様々に絡み合って影響している。
財政には限りがあるため、貧困対策は「社会に対する将来への投資」と読み替え、費用対効果の高い政策から実施していく。
日本はこの計測がまだ進んでいない。
そのため、長期的な収益性の観点を持ち、その収益性が測定できる制度設計、モデル事業を取り入れ、対象者を吟味して政策を行うべき。
貧困対策には、選別主義(生活保護のような、貧困の人だけを対象とする政策、小さな政府)と、普遍主義(義務教育のような、全員対象、大きな政府)のものがある。
選別主義の欠点は、政治的な批判、偏見の対象、選別にかかる費用、労働インセンティブの低下がある。
普遍主義の欠点は、財政負担の大きさがある。
結局、研究の結果、選別か普遍のどちらが優れている、というよりも、再分配のパイの大きさによることが分かった。
そして、日本では、普遍的な現金給付を「バラマキ」と感じる一方で、貧困層への給付も厳しい目にさらされた。しかし、現物の普遍的支給には批判はなかったため、結局、現金を配るといった札束ポリティクスにアレルギー反応を示しているだけに思える。
日本においては、現金外支給(教育の機会の拡充など)は、より普遍的に、現金支給に関しては、より選別的に行うのが望ましい。
また、年齢を絞るのが望ましい。特に、就学前(0~6歳)に対して貧困対策を行うのが、特に効果があるとの研究結果が出ている。乳幼児期に貧困を経験した子供は、その後貧困から抜け出せたとしても、乳幼児期の経験が悪影響を及ぼすという結果がある。
【現金給付vs現物支給】
現金給付の効果は、「ある」。
現金給付の利点は、効果が確実であること。現物支給は何をどのように給付するかによって大きく効果が異なるため、効果にばらつきがある。
現物支給であっても、教育プログラムへの投資といったものであれば、将来はかけた金の何倍ものリターンが得られることがある。一方、無駄になる恐れもある。現金は安全資産、モノは危険資産。
現金はかゆいところに手が届き、汎用性に富む一方、市場にそぐわないサービス(保育、教育)には効果が表れにくい。
日本では、富裕層→貧困層への所得再分配前と、所得再分配後の、貧困率の改善が低い。昔は再分配前のほうが所得が多いという逆転現象が起こっていた。
結論としては、現金給付は、児童手当や児童扶養手当など、特に未就学児、小さい子供のいる家庭への手当てを厚くするべきである。
【現物支給】
保育所の拡充は圧倒的に効果あり。子供だけではなく、親に働きかけるソーシャルワーカーの配置が◎。また、小中高学童保育の給食実施により、「バランスのある食」の拡充を。
また、放課後プログラムの実施により放課後格差を縮小する。「親が働いているから預ける」ではなく、より行きたいと思える「居場所」を提供する学童づくりが大切。
ビッグブラザー・ビッグシスタープログラムにより、ボランティアの大人と子供が一対一の関係になれる活動が、海外で効果を上げている。
また、親への現物支給として、貧困層妊婦への支援、親の疾患や障害への支援が上げられる。
【教育】
家族が負担する教育費の割合が先進国の中でかなり高い。費用の大部分は学校外教育。義務教育の授業料の無償化はもちろん、教科書代、給食費、クラブ活動費など、就学にかかる全般的な費用も援助していくべき。
費用のほかに、学力格差の縮小も貧困をなくす上では重要。
少人数学級に編成し直す、適切なカリキュラムによる落ちこぼれをなくす、など
学校生活への包摂(ひとりひとりが友達や先生から認められ、自分の居場所が学校にあると思える環境)の取り組みが重要。貧困層の子供は、対人関係の苦手意識、自己意識の欠如など、社会に必要なコミュニケーション能力が劣っていることが多いからだ。
【子供の貧困指標】
①相対的貧困率
②剥奪指標(毎日3食食べる、定期的なレジャー活動、行事への参加など、生活の質を具体的に測るもの)
【優先順位】
①実験的な枠組みにより効果が測定されている物
②長期的な収益性が確保できるもの
③とくに厳しい状況におかれている子供を優先するもの
また、現金給付は必要。家庭の経済状況は子供の生活状態にモロにでる。
①子どもの貧困率の逆転現象を解消する。
②乳幼児期の子供の経済状況を改善する。
現物支給は、所得制限方式ではなく、学区ごとの選別や、地域ごと、定時制高校への予算拡充、メンタープログラム、親へのサービスなど、プログラムごとに効果的に支給するのが良い。