【感想・ネタバレ】侍女の物語のレビュー

あらすじ

【カナダ総督文学賞受賞】男性絶対優位の独裁体制が敷かれた近未来国家。出生率の激減により、支配階級の子供を産むための「侍女」たちは、自由と人間性を奪われた道具でしかない。侍女のオブフレッドは生き別れになった娘に会うため恋人と共に脱出しようとするが……。辛辣なシニシズムで描かれた戦慄の世界。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

設定そのものの特異さをひとまず置いといても、ひたひたと迫り来るような、気がふれそうになるぎりぎりの重苦しさのある文体で、やっぱり名のある文学はすごい、と思わせてくれる小説。SNSの文章をいくら読んでも得られないものが小説には確かにあることを思い出させてくれる。
緊急時の一時的な救済措置という名目で女性の財産を男性のものにする、という法案は現在の日本でも容易く通りそう…と思ってしまう。身の危険を顧みず反対する日本人男性…いるかな…。私だってある日突然こんな事態になったら反対の声なんて上げられないよ。
そして電子マネーなんていとも容易く使用不可能になりますね…。

解せなかったのは、
『彼女は教育のある女性だったようです。当時の北米の大学の卒業生を教育があると言えればの話ですが。(笑い、一部から不満の声)しかし、そんな女性はそれこそ森のなかの木ほどたくさんいるわけで、何の手掛かりにもなりません。」
の部分。コレって皮肉か何か?「女が」大学出たところで思考力なんか知れてるってこと??「当時の」大学はレベルが低かったってこと??

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2026年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

女性を「産む機械」として扱うディストピア社会。
戦争があったかして世界が荒廃しそのような社会となったようだが語り手は直接説明はしない。時々、思い出したように断片的に提示される情報から読者が推測するしかない。

オブフレッド、という語り手の名のおぞましさ。本名を名乗ることは許されず、「フレッドの所有物」と名付けられる。さしずめ日本なら「一郎の」というところか。出産できる性は貴重なはずなのに逆に社会のリソースとして管理される。徹底的に人間性を排除されて。

中盤まではだらだらした締まりのない語りにイラつきながら読んでいた。出産のための「儀式」あたりからドラマとして盛り上がりを見せたように思う。このシーンはグロい。人工授精でいいだろと思うが宗教国家のためあのような形式になるようだ。

終盤で語り手が語るとおり、この物語はある意味で不道徳だ。彼女は夫と子がいる身でありながら他の男に恋愛感情を抱き、抱かれに通う。この展開は、悪夢のような管理社会であっても感情までは制御できないという人間性の肯定だと受け取った。人は時に道を踏み外しても、誰かを愛したり求めずにはいられない。たとえ破滅が待っていても。哀れで愚かだが、だからこそ血の通った人間味を感じる。

本編のあとの注釈によってこの物語がなぜオブフレッドの語りだったのかが明らかにされる。ギレアデが崩壊し、自然環境が改善されていることも。しかしこの注釈は希望ではない。性的なジョーク、地下女性鉄道を地下脆弱鉄道と揶揄する──女性軽視の精神は未来においても継続している。暗澹たる結末。

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2026年08月29日

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様々な抑圧が次々と提示され、すべて女性側に押し付けられる。男性がこれを読んでいいのか、いや男性こそ読むべきなのか、揺さぶられながら読んだ。すごい。

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2026年08月16日

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おもしろかった!翻訳家の鴻巣友季子さんのオススメの海外文学の一つとして知った。もう少し堅苦しい純文学かと思いきや案外読みやすく、かつ、40年以上前に書かれたフェミニズム作品とは思えない、テーマの違和感のなさ。…40年も経ってるのに違和感がないなんて…どうかしてるね、この世界は。今読む価値のある作品だ

架空の世界を描くSFディストピア小説である。1980年代〜90年代に崩壊したアメリカ合衆国のあとにできたギレアド共和国。妊娠率や奇形率が高まり、出生率が異様に下がった世界線。

子供がなかなか生まれないため、ギレアド共和国では80年代を境に女は財産や名前を没収され、元の家族は奪われ、政府管理下に入った。出産能力のある者は侍女として司令官の家に派遣され妊娠に努める。出産能力がないもしくは反抗的な女は不完全女性として迫害される。そして、同性愛者やかつて中絶処置をしていた医師は処刑される。女は子宮としか見られていない世界だ。

主人公はまさにその「侍女」として、ある司令官の家に派遣される。正妻はいるものの高齢なため子どもは産めない。神聖なる儀式として、正妻の監視のもと、排卵期に侍女は司令官と交わる。侍女の日常に自由はない。街で見かける侍女仲間は妊婦に対して嫉妬し、妊娠に成功した侍女は膨らむ腹を見せびらかしてマウントを取る。

時折女は考える。かつての私の夫は、私の娘は、生きてるだろうか?あのころの自分の他愛もない日常、仕事、収入、すべては自由だったと。そして仕事や銀行口座を没収されたとき、夫はすぐに妻(自分)を夫の所有物として扱うようになったことを回想する。

面白いのは、これが、200年後のギレアド共和国崩壊後の学会で発表されている歴史の資料の発表だということがラストにわかること。そのメタ構造に、突然夢から覚めたようにハッとする。200年後は、どんな世界になっているのだろう。

この作品が出版された38年後の2023年に、なんと続編が出ている。読まねば。
ちなみに、Wikipediaをみると、こんな↓記述があるけどホント??去年??ちょっと怖いですね。
「…(中略)…また保守化を強めるアメリカ各州では本書を危険視する意見が強まり、2025年4月の時点で、全米32州の約5000校で閲覧禁止処分を受けていると報じられている。」

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2026年07月27日

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酸味の強い木苺のジャム。もしくはコンフィチュール。
構造と体制を書くのではなく、あくまでその世界の人間と感情を書いているせいか「侍女」の通る庭の草の匂いまで感じるような生々しさがある。穴だらけの彼女の主観で情報を集め状況を理解していくのは少し苦戦するけれど、その構成も意図したものであるというまとめが好み。最近のSFで何度か見た構成だがこれが元なのかもしれない。

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2026年05月05日

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ネタバレ

設定からして面白くて、情報の出し方も、何もかもが「面白い!」と呟きながら読む。最後の最後まで、とにかく、面白くて、考えさせられる。素晴らしい。

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2026年03月11日

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 アメリカに誕生した神権国家で、子を産む機械と化した女性「侍女」の物語。ディストピアだけど、人類史上起こらなかったことは書かれていないという。
 
 旧約聖書は今の価値観でみるとひどい内容だし、そいうえばキリスト教(旧約ならユダヤ教もかしら)の女性の扱いはこんなだったなと思い起こされた。キリスト教圏はよく「先進国」として、ここまで男女平等をすすめてきたと思う。笑われ、嫌がらせを受け、身の危険を顧みずたたかってくれた先輩たちに思いを馳せずにはいられなかった。

 財産を奪われ管理される侍女を主人公に、彼女が見聞きし、感じたことが記録されている。この主人公がなんとも弱く、ずるく、まるで自分を見ているようだったし、多くの読者はこのタイプだと思う。先人が血のにじむような思いで勝ち取った権利と自由を当たり前に享受し、奪われたところで驚き嘆き悲しみはするが、けっして戦わない。財産も夫も子どもも失い、管理されるがままである。
 主人公の母親や親友が戦っているのを傍観し、心配したり落胆したりするだけ。拷問をされたり、収容所に送られるのは耐えられない。侍女として産むということ以外は空気のように扱われるのに耐えられず、男の気を引こうとする。
 すごく身につまされた。私の母も昔ながらのフェミニストで男女雇用機会均等法のデモに参加していたし、バンカラで政治家を口汚くののしったりする人。あまりに品がないのに閉口し、注意することすらあったけど、すべてを奪われ、自分の代わりに怒って戦ってくれる人すらいなくなったら、心細くて母に会いたくてたまらなくなるだろうし、自分の狡さや弱さに打ちひしがれると思う。

 強くならねばと思った。

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2026年03月01日

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ひどいディストピアだなあと思いつつ、女性の辛さと合わせて、男性の大変さにも言及しているあたりがフェアというか、配慮が行き届いているなあと思った。司令官か男らしく振る舞うことはどれだけ気分が良いのか、というのと合わせて、どれだけ大変なのか、というのは
それにしても女性の立ち位置がひどいのだけど。ただ、女性に出産能力だけを求めるしかも、ほんの数年前までは現代的な社会だったように思われるだけに、急激な社会の変化が恐ろしい。

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2026年01月29日

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主人公の語りで物語が進んでいく。
世界観にあった淡々とした、無機質な、無感情な
文章でより不気味さが増している。
最後の解説パートがそれをより際立たせている。
著者の最高傑作といわれるだけはある重厚な長編であった。

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2025年12月08日

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ようやく読めた。
約1か月くらいかけてちょこちょこ読んだ。
でも薄まらなかった。
すごい世界観。
『誓願』も読みたい。

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

個人的に久しぶりの読書体験だったが、物語に引き込まれてあっという間に読み切ることが出来た。
ディストピア小説として分類されるらしいが、欧米での代理母を使って子供を持つセレブリティやゲイのカップルの存在を知ることが少なくないため、女性の身体を出産の商品としている現実とこの小説の世界は意外と遠くはないのではと感じた。
また聖書の言葉を勝手な解釈で自分たちの主張を強化する流れは既に現実の世界でも起きていそうだし、これからもっとありそうだなぁと思った。

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2025年11月07日

「侍女の物語」について

この物語は、ギレアデ政権の間、バンゴア市と呼ばれていた場所から発掘された、およそ30本のカセットテープに吹き込まれていたものを文章に起こしたものという設定。

語り手の女性は、出産を目的に集められた女性の第1陣のうちの1人。ギレアデ政権は、その後、様々な粛清と内乱を経て崩壊したようですが、まだまだその初期段階にあり、日々の監視が厳しく、違反者は容赦なく処刑されていた時代です。

各個人からその個性を奪い取るには、名前と言葉を取り去るのが効果的なのですね。
単なる出産する道具である侍女たちの名前は「オブ+主人の名」。

この物語を語っているのは「オブフレッド」と呼ばれる女性です。
侍女たちはくるぶしまで届く赤い衣装を纏い、顔の周りには白い翼のようなものが付けられて、周囲とは遮断されています。日々決められた通りに行動し、侍女同士での挨拶ややり取りも決められた通りの言葉。

もちろん私物と言えるようなものは一切ありませんし、自殺や逃亡に使えそうな道具は慎重に取り除かれています。
侍女たちにはもちろん自由もなく、その存在に人間性などこれっぽっちも求められていません。まさに「二本足を持った子宮」。

一見荒唐無稽な設定なのですが、しかし、よくよく考えて見れば、これは十分あり得る未来。それが恐ろしいです。
いつどこでこのようなことが起きてもおかしくありません。

この作品は1985年に書かれた作品なので、それから40年経ったことになるのですが、世界的な状況はますます悪化するばかり。
ここまで極端ではなくとも、ここに書かれた現実が近づいているような気がします。
既にどこかでこういった類の洗脳が行われているかもしれませんね。

それでも、子供や夫を奪われて「侍女」となった女性たちは、そうなる以前の暮らしを覚えているのです。
それに対して、次世代の「侍女」たちは、元々そのような自由な世界が存在していたなど知る由もなく、それがまた恐ろしいところです。

子供ができない夫婦にとって侍女はありがたいはずの存在なのですが、そこは人間。
人間の感情はそう簡単に割り切れるものではありません。
単なる行為に過ぎないとはいえ、主人の妻には嫉妬されることになりますし、水面下では様々な感情が入り乱れることになります。
その辺りも面白かったですね。

#深い #シュール

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2025年09月22日

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今を予兆する話。
でも予兆する話に人間はなんと騙されやすいことか。
でもそれは悪いことではない。騙されて傷つかないとわからないことが多いのだ

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

指輪物語並みに面白かった。。。
信じられないような規律で構成されている空想の国家だけど、あり得ない、あってはならないその規律は、女性が実際に経験してきていることの究極の形だなと感じた。
つまり、女性が財産を持てないと聞くとあり得んとなるけど、現実では例えば大きな財産である家を買う時に、慣例なのか夫名義で買うとかあるよね。そういった女性の能力の否定が当然とされている文化の中で感覚が麻痺していった先の国家をリアルに見せてもらったように思う。
また読む。

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2025年09月04日

Posted by ブクログ

これまでの日常が突如として奪われ、それに代わる非日常もいつしか日常へと移り変わっていく。そのような社会や、そのときを生きた人の想いが、物語形式によってものすごいリアリティをもって迫真的に描かれていた。

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2026年07月29日

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三宅香帆さんがYouTubeでオススメしていたディストピア小説。
ジャニーンの出産シーンと、〈救済の儀〉のシーンが特に印象的だった。
モイラのキャラクターが良い。
全体的に人間の描写が生き生きとしていて、設定も作り込まれていて面白いのだけど、若干長いのともっとハラハラした展開を期待していたので、☆4つ。

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2026年07月28日

Posted by ブクログ

旧約聖書に出て来る国名ギレアデ、と同じ国名での物語。出生率低下に危機感を覚えた政府が高学歴者の子孫を残そうと産める女性を囲い、その他の女性を排除する制作をしていたディストピアストーリー。実際に似たような制作が歴史的にもあったようだし、歴史とは、、、と深い闇におののく部分でもある。実際に残された事実が知りたいところ。

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2026年04月12日

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出生率が下がり出産できる女性が高官に割り当てられる社会。そこで侍女として子供を作る任務についている女性の一人称の語りで物語が進む。気持ち悪い世界だけど全部読んだ。結末がどうなるのか曖昧なのが不満。
規則に反すると密告される空気感が1984年とそっくりだと思った。

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2026年04月10日

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怖いわ〜アメリカ。「福音派」で取り上げられていて、居間の床に積んであったこちらも勢いで読んでみた。著者は本当に当時のアメリカキリスト教原理主義の台頭に恐れと怒りを抱いてこのディストピア小説を書いたんだろうな。中絶はダメ、帝王切開も麻酔もダメ。聖書に書かれていることその通りに従わせ、女性が自身の身体に関わる権利を全て踏みにじり、仕事に財産に娯楽に名前まで奪いとり、性被害や環境汚染から女性を守るという名目でただ生殖のための器として徹底管理する原理主義の男性指導者たち。女性や生殖が管理される世の中では男もまた女性と愛情を持って心身を交わすひとときを奪われる不幸も描かれる。同性愛、不具者、年寄り、反乱分子も全て排除。狂信的原理主義者に乗っ取られる社会。アメリカにおける中絶や同性愛をめぐる対立はおそらく決して解決することはないだろうけど、狂信者に立ち向かう良識と知性が失われないことを願う。主人公の女性は様々な試練や諦めや苦しみを経てなんとか生き延びて、ラストはその先の未来の人間が彼女が残した記録をもとにこの狂信的独裁社会を検証しているのが面白い。彼女は特に表立った反抗もせず、一見のらりくらりと厳しい局面をうまいことかわしながら生き抜いたようにみえるが、最後連れ去られたのか逃亡できたのかよくわからない彼女がその醜悪な社会の物語をどこかで紡いだおかげでその歴史が残り将来の反省や教訓となったのであればそれこそが彼女の勇気と抵抗だったのだ。過去、現在、未来、世界中どこにでも存在する狂信的独裁政治。狂信者に従うことを良しとせず反抗して殺されたり自殺した者も多い中で自由とは、正義とは、自分らしく生きて死ぬとはどういうことか考えさせらる。

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2026年03月13日

Posted by ブクログ

なにをもって、ひとりの人間が、ひとりの人間として尊重されている、と言い得るのだろうか。また、私たちはどのように接することで、他者をひとりの人間として、充分に尊重して、大切にできるのだろうか。
少なくとも、ひとりの人間として尊重される、ということは自由である、ということと関連している。ただし自由、とはなんだろうか。語り手の女性は、自身が望んでいるわけではない行為を通して、それが社会において禁止されていることであるからという理由で、それを行うことに自由を見出す。それはその社会においてつかみうる最大限の自由であるが、それ以前の社会においてはそのような行動をせざるを得ない状況を不自由であると呼んだだろう。自由の意味合いは、社会によって決められてしまっている。彼女がその自由を行使することで、彼女の尊厳は保たれ、また同時に踏みにじられている。
作中何回か小母などの口を通して「以前の社会では女性は蔑ろにされてきていた。自身の身体を商品的に売り込むことを強要されていたし、性的暴力の危険に常に晒されていた」といった話が語られる。ここで彼らが主張しているのは日本でよく使い回される陳腐な言い回しで言い換えるなら「自由であるということには責任が伴う」ということだ。彼らは暗に「主体として尊重されようとするから危険な目に合うのだ」と主張し、社会において主体として尊重されていないことの原因を彼女たちがそれを求めようとしたことに帰属させるような説明をもっともらしくする。端的に言えば「求めなければ奪われることもないのだ」と。これらの主張は明らかに間違っている。この小説のテーマでもあるかもしれない。「求めること」こそが人間の尊厳の本質だ。小母たちのような安全と尊厳が二者択一であるかのように見せかける詐欺師のレトリックに乗っかってはいけない。不自由な二者択一による暴力が繰り返し作中で語られるが、語り手自身はそれらの主張に対してなんらかの態度を示さない。私たちがそれらの暴力に抵抗するための言葉は、まだ未発達なのかもしれない。

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2026年02月27日

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読むのに、かなりの痛みを伴った。主人公が昔の自由だった頃を覚えているので、まるで私の身にもいずれ起こるのではないかと思えてしまって怖かった。司令官とのやりとりが始まってからは、物語が一気に進み、ハラハラした。

乱暴な言い方になるし、こういう考えは本当は嫌なんだけど、女性の武器は「産むこと」と「産まないこと」。だから、今少子化なんだよなと思う

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2026年01月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

キリスト教原理主義者によって設立された独裁国家「ギレアデ共和国」を舞台に、子供を産むことだけを強いられる女性「侍女」の過酷な運命を描いたディストピア小説。
希望(現実)と絶望(過去)の狭間で苦悶する心理描写が凄まじかった。特に、p.100のなんでもないホテルの一室を懐かしむシーンや、p.141「わたしは西洋梨の形をした中心物のまわりに凝結した雲にすぎない」という一文は、読んでいてとても辛かった。
自由が奪われても、愛があれば生きていける。でも、自由も愛も奪われてしまったら、なんのために人間は生きるのか。
100年以上後に学会で議論しているラストだが、この物語が後世に残ったということは、オブフレッドはギレアデ共和国から逃げ延びたのだと信じたい。

女性作家にしか描けない世界観と心理描写が圧巻だった。まだまだ男の自分は女性の全てを理解できてないし、これから努力しても完璧には理解することはできないだろうけど、リスペクトを忘れてはいけないと感じた。
まずは、現在妊娠中の妻に、日々の生活の中で最大限の尊敬と感謝を伝えたいと思った。

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2025年10月01日

Posted by ブクログ


1985年に刊行されたこの物語の続編が、2019年、34年後に書かれた。
続編の「誓願」を読んでから、やっと感想を書く気になれた。この、絶望的な物語に対して、この一冊だけで何かを言うことができなかった。恐怖であることはもちろんだが、2025年の今、単なるディストピア小説の域を超えた現実味を帯びている。

「人種差別者の不安がギレアデの政権奪取の成功を許す感情的な支えのひとつになった」

あまりにも悲しく、みじめな「女」の独白。

クーデターによりうまれた独裁国家ギレアデの愚民政策により、女は名前を奪われて、書くこと、読むこと、学ぶこと、産む産まないの自由を奪われた。全てが変わってしまった世界で、正気を保とうとあらゆる空想を繰り返し、過去を想い、花を、鳥を、離れ離れになった家族を、放埒な性を、思いつく限りの能動的な「生」を想い、抗おうとする様子がとてつもなく…悲しいのだ。
そして、そうなってしまった世界に対して「仕方ない。」と思う。仕方ないと、思ってしまった。とまた思う。

考えないことを選択することで苦痛から解放されようともする。みじめな姿にまた苦しくなる。
書くことを、名前を奪われたオブフレッド(フレッドという男性のもの、の意味)が、声で残した痛々しいまでの「レジスタンス」の跡である。

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

「自由」について考えさせられる話。
自分に「見る自由」があるなら、「見られる自由」もあってしまうということ。好き勝手する・される「自由」から解放して、ほんとうの「自由」を得たつもりになった社会。
男性が女性に「よかれ」と思って、「女性として生きる喜び」を堪能させる社会。
現実社会もかすかに似た価値観になりつつある気がする。

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2025年09月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ディストピアだが、近いうちに現実に起こり得ないとも思えない。
前半は世界観の説明が多く、かなり単調で読むのに時間がかかったが、後半に物語が動き出した!と感じてからはサクサク読めた。

日本では少子化が問題と考えられているが、(あえて「考えられている」という。)少子化対策が極まればこういうことになるのではないかと思ってしまう。

女性の自由を奪うために、仕事と金をまず奪うというのは恐ろしい。
やろうと思えば簡単にできてしまいそうで。
そして、仕事と金を奪われた彼女に対し、ルークが支配的な、安堵のようなものを感じているように思われて恐ろしい。
簡単に、守られるべきもの、裏を返せば支配を受け入れざるを得ないものとされてしまう。

しかし、人口を増やすための仕組みとしてはあまりに合理的だ。
男が原因の不妊は存在しないとしていることを除けば。

この世界で救われることといえば、レイプをしたものが即ボコボコにされることくらいだ。
母体保護が重要という一貫性がある。

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2025年09月12日

Posted by ブクログ

ディストピア小説だが、現実にも繋がる話  キリスト教原理主義がアメリカ合衆国大統領を暗殺し、議会を襲撃し、クーデターを起こす。

 主人公は一児の母である平凡な女性。クーデターをきっかけに人生が狂い、エリート男性の子種をもらい出産するのが役目の「侍女」という身分になる。

 キリスト教原理主義に限らず、イスラム教、儒教など女性を蔑視する宗教は様々ある。そして蔑視される女性側も、真っ向からそれに対抗する者、自分の居場所を作るために他の女性を抑圧し優位に立とうとする者、恐怖から体制に盲目的に従う者など様々だ。

 作者が描き出したこの物語の状況は、戦争のような大きな恐怖から、いじめのような身近な恐怖まで、あらゆるところに共通する。

 時間が行ったり来たりするので、振り回され読みづらいところもあったが、侍女の物語ワールドにどっぷり浸かってしまった。

 この物語を毀損している部分があった。それは落合恵子の解説だ。なぜ、彼女に解説を任せたのか。彼女の解説は単なる活動家の安い文章でしかない。筆者に対する冒涜でしかない。早川書房が落合を解説者に選んだのが残念だ。

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2026年01月18日

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こんな世界を作った人たちの正体が今ひとつわからない。謎は解き明かされないままで、少しもやっとする。でも、ディストピア世界の話なのに、どこかに現実世界を感じる。置かれた環境に違和感を覚えながら、何となく受け入れるってあるよねと思ったりする。そして、服装、行動を自由に選べるのって幸せなことだし、守るべきことだなと感じる。

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2026年08月20日

Posted by ブクログ

ディストピア小説が好きで、こちらもずっと気になっていたので。
結婚していて子供もいた女性がある日突然定められた法律により離れ離れになり、子供が埋める女性は「侍女」として子供を産むためだけに官僚とその夫人(子供が埋めない年齢)の家に遣わされる。3度子供を産むのに失敗してしまった場合や病気になった女性はコロニーと呼ばれる場所に連れていかれ労働を強いられる。さまざまな”娯楽”も禁じられ、”恋愛”という感情も排除される。そんな環境の中、元居た家族への思いや、今まで感じていた感情などとの葛藤がありながらもどうしても死んでいく感情などを緻密で儚い言葉で描いていて、胸が締め付けられるような感覚を覚えながらも物語の中にぐっと引きこまれました。

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2026年08月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

女性の性がテーマと聞いて、前から気になっていた。実際読んでみたら、怖い世界だった。色々と統制されて自由がないのはもちろん、体制に歯向かうと死が待ってる。そんな中で、監視の目に怯えながら、産むためだけに日々の生活を送る姿がグロテスクで、なかなか読み進めるのがしんどかった。この物語の主人公の女性が行き着く先がすごく気になるけど、物語の焦点はそこではないのだろう。最後の後世からの視点の分析を読んだとき、ここまで追いかけてきた1人の女性の悩みや苦しみが歴史から見れば「情報」であり、「研究の対象」であることになんだかぞっとしてしまった。
ディストピア小説、という言葉で括られる小説みたいだけど、私は主人公の女性に感情移入してしまったので、こんな世界で生きることの苦難が重く心にのしかかった。
心に残る話だけど重すぎてしんどい。

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2026年05月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

設定の細かさや独特な設定の面白さから、どうなるかワクワクして読み始めました。どう脱出するのだろう?どう覆るのだろう?と。
思った方向には話は進まずに少し物足りなさを感じました。

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2026年04月18日

Posted by ブクログ

面白さがわかってくるのは半分くらいから 一応前情報があって読み始めたからまだ良かったものの、正直最初は時間軸が前後するわ、話の文脈は見えないわでかなり読み進めるのが億劫だった。
ただ、半分くらいを過ぎてから俄然面白さが増し始め、読み終わる頃には世界観にどっぷりと浸ってしまった。
この小説が書かれたのが50年近く前ということを考えると、当時はセンセーショナル過ぎるほどだったのでは、と思う。

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2025年12月18日

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