羽田正のレビュー一覧
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主にイギリス/オランダ/フランス東インド会社の活動を通して17世紀〜19世紀頃までのアジア地域を通史的に分析した良書。
日本と特に関わりが深いのはオランダ東インド会社だが、ここに焦点を絞って読んでみても、彼らの日本での活動が何故あのような形になったのかがよくわかるし、彼らが幕府の命令で出島貿易に従事していた頃、他地域では彼らは何をしていたのか、それによって何が起きていたのかを知ることができる。(もちろん、英仏両会社の記述もしっかりと追うべき。どのトピックも詳細な記述が為されており、学術書としての手応えも◎)
これら東インド会社の活動を通して見えてくるのは、現代の我々が現代的な視点で想像するよう -
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万国の労働者へ団結を呼びかけたマルクスの共産主義と、全世界のイスラム教徒にそれぞれの違いに目をつむって団結するよう呼びかけたアフガー二ーのパン=イスラーム主義は、時に現実に害を及ぼすほど高い理想主義であるところが少し似ている気がする。
アフガーニーのパン=イスラーム主義も清の康有為が提唱した社会改革も、それぞれの文化の重要な古典を再解釈することからはじまった。全く違う場所だけど、同じ問題に対して同じ発想で対処しようとしたというのが興味深い。
改革には時間が必要。一足飛びに物事は変わらない。
中国の科挙制度は、実質的に富裕層などの特権階級しか手の届かないものだったという限界もあったけれど、 -
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民主党はロバ、共和党はゾウ。
それぞれどうしてそれらの動物を選んだんだろう?
昔のヨーロッパは国土が飛び地状態なことも多かったので、最初のパレスチナ分割案もパレスチナ側の国土が分かれていたのかな?
あれはたぶん、パレスチナ人の村が比較的多い地域で分けたらあんなふうになったということなんだろうけど。
「ロシアは大改革で経済が成長し、ブルジョワジーが台頭し始める。
一方で公営の専制政治による圧政に対し、インテリゲンツィア(知識人)と呼ばれる高等教育を受けた批判層が現れ、1874年をピークに農村に出向き、改革の必要性を訴えるヴ=ナロードを掲げた運動を推し進めた。
この運動を行った人々はナロード -
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違法薬物の貿易を国が支援していたなんて、19世紀半ばころのイギリスの倫理観は、現在の基準だと倫理観と言えるものではないな。
洪秀全は自分をイエスキリストの弟と思い込んで、自分を中心とした新興宗教を興し、太平天国の乱を起こした人で、「天啓」を受けるまでに四回科挙に落ちている。
もともとおかしい人だったので科挙にも通らなかったんじゃないか?
封建制度と郡県制度の違いをようやくイメージできるようになってきた気がする。
封建制度は君主が臣下に土地と自治権を与えて、代わりに忠誠と軍事力を受け取る制度で、郡県制度は国の中央にいる君主がいくつかに区切った土地に官僚を派遣して、その官僚に君主の望む通りの統 -
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17世紀、アジアとヨーロッパの勢いが逆転した。
その契機のひとつが「東インド会社」。
先んじてポルトガルによる「海の帝国」が始まり、その成功と失敗をもとにオランダやイギリスの民間が利潤を求めて海へ乗り出した。
その原動力は“経済”、やり方は“独占”。
事柄を横串に捉えた解説(例えば主権者の「国」という概念の地域差、それぞれの会社がそれぞれの地域に合わせた戦略)が、一国の通史には無い面白さだ。
そして、各地が結ばれ“世界”となった。
ここから先は良くも悪くも、全て現代に通じている。
今を知るために、これからを考えるために、読んでおくべき本。 -
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デジタル本の興亡の世界史21巻の20冊目を読み終えました。この「東インド会社」に焦点を当てた世界史は、必然的にグローバルな地球規模の世界史とならざるを得ないのでとても勉強になった。なぜヨーロッパ列強が次々に東インド会社をつくったのか。そして商事会社としての東インド会社が、暴力的に支配していくとはどういうことなのか?日本にとって対象となる南蛮人がオランダ人になったのはどうしてなのか?南蛮貿易の実態は?等様々な疑問がこの本で少し解けました。不思議に思っていた歴史が腑に落ちると、薄っぺらな知識が少し厚くなった気になります。
デジタル本興亡の世界史が残り1冊になりました。ここまで来るとやはり紙の本に -
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【いずれにせよ大事なことは、まず同時代の存在として「イスラーム世界」という空間概念が創造され、その歴史は後から作られたということである。まず枠組みがあり、その枠組みに合うような歴史記述が求められたのである】(文中より引用)
普通に使われることに違和感を覚えることも少なくなった「イスラーム世界」という用語。この言葉の成り立ちや使用法を検討することで、日本や欧米の社会がどのような認識のレンズを通してイスラーム教を見ていたかを研究した作品です。著者は、『冒険商人シャルダン』や『新しい世界史へ』などの羽田正。
当たり前に使っている概念の再探訪といった趣の一冊。歴史を巡る歴史を目にしているかのような