あらすじ
【カナダ総督文学賞受賞】男性絶対優位の独裁体制が敷かれた近未来国家。出生率の激減により、支配階級の子供を産むための「侍女」たちは、自由と人間性を奪われた道具でしかない。侍女のオブフレッドは生き別れになった娘に会うため恋人と共に脱出しようとするが……。辛辣なシニシズムで描かれた戦慄の世界。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
キリスト教原理主義者によって設立された独裁国家「ギレアデ共和国」を舞台に、子供を産むことだけを強いられる女性「侍女」の過酷な運命を描いたディストピア小説。
希望(現実)と絶望(過去)の狭間で苦悶する心理描写が凄まじかった。特に、p.100のなんでもないホテルの一室を懐かしむシーンや、p.141「わたしは西洋梨の形をした中心物のまわりに凝結した雲にすぎない」という一文は、読んでいてとても辛かった。
自由が奪われても、愛があれば生きていける。でも、自由も愛も奪われてしまったら、なんのために人間は生きるのか。
100年以上後に学会で議論しているラストだが、この物語が後世に残ったということは、オブフレッドはギレアデ共和国から逃げ延びたのだと信じたい。
女性作家にしか描けない世界観と心理描写が圧巻だった。まだまだ男の自分は女性の全てを理解できてないし、これから努力しても完璧には理解することはできないだろうけど、リスペクトを忘れてはいけないと感じた。
まずは、現在妊娠中の妻に、日々の生活の中で最大限の尊敬と感謝を伝えたいと思った。
Posted by ブクログ
ディストピアだが、近いうちに現実に起こり得ないとも思えない。
前半は世界観の説明が多く、かなり単調で読むのに時間がかかったが、後半に物語が動き出した!と感じてからはサクサク読めた。
日本では少子化が問題と考えられているが、(あえて「考えられている」という。)少子化対策が極まればこういうことになるのではないかと思ってしまう。
女性の自由を奪うために、仕事と金をまず奪うというのは恐ろしい。
やろうと思えば簡単にできてしまいそうで。
そして、仕事と金を奪われた彼女に対し、ルークが支配的な、安堵のようなものを感じているように思われて恐ろしい。
簡単に、守られるべきもの、裏を返せば支配を受け入れざるを得ないものとされてしまう。
しかし、人口を増やすための仕組みとしてはあまりに合理的だ。
男が原因の不妊は存在しないとしていることを除けば。
この世界で救われることといえば、レイプをしたものが即ボコボコにされることくらいだ。
母体保護が重要という一貫性がある。
Posted by ブクログ
女性が子を出産するための国家資産として管理されるディストピア小説。フェミニズム小説として名高いようだが、本書を読む限り、それは小説を形作る一要素として利用しているだけではないかと思われる。執筆時の国際情勢を鑑みるに、むしろソ連の強権政治やルーマニアの出生政策からの影響のほうが大きく見える。
ただ、それすらも物語を盛り上げるためのパーツでしかない。著者は、世のなかが評するほどのメッセージ性は込めていないと思う。それは映画版へのラブロマンス的なドラマへの改変をかんたんに了承したことからも窺える。
本書はどうやら政治的なイシューに関連して語られることが多いようだ。それはそれでよいとして、重要なことはそのような語りを生み出すような複雑なテーマを、大衆性、エンタメ性をふんだんにまぶして作り上げたところだろう。
主人公の女性は、過去に思いを馳せるばかりで特に何も行動はしない。ひたすら受動的である。文庫版の裏面にあるあらすじでは、ディストピアからの脱出を匂わせる文章になっているが、特になにもしない。いちおう最後には脱出するのだが、それも自ら動いたわけでもないし、ハッピーエンドかバッドエンドなのかさえわからない。500ページくらいかけて、ぶつぶつ言っているだけである。
だけど、それをすらすらとおもしろく読めるような作品にしてしまった作者の胆力は凄まじいものがある。一気に読んでしまった。
Posted by ブクログ
すごかった。王道のディストピア小説で、重くて後味最悪なはずなんだけど、小説の構成とか構造も捻りがあって、そういう意味での面白さがある。
原文の英語で読んだらもっと細かいニュアンスが汲み取れるだろうなっていう箇所がたくさんあって、それが歯痒くもあった。
ギレアデ共和国の仔細は小出しにされていて最後まで読んでようやく少し理解できる(それでも謎が多い)程度だし、小説の構成は過去と現代を行ったり来たりしたり、現実なのか主人公の思索なのか妄想なのか判然としない部分も多くて読み進めるのに骨が折れるわりにスルスルと読めてしまう不思議。
それにしても、出生率が激減した社会で女性がまさしく「産む機械」化されるという設定、いよいよ架空のものでは無くなってきている薄寒さを感じて他人事とは思えないが、これがすでに1980年代に書かれているという…
小説の最後の研究者のシンポジウムのくだり、過去のこうした共和国の成り立ち、手法は繰り返し使われているっていうのに一番戦慄した。歴史は繰り返す…否、繰り返されないように社会を注視していかねばと強く思う。
Posted by ブクログ
100分で名著を見る前に先取りしてみた
ディストピア小説
「すばらしい新世界」、「1984年」と同様
21世紀のはじめを想定していると思われる
ある日突然政府が倒され、独裁神権国家が誕生
さまざまな汚染によって正常な妊娠、出産、人が育つことが難しくなったことへの危機感、さらに宗教上の理念に戻った対策をするために
女性は自由を奪われ、
正常な出産を経験している女性は特に
子供を産むための道具とされる
そんな待女、妊娠を待つ女が語る物語
なにそれ!と思うような方法で行われる儀式
それらは宗教上必要な方法のようだ
少子化、自然災害、大気汚染
宗教がらみの争い、いまだなくならない戦争
今も何が起こるかわからない世の中に
暮らしている我々にとって
人ごとではない物語かもしれない
「夜」という章が頻繁に出てくる
待女、あるいは全ての女性にとっての象徴
であるかのように‥いや、女性に限らず、全ての
人にとっての闇がそこにあるかのように
『夜の闇が舞い降りて来る。どうして夜の闇は、日の出のように昇ると言わないで舞い降りるというのだろう?‥‥おそらく夜の闇を舞い降りると言うのは、それが目の前を覆う重く分厚いカーテンだからだろう。ウールの毛布‥‥夜が石のように肩に重くのしかかるのが感じられる』