マーガレット・アトウッドのレビュー一覧

  • 侍女の物語

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    キリスト教原理主義者によって設立された独裁国家「ギレアデ共和国」を舞台に、子供を産むことだけを強いられる女性「侍女」の過酷な運命を描いたディストピア小説。
    希望(現実)と絶望(過去)の狭間で苦悶する心理描写が凄まじかった。特に、p.100のなんでもないホテルの一室を懐かしむシーンや、p.141「わたしは西洋梨の形をした中心物のまわりに凝結した雲にすぎない」という一文は、読んでいてとても辛かった。
    自由が奪われても、愛があれば生きていける。でも、自由も愛も奪われてしまったら、なんのために人間は生きるのか。
    100年以上後に学会で議論しているラストだが、この物語が後世に残ったということは、オブフレ

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    2025年10月01日
  • 侍女の物語

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    1985年に刊行されたこの物語の続編が、2019年、34年後に書かれた。
    続編の「誓願」を読んでから、やっと感想を書く気になれた。この、絶望的な物語に対して、この一冊だけで何かを言うことができなかった。恐怖であることはもちろんだが、2025年の今、単なるディストピア小説の域を超えた現実味を帯びている。

    「人種差別者の不安がギレアデの政権奪取の成功を許す感情的な支えのひとつになった」

    あまりにも悲しく、みじめな「女」の独白。

    クーデターによりうまれた独裁国家ギレアデの愚民政策により、女は名前を奪われて、書くこと、読むこと、学ぶこと、産む産まないの自由を奪われた。全てが変わってしまった世界

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    2025年09月19日
  • 侍女の物語

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    「自由」について考えさせられる話。
    自分に「見る自由」があるなら、「見られる自由」もあってしまうということ。好き勝手する・される「自由」から解放して、ほんとうの「自由」を得たつもりになった社会。
    男性が女性に「よかれ」と思って、「女性として生きる喜び」を堪能させる社会。
    現実社会もかすかに似た価値観になりつつある気がする。

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    2025年09月16日
  • 侍女の物語

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    ネタバレ

    ディストピアだが、近いうちに現実に起こり得ないとも思えない。
    前半は世界観の説明が多く、かなり単調で読むのに時間がかかったが、後半に物語が動き出した!と感じてからはサクサク読めた。

    日本では少子化が問題と考えられているが、(あえて「考えられている」という。)少子化対策が極まればこういうことになるのではないかと思ってしまう。

    女性の自由を奪うために、仕事と金をまず奪うというのは恐ろしい。
    やろうと思えば簡単にできてしまいそうで。
    そして、仕事と金を奪われた彼女に対し、ルークが支配的な、安堵のようなものを感じているように思われて恐ろしい。
    簡単に、守られるべきもの、裏を返せば支配を受け入れざる

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    2025年09月12日
  • 侍女の物語

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    女性が管理され、地位ある人の子を産むための道具にされるディストピア小説。

    「この世界はいったいどうなっているの?」というこの世界線の事が少しずつ見えそうで見えない。

    この物語を読んでいる最中は、とても疑心暗鬼になる。

    長い小説なのだが、その間に明かされることがとても少ないように感じる。

    これは『誓願』を読まなくてはいけない。

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    2025年08月21日
  • ペネロピアド 女たちのオデュッセイア

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    p.165〜170が出色。
    家父長制やら父権制やらの生皮をベリベリ引っぺがす爽快感が素晴らしい。
    これが四半世紀前に書かれた作品だとは。
    アトウッドの炯眼に驚くばかり。

    巻末に古典劇や神話のなかで沈黙させられてきた女性たちが語る作品群が列挙されていて、そちらも興味深い。ぜひ、読んでみたい。

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    2025年08月16日
  • 侍女の物語

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    アメリカでクーデターが起きた世界で、支配者たちの子どもを生むために集められた侍女が語る物語。

    ディストピア小説とされるが、支配者から見るとユートピア小説か。

    段々とその世界が明かされていく手法と世界観は、どことなく「ザ•ロード」を思い出した。

    これで終わり?と思わされてからの最後の章には驚かされた。

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    2025年07月25日
  • 侍女の物語

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    女性が子を出産するための国家資産として管理されるディストピア小説。フェミニズム小説として名高いようだが、本書を読む限り、それは小説を形作る一要素として利用しているだけではないかと思われる。執筆時の国際情勢を鑑みるに、むしろソ連の強権政治やルーマニアの出生政策からの影響のほうが大きく見える。
    ただ、それすらも物語を盛り上げるためのパーツでしかない。著者は、世のなかが評するほどのメッセージ性は込めていないと思う。それは映画版へのラブロマンス的なドラマへの改変をかんたんに了承したことからも窺える。

    本書はどうやら政治的なイシューに関連して語られることが多いようだ。それはそれでよいとして、重要なこと

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    2025年07月08日
  • 侍女の物語

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    正直、半分読むまでなかなか入り込めなかった。
    ディストピア小説といっていいのか?こういった架空の近未来小説といえば、完全に現世とかけ離れた「理想の」世界におけるちょっと異質な主人公が、その世界の「常識」を疑い、一石投じる、といった展開が多いが、抗っているというよりも、流れに身を任せているような。それから、過渡期を扱っているのはあまり読んだことがないかもしれない。

    特定の子宮が国家の所有物となった世界の中。好きとか嫌いとか許す許さない認める認めないじゃないんだな。無機質な世界の中では、暇を持て余す夜よりも愛人契約の方がマシってことか。

    最後の最後に、ああやっぱり自分がこの本を手に取ったのは、

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    2025年07月04日
  • ペネロピアド 女たちのオデュッセイア

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    面白かった。アトウッド自身SF = Speculative Fictionと呼びたいと言われているのも納得。でもやはり自分にはまだまだ歴史的・文学的教養は全然足りないことも思い知らされる。

    タイトルがイリアス(イリアド)に絡めてペネロペイア→ペネロピアドになっているという点や、古典の舞台を思わせる幕間などやはり自分自身がもっと古典を知っていればもっと面白さも伝わるのだろうなともどかしくも思った。

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    2025年06月22日
  • 侍女の物語

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    これは…!面白い。
    典型的ディストピアな世界観が秀逸。
    なかなか暗い世界なんだけど、淡々とした語り口なのでさほど重苦しくない。絶妙。
    リンチや処刑もあるんだけど、なんか大丈夫。耐えれる。

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    2025年06月17日
  • 侍女の物語

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    ディストピア小説だが、現実にも繋がる話  キリスト教原理主義がアメリカ合衆国大統領を暗殺し、議会を襲撃し、クーデターを起こす。

     主人公は一児の母である平凡な女性。クーデターをきっかけに人生が狂い、エリート男性の子種をもらい出産するのが役目の「侍女」という身分になる。

     キリスト教原理主義に限らず、イスラム教、儒教など女性を蔑視する宗教は様々ある。そして蔑視される女性側も、真っ向からそれに対抗する者、自分の居場所を作るために他の女性を抑圧し優位に立とうとする者、恐怖から体制に盲目的に従う者など様々だ。

     作者が描き出したこの物語の状況は、戦争のような大きな恐怖から、いじめのような身近な恐

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    2026年01月18日
  • 昏き目の暗殺者 下

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    いろいろな感想を読んでいると、アイリスの回想が長すぎるという声が多いけれど、わたしはアイリス部分は面白くて、逆に「昏き目の暗殺者」とその作中作が冗長でちょっと飛ばし読みになってしまった。
    全体として面白かったかといわれると、うーん、だし、作中作の秘密も終盤でうっすらと察しはしたけど、それでも放り出せない魔力のようなものは感じた。『侍女の物語』は近未来(?)のディストピアだったけど、実はそんな世界はちょっと前に厳然と存在していたし、なんなら今でも地域によってはあるしということをあらためて突きつけられる。

    アイリスの己に対する回想や評価はひたすら辛辣なのだけど、描かれていない部分でよろこびを味わ

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    2023年08月28日
  • 昏き目の暗殺者 上

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    入れ子構造になった複雑な物語。
    ・人生の終盤を迎えたアイリスの現在と回想。
    ・車ごと橋から落ちて、若くして亡くなったアイリスの妹、ローラが、生涯に1作だけ書いた小説『昏き目の暗殺者』
    ・その小説自体も、人目を忍んで逢瀬を重ねる男女の逢い引きのなかで、男の口から、とある惑星を舞台にした物語(それこそが『昏き目の暗殺者』)が語られていく。

    ……とまあ、自分の頭の中を整理するために書いてみた。

    ちょっと長くて、どれもこれも謎ばかりなので、わくわくというよりは少し読み疲れる感じもあるのだけど、それでも下巻は読むつもり。あと、老いに対する容赦ないぶった切り方など、どきっとするところも多くて、この呵責

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    2023年08月16日
  • デカメロン・プロジェクト パンデミックから生まれた29の物語

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    短編小説になると、自分の場合各話の背景を探るのにいちいち時間を要してしまう。
    しかし本書に関しては、その心配をする必要はない。どの話の背景もパンデミック中の出来事だから。

    1348年ペストから逃れるため、フィレンツェ郊外に逃亡した男女による創作話をまとめた『デカメロン』に倣い、21世紀を生きる計29の作家が本書のために29の物語を提供した。アメリカをはじめ、英語圏でも評価を得ている他言語の作家も参加しており、なかなかに国際色豊かだった。いつものように、心に引っかかった何篇かを引っ張り出したい。

    思えば2020年の惨めな生活を振り返らないまま、今日まで来てしまった。当時の自分のみならず、似た

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    2022年11月01日
  • デカメロン・プロジェクト パンデミックから生まれた29の物語

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    短編集なので、読み飽きなくて◎
    コロナに直接的に関係する話から、そうでないものまで意外にもバリエーションがある

    疲れや緊張を和らげてくれる
    癒しのある話が多いのは、よかった

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    2022年07月08日
  • デカメロン・プロジェクト パンデミックから生まれた29の物語

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    面白かった。

    ニューヨーク・タイムズマガジンが、現代のデカメロンを作ったらどうかと、作家たちに声をかけ、
    7月には特集号になったというから、驚きのスピードだ。
    ケイトリン・ローバーによる序文にこうある。
    _人生でも指折りに恐ろしい経験のさらに深く放り込まれてはきても、作家たちが芸術作品を作っているのだと分かった。略
    最良の文学作品とは読み手を遠くに連れていくだけでなく、自分たちがどこにいるのかをはっきりと理解させてくれるものなのだ_


    合わない作者ももちろんいたけれど、
    どれもこれも本当にあの2020年の春の事を書いていて、リアルだった。
    不安と、現実逃避と、希望とが入り交じって。
    短い作

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    2022年02月07日
  • 昏き目の暗殺者 下

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    ネタバレ

    面白かった!内容は☆5。でも誤植なのか誤字なのか、??という箇所が複数あったので☆4。校正が甘いですよ、ハヤカワさん!!!

    で、感想。
    ①内容について
    システムへの隷属を指弾する姿勢は『侍女の物語』と共通のように感じた。今回は資本主義に隷属した老女の懺悔を聴いているかのよう。抗うことをしなかった者の懺悔。ローラはシステムに対して言い訳をしなかった者。アイリスは言い訳をし続けた(あるいは目を逸らし続け、被害者の立場を固持し続けた)者、ウィニフレッドはシステムに過剰適応した無知な者の、それぞれの形象か。みんなそれぞれに「昏き目(ブラインド)」だという風に読める。
    ②モチーフの引用について
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    2021年02月04日
  • 昏き目の暗殺者 下

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    上巻がどうしてあんなに読みにくかったのか、完読して納得。

    縦横に張り巡らせられた糸を、そして枠の中にはまった物語を、簡単に読み解けるはずはない。

    アラビアンナイトのように、カターサリット・ナーガラのように、読者が慎重に進みながら読むべき作品なのだから。

    その慎重に張り巡らされた糸を潜り、枠を外し、その奥に大事に隠された物語の真意を見つけ出した時、胸の奥にまた一つ、忘れることのできないものを得ることができるのだ。

    アイリスとローラの物語は、ここから私達、読者に手渡されたのだから。

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    2021年02月02日
  • 昏き目の暗殺者 上

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    ネタバレ

    中々に手ごわい小説です。

    久しぶりに読み終わるまでにひと月以上かかった(^▽^;)
    下巻があるので、まだ時間はかかると思いますが、読むのを止めるという意識はないです。

    財を成した名家の一代記であり、また死んだ人間が書いた小説『昏き目の暗殺者』が交互に物語を形作り、その合間にゴシップが入る。

    時代は第一次世界大戦から第二次世界大戦後にかけて、一族の没落や家族が重たい小説ではありますね。
     
    この段階で感想はこの程度しか書くことができないですが、下巻でローラが真に何を描きたかったのか、そしてローラの姉であり語り手の『わたし』であるアイリスが最後まで何を語るのかを読みづつけたいと思います。

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    2021年01月29日