羽田正のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
主にイギリス/オランダ/フランス東インド会社の活動を通して17世紀〜19世紀頃までのアジア地域を通史的に分析した良書。
日本と特に関わりが深いのはオランダ東インド会社だが、ここに焦点を絞って読んでみても、彼らの日本での活動が何故あのような形になったのかがよくわかるし、彼らが幕府の命令で出島貿易に従事していた頃、他地域では彼らは何をしていたのか、それによって何が起きていたのかを知ることができる。(もちろん、英仏両会社の記述もしっかりと追うべき。どのトピックも詳細な記述が為されており、学術書としての手応えも◎)
これら東インド会社の活動を通して見えてくるのは、現代の我々が現代的な視点で想像するよう -
Posted by ブクログ
17世紀、アジアとヨーロッパの勢いが逆転した。
その契機のひとつが「東インド会社」。
先んじてポルトガルによる「海の帝国」が始まり、その成功と失敗をもとにオランダやイギリスの民間が利潤を求めて海へ乗り出した。
その原動力は“経済”、やり方は“独占”。
事柄を横串に捉えた解説(例えば主権者の「国」という概念の地域差、それぞれの会社がそれぞれの地域に合わせた戦略)が、一国の通史には無い面白さだ。
そして、各地が結ばれ“世界”となった。
ここから先は良くも悪くも、全て現代に通じている。
今を知るために、これからを考えるために、読んでおくべき本。 -
Posted by ブクログ
デジタル本の興亡の世界史21巻の20冊目を読み終えました。この「東インド会社」に焦点を当てた世界史は、必然的にグローバルな地球規模の世界史とならざるを得ないのでとても勉強になった。なぜヨーロッパ列強が次々に東インド会社をつくったのか。そして商事会社としての東インド会社が、暴力的に支配していくとはどういうことなのか?日本にとって対象となる南蛮人がオランダ人になったのはどうしてなのか?南蛮貿易の実態は?等様々な疑問がこの本で少し解けました。不思議に思っていた歴史が腑に落ちると、薄っぺらな知識が少し厚くなった気になります。
デジタル本興亡の世界史が残り1冊になりました。ここまで来るとやはり紙の本に -
Posted by ブクログ
【いずれにせよ大事なことは、まず同時代の存在として「イスラーム世界」という空間概念が創造され、その歴史は後から作られたということである。まず枠組みがあり、その枠組みに合うような歴史記述が求められたのである】(文中より引用)
普通に使われることに違和感を覚えることも少なくなった「イスラーム世界」という用語。この言葉の成り立ちや使用法を検討することで、日本や欧米の社会がどのような認識のレンズを通してイスラーム教を見ていたかを研究した作品です。著者は、『冒険商人シャルダン』や『新しい世界史へ』などの羽田正。
当たり前に使っている概念の再探訪といった趣の一冊。歴史を巡る歴史を目にしているかのような -
Posted by ブクログ
【日本語での「日本史」とは、ある一定の空間に生きた人々(日本人)の過去を言語や文化も含めて通時代的に整理してたどることを意味する。同様のスタイルを「イラン史」に求めることは非常に難しい】(文中より引用)
近代国家としてのイラン、そしてそこに至るまでのイラン・中央アジア地域の歴史を概括した作品。編者は、『新しい世界史へ』などの羽田正。
教科書的にイランの歴史について考えることができる一冊。そもそも「イランの歴史とはどこからどこまでを指すか」という点から解説してくれるため、認識を形作る上での補助線も丁寧に引いてくれている印象を受けました。
慣れないカタカナが多いですが☆5つ -
Posted by ブクログ
ネタバレなんでポルトガル人日本に来た?何取引した?なんでそれ取引した?など、細かいところまで、痒いところまで手が届くような本。わかりやすい。
【読書目的】
- ポルトガル・オランダが日本にやってきた理由を理解する
- 主な貿易品と貿易の利益に関して理解する
【まとめ】
- ポルトガル・オランダが日本にやってきた理由
- 大航海時代
- 胡椒・香辛料のニーズ
- 肉の保存・味付け、医薬品としてのニーズ
- 中間業者と関税がかかっており、価格が高く、直接取引したかった
- 技術革新
- 羅針盤・造船技術
- 宗教改革
- カトリックの権威復活と拡大
- 黄金の国・ジパング伝説
- by マルコポーロ -
Posted by ブクログ
表題に違わぬ名著だと思う。東インド会社の成立前史から、その成立、隆盛そして衰退まで、各地域との関わりにめを配らせつつ丁寧にかつわかりやすく記述されている。個人的に勉強になったのは、日本史で言うと朱印船貿易の目的や、正徳新例後の貿易の衰退と国産化の進展。世界史で言うと、東インド会社の運んだ綿織物がイギリス社会を刺激し産業革命をうみ、それがアダムスミスの自由貿易論などにだいひょうされるような東インド会社の衰退につながった、という点であろうか。また、フランス東インド会社とイギリス東インド会社のインドにおける角逐や、インドの領主となったことでこうむった不利益などはなるほどと感じた。オランダ東インド会社
-
Posted by ブクログ
【地球社会の世界史は、世界がひとつであることを前提として構想され、それを読むことによって、人々に「地球市民」という新たな帰属意識を与えてくれるはずのものだからである。】(文中より引用)
「ヨーロッパ」中心史観や時系列的記述,さらには国家を主眼に置いた方法など,多くの問題点を抱えると著者が指摘する世界史を,新たな段階へ進めさせるための方策について考えた一冊。著者は、東京大学副学長を務めた羽田正。
本書が新たな世界史を丸々提示しているわけではないため,議論のとば口を考える上で有用な作品。歴史が持つ積極的な意義を改めて見つめ直しながら,新たな世界観の構築にまで思いを至らせることができるかと思いま -
Posted by ブクログ
東インド会社は昔から気になってたんだよね!
とはいえ、英国東インド会社しか念頭になかったけど(^^;
オランダやフランスにも東インド会社があったのね。
オランダやフランスが『も』東洋にこれほど…と思いかけたところで、
ああ、『蘭領東インド』ってのがあったなあ(日本が攻め込んだ
『仏領インドシナ』ってのもあったなあ(日本が進駐した
インド洋にはまだ存在しなかった『国旗』を掲げた(主権国家という前提)の欧州列強の商人と、『国籍』という概念がまだ無い(だからこそ、外から来た人でも、王に貢献すれば褒美と役職がもらえる)ペルシャ、インドの王朝、港湾都市諸侯
こうした異文化というか、設定の異なる両者の接触 -
Posted by ブクログ
東京大学学術俯瞰講義2009を聴講して、羽田氏のことが
気になり、手に取った一冊。
日本史、特に幕末〜明治成立期への興味が強かったため、
世界史は全く勉強してません。
ただ、ふとしたことがきっかけで、現在の日本と世界の関係に
興味を持ち、本を手に取ったりしてみるものの、サッパリ
分からず(理解できず)、数年悩み続けていたとき。
偶然、iTunesで羽田氏の講義を聴講し、「世界史」
「世界史を理解する」ことに対する考え方が変わった気が
します。
まず、羽田氏が指摘する「ヨーロッパ中心視観」。
「日本人」として「日本史を学ぶ」ことによる「日本人への
意識の帰属」といおうか。
「欧米」が -
Posted by ブクログ
本書は、主に日本での「世界史」の語られ方、枠組みについて、今や常識となって学校教科にも根付いている方法を批判し、新しい枠組みで世界史を捉え直し、語っていく事を提唱した本。
即ち、副題にもある通り、「人々に「地球市民」という新たな帰属意識を与えてくれる」ようなものとして、世界史は在るべきであると主張する。
何故なら、世界史は単に学問世界における研究の在り方に留まらず、我々人類の来し方を説明し、今の世界がこうあるのはそのためであるという「色眼鏡」を我々にかける性質のものだからである。
世界がますます一体化し、人類が解決しなければならない諸課題が地球規模のものになるなか、我々の意識が「国家」「国民」 -
購入済み
読み易い
全体的に読みやすく、スイスイ読めてしまう。
頭に入れるのには、数回読み返す必要がある。子供は勉強と平行して読んでいるので、復習や予習になるそうです。補助教材としては優秀だと思います。