あらすじ
【カナダ総督文学賞受賞】男性絶対優位の独裁体制が敷かれた近未来国家。出生率の激減により、支配階級の子供を産むための「侍女」たちは、自由と人間性を奪われた道具でしかない。侍女のオブフレッドは生き別れになった娘に会うため恋人と共に脱出しようとするが……。辛辣なシニシズムで描かれた戦慄の世界。
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Posted by ブクログ
個人的に久しぶりの読書体験だったが、物語に引き込まれてあっという間に読み切ることが出来た。
ディストピア小説として分類されるらしいが、欧米での代理母を使って子供を持つセレブリティやゲイのカップルの存在を知ることが少なくないため、女性の身体を出産の商品としている現実とこの小説の世界は意外と遠くはないのではと感じた。
また聖書の言葉を勝手な解釈で自分たちの主張を強化する流れは既に現実の世界でも起きていそうだし、これからもっとありそうだなぁと思った。
「侍女の物語」について
この物語は、ギレアデ政権の間、バンゴア市と呼ばれていた場所から発掘された、およそ30本のカセットテープに吹き込まれていたものを文章に起こしたものという設定。
語り手の女性は、出産を目的に集められた女性の第1陣のうちの1人。ギレアデ政権は、その後、様々な粛清と内乱を経て崩壊したようですが、まだまだその初期段階にあり、日々の監視が厳しく、違反者は容赦なく処刑されていた時代です。
各個人からその個性を奪い取るには、名前と言葉を取り去るのが効果的なのですね。
単なる出産する道具である侍女たちの名前は「オブ+主人の名」。
この物語を語っているのは「オブフレッド」と呼ばれる女性です。
侍女たちはくるぶしまで届く赤い衣装を纏い、顔の周りには白い翼のようなものが付けられて、周囲とは遮断されています。日々決められた通りに行動し、侍女同士での挨拶ややり取りも決められた通りの言葉。
もちろん私物と言えるようなものは一切ありませんし、自殺や逃亡に使えそうな道具は慎重に取り除かれています。
侍女たちにはもちろん自由もなく、その存在に人間性などこれっぽっちも求められていません。まさに「二本足を持った子宮」。
一見荒唐無稽な設定なのですが、しかし、よくよく考えて見れば、これは十分あり得る未来。それが恐ろしいです。
いつどこでこのようなことが起きてもおかしくありません。
この作品は1985年に書かれた作品なので、それから40年経ったことになるのですが、世界的な状況はますます悪化するばかり。
ここまで極端ではなくとも、ここに書かれた現実が近づいているような気がします。
既にどこかでこういった類の洗脳が行われているかもしれませんね。
それでも、子供や夫を奪われて「侍女」となった女性たちは、そうなる以前の暮らしを覚えているのです。
それに対して、次世代の「侍女」たちは、元々そのような自由な世界が存在していたなど知る由もなく、それがまた恐ろしいところです。
子供ができない夫婦にとって侍女はありがたいはずの存在なのですが、そこは人間。
人間の感情はそう簡単に割り切れるものではありません。
単なる行為に過ぎないとはいえ、主人の妻には嫉妬されることになりますし、水面下では様々な感情が入り乱れることになります。
その辺りも面白かったですね。
Posted by ブクログ
2025年6月のNHK Eテレの「100分de名著」が「侍女の物語」とその続編とされている「誓願」だと聞いて急遽2冊入手。
「侍女の物語」は1990年に「ブリキの太鼓」のフォルカー・シュレンドルフが映画化。
2017年のHuluでのドラマ化では、より原作に忠実で現実の世界がこうしたディストピア小説と見紛う状況もあり話題となった。
物語はキリスト教原理主義者たちのクーデターによって全体主義国家と化した監視社会の中であらゆる自由を奪われ、まさに「産む機械」として名前さえも男性に所有される女性たち「侍女」のひとりが主人公。
彼女の視点によって語られるディストピア世界の現在とそれクーデター以前の過去が交錯しながら、物語は中盤から彼女の不屈の意志に自身が導かれていく。
読みながら「救い」を求める自分に気づき、なんとも切なく胸が苦しくなった。
主人公の友人モイラの「覚悟しなさい、ついにやってきたのよ」というセリフには現実の世界の我々がよく知るどこかの国の政治家たちが近い未来に目指している世界、いやすでに始まっているのだと痛感した。
Posted by ブクログ
指輪物語並みに面白かった。。。
信じられないような規律で構成されている空想の国家だけど、あり得ない、あってはならないその規律は、女性が実際に経験してきていることの究極の形だなと感じた。
つまり、女性が財産を持てないと聞くとあり得んとなるけど、現実では例えば大きな財産である家を買う時に、慣例なのか夫名義で買うとかあるよね。そういった女性の能力の否定が当然とされている文化の中で感覚が麻痺していった先の国家をリアルに見せてもらったように思う。
また読む。
Posted by ブクログ
架空のディストピア物語。
思想・行動の自由のない社会で特に女性の性と生殖の権利(SRHR)が国家に完全に管理されている。
過去に現実にあっただろう粛清や迫害/人心管理の手法がアレンジされ散りばめられて出てくる。それなのに“これは今の私達の物語だ”と読み始めてすぐ感じた。
今の私達にはもちろん強制も粛清もないが、避妊/中絶の手段も先進国水準では無い事、結婚に際して95%の女性が改姓して“オブフレッド”になっている事、少子化対策という事で子供を産むことを国策として奨励されている事。など類似点がいくつもある。
作中強く印象に残ったのが主人公の預金が凍結され夫の物になる場面だ。信頼し合い仲の良い夫婦である2人だが主人公が自身の固有財産を持てなくなる恐怖に震えていても、夫には恐怖までは無い。夫は妻の財産を全て自分のものにできるからな。
『誓願』を読むしかない。
Posted by ブクログ
100分de名著で取り上げられたので、再読。
アトウッドの最高傑作の一つ。
私にとっては、「語り手」という、小説の重要な構成要素に注視して読むようになる、きっかけをくれた作品でもある。
けれど、彼女の作品の中では、決して読みやすい方ではない。物語の起伏も(当然、あるけれど)他の作品に比べて、感じにくい。
理由は、作品が語り手である主人公の女性・オブフレッドの視点から語られること。
彼女は「侍女」という、この小説で描かれる「ギレアデ」という架空国家内で最も不自由な身の上にある。「侍女」は、生殖のためだけに生かされている存在。自由に外出することも、他者と言葉を交わすことも許されず、一日の大半を自室にこもって過ごしている。そのため、彼女の内省が語りの大半を占める。
だから、かえって『誓願』から読み始めた方が読みやすいかも、という指摘(誰のだったか忘れたけど)は、その通りだと思った。
Posted by ブクログ
この閉塞感・恐れ・背徳感・スリル・絶望感 監視され誰も信用できず、救いもないおそろしいディストピア! でも主人公の侍女オブフレッドの味方にならざるを得ない (彼女の本名もわからない…勇敢な女友達モイラのように大胆にはとてもなれない…この世界の前には幸せな家庭を持っていたのに…)どうしたらここから抜け出せるんだ! どうしたら彼女を助けられるんだ! 続編 誓願を 読まずにはいられません。
Posted by ブクログ
読みたいと思っていた本をようやく読む。
SFデストピア小説と言われているけれど、今の時代はちょっとしたきっかけでこんな世界に成りかねない。とても身近な恐ろしさを感じる。名前の頭にof。夫婦別姓の問題にも繋がるような。
Posted by ブクログ
すごい本。間違いなく今年のベスト1
この本以上に読む価値のある本はないし、他の本に書いてあることなんて、ほんの些末なことと思えてしまう。読んだ直後で、大分興奮していて、言い過ぎなのは自覚していますが。そのくらい圧倒的な本でした。
Posted by ブクログ
初読は1985年だった。
そのときの衝撃を忘れたことはなく、何度読み返したかわからないほど。
わたしにとっては、最高の作家のひとり。
常に著作を追いかけていて、機会をとらえて人にも何度もおススメしているが、
「世界最高峰のディストピア小説」
というキャッチフレーズにしり込みする人も多く、けっこう寂しい思いをしてきた。
実際、この本は、
重たい
怖い(ホラーではない。未来の絶望への恐怖感)
救いがない(こともない、けど)
ので、再読でも、メンタルがOKなときがいいです。
<あらすじ>
近未来のアメリカが舞台。中世ヨーロッパのような生活に逆戻りした世界では、女性の性と繁殖能力が完全に国家に管理されている。
女性はいくつかの階層に区分けされ、「侍女」は子どもを産むためだけに、「旦那様」の寝室に呼ばれる。侍女は名前ももたない。旦那様とは口をきいてはならないし、文字を読むことも禁じられている。「妻」階層の女性は、旦那様と人間的なコミュニケーションを取ることが認められているが、性的接触をもたない。
「小母」という存在が、すべての女性を管理統括・教育しており、小母はマニュアルにそって、侍女や妻たちを、「あの階層よりはあんたたちのほうがマシだよ」と洗脳する。
つまり、文章や繁殖の権利を女性から奪ったのは男性なのに、それを監視し、強制する窓口は女性なのだ。ここらへん、イヤらしい世界観がものすごく巧い。
しかし、女性たちもいつまでも騙されっぱなし搾取されっぱなしではない。分断された女性たちが結託し、この世界に反撃を試みる、というお話しです。
さて、この世界観、
えーー? よくある設定じゃん?
と思われた方!!
古今東西、ずずいーっと!
現代文学として、最初に描いたのがマーガレット・アトウッドなのです!!
1985年、『侍女の物語』は、SFの終末(ディストピア)小説として最高峰の、アーサー・クラーク賞を受賞した。
はい、ここ注目~。
SF?
ディストピアってか?
今なら、フェミニズム文学とも呼ばれるはずのこの作品、1985年には、まだ、フェミニズム文学という言葉はそもそもなかったんです。
アトウッドのこの作品が、最初(くどいですが)。
さて、で、なんでディストピアかよ、ってことですが、当時、権威のある大きな文学賞の審査員って、ほとんど100%男性だったのです。
男性が読んで、この作品は、めっちゃ怖い。そらもー身の毛がよだつほど怖いお話しなので、
「近未来の終末恐怖を描いたSF小説」
として、受賞したのです。
……なんだかなあ、って思いませんか。
わたしは思いました。
そりゃないぜー、と。
『侍女の物語』は近未来SFではないです。女性のとある立場を、もっとも寓意的に描いた純文学です。
が、当時、そんなことを考える(男性)審査員はいなかったのです。
そして、アトウッドは、受賞のときのスピーチでも、その後も、いっさい、自分の書いたものに対して解説しなくなりました。
1990年に入ってから、欧米ではフェミニズム運動が盛んになったのですが、これがけっこう過激な暴動系で、「男はおんなの敵だ!」という論調で、とにかく男性に反対し反撃するタイプの運動でした。
こういうフェミニズム運動家の女性たちからは、アトウッドは、
『侍女の物語』に、男性優位の読み方を許し、男性偏重の文学賞を黙って受け取った、男性側におもねった裏切り者
として扱われたのです。
火炎瓶投げつけられたりとか、当時のフェミニズム運動は本当~に過激だったので、アトウッドは命の危険さえ感じて、警察に保護を求めたこともありました。それがまた「体制におもねった」と非難されたり(泣)
でも、女性が女性の敵にまわるシステムこそ、アトウッドが『侍女の物語』でいちはやく警鐘を鳴らしているんですけどねー……。
その後もアトウッドは、多重人格を描いた作品をビリー・ミリガンより早く発表していますし、2009年には『洪水の年』で、人類の未知のウイルスがパンデミックを起こす世界を描いています。
どの作品についても、発表当時は嘲笑われたり、「古典作品の焼き直し」とこき下ろされたりしましたが、現実がアトウッドの作品に近くなってくると、
「アトウッドは預言者だ」
と持ち上げられました。
そのいずれの状況にも、世評にも、アトウッドは一切コメントをしていません。
『侍女の物語』の受け止められ方以来、彼女は自分の作品を出したあとは、緘黙を貫いています。
でも、作品がすべてを語っている!
とんでもない予見力と、小説としてのおもしろさの構成力を、ぜひもっと多くの人に知っていただきたいと思っています!
Posted by ブクログ
キリスト教原理主義者によって設立された独裁国家「ギレアデ共和国」を舞台に、子供を産むことだけを強いられる女性「侍女」の過酷な運命を描いたディストピア小説。
希望(現実)と絶望(過去)の狭間で苦悶する心理描写が凄まじかった。特に、p.100のなんでもないホテルの一室を懐かしむシーンや、p.141「わたしは西洋梨の形をした中心物のまわりに凝結した雲にすぎない」という一文は、読んでいてとても辛かった。
自由が奪われても、愛があれば生きていける。でも、自由も愛も奪われてしまったら、なんのために人間は生きるのか。
100年以上後に学会で議論しているラストだが、この物語が後世に残ったということは、オブフレッドはギレアデ共和国から逃げ延びたのだと信じたい。
女性作家にしか描けない世界観と心理描写が圧巻だった。まだまだ男の自分は女性の全てを理解できてないし、これから努力しても完璧には理解することはできないだろうけど、リスペクトを忘れてはいけないと感じた。
まずは、現在妊娠中の妻に、日々の生活の中で最大限の尊敬と感謝を伝えたいと思った。
Posted by ブクログ
1985年に刊行されたこの物語の続編が、2019年、34年後に書かれた。
続編の「誓願」を読んでから、やっと感想を書く気になれた。この、絶望的な物語に対して、この一冊だけで何かを言うことができなかった。恐怖であることはもちろんだが、2025年の今、単なるディストピア小説の域を超えた現実味を帯びている。
「人種差別者の不安がギレアデの政権奪取の成功を許す感情的な支えのひとつになった」
あまりにも悲しく、みじめな「女」の独白。
クーデターによりうまれた独裁国家ギレアデの愚民政策により、女は名前を奪われて、書くこと、読むこと、学ぶこと、産む産まないの自由を奪われた。全てが変わってしまった世界で、正気を保とうとあらゆる空想を繰り返し、過去を想い、花を、鳥を、離れ離れになった家族を、放埒な性を、思いつく限りの能動的な「生」を想い、抗おうとする様子がとてつもなく…悲しいのだ。
そして、そうなってしまった世界に対して「仕方ない。」と思う。仕方ないと、思ってしまった。とまた思う。
考えないことを選択することで苦痛から解放されようともする。みじめな姿にまた苦しくなる。
書くことを、名前を奪われたオブフレッド(フレッドという男性のもの、の意味)が、声で残した痛々しいまでの「レジスタンス」の跡である。
Posted by ブクログ
「自由」について考えさせられる話。
自分に「見る自由」があるなら、「見られる自由」もあってしまうということ。好き勝手する・される「自由」から解放して、ほんとうの「自由」を得たつもりになった社会。
男性が女性に「よかれ」と思って、「女性として生きる喜び」を堪能させる社会。
現実社会もかすかに似た価値観になりつつある気がする。
Posted by ブクログ
ディストピアだが、近いうちに現実に起こり得ないとも思えない。
前半は世界観の説明が多く、かなり単調で読むのに時間がかかったが、後半に物語が動き出した!と感じてからはサクサク読めた。
日本では少子化が問題と考えられているが、(あえて「考えられている」という。)少子化対策が極まればこういうことになるのではないかと思ってしまう。
女性の自由を奪うために、仕事と金をまず奪うというのは恐ろしい。
やろうと思えば簡単にできてしまいそうで。
そして、仕事と金を奪われた彼女に対し、ルークが支配的な、安堵のようなものを感じているように思われて恐ろしい。
簡単に、守られるべきもの、裏を返せば支配を受け入れざるを得ないものとされてしまう。
しかし、人口を増やすための仕組みとしてはあまりに合理的だ。
男が原因の不妊は存在しないとしていることを除けば。
この世界で救われることといえば、レイプをしたものが即ボコボコにされることくらいだ。
母体保護が重要という一貫性がある。
Posted by ブクログ
女性が管理され、地位ある人の子を産むための道具にされるディストピア小説。
「この世界はいったいどうなっているの?」というこの世界線の事が少しずつ見えそうで見えない。
この物語を読んでいる最中は、とても疑心暗鬼になる。
長い小説なのだが、その間に明かされることがとても少ないように感じる。
これは『誓願』を読まなくてはいけない。
Posted by ブクログ
アメリカでクーデターが起きた世界で、支配者たちの子どもを生むために集められた侍女が語る物語。
ディストピア小説とされるが、支配者から見るとユートピア小説か。
段々とその世界が明かされていく手法と世界観は、どことなく「ザ•ロード」を思い出した。
これで終わり?と思わされてからの最後の章には驚かされた。
Posted by ブクログ
女性が子を出産するための国家資産として管理されるディストピア小説。フェミニズム小説として名高いようだが、本書を読む限り、それは小説を形作る一要素として利用しているだけではないかと思われる。執筆時の国際情勢を鑑みるに、むしろソ連の強権政治やルーマニアの出生政策からの影響のほうが大きく見える。
ただ、それすらも物語を盛り上げるためのパーツでしかない。著者は、世のなかが評するほどのメッセージ性は込めていないと思う。それは映画版へのラブロマンス的なドラマへの改変をかんたんに了承したことからも窺える。
本書はどうやら政治的なイシューに関連して語られることが多いようだ。それはそれでよいとして、重要なことはそのような語りを生み出すような複雑なテーマを、大衆性、エンタメ性をふんだんにまぶして作り上げたところだろう。
主人公の女性は、過去に思いを馳せるばかりで特に何も行動はしない。ひたすら受動的である。文庫版の裏面にあるあらすじでは、ディストピアからの脱出を匂わせる文章になっているが、特になにもしない。いちおう最後には脱出するのだが、それも自ら動いたわけでもないし、ハッピーエンドかバッドエンドなのかさえわからない。500ページくらいかけて、ぶつぶつ言っているだけである。
だけど、それをすらすらとおもしろく読めるような作品にしてしまった作者の胆力は凄まじいものがある。一気に読んでしまった。
Posted by ブクログ
正直、半分読むまでなかなか入り込めなかった。
ディストピア小説といっていいのか?こういった架空の近未来小説といえば、完全に現世とかけ離れた「理想の」世界におけるちょっと異質な主人公が、その世界の「常識」を疑い、一石投じる、といった展開が多いが、抗っているというよりも、流れに身を任せているような。それから、過渡期を扱っているのはあまり読んだことがないかもしれない。
特定の子宮が国家の所有物となった世界の中。好きとか嫌いとか許す許さない認める認めないじゃないんだな。無機質な世界の中では、暇を持て余す夜よりも愛人契約の方がマシってことか。
最後の最後に、ああやっぱり自分がこの本を手に取ったのは、ディストピア小説を読みたかったからで、自分はディストピア小説が好きなんだなって思えた。
「太陽は無料であり、まだそれを楽しむ習慣は残っているのだ。」
紛れもなくだった。
解説を読んで補完された。
そういえばディストピア小説で女性主人公って初めて読んだかもと思ったのと、主人公が受け身なのが気になっていたんだなって気づく。そして名前を奪われる仕掛け。戦慄。女性に主体性を認めない、フェミニストが聞きつけたら現代の焚書坑儒が起こりそうな内容。
Posted by ブクログ
これは…!面白い。
典型的ディストピアな世界観が秀逸。
なかなか暗い世界なんだけど、淡々とした語り口なのでさほど重苦しくない。絶妙。
リンチや処刑もあるんだけど、なんか大丈夫。耐えれる。
Posted by ブクログ
すごかった。王道のディストピア小説で、重くて後味最悪なはずなんだけど、小説の構成とか構造も捻りがあって、そういう意味での面白さがある。
原文の英語で読んだらもっと細かいニュアンスが汲み取れるだろうなっていう箇所がたくさんあって、それが歯痒くもあった。
ギレアデ共和国の仔細は小出しにされていて最後まで読んでようやく少し理解できる(それでも謎が多い)程度だし、小説の構成は過去と現代を行ったり来たりしたり、現実なのか主人公の思索なのか妄想なのか判然としない部分も多くて読み進めるのに骨が折れるわりにスルスルと読めてしまう不思議。
それにしても、出生率が激減した社会で女性がまさしく「産む機械」化されるという設定、いよいよ架空のものでは無くなってきている薄寒さを感じて他人事とは思えないが、これがすでに1980年代に書かれているという…
小説の最後の研究者のシンポジウムのくだり、過去のこうした共和国の成り立ち、手法は繰り返し使われているっていうのに一番戦慄した。歴史は繰り返す…否、繰り返されないように社会を注視していかねばと強く思う。
Posted by ブクログ
100分で名著を見る前に先取りしてみた
ディストピア小説
「すばらしい新世界」、「1984年」と同様
21世紀のはじめを想定していると思われる
ある日突然政府が倒され、独裁神権国家が誕生
さまざまな汚染によって正常な妊娠、出産、人が育つことが難しくなったことへの危機感、さらに宗教上の理念に戻った対策をするために
女性は自由を奪われ、
正常な出産を経験している女性は特に
子供を産むための道具とされる
そんな待女、妊娠を待つ女が語る物語
なにそれ!と思うような方法で行われる儀式
それらは宗教上必要な方法のようだ
少子化、自然災害、大気汚染
宗教がらみの争い、いまだなくならない戦争
今も何が起こるかわからない世の中に
暮らしている我々にとって
人ごとではない物語かもしれない
「夜」という章が頻繁に出てくる
待女、あるいは全ての女性にとっての象徴
であるかのように‥いや、女性に限らず、全ての
人にとっての闇がそこにあるかのように
『夜の闇が舞い降りて来る。どうして夜の闇は、日の出のように昇ると言わないで舞い降りるというのだろう?‥‥おそらく夜の闇を舞い降りると言うのは、それが目の前を覆う重く分厚いカーテンだからだろう。ウールの毛布‥‥夜が石のように肩に重くのしかかるのが感じられる』
Posted by ブクログ
フェミニズムが退潮した2100年の宗教権威主義国家アメリカを描く小説。女性の自由が侵害され、奴隷的に扱われている未来が悪いことは非常に良く描かれているが、ある日突然政府が抑圧的に変わった、という描き方は少々都合が良いのでは?と昨今のバックラッシュ風潮を見て思う。まあそれは別の小説が語ればいい話ではあるけども
北米の小説ってスクラブル好きだよね
Posted by ブクログ
初めてディストピア作品を読んだ。この本は1980年代に描かれたものなのに、今の世界にも通じる内容が多く印象的だった。英語版を先に読んだが、より直接的な表現が目立ち、読者に強い緊張感や生々しさを感じさせる部分が日本語版よりも多いと思った。全体的に重いテーマだけど、現代にも通じるメッセージ性の強い作品だと思う。読み進めるうちに考えさせられることが多かった。読みやすくは無かったけど、読み終わった後には深い余韻が残る一冊でした。
Posted by ブクログ
ありえない世界の話とは言い切れない怖さ。
次々と思考がかわったり唐突に終わったりするところがリアル。
後の世界の対談がまた深みがあって面白い。
Posted by ブクログ
夫と幼い娘とアメリカで暮らしていた主人公は、クーデターを境に自由を失い、子どもを産むための道具として身分の高い既婚者男性の家に派遣された。社会は一変し、女性は男性の所有物とされ、逆らう者は粛清される。かつての生活の記憶を支えにしながら、主人公は日々を生き抜いていた。性とは、自由とは、社会とは何かを考えさせられるディストピア小説。
Posted by ブクログ
女性ディストピア小説。全体的に説明が不足していて分かりづらい事と、最後まで目立った展開が無いので、読み進めるのがやや辛い本書。続編が出ており、そちらは読みやすいとの評価も多く、トライしてみる。
Posted by ブクログ
胸が悪くなるディストピア。
じわじわ迫ってくる異変が恐ろしかった。
最初は監視の目が増え、徐々に仕事や財産を奪われ、気付いたときにはもう後戻りできず強制連行、一家離散。
自分も割とそういうところがあるけど、「何者かになりたくてもがき苦しんでいる」ような人にとっては、こんなディストピアでさえもしかしたら、救いや役割として機能する可能性もあるんじゃないだろうか。
昨今の社会の余裕のなさや殺伐感は、全体主義を活性化する土壌のようなのものに見え、その恐ろしさが倍増した。
Posted by ブクログ
ディストピア小説っていうのか、こういうの。
ユートピアの反対語で反理想郷(暗黒世界)。
出産率が危機的に低下し(バースコントロールによって)すべての女性から仕事と財産を奪い、妊娠可能な女性をエリート層(司令官)の男性の家に派遣される。
ひたすら妊娠を待つ女で”侍女”。
期間が決まっていてその兆候がなければ”コロニー”というとこに送られ危険な仕事を強いられ死を待つ身になる末路が待ってる。
恐ろしい世界だった。最後は”目”のメンバーとして潜んで司令官の運転手をしていたニックによって逃げおおせたのか捕らえられて処刑されたのかはあいまいにされている。
オブフレッド(名前も一郎ののような所有物のように変えさせられてる)は国境を越えたと信じたい。
落合恵子さんがあとがきの解説だったのは嬉しかった。
Huluでドラマ化されてるらしい。
この内容をドラマ化?観てみたい。