toi8のレビュー一覧
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“「あ、そうだ。おれ、どうせ授業中も寝てばっかりだし、高校やめちゃうっていうのはどうかな?」
「「絶対だめ!」」
みどりと吾郎は同時に言った。
「えー……いいと思ったんだけど……」
「あたりまえでしょ!せっかく奇跡的に都立に合格したのよ」
「陰陽屋さんに就職するっていうならまだしも、一日二、三時間のアルバイトのために高校をやめてどうするんだ。ちゃんと将来のことも考えなさい」
「うん……」
両親に異口同音で反対され、高校中退案はひっこめざるをえなかった。
「それに、高校をやめたら、もう三井さんにも会えなくなるわよ。いいの?三井さんと一緒の高校に通いたくて、飛鳥高校を受験したんでしょ?」
「か、母さん、なんでそれを!?」
瞬太は真っ赤になってうろたえた。三井春菜は中学からの同級生で、瞬太が常々、いいなぁ、と、ひそかに思っている女の子である。小柄できゃしゃでかわいくて、その上、いつもシャンプーのいい匂いがするのだ。”
今回も面白かったー。
高坂くんがなかなかお気に入り。
toi8さんの表紙も素敵。
“「もういいわ、ショウがそうやって逃げまわるつもりなら、あたしは一生、あなたの責任を追求し続けるから!」
高らかに呪いの言葉を吐くと、季実子はくるりときびすを返し、陰陽屋をかけだしていった。
祥明は、倒れるように椅子にへたりこむと、大きくため息をついた。
「悪かったな……」
珍しく槙原に謝る。
「びっくりした。最短失恋記録だ」
槙原は頭をかきながら苦笑した。
「すごく結婚したがってるから、相手を紹介してやったのに、なんだって彼女があんなに激怒したのか、さっぱりわからん」
「要するに、おまえにぞっこんってことじゃないのか?」
「そういう雰囲気は感じないんだが……」
「じゃあ、ただの面くいか?」
「結婚相手を顔で選ぶ女なんていまどきいるのか?」
「顔じゃなければ何だろう?陰陽師好き?貧乏好き?それとも逃げられれば逃げられるほど追いかけずにはいられない、ハンター体質なのか?」
「おいおい」
祥明は頭をかかえる。
瞬太は、季実子にだしそびれたお茶を槙原の前に置く。
「あの調子だと、祥明が結婚届、じゃなくて、婚姻届だっけ?にサインするまで、季実子さん、毎日来るかもな」
瞬太の不吉な予言に、祥明は肩をビクッと震わせた。
「キツネ君、なんて恐ろしいことを言うんだ!言霊って日本語を知らないのか?」” -
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“「あの……」
「はい」
まだ突っ立っている明智に、彼女が言う。
「よかったら、これから少し、お話でもしませんか」
「え」
ためらいがちに、でも期待を込めて、明智を見る目。
勧誘。宗教とか、セールスとか。
「せっかく来て、映画見るための二時間だから、買い物より新鮮なことしたいし……」
「新鮮て」
「あは、なんか変な例えになっちゃったかな」
また笑う。口紅の色はないけど、白いきれいな歯。
逆ナンすか。とか言えたらかっこいいのか、笑えるのかそれもわからない。しかしこれは、やっぱり逆ナンというやつじゃないのか。このおれが。悔しいがありきたりなTシャツとパンツで、どう見ても金はありそうもない高校生のおれが。
ギャクナン……。
回るパンチのような勢いのある響きに、それだけで明智はダウンしかけた。”
ゼロヨンイチロクの続編。
今回は、明智視点の話。
不思議に付き合ってほしいという年上の彼女。
そんな彼女の目的と理由と、そしてことの真相とは。
マノカエ可愛いよマノカエ。
“「うとうとしていて、外で電車の音がしたなと思ったら、この夢を見てた」
それで誰かが、お前が夢から覚めれるかどうかは、明智君次第だって。
「そうか」
いつの間にか、美緒はシートの上で眠っていた。明智は眠そうなめぐみの手をとり、美緒の向かいのシートに寝かせてやる。
「じゃあもう、おれは上手くやれたらしいから、お前は安心して眠ってろよ」
「明智君……もしかして、これは夢じゃないの……?」
横になっためぐみが、明智を見上げた。
「いや。お前の夢だ。なんでそう思うんだよ」
明智が自分なりにやさしく笑ってやると、めぐみはかすかに頬を染めた。
「……明智君が、普通にかっこよく見えるから」
止めろ恥ずかしい、と怒ろうとしたら、めぐみはもう、目を閉じて眠っていた。” -
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“めぐみはつい声を高くした。だいたい、あの山から私が電話したときも出ないし、あとで出たけど駅名を言ったら「そこなら自分で帰ってこれるな」とか冷たいし。まあ、お母さんの連絡待つって考えたら迎えに来てとも言えないけど、こっちは心配かけまいと思って、トオのことも言うの我慢したんだよ。部活の子と遊びに行ってたなんて、嘘に決まってるじゃない。お母さんもいないのに、遊びだなんて。
「大丈夫だよ」
父はレンジの上に置かれた縦長の鍋を火にかけた。蓋を開け、おたまでぐるぐる中をかきまわした。
「お母さんなら、心配しなくていいから」
「連絡あったの?」
「いや、ないけど」
「じゃあなんで」
カレーはすぐぷつぷつ言い出してキッチンにいいにおいが広がった。イライラしつつ、めぐみは自分がひどく空腹だったことを思い出した。”
岸本めぐみは高校一年生。
ある日、脚本家である母が失踪してしまう。
母を捜すうちにトオというめぐみを憎む謎の美少女や、葉茨という謎の男、不思議な力をもつ相川美緒、そして謎の教団E。
手がかりもないまま謎だらけの問題に直面してしまうめぐみは、最後に母を捜しだすことができるのか。
……といった感じの話。
清水さんの話は不思議で、少し切なくて、ちょっぴりだけど気味が悪い。
でも、不思議と後味はさわやか。うん。
“飲み込まれる。心が、止まった時間から動けなくなる。
反射的に、めぐみは目を閉じ、身体を縮めた。暗い中で、よく知っている声が聞こえた。
(――めぐみ)
嘘。
驚きで、めぐみは恐怖も忘れて目をあけた。しかしそこにはやはり闇しかない。
めぐみは、声の主を呼ぼうとした。
そのとき、いきなり頭上から何かがすごい勢いで降ってきて、めぐみはそれに遮られる形で闇に弾かれた。
「めぐみ!」
仰向けに倒れそうになるめぐみを、明智が抱きとめる。闇は、落ちてきたそれに削り取られ、歪んで再び霧散した。
「……さん……」
唇が、勝手に形を作る。めぐみの意識はどこか、曖昧なままだ。
薄暗がりの、何もかもぼやけている中で、落ちてきたものがわずかに動いた。
「あいつ……」
明智の声に、緊張が走った。めぐみは首を起こし、それを見る。
夜でもはっきりとわかる、明るい茶の髪。
ぼろぼろの、壊れた人形みたいなトオが、傷だらけでそこに倒れていた。” -
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“「そういえば、言ってなかったけどさ」
牧生は寿司政の手前でふと思い出した。
「今日のあの、運命の女神とかいうの、嘘だから」
「そうなのか?」
「ああ、おれが自分で動かしてたんだよ」”
少し切ない終わり方。
でも、ハッピーエンド。
中山が、可哀想だった。
「身内」と呼ばれる4人が良い方向に変わっていくのが良かった。
呪われた悪魔の庭と嘘の話。
プラモ好きの寿司屋の息子、早川牧生
美形で悪魔で嘘の、中山りあ
おとなしい性格のパン屋の娘、滝瀬唯
ボーイッシュなコンビニの娘、小暮琴美
口が達者な総菜屋兼洋食屋の息子、梶尾裕貴
大磯とも名乗る、川原ヨシオ
呪いを懐かしむ、浅井操
「君の嘘、伝説の君」から2年後が舞台。だろう。な。
操君が再登場したのには正直驚いた。
というか、だ。
ヨシオまだ出るかヨシオ。
残念ながら休刊になったようだけど。
妹のほうは雰囲気的に上手くいっているのだろうけど。
不思議はそれでもこの町を取り巻く。
色々な者と物と嘘を巻き添えにしながら。
“「ずっとさよならって、わけじゃないな?」
「ずっとじゃない」
帰るべきところへ、私たちが帰って……今日のことを忘れなければ、また会える。
「忘れない」
「うん」”