阿部彩のレビュー一覧
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日本では、何が「子どもの貧困」をもたらし、何が問題なのか、どのような対策をとるべきか、について書かれた本。図表を多く挿入して、解説を加えています。
第1章では、15歳時点の暮らし向きがその後の生活水準に影響を与えていることを示しています。子ども期の貧困は、その時点での学力や生活の質などへの影響に留まらず、大人になってからの就労状況などに影響を及ぼして。更に、その「不利」が次の世代(子)にも受け継がれていくことを述べています。
第2章では、「相対的貧困」について説明し、世帯タイプ別の貧困率、年齢別の貧困率を提示しています。特に心配されるのが、乳幼児の貧困率の増加です。低年齢での貧困が、子どもの -
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ネタバレ噂に違わぬ「良書」。
さまざまな領域をクロスオーバーする「社会的排除」の問題および「社会的包摂」の意味を、余すところなく突っ込んでいらっしゃると断言していいと思う。
特に、社会的包摂を「所得」や「就労」といった(社会的)次元から、「その人の承認」という(存在論的)次元までひっくるめてきちんと語ろうと切り込む著者の姿は勇ましいと思う。勇気づけられる。
誰よりも著者自身がまだ言葉にならない歯がゆさを感じていると思われる点が二点ある(と思う)。ひとつは、社会的包摂による「承認」が「あなたと私のあいだの承認」であること、もうひとつは社会的排除や格差を生み出す「社会のありよう」、「社会のしくみ」は「包 -
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母子家庭でしかもワーキングプアに陥っている世帯が多いことはショッキングです。
僕は子育ての経験がありますが(0~5歳)、お金がかかるのもありますが、それ以上に『一緒にいる時間』を大事にしていたので、それはそれは大変です(笑)ノイローゼになるのも頷けます。
お金で解決するのって、簡単なんですよね。だから僕はあまり好きじゃないんですが、それよりも、労力(時間)を提供することの方が尊くて、子育てもお金をかければ良いというわけではなくて、子どもの両親が一緒に過ごしたり遊んだり、スキンシップをとったり、子どもにとっても、そっちの方が喜びます。
ですから、母子家庭に必要なのは、所得の向上もさることなが -
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「障害の社会モデル」と「貧困の社会的排除」は似ているという。問題は当事者ではなく社会が内蔵している障壁にあるということ。すべての人は程度の違いがあれハンディや生きにくさを抱えている。いちばんしんどい人に焦点を合わせた社会が、結局はすべての人にとって暮らしやすい社会になるということ。(ユニバーサル・デザインの社会)
社会的包摂の一方法としてベーシックインカム(BI)なる言葉も想起している。この社会に生まれた運命を支えてくれる人権・生活保障になりうるのか。おカネへの執着や将来に対する不安は減るだろう。障害、難病、介護、育児などに対する生活不安も減るだろう。生活不安に縛られた意に沿わない労働から本来 -
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思いもよらないほどに日本の貧困度の高い事を知っておどろく
自分の視野の狭さがこれほどに実態を見損ねている無関心さに愕然とする
目の前に見えることでアップアップとなり
身の回りの事以外は見たくも触れたくもないのだろうか
先進国の動向と逆行している事に付いてもこれほどに身勝手な
縄張り根性が染み付いているとは思いもよらなかった
日本はいまだに後進国の意識を引きずったままで
明治以来の成り上がりのヤクザ稼業から成長できていないようだ
特に母子家庭のイジメラレ方は尋常でない
法律を初め職場や地域社会で目の敵のようにイジメの対象にして
恥ずかしげも無く搾取をむさぼっている
法律 -
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前著で子どもの貧困の実態を示した著者が、具体的にこの状況を解決していくにはどのような政策が考えられるか、調査や海外での実際の事例などを参考に挙げていっています。限られた財源の中で、数ある政策候補の中からどの政策を取っていけばよいのか、という視点も随所に現れています。
「第4章 対象者を選定する」では対象者を絞り込むことの利点・欠点や、対象者選定の考え方の様々が示されており、興味深かったです。ここにも書かれているとおり、日本においては対象者を選定しない給付型の社会政策は「バラマキ」と批判されることが多いと思いますが、安易に対象者を線引きすることで本来サポートが必要な層に給付が届かないのは本末転倒 -
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刊行から15年経っていますが、多くのことを考えさせられる1冊です。一方で、15年経っても、国で行われている子ども政策の議論の内容は残念ながらあまり変わっていないように思われてなりません。
著者が最後に記しているように、「子どもの数を増やすだけではなく、幸せな子どもの数を増やすことを目標とする政策」をぜひ議論してもらいたいと思います。
親の貧困や学歴が子どもたちに大きく影響していることをデータで示されるとやはり大きなインパクトがあります。
子どもたちのスタートライン格差を少しでも縮め、希望を持って暮らせる国になってほしいなぁと思わずにはいられません。
※15年経っているので、現在のデータをい -
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日本の貧困の特徴はワーキングプアが多いこと。これは母子世帯の場合子どもを抱えながらの労働が難しく、非正規就労が多いことが実態としてある。
貧困層の子供は、学力と健康状態が低い傾向にある。
また、貧困層は、子どもの自己肯定感や将来への希望を持たない傾向にある。家庭内においてもストレスに溢れ、健全な成長を妨げる要因になる。その結果、貧困の親から生まれる子供も、将来貧困の親になる可能性が高い。
経済が成長すれば貧困層の所得も増える、という理論は先進国には当てはまらない。スゥェーデンやアイルランドといった高福祉国でも、低所得者の勤労所得自体は上がらず、GDPの拡大により国からの給付金の割合が上がった