千野隆司のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
〈出世商人〉シリーズ第三作。
亡き養父の店〈三川屋〉を継ぐと共に多額の借金も背負うことになった文吉。医師・手塚良庵が調剤した『元気丸』を売ることで借金返済への道筋が出来たかと思われたが、大店の薬問屋〈福江屋〉と〈越前屋〉による営業妨害で度々売上は落ち込んでいく。
今回は樽をいくつも重ねながら乗っていく樽芸をやる娘ナオと助手役の祖父・作造が何者かに襲われることから始まる。
ナオと作造が樽芸を行っていた場所の元締めは文吉がかつて借金していた〈相馬屋〉。〈相馬屋〉は借金の取り立ては厳しいが、借金している者の窮地を救ったり情報屋の熊を通じて様々な事情を教えてくれたりと義侠心もある。
ナオと作造が襲われた理由には〈相馬屋〉の縄張りを奪おうとする同業者の思惑があるようだが、そこに文吉が売る『元気丸』の営業妨害も絡んでいるようだ。
前作でも思ったことだが、読売やらサクラやらを使って『元気丸』の評判を貶めたり破落戸を雇って文吉たちや樽芸芸人を襲わせる知恵や手間隙やお金があるなら、『元気丸』より良い薬を作ったり商売に身を入れたりすれば良いのに…と思うのだが、それが出来れば苦労はしないというところだろうか。
今回は更に人を傷付けたり火付けまでしてエスカレートしている。バレれば重罪は免れないのにそこは考えないのが浅はかだからだろうか、それとも意地になっているのだろうか。
文吉側は今回も熊や宗助、与力の渋谷らと共に闘っていく。
一方でナオの存在が文吉とお邑の距離を近付けた感もある。襲われたショックで樽芸が出来なくなったナオを慰め励ましてあげるお邑を、文吉はあることがきっかけで女性として意識してしまう。お邑の方もまんざらではない感じで今後に注目。
この三作を以て、文吉の借金問題や営業妨害問題は一旦道筋がついたようだ。
手塚良庵は大坂に行くが『元気丸』は残った家族が作るらしいのでこれまで通り売ることは出来るらしい。
これからが本当の『出世』の道。どんな道が展開するのかに期待。 -
Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。タイトルから安心して読める。
とはいえシリーズ第一作ということで成功とは言えない段階で終了。
薬種問屋〈遠州屋〉の小僧として奉公していた文吉は養父の突然の死により〈遠州屋〉を辞め養父が営んでいた艾屋〈三川屋〉を継ぐことにした。
だが〈三川屋〉の扱う艾は安物で利益は殆どなし。最近は商いが上手く行ってなかったようであちこちから合計十三両もの借金をしていた。
そんな折、〈遠州屋〉時代に知り合った蘭方医・手塚良庵から自分が作った滋養強壮薬を売って稼がないかと誘われる。
テンポが良い。
小僧上がりで店の経営は全くの素人、多額の借金を背負っている文吉が、様々な人と出会い助けられていく様が楽しい。ちょっと出来すぎだが、それも良い。
元は文吉の正直さや誠実さ優しさが成せること。良庵との出会いのきっかけも道で苦しんでいる老女を助けたことだった。
文吉は火事で両親を亡くした孤児であり〈三川屋〉夫婦は育ての親というだけで血の繋がりはない。しかし体調が優れない養母おぶんを見捨てることも〈三川屋〉が背負った借金から逃げることもしない。
艾を仕入れる金すらない文吉に二百文を渡し、もっと良い質の艾を仕入れて売れとアドバイスする〈遠州屋〉の女中・お邑。
文吉が新たに商うことにした良庵製作の薬『元気丸』の売り出しに一役買う幼馴染のお藤。
大手の薬種問屋からの嫌がらせや横やりの真相を調べてくれる下っ引きの宗助。
誠実な商売と『元気丸』の確かな効き目に新たな客を紹介してくれる人々。
たくさんの人たちが文吉を後押ししてくれる。
一方で借金相手の〈相馬屋〉儀兵衛は厳しいのだか優しいのだか。ホームレスの老人・熊もただ者ではない感じ。
〈越前屋〉〈福江屋〉など大手の薬種問屋の横やりや嫌がらせは続きそう。
〈遠州屋〉の若旦那・茂松の動きも怪しい。
商売はまだ始まったばかり。これからどう商いを軌道に乗せ『出世』していくのか、楽しみだ。
ところで読み終えて知ったがこの手塚良庵先生、あの手塚治虫先生の曾祖父だそうだ。手塚治虫先生も医学博士だったが血筋なのか、納得。