河島弘美のレビュー一覧

  • ジェイン・エア (下)

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    素晴らしい。
    自分で選択し、自分でその人生を素直に生きる、そんな自由な人間の姿が生き生きと実直に記されている。
    ロチェスターとの結婚によるいわゆるハッピーエンド的な展開に関しては賛成。
    この物語の肝は一人の女性がある環境や人生の転機に自らの意志によってその苦難を乗り越えていく、その瞬間瞬間の発火点、そこに尽きると思う。
    フェミニズム的な要素はあるものの、決してその思想に傾きせず、感覚的な生の人間の内面が映し出される。
    ロチェスターの結婚を力強く跳ね返す場面は勇気をもらえる。
    原語で読みたいなー。

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    2025年08月31日
  • ジェイン・エア (上)

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    久しぶりにザ・文学みたいな本読んだ。
    内面の細やかな動きや奥行き、幅、色、全てをまっすぐ記してある。ジェインの激しい感情の昂りは今後描かれるのか。
    館の主人であるロチェスターとの関係を今後どのように描いていくのか気になる。
    言葉で待って客観的にどこか遠い距離から世界を覗き、分析するように物語る主人公。

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    2025年08月22日
  • ワシントン・スクエア

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    読み進めるほど著者の精緻な心理描写がさえわたり、人の愚かさや醜さなどが浮き彫りになっていく様は、読み応えがあります。登場人物は少なく、場所もほぼワシントン・スクエアのスローパー博士の邸宅での話し。文章も会話文が多くテンポ良く進み、時折挟まれるユーモアと相まってとても読みやすかったです。ただ、『アスパンの恋文』同様に絶版なのが残念です。

    なお、本作は、『女相続人』の名で映画化されています。

    あらすじ:
    ニューヨークの町に、裕福な開業医であるオースティン・スローパー博士が住んでいました。彼には、キャサリンという優しくも地味で不器用な娘がいましたが、亡き母の美しい容貌を受け継ぐことなく、また社交

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    2025年05月28日
  • 嵐が丘 上

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    ネタバレ

    登場人物の誰にも共感できない、不幸な暴風雨みたいな物語――そう読んでいる方が多くて驚きました。というのも私は登場人物みんなに共感しつつ、たしかに不幸な物語だとは思いながらも、暴風雨の中であそこまで魂の激しいぶつかり合いが生じるのは幸福だと感じられたからです。「心の中心にいるのはヒースクリフなのよ。たとえほかのすべてが滅びても、ヒースクリフさえいればわたしは存在し続けるし、すべてがそのままでもヒースクリフがいなくなったら、宇宙はひどくよそよそしいものになって、自分がその一部だとは感じられなくなるでしょうね」

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    2025年05月12日
  • 無垢の時代

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    書き出しがすばらしい。映画の歴史大作を思わせ、まるで壮大なオペラの幕開けのようだ。しかしそれからしばらくは、19世紀後半のニューヨークの時代背景や、上流階級でのみ通じる複雑なしきたりや人間関係を詳細に描こうとするあまり、私たち現代人からすると退屈ともとられかねず、読み飛ばしたい衝動に駆られるかもしれない。

    だが、そんな読むのに忍耐が必要な描写が続くのは第一部の最後から1つ前の章の第17章まで。そこまでは何とか読み進めてほしい。なぜなら第18章以降、主人公ニューランドとエレン・オレンスカ伯爵夫人の2人が織りなす物語は、ラヴェルのボレロのようにクレッシェンドしていくからだ。
    それは私たちが思い描

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    2023年11月20日
  • ジェイン・エア (下)

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     ジェインは事あるごとに「容姿に恵まれていない」と色んな人から言われるが、そんなにブスだったのʕʘ‿ʘʔそれに「頑固」だとか性格までケチョンケチョンに貶される。
     一番腹が立つのが、牧師のセント・ジョンで、彼はジェインの命の恩人ではあるのだけれどジェインのことを「労働するように生まれた人」と言って、愛がないのにジェインと結婚して助手としてインドへの宣教に連れて行こうとした。
     セント・ジョンは容姿に恵まれているし、きれいな女の人にもモテるのに、自分の過剰な野心を「神からの使命」と勘違いした人。 
     かつてお金持ちだったロチェスター様の妻の座を狙っていたミス・イングラムのような人は容姿にも家柄に

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    2023年10月09日
  • ジェイン・エア (上)

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     ジェインは孤児。母方の叔父に引き取られたが、叔父は亡くなり、伯母と従姉妹たちにまるで「キャンディ・キャンディ」のようにいじめられる辛い日々。唯一の味方は女中のベッシーと体調が悪い時に来てくれた薬剤師さん。
     薬剤師さんの薦めもあって、叔母はジェインを「厄介払い」のために学校に入れる。
     その学校というのは、孤児院で、「贅沢はさせるべきでない」という尊大な経営者のために、食事は食べられないほど不味いものが僅かだけ出されたり、天然パーマの子が「忌まわしい巻き毛」と言われたり、ジェインの叔母から「ジェインはどうしようもない嘘つき」と吹き込まれたことを皆の前で公表されたりという酷いところだった。
     

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    2023年09月26日
  • 嵐が丘 下

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    めちゃくちゃ濃い。
    無駄な一節はひとつもない。
    いっきに読めてしまう傑作。
    エミリーブロンテ、夭折しなければ他にどんな傑作が書けたのだろう。

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    2023年09月22日
  • 嵐が丘 下

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    これから私は、草にそよ吹くかすかな風に耳をすます時を思うだろう、静かな大地に休む者達よ安らかであれ…と

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    2023年02月11日
  • 嵐が丘 上

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    騒がしい世間から隔絶したところ、人間嫌いにとって、まさに天国のような土地…
    そこで会ったヒースクロスの恐ろしく激しい愛に慄き始めた、、、

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    2023年02月11日
  • ジェイン・エア (下)

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    頑固すぎるのでは、とこちらが当惑させられることも多いジェインだが、それゆえに、自らが求め、納得の上に得た幸せに浴することができるのかもしれない。
    最後にはいつも、流されることなく、自らの決断と能力で新たな道を行く姿に、鋭い強さを感じる。

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    2023年01月16日
  • ジェイン・エア (上)

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    ヘレン・バーンズは、ジェインとはまた異なる強い意志を持っているが、どちらも決して消えない火であるのは、それを燃やし続けているのが自らの手によるからだ。
    ロチェスターの意外な告白で上巻が終わり、下巻を手に取らずにはいられない。

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    2023年01月16日
  • ジェイン・エア (下)

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    ネタバレ

    有名すぎる作品をやっと読む。
    やはり文学としては妹エミリーによる嵐が丘の方が格があるように思ったけど、こちらはストーリーの起伏が大きくてよりエンターテイメント性があるというか、分かりやすく面白い。解説によると妹たちのエミリーとアンの作品が世に出るきっかけはシャーロットの本作が成功したおかげだというから、その意味でもやっぱり文学上の重要作品。セントジョンのキャラクター付けとか、なかなかこれまで昔の文学作品で見ない感じだけどわかる!という描写だし。他にも稚拙な作品ではただ嫌な俗物と描写されそうなリード夫人とその子どもたちの描き方もすごく冷静で、ある種の同情も持って描かれていたり。
    サルガッソーの広

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    2022年12月15日
  • ジェイン・エア (下)

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    期待せずに読み始めたものの、正月に読み通す。何かの小説の主人公が、続きが気になって仕方なかったと言ってましたが、そんな感じ。
    作中人物の感じ方に共感できなかったり、考え方が古い?ときもありますが、それはそれで面白いかも。

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    2022年01月03日
  • ジェイン・エア (下)

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    ロチェスター屋敷で伏線はいくつもあった。それが露見し、ジェインはさまよう。またも苦難。しかし、最後は胸が高鳴る、見事な大団円。自分で決める女性ジェインの勝利がみなの幸福、勝利にも関係したのだ。

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    2021年06月30日
  • ジェイン・エア (上)

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    ネタバレ

    ジェイン・エアに試練は続く。
    親の死、引き取り手のいじめ、すれ違う愛。
    なかでも最後は、切なすぎる。

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    2021年06月28日
  • 嵐が丘 下

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    復讐が遂げられたかに思えたところから、一転、幸福の歯車が回り始める。
    キャサリン2世がアーンショーを肯定するところが肝か。それも文字の学習で肯定する。
    教育によって格付けされた社会が、教育によって相手を認めるようになる。一方は背伸びし、一方は膝を曲げる。

    出自も分からないヒースクリフを認めてくれたのは、始めは旦那様。次にキャサリン1世。そのキャサリンを育んだのは、旦那様とヒンドリー。切れ目のない肯定の輪がある。そこに借家人と召使いも組み込まれている。

    生きている間だけではなく、死んでからともに埋葬されるというのは一種の天国だ。それもキャサリンと最終的に結ばれてしまった、その夫を排除すること

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    2021年05月31日
  • 嵐が丘 上

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    ヒースクリフ!なんと狂気に満ちた人物造形。キャサリンを思う気持ちだけが純粋。
    不穏な空気が空中に立ちこめている。召使いが語るという手法もはまっている。

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    2021年05月27日
  • 嵐が丘 上

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    有名な小説なので、以前読んだと思っていたのは抄訳だったのかもしれない。ロックウッドが手伝のディーンからヒースクリフに関係する人々の話しを聞く、というスタイルの小説である。抄訳では、ロックウッドがディーンから話しを聞くスタイルが割愛され、ヒースクリフだけの話になっていたと思う。イギリスの屋敷についての何の知識がない人でも、翻訳ではわかり易いが、英語で読むのは難しいと思う。

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    2021年04月12日
  • 嵐が丘 上

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    ネタバレ

     19cイギリスヴィクトリア朝の小説。
     作者は有名作家三姉妹の次女、エミリー・ブロンテ。ヴィクトリア朝の小説は、栄華を極めたように見えるヴィクトリア朝期イギリスの水面下の社会問題に気付かせるためのものが多い。
     この小説の特徴は、初期の心理小説、情熱の小説(ヒースクリフとキャシーの関係)、ヨークシャーの田舎の荒涼とした丘陵地帯という舞台設定、一人称の語りである。他にも18cイギリスで流行った、恐怖による感情の揺さぶりを目指した「ゴシック小説」的要素を持つ。ゴシック要素に関しては下巻のレビューで触れたい。
     この作品の簡単な説明としては、スラッシュクロス屋敷と嵐が丘という屋敷に住むリントン家、

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    2021年02月05日