【感想・ネタバレ】侍女の物語のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

内容は難解で、読んでも読んでも読んでる気分にならない。

難解とはいえ、哲学的な難解さではない。
物語が過去と現在を行き来して語られるので、時間の位置の把握。独特の世界観の把握で、思考が持っていかれる。
時間が行き来していても『そうだと分かる』のならば、まだ読みやすいけど、この物語はなんだかよく分からないけど唐突に過去に引き戻されている。そして、いつの間にか戻ってきている。
境目がはっきりしてないので、過去だと思って読み続けていると現在になっていたり、現在だと思って読んでいると過去になったりする。

さらに世界観は一つ一つ説明されるわけではない。
何だかわからない『侍女』という役割の人物。『妻』に『女中』『小母』そして、得体のしれない『コロニー』
私は『100分deフェミニズム』を見て、この本を読もうと思ったのである程度は知識得てから読んだが、分からない部分が多かった。

これを知識なく読もうとしたときには、さらに労力がかかるんだろうな……と思う。



物語は『この世界には老女はいない』という事になっている。おそらく『小母』たちは老女だろうけど、彼女たちは教師のような立場の人間という設定で少数だろうと思う。

『女中』は館やそれなりの地位の人の身の回りや家事などを担っている……らしい。この部類にも老婆と言われるような年齢層が居そうではあるが、彼女たちは『買い物をしに街に出る』事はない。また、身体を壊せばすぐにコロニーに送られる立場である。

買い物は『侍女』の役割になっている。
では『侍女』は何かと言えば、『地位の高い人間の為に子供を産む女』であり、他の女たちから好かれる立場ではない。公的な妾のようなもの。

『妻』はそのまま妻という意味。『娘』もまた同じく。

『コロニー』とは、食事も与えられるか分からない劣悪環境で、長く生きる事はない場所。


物語は『侍女の物語』の名の通り、『侍女』が主人公。
侍女の『オブフレッド(フレッドのもの)』の視点で物語が語られる。


ざっくりあらすじ……と思ったが、本の物語通りはなくて時系列で書いてみる。

主人公はある日唐突に、クレジットカードが使えなくなり、会社からクビを宣告される。友人のモイラから社会が変わりつつあり、『女だけ』が資産を凍結され女の資産が身近な男に行くことを知る。主人公の場合は夫のルークへと移る。このことに主人公は憤りを感じるがルークは大したことがないように感じている。
主人公たちは国を出る事を計画するが、それに失敗して捕まる。
夫は草むらで別れたまま行方が分からず、娘とは引き離されて、主人公は『赤いセンター』へと送られる。
モイラとそこで再び出会う。モイラは二度めの脱走でそこから抜け出す。

『赤いセンター』での教育が終わり、侍女として派遣される。三つ目で司令官の家に派遣され『オブフレッド』という名が与えられ、そこでの生活が始まる。
毎日、散歩に行きパートナーの『オブグレン』と買い物をする。買い物は『交換できる品物が描かれたトークン』と引き換えで行われる。
看板も絵で描かれていて、女たちは文字を読む事を禁止されている。
月に一度医者に連れていかれ検査を受ける事になっている。医者は『(自分と子供を作って)ここから抜け出させてやる』と誘う。オブフレッドは、それを断る。
儀式と言われる司令官との性行為には、妻も参加する。出産もその地域の侍女たちが集まり、声をかけ、立ち会う。生まれた子供はその家の妻の手に渡される。

司令官に呼び出しを受け、妻には内緒で会う事になる。主人公と司令官は内緒で会ってゲームをする。散歩のパートナーである『オブグレン』とも本物の信者ではない会話をするようになる。
妻から他の男との間に子供を作る事を勧められる。侍女は三度目までに子供が出来なければセンター行きで、オブフレッドには後がなかった。主人公は男の使用人のニックを指名して、これを受ける。
司令官が夜に主人公を家の外に連れ出す。そこは『悪女たちの店』と呼ばれる場所で、そこでモイラに再び会う。そこは、海外向けの娼館のような場所で、外では禁止されている酒もたばこも女たちには許されていた。モイラにはそれ以降会っていない。

救済の儀で、オブグレンが仲間を救うために目立つ行動をして、迎えが来たために首をくくる。主人公は自分も迎えが来るのではと怯えるが、その前に妻に司令官との夜の外出がバレて叱責される。やがて迎えが来て、ニックが『これは自分(反逆者)たちの仲間だ』と説明をし、主人公はその車に連れていかれる。

最後にこれが『録音テープ』であることが書かれている。オブフレッドの時間より未来設定で『この時代に何があったのか研究するシンポジウムの議事録』という形でそれは示されている。ここで、名前がないのは『身分を明かして捕まる危険を避けるため』という事が分かる。

物語の流れはこんな感じ。

訳者あとがきから読んだので、これが『受け身』の物語であることは分かっていた。そうでなければ、動かない主人公にイライラしていたかもしれない。主人公が動いたのは司令官に『ハンドローション』をねだる事ぐらい。
主人公は一切動かないが、物語は動いていく。そして、世界が変わっていく様子が書かれているが、主人公は不満を持ちつつも、それを受け入れていく。


上記は時系列で書いたが、『オブフレッド』の時間より前は、時間軸など無視して回想と言う形で書かれている。これが、読みづらい。それが『今より前の事』という事は分かるが、『赤いセンター』での出来事が書かれていたと思ったら、『家族といた時の事』が書かれていたり、『子供時代の事』が出てきたり……と時間軸がめちゃくちゃなのだ。

その断片を脳内で繋ぎ合わせ、『社会の変容』と『物語の時系列』を組み立てて読む……。読者にかなりの負荷がかかる物語。
翻訳も『トークン』は配給券に書き換え可能のような気がするが、英語のままである。他の訳もカタカナにしてあるものはあるが、音を重視してるせいなのか一瞬意味を受け取り損ねるものがいくつかあった。
他にも『壁の落書きの文字』と言うものが出てくるが、これが英文(?)のままで、正直、一切読めない。意味も掴めない。この辺りは注釈ぐらい欲しいと思ってしまった。
後から、司令官が説明するシーンがあるけど、これが『ジョークですよ』と書かれているジョークの雰囲気がつかめない。どんな背景でこの文面が『ジョーク』なのかという説明がないので、主人公と同じくポカーンとしてしまう。おそらく文化的背景が分からなければ、分からないものなのだろうけど、なぜその言葉が性的なモノになるのかが分からない。


物語の雰囲気は掴めるけれど、なんというか……細部がつかめない。
ただでさえ、読者置き去りの物語の構造なのに、さらに言語の壁を感じる。

他にも『事実だ』と思って読み進めると『こうだったらいいのに』という願望にすり替わっていたりする。

ただ、それら全てが『書く事』『読む事』『飾る事』などのやるべきこと、できる事がないゆえに『頭で妄想する時間しかなかった』という事なのかもしれない。そう思うとこの『妄想』や『回顧』すらこの社会の侍女の扱いの酷さを物語る一部になる。

細部は外して説明をしたけど、女性たちは『仲良くなったり』『会話をしたり』することも基本的に禁じられている。禁じられても、そんなものが守れるわけがないので、徐々に交流したり内緒で会話をしたりしている。
トイレに行く時間を合わせてトイレで話すというシーンもある。刑務所のような日常なのに、主人公は『コロニー(と言う名の収容所)』に行くよりはマシだと考える。
でも、これ、あるあるなのだろうなと。徐々に物事が変わっていくと『そういうものなのかな』という正常バイアスが働くし、『逆らえば死が待っている』と思えば逆らう事もしなくなる。
壁に吊るされる死体が『死』を身近にさせ、主人公の受け身に説得力を持たせる。

『救済の儀』は公開処刑。これが性別で分けてあるのは、『同じ性別』という事でより身近に感じさせるためではないかと思う。この救済の儀でオブグレンの仲間が侍女の一人をレイプしたという事で引き出されて、侍女たちの手で暴力を与えるシーンがある。オブグレンは真っ先に飛び込んで、彼を気絶させたことで『仲間』であることがバレる。
しかし、そのほかの侍女たちは殺気だって彼に暴力を加える。暴力を与えなければ、信者ではないとみなされて自分たちが処刑される身になるという恐怖もあるかもしれないが、これは娯楽のない彼女たちにとって娯楽にもなっているのだと思う。
暴力は甘美な娯楽になり得る。という事が、ここで描かれているのもゾッとする。

だが、従順であればそれでいいのかと言えば、侍女たちにもタイムリミットがあって『派遣先三人目までに子供が出来ないとコロニー行き』
派遣期間が分からないが、一年ぐらいだろうか。つまり、侍女の寿命は三年。派遣期間が二年としても六年が侍女のタイムリミットで、その間に子供が出来ればそれなりの生活が約束されている。ただし、派遣先の司令官や高官は『高齢の男性』が多いらしいので子供ができる確率はそれほど高くはない。つまり、侍女もそれほどいい身分ではない。

ゾッとするが、その『ゾッとする』の中にはひたひたと現実にもある一部が反映されてるから。侍女はいないが、『子供を産む重圧』がない社会になっているとはいいがたい。
『若年女性の地方流出』がニュースになるような社会に私はいるのだから。

行動の制限、学習の制限、交流の制限。女性たちの置かれている状況が『ここまで酷くないけど』の言葉を置いて、この物語が描かれている気がする。
オブフレッドではないが『今(現実)はまだ(物語より)マシだけど』と思いながら読んでしまう時点で本当に『マシ』なのだろうか……と考えてしまう。



読んでよかった。

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2024年03月09日

Posted by ブクログ

驚くべきおもしろさ。

『侍女の物語』読んだ。
徹底して主人公オブフレッドの視点で描かれるので、国がどうなっているのかとか、他国は、世界はどうなっているのかということがまるでわからない。というか家の外のことがもうわからない。読者も主人公と同じ情報しか持っていないので、読んでいて極めて不自由で息苦しい家に閉じ込められた感覚になる。だからこそそんな生活の中でそれでもいくつかの微かな光をつかみそうになる描写がめちゃめちゃスリリングに感じる。
去年続編が出たということでそっちも読みたいんだが、その前に読みたい課題図書がいくつかあるので続編はいずれまた。

巻末の落合恵子の解説が野暮すぎて、あれさえなければと思った。

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

その国では、女たちには知識を求める権利さえない。
これは一人の侍女が語る過去の話だったかもしれないけれど、私たちの未来の話にも思えてしまってゾッとした。現実に子どもの数が減っているのだから、あり得ない話ではないのだ。政府の非常事態宣言からバタバタと全てを奪われていく流れが本当に恐ろしかった。
ゾッとしているのにも関わらず、侍女の物語のなかに人間同士の親密さが見え隠れするのには興味をそそられた。先生や親に隠れて規則を破ったり悪いことをする時の、思い切った気持ちなんかがそれに近いのかもしれない。物語ではアイコンタクトでさえ危険で、そんな些細な行為そのものが大変な問題に繋がるわけだが。
女の国だけれど女が征服されている、保護と監視と支配のバランスが絶妙に描かれていた。これらは鉄壁に思えたのに、刻一刻と状況が変わるのが面白いポイント。
人と親密になり相手の弱みを握っていく過程、ちょっとした言葉選びで気づく変化が面白かった。緊張感のある人間関係はヒリヒリするけれど、その分面白いのだ。特に女同士で悪い秘密を共有する時の雰囲気、これがたまらない。
人間扱いされていない資源である彼女たちに、人間らしさや願いのようなものがまだ消えずに残っていて、それは希望だけれど同時に苦しみでもある。

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2024年01月18日

Posted by ブクログ

背面の読まずに読んだので完全に手探り状態で読み進めていた。けどこちらの読み方の方が楽しかったなと思う。人によるだろうけど。

実際の好き度は4.5なので5にするか悩んだけど4よりは好きだなと思ったから5にした。

とても好きな表現が多かったが、この作品に好きな表現が多いということが良いことなのかはわからない。

自分は確かにこの小説の世界に住んでいないはずなのに完全に自分だと思う表現もあって人類に思いを馳せてしまった。

『誓願』の文庫化をまって2冊一気に買って読み始めたものの。これはカナダに住んでた時代かアメリカ旅行中にでも読めば良かったなと今更少しの後悔。これを読んでオタワとかトロント大学とか見てたらもう少し違う視点で景色を見ていたかもしれない。今は記憶を蘇らせることしかできないけど。

名を奪われ別の名前を与えられるという設定がどうしても救いの見出せない『千と千尋』だ〜となってしまった。

『誓願』も読むの楽しみ。

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2023年10月13日

Posted by ブクログ

面白かったし、恐ろしかった。このディストピアは完了した過去でも近未来でもなく進行形の現在でしかない。
ドラマ版S1を観てからの、副読本として『100分de名著 フェミニズム』とともに読み進めた。社会において女性として生きる身としては、このディストピアは完了した過去でも近未来でもなく進行形の現在でしかない。
フェミニズムを学び、ホモソーシャルな男社会と女のそれとは違う、私たちは連帯できる、と読もうとした上で見せられる「女を、それより更に上の地位と権力が与えられた女(小母)によって管理・支配する」という徹底的にグロテスクな構造。恋もひと握りの熱も存在しない、無機質な性描写。なのに、全篇にわたって存在し続ける不穏でスリリングな熱、空気感。
この本を読んだ様々な立場や経験のある女性の意見を聞いてみたい。きっとそれまでに経験してきた「女としての人生」の数だけ感じ方はあるだろうけど、根本的なところで芽生える「コレを私は知っている」という悍ましい共感覚は一緒だと思う。

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2023年10月12日

Posted by ブクログ

国会で虐殺が起き、大統領が殺される。非常事態宣言がされ、不安な、情報のない状態が続き、社会がいつの間にか宗教の原理主義者たちによって運営されている。
女性は財産を持たず、出産か家事労働のために存在する。男性は一部の権力者以外は下男。
主人公の女性の絶望が息苦しい。
近未来のディストピア小説となっているが、イスラム原理主義となっているイランや、アフガニスタンはこんな感じなのではないだろうか。
この物語のような世界で、今現実に生きている人がいるのだろうと気がつくと、物語は現実感が増して、グロテスクで恐ろしく感じられる。
近未来の話というより、過去あるいは今現在の話なのではないかと思う。
出版年は1985年。約40年前。40年前にこの作者は世界をどんなふうに見ていたのか。この作者の目で世界を見たら、なかなか怖いものが見える気がした。

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2023年09月30日

Posted by ブクログ

 放射能汚染と感染症で出生率が極端に低下した近未来。アメリカ合衆国でクーデターが起こり、キリスト教原理主義国家のギレアデ共和国が建国される。高級官僚「司令官」の家に赴任してきた主人公の「侍女」オブフレッドの一人称で語られるのは、処刑と監視と密告が横行し、女性から名称と財産を取り上げ身分に分けて行動を極端に制限する、中世ヨーロッパにナチスとISを足したような強烈なディストピア世界である。読者はオブフレッドの語りを通してギレアデ共和国のおぞましさを追体験する。
 それはほぼ恐怖体験で、かつてない程息苦しくページの進まない、辛い読書時間だった。その分本書が発しているメッセージは強靭で、発表から40年経った現在でも世界中で「女性の心身の決定権は女性本人にある」という当たり前のことがあらゆる形で阻害されているのを鑑みれば、決して色褪せることのない名作である。

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2023年09月28日

Posted by ブクログ

圧巻。圧倒。底なしの不安と不信が。
巻末の著者による「注釈」(皮肉が効いている)も含めて、見事に構成されている。

これまでのフェミニズムの視点(全体主義研究も踏まえられた視点)から呈されてきた疑問が数多く埋め込まれている。明確な答えはないが、読むものの心を深く抉る。これが物語の力か。

巻末の解説は物語を矮小化してるように思えて、残念だ。

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2023年08月15日

Posted by ブクログ

ひゃーむちゃくちゃ面白かったー…
NHKの100分de名著の特別版、フェミニズム特集で取り上げられていて面白そうだと思った一冊。
買った時はその分厚さに途中で脱落する系の本だ、これ絶対…と思ったけど、最後はその厚さがどんどんと残り少なくなっていくのに肝心なところに辿り着いていないような気がして大丈夫なの、ねえこれちゃんとわかるところまでいくの?とページをめくる手が止まらなかった。
そして結局、この本は辿り着かなかった。なに一つ、分からなかった。なんなのだろう、この本の中で私が出会った感情は、どれも身に覚えがあるような気がするのに、私は彼女たちとは違う立場にいる。
こんなひどくないと思いたいけど、じゃあ結局なにがいちばんいいというのだろう。

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2023年02月06日

Posted by ブクログ

性役割や婚姻、出産、娯楽までもが全て国家と宗教に統治されることの恐怖を描きながら、それらを、文字を奪われ語ることを禁じられた侍女によって綴させる秀逸さに脱帽。文学には伝える力、残す力、そして逃避の力など無数の可能性を持ち合わせていることを証明している。

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2023年01月30日

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ネタバレ

ある日突然今まで当たり前に持っていた権利を取り上げられて、どんどん人からモノへと扱われていく描写が怖すぎた。
そしてなんだか近い未来起こりそうな気がして余計に怖くなった。

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2022年12月11日

Posted by ブクログ

’85年発表、好評であった。2017年にテレビドラマ化され34年ぶりに続編も書かれた/近未来のディストピア小説であると同時に、20世紀前半までの西欧社会やイスラミックステートが“それほど現在のコンセンサスとかけ離れているか?”=フェミニズム運動は成功に近づいているか?が問われる。
ここで描写されるのは生殖医学を放棄し、神政で“女を産む機械”とみなす体制。修道女組織が支える
語りては「赤」で象徴される「侍女」
語り手はどうなったのか、作者は34年前には考えてなかったと思う。続編が出た以上、救いはあるのだろうが、まずは絶望を噛みしめたい。

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2021年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読んだら嫌な気分になると聞いて読んだ。
確かにちょっと嫌な気分になった。
"目"と呼ばれる、密かに監視している人たちや、上流階級の"司令官"、彼らに仕える"保護者"や"女中"そして"侍女"などなど…未来の階級社会の話。

侍女は、司令官の子を産むためだけに仕え、そのためだけに生きている。

宗教の名の下に、厳しく監視され制限された孤独な生活が描かれるのだが、基本的な視点は主人公である侍女なので、一見するととても穏やかな日常に思われる。語り口がとても優しいのだ。
でも、それが却って物語の静かな恐ろしさを引き立てているのが、堪らなく良い。

主人公が生まれた時から、そういった世界だった訳ではなく、彼女だって元々は夫と娘と家族と生活し、自由に仕事をし…と言う生活を送っていたのだ。
孤独な生活の中で、その日々を忘れることは出来ない。
生まれた時からそうであれば、そんな辛い思いをせずに済んだのかも知れないなと思ったりもした。
元々ないものなら仕方ない(だって知ることもないのだから)けれど、元々あったものがなくなってしまうことほど、この世界に於いて耐え難いものはないだろう。


また、侍女たちは名前を奪われる。本来の自分の名前で呼ばれることはない。その代わり、別の名前で呼ばれるのだが、その意味に気付くとゾッとする。

一番最後の歴史的背景に関する注釈も含め、ぜひ読んでみて欲しい。

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2023年01月01日

Posted by ブクログ

性的な接触が禁じられ、女性が子を産むための道具とされた近未来社会を舞台にした物語。
主人公となる女性は世界がそのように変革を遂げる前の時代を経験した人物であるにも関わらず、疑問を感じながらも現代に適合している(と思われている)部分が妙に不気味である。
ディストピア小説の世界は、人間から感情や愛情、道徳性や時代の倫理観を根こそぎ奪い、効率性や安全性にのみ配慮した瞬間にユートピアに思えてくるところが恐ろしい。

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2022年08月31日

Posted by ブクログ

ある権力を維持するには、立場の弱い者から順番に「閉じ込めて、監視し、統制」していくのが常道だ。

弱い立場にさせられるのが女性の女性性、幼年男女、人種差別される男女、職業の貴賎、等々。その女性がターゲットになったデストピアの世界を描いたのが、この小説の主題。

読んでいて、むかむか吐き気が止まらなかった。
これは未来の世界ではないからと気が付く、今まさに現実だからだ。
フェミニスト的な立場としてだけではなく。

そして、唯々諾々としている自分がいるからだ。

書かれたのが1985年、今2023年。

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2023年10月18日

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衝撃を受けた。なんだこの絶望は。そしてラストのショックは。そして何よりも恐ろしいのは、起こりうるかもしれないと予感させる今があることだ。妄想の余地が残されているから余計に恐怖や絶望を煽る。

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2023年08月20日

Posted by ブクログ

100分名著ジェンダー回で紹介されてたので購入。確かに設定はすごいのですが、言い回しや回想の入り方が独特で引き込まれるにはもう一歩だったかな、。

性行為や出産シーンが強烈ですね。あんなおぞましい方法考えついた作者すごい。
あと女性を男性に帰属させる序章としてまず資産を凍結させる、というのがなるほどと。暴力より成人女性の心を砕く方法として有力と感じました。まさに専業主婦ってこれだなと。

ギレアテは架空の国、ということになってますが、世界的にはこれを地で行く国が出てきてる感じがほんと怖いですね。。昔の人が勝ち取ってきた権利を守らねばね。

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2023年08月14日

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マーガレット・アトウッドの代表作であり、アトウッドの名を知らしめたディストピアSFの傑作。
つい先日、オーウェルの『1984』を再読したばかりで、『1984』とのリンクも多く興味深かった。更に本作が書かれたのが1984年のベルリンだったというのだから面白い。発表当時、作品の評価は高かったが、こんな社会はありえないという見方が多かったようだ。
だがHulu製作で『ハンド・メイズ・テイル 侍女の物語』が製作されたり、トランプが大統領に就任してからのアメリカ社会の動き、また世界的なme tooムーブメントを含むフェミニズムの流行などから再評価される動きになったらしい。

自分はまさか1980年代の作品だと思っていなかったので、その背景を知って驚いた。
そして日本にいても、他人事には感じない時代性のある作品だと感じた。
どこかの議員が女性のことを「産む機械」発言をしたり、女性の賃金が男性と比べて低かったり、女性の社会進出を応援しますという企業広告に男性ばかり載っていたりと、『侍女の物語』に記されているような過酷な状況ではないにしても、未だに生きにくい女性の状況を考えると、『侍女の物語』は日本の延長線上にある社会にあるようにしか見えない。

「自分はこれまでの歴史上や現実社会に存在しなかったものは一つも書いたことがない」とマーガレット・アトウッドは語っている。
『侍女の物語』はまさに今現在、日本で世界で起きている状況を語っていると読んでいて思ってしまった。

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2023年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

参加している読書会 課題図書
とても有名な作品なのに何も知らずに読み始め
ギョッギョとなる
デストピア 
ありえないと思いつつ、そこここに現実味を帯びさせている著者のすごさ
なるほど!とは思いつつ、気分が悪くなり何度も中断する

宗教勢力に牛耳られ、女性は名前もなくし、財産もない。
着るものも定められ、視野も狭められる。
そして子供を産むことだけを要求される。
情景、心理描写が巧みで惹きつけられてしまう。嫌なんだけど

ラスト!
希望を見つけてもいいのだろうか。

≪ 絶望の 中から強く 望むもの ≫

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2022年11月19日

Posted by ブクログ

 2022年9月15日に購入して、翌16日に読み始め、9月26日に読み終える。文学カフェのため。

 内容をよく知らないまま読み始めたのだけど、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』とカズオ・イシグロの『私を離さないで』を合わせたような作品だなというのが最初の印象。決しておもしろくないわけではないのだけど、前半は物語の進行が緩慢だし舞台設定も小出しでどういう世界を描いているのかよくわからなかったので、正直、かったるいなという思いが小さくなかった。それでもそれなりには興味がひかれるし、決して読むのが苦痛というわけでもなかったので、ある意味不思議な小説だなと思う。

 いろいろなことを曖昧なまま不明なままにして読者に想像させる余地が多く残されているのは、読んでいるときや読み終えたあとに作品の背後の物語について想像して楽しむことができ、個人的には好みでよかった。

 そういえば、便利妻とは何だったのだろう。あと、朝食のオレンジジュースはガラスのコップで出されていたようだけど、自殺の防止を考えるなら、ガラスのコップは使わないだろうなと。司令官の部屋、イゼベルの店、あるいはニックの部屋に行けば、においですぐに誰かに気づかれるだろうなと思うのだけど、どうなんだろう。

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2022年09月26日

Posted by ブクログ

女性が社会から締め出された近未来の架空の国家を舞台に、一人の侍女の生き方を一人称で綴る小説。
性行為の描写が徹底的に非感情的で、機械的な行為に、これは生産工場ラインの一設備工程ではないか。徹底的に人権を剥奪していくと、最後は人間行為はライン工程に落ち着いてしまうのかも。

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2022年08月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読むべき本ではあったが、文体や話の展開が個人的に合わなかった。
一人称で延々と主人公が思ったことが語られるのはきついし、現在と過去が行ったりきたりでだるいし、話の展開も日常話(ではあるがヘドが出る)で退屈で、エンタメとしてのわかりやすい面白さは感じられなかった。
けれども、読むべき本であったし、また読み返すべきでもあり、忘れてはならない本であるという評価は変わらない。

ディストピア小説なのに、今と変わらないとかどんだけ。反吐が出る。
いちいち列挙しても暇がないくらいおぞましい世界だった。

最後の注釈もとい作中作の講演会の抜粋でも、このギレアデと変わらない価値観が続いていることがうかがえてため息ではなくヘドが出る。ゲロゲロ。
ギレアデという歴史を振り返っても、時が経ってもも変わらない。死にたくなる。

日常話ではあるが、ギレアデのディストピア社会について十分に表現されているので、そこは面白かった。変化の揺籃期にあるため、変化前と変化後について比較出来るのも面白かった。
大学を出て、特に強い思想が無い普通の女性がたどる運命を描いた作品。普通であるが故に受け入れたり反抗したりでリアリティーがあった。保身もしたいが自己表現もしたい。冷静になったり自棄になったり。
ニュートラルな立ち位置ではあったが、あまり共感は出来なかった。

好きなところ、好きな文章や言い回しはあるので、また読み返したいと思う。

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2022年06月13日

Posted by ブクログ

これぞ「読んでなかったの?」ですわよ!
続編を読むためにあわてて。なんと怖い…圧倒的映像美にヤラれる映画版より恐怖一層。侍女たちの置かれた境遇が、ではなく、私も保身と見せかけの平和のために嬉々としてこうなるであろうという確信を持ててしまうことが怖いのだ。

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2023年11月12日

Posted by ブクログ

すごく読みやすい作品ではないのに、なぜかページがどんどん進む不思議な感覚。
1986年発表の作品とは思えない世界観。
本編全部読んだ後の注釈がなんともにくい演出。ずっと追っていた私がどこかで幸せであるように願ってしまう。

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2023年05月12日

Posted by ブクログ

近未来、出生率の著しい低下のため、妊娠可能な女性は「侍女」として司令官宅に赴任する。夫・娘との生活の記憶、相互監視、死の儀式。

人類に子供が生まれなくなる、という未来の話だけれど、女性と子供については聖書にもあるくらい昔からの話でもある。

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2023年05月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【2023年40冊目】
すっごいディストピア小説だった……出生率の低さから、産みの道具される女たち。無機質無感動に行われる行為、そこから生まれた正常な命にだけ価値がある世界。

夫を、娘を、財産を奪われ、尊厳を踏みにじられ、それでも日々を生きる。最終的に彼女がどうなったのかは誰にもわからないけれど、彼女なりの強さを持ってきて生き抜いて欲しいと思わずにはいられない。

翻訳、かつ時系列や場面が結構ころころ変わるので大変ではありましたが、未来の暗黒な時代を垣間見るような一時でした。

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2023年03月17日

Posted by ブクログ

ディストピアで「侍女」として働くわたし。
段々状況が分かってくるところは面白いが、主人公はあんまり好きになれない。

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2023年03月10日

Posted by ブクログ

久々の海外長編小説。舞台は、クーデターによりキリスト教原理主義が支配する近未来の米国。少子化を食い止めるため、女性は分類され、仕事もせず、氏名もなく、子を産むための男性の付属物となる。抵抗勢力は死刑となり見せしめのために壁に吊るされる。反対する女性もいれば、諦める人、むしろ権力側に阿り、管理側に回る人もいる。なんともいえない無力感。1984と並び称されるディストピア小説ということで、十分楽しめた。

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2022年10月05日

Posted by ブクログ

どこに話が到着するのか気になりすぎて、読み進めていった。
終わり方が気になりすぎてしまい、もやもやは残る。

女性の人権がことごとく侵害されているなーと。一昔前の世界に迷い込んだようだった。
これぞ、ディストピア小説。

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2022年07月31日

Posted by ブクログ

なんとも憂鬱な設定だと思いながらもついつい先が気になり一気読みしてしまった。

息子を産んだ後に読んだからか、私がもしこの世界にいたら子供を取り上げられた時点で気が狂ってるだろうなと思った。

文中にしたいことをする自由とされたくないことをされない自由という表現があったけれど、
それはされたくないだろうことを誰か他の人が考えて、押し付けているだけで、全く自由ではないということがよくわかる。

女性が今まで持っていた家族、仕事、財産、生きがいなどを全てを奪って、子を作るという価値以外認められない世界は想像を絶するけれど、この不安定な世の中の様子を見ていると、まったく有り得ないということも言えなくてとても怖い。
自尊心を奪われて誰かの所有物になる生活を淡々と描いた作品でした。

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2022年04月13日

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