河島弘美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレとにかく地の文ーー語りが良い。油断して意識が語りにふっと吸い込まれて、何ページも何時間も経ってしまったこともあった。途中、3度くらい「このパートナー運の(男運とはいうまい、彼女の果敢な魂に懸けて)なさは何なの!?」と本を置いて溜め息を吐いたものだが。全体は主人公ジェインの、「その自由な魂のほんとうに充ち足りる『愛』」を指向して、大きく波立ちうねりながら進み、その愛に呼応したものの述懐が示すところによって閉じられる。前巻導入部に勝る「美」はない、けれど、ふたりが場所を越えて感応する箇所はまさしく完成されたもので、とても、うつくしい。
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Posted by ブクログ
自分の考えを直球で相手に投げるジェインは感情的だけど、その一方で穏やかに過ごす術も知っている。どんな状況でも自分がどうあるべきかを考えて自分で決めていく姿はカッコいい。すべてがシンプルで、無駄がない。必要なものが必要な分だけあれば、人はこんなに活動的に生き生きとしていられるんだと思う。
貧しく境遇にも恵まれないなかでも、前向きでいることができることをジェインは教えてくれる。自分のやるべきことを知り実践していたら、嘆いたり不貞腐れたりしている暇なんてない。
ロチェスターとの結婚は、そんなジェインの唯一と言っていい望みだったんだと思う。何が自分の幸せなのかを知るジェインの夢が叶ってよかったなぁ -
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Posted by ブクログ
十年以上ぶりに読み返した名作。
印象度としては初めて読んだときの方が強烈だったかな、とは思いますが、ぐいぐい引き込まれてあっという間に読んでしまいました。簡潔な表現なのに、人物の感情描写がずはずば!と心の中に切り込んでくる感じはさすが。
キャサリンが、自分の選択について「魂と心では思うのよ、私は絶対にまちがっているって」と言う下りがありますが(160ページ)、こういう直感を絶対に無視しちゃいけないんだよな、と、この歳になってつくづく思います。
「この選択は間違いだ」と魂がはっきり言ってくれる場合は勿論、「なにかおかしい、引っかかる」というレベルでも、そのシグナルを無視しては駄目。とくに人生を -
Posted by ブクログ
狂気狂気の復讐劇。狂人ばかり出てくるので、そのテンションでいろいろ進むが、視点が常識人の女中のものなので、それがバランサーになり、物語を成り立たせている。恨み憎しみの悲劇は芸術として長く語り継がれる。反対に美談に芸術性を語る人は少ない。共感できる側面がないからだろうか。そんな単純な問題ではないようだが、今日はあまり深く考えるには疲れすぎた。
ヒースクリフの次の言動が気になってしまう。お互い独善に酔い、相手をののしり合いながら結びつくヒースクリフとキャサリンの関係に人間の悲しさを見る。本能と理性と良心に股をかけた悲しき姿である。ヒースクリフの怨みのエネルギーが強すぎる。それに当てられ次々に登場 -