【感想・ネタバレ】ワシントン・スクエアのレビュー

あらすじ

「父には,弱いといえるところが一つもないんですの」完璧な父を敬愛する,内向的で平凡な容姿のキャサリン.彼女の前に現れた,美貌で言葉たくみな求婚者――19世紀半ばのニューヨークを舞台に,鋭く繊細な会話と描写が,人間心理の交錯と陰影を映し出す.『ある婦人の肖像』とならぶ,ジェイムズ(1843-1916)初期の佳作.

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Posted by ブクログ

読み進めるほど著者の精緻な心理描写がさえわたり、人の愚かさや醜さなどが浮き彫りになっていく様は、読み応えがあります。登場人物は少なく、場所もほぼワシントン・スクエアのスローパー博士の邸宅での話し。文章も会話文が多くテンポ良く進み、時折挟まれるユーモアと相まってとても読みやすかったです。ただ、『アスパンの恋文』同様に絶版なのが残念です。

なお、本作は、『女相続人』の名で映画化されています。

あらすじ:
ニューヨークの町に、裕福な開業医であるオースティン・スローパー博士が住んでいました。彼には、キャサリンという優しくも地味で不器用な娘がいましたが、亡き母の美しい容貌を受け継ぐことなく、また社交性にも欠けた控えめな態度を見るにつけ、博士はとても失望していました。それは、キャサリンが幼い頃に亡くなった母親の代わりに、博士の妹のラヴィニア・ペニマン夫人が世話をしてきましたが、博士の賢い娘に育てて欲しいという希望に、決して応えたとはいえないことも一因でした。
そんな中、博士の下の妹であるエリザベス・アーモンド夫人の娘マリアンの婚約パーティーに招かれ、そこにいた若くてハンサムなモリス・タウンゼンドにキャサリンが求婚されます。彼は海外渡航歴も豊富で弁舌もたち、洗練された容貌の魅力的な男性ですが、定職についておらず財産もありません。
スローパー博士は彼と会話するうちに、さてはキャサリンの持参金や自分の遺産目当てで近づいてきたのではと動機を疑い、娘に結婚をやめるよう説得し、モリスにも冷淡に接します。しかし、キャサリンはモリスを深く愛し、父の反対もよそに結婚を望みますが……。

と、話し的には、娘の結婚に気を揉む性悪な金満おやじと、実直すぎてちょっとめんどうな娘という親子関係に、それを取り巻く人たちの言動や態度などが、実に見事に絡み合った心理描写と相まって、どんどん先を知りたくなるストーリー展開。ただ、読み終えたあとでは、娘のことを思うと複雑ですね。金満おやじに振り回された娘が不憫でならないですが、どっちも頑固だなと。なんだか、物寂しい余韻が残る作品でした。

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2025年05月28日

Posted by ブクログ

わっ、ヘンリー・ジェイムズだ。

映画にもなった『ある婦人の肖像』は、ひとりのイザベルという女性のいわく名伏し難い人生を表した作品でしたが、これもまた平凡な女性キャサリンに起こるさまざまな出来事を、人のこころの奥底まで見通した巧みな表現でドキドキはらはら見事に描いた秀作です。

悲劇のヒロインを自分に感じて読むのも面白いかもしれません。

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2011年10月27日

Posted by ブクログ

財産しか取り柄のない女の子が、財産めあてらしきイケメンに言い寄られ、結婚を決意するものの、お父さんに猛反対されてどうするどうなる?という話。皮肉で殺伐としたストーリーのようでもあり、その一方で、人間のゆたかさや奥深さも伝わってくる感じがして・・面白いです!

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2011年11月19日

Posted by ブクログ

未婚女性にはけっこう身につまされるものがある。
キャサリンは平安だけど幸せかと考えたら悩んでしまう。
喪失の中で生きる最善策を選べているけど。決して不幸ではないけれど。

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2012年01月03日

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