薬丸岳のレビュー一覧
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終盤の追い込みがエグい。そして主人公を取り巻く環境が地獄過ぎる。そのため、もちろんフィクションであることを前提としつつも、現実の延長線上にある日本社会を舞台にしているからこそ、終盤で明らかになる真相に作りものっぽさを感じてしまいます。流石にこの構図は現実味がなさ過ぎるような。
但し、被害者と加害者の立場についてはとても考えさせられます。世間を賑わせる幾つもの事件をみていると、どうしても被害者寄りになってしまう方で、「加害者の人権に配慮」という主張にどこか違和感を覚えてしまうのです。しかし、すべての加害者を一括りに論じることはできないのでしょう。そして、犯した過ちに蓋をしてしまうのではなく、これを反省し、次に繋げていく。それが健全な社会であって、社会全体に一定程度の許容が求められるのかもしれません。ただ、そこには被害者とその関係者の気持ちは忘れ去られているのではないか。突き詰めても答えのない問いで、置かれる立場によって意見もその都度変わるように思えます。
そんな釈然としないテーマに真正面から向かいつつ、質の高いミステリーを提供する本書は、そりゃ確かに江戸川乱歩賞を受賞するでしょう。中盤以降は一気に読み進めた作品でした。 -
Posted by ブクログ
薬丸岳先生の作品は少年法のことが多いように感じていたが、39条にも触れていたとは知らず、見識の広さに驚いた。
また自分も知っていたことは知っていたが、具体的にどう言う事なのかというのは知らず、勉強にもなった。
作中で佐和子が「時限爆弾」と言っていたことが、妙に腑に落ちた。
確かに自分以外の誰かが、自分の心のことを判断するというのは、特に基準も持たないし危険なことだと思った。
佐和子が身を呈して伝えようとしたことは、ここまでしないと伝わらないという絶望でもあった。
自分の不勉強が露見したが、知らないことを知ることが出来たチャンスだと思って再度知る努力をしていこうと思った。 -
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顔にヒョウの入墨の男カタギリ。この時点で私の読む話かなと思ったのですが、展開がそれぞれの人たちに光をあてていくので読みやすいなと思い直しました。
菊池さんは本当にいい人。
中村弁護士は驚くほどの正義の人。
松田ひかりはそういう風に思って当然。
森口絢子は気の毒な人。
荒木さんはやり直せた、いや、やり直し中の上恩返しに必死になる人。
もっとそれぞれの人に思うことはあるけれど要約したらこんな感じです。
終盤、なぜ三十年からのながい年月、服役を繰り返したかが分かります。
どんな悪い人なんやと思わせての本当は真逆の人。
方法は正当ではないが、それしか出来なかった人。
人生をかけた復讐を遂げて奥さんのところへ行けましたか?
最後に泣きました。 -
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何度読んでも落涙のベストセラー短編集『刑事のまなざし』に次ぐ「夏目信人」シリーズ、初の長編。
浅川幹夫、予備校生、いとこ水森沙紀、塾友、星野ゆかり、兄洋、須賀邦治: 外科医、妻美智代、義父である松下康則、夏目刑事のパートナー安達涼子、「長峰さん、夏目サン、園部真理、須賀の痴漢被害者、志藤検事の上司、福沢検事正、佐藤次席検事、検事事務官、笹本、刑事課強行犯、菊池係長、安達涼子、夏目信人、福森、医学部専門の予備校の講師峯岸彩子、5年前当時須賀と同じ外科医、被害者夏目サンは、峯岸講師の生徒、岡本美香、須賀の部屋に入った若い女性。弁護士の中尾、峯岸さんの弁護士、いとこ上野さん
「峰岸さんは五年前まで京北医科大学病院で働いていました。須賀さんと同じ外科医です。さらに須賀さんの痴漢を訴えていた園部真理さんですが、彼女は今年の三月まで三栄学院に通っていました。峰岸さんが受け持っていたクラスの生徒です」
須賀さんと峯岸さんは、男女の関係、
「須賀さんはもう一台携帯を契約していたということですね」
「検事長の娘婿だからといって、あまり調子に乗らんほうがいいぞ」
「夏目さんは須賀さんの自殺と、あの暴行事件に何か関連があると思っていたんじゃないんですか」
「そういえば星野の件から、立て続けに人が来なくなってねえか?」 名前は知らないが遠藤の後ろに座っていた男性が言った。 「そうだな。星野が来なくなった後から浅川も来なくなったし、最近では岡本も来てないな。競争相手がどんどん脱落していくのはけっこうなことだけどさ」
検事を志してからの出来事はすべてが運命だと思っている。 あの男を倒すための──
「きみに痴漢のでっち上げを頼んだ人物が殺したんだ。自殺しても不思議ではないという状況を作るために痴漢をしたという汚名をきせようとしたんだ。きみは知らないうちに殺人の片棒を担がされてしまった」
「これからあなたの逮捕状を請求します。容疑は殺人です──」志藤は彩子に視線を向けて告げた。
「あの日の夜、幹夫くんは須賀さんの遺体のあった部屋にいたんじゃないかとぼくは思っている」
「志藤検事は痴漢のでっち上げと今回の殺人事件とをセットで考えているようです。殺人事件の捜査をしている東池袋署の捜査員のほうが何かと都合がいいと考えたのでしょう」
志藤検事は警察に峰岸彩子のことを密告してきたのは浅川幹夫ではないかと踏んでいるとのことです」
「峰岸先生の件に関することじゃない。幹夫くんは虚偽告訴罪で逮捕状が出たんだ」
「須賀さんが殺害され、峰岸がドアノブの指紋を拭った後にやってきたのは浅川ということですね」
「ぼくたちは……きみがこの映像を収めた携帯を見つけてから警察に出頭するまで、どこで何をしていたのかを知っている。きみが何のために部屋を細工して早く須賀さんの遺体を発見させようとしたのか、どうして警察に密告の通報をしたのか、そしてきみがどうしてこんな手紙を書いて、これから何をしようとしているのかを知っている」
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鏡ばかりの部屋で発見されたエリート医師の遺体。自殺とされたその死を、検事・志藤は他殺と疑う。その頃、東池袋署の刑事・夏目は同日現場近くで起こった不可解な集団暴行事件を調べていた。鍵を握るのは未来を捨てた少年と予備校女性講師。人間の心の奥底に光を当てる、著者ならではの極上ミステリー。