HACCANのレビュー一覧
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“お嬢様は、だいじょうぶでしょうか……。
ふだん、体を動かす機会がほとんどないお嬢様にとって、雪の山道を急ぐというのは、かなりきびしい状態だと思われます。しかも、いまは、とても動きにくそうな着物すがたなのです。
雪や水で地面はすべりやすくなっていますし、転んだりしては大変です。
そう考えて、ぼくはお嬢様の手を取りました。
「なっ、なにをするの、執事……。」
一瞬、おどろいたようすで、お嬢様はこちらをごらんになりました。
しかし、手をふりはらおうとはなさいません。
お嬢様の手は、ひんやりとしていました。”[P.125]
6巻目。
最後の雰囲気だと、ありすはゆきが言った言葉の裏を理解していて、理 -
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“「だが、くれぐれも忘れるな。最初に、おまえを拾ってやったのが、だれかということを。おまえは、どこに属するものか、ということを。……以上だ。」
翁の話が終わったので、ぼくは深く頭をさげると、座敷をあとにします。
来たときとおなじ通用門をくぐって、どこもかしこもそうじの行き届いた敷地の外に出て、やっと、全身から力がぬけました。
翁のまえでは、表情には出しませんでしたが、ぼくは内心、とてもショックを受けていました。
ぼくの役目が、スパイだったなんて……。
そんな、まさか……。”[P.25]
5巻目。
ちょっとわくわくする展開……!
これが落ち着いたら終わってしまいそう。
“「ああ、そうだ。致命 -
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“目や鼻や口といったパーツはまったくおなじなのに、つくっている表情で、実に印象というものは変わるものだなあ、と感動すらしてしまいます。
「すごくそっくりですね。入れかわってもわからないといいますか、ふたり一役のトリックができそうです。」
ふたりを見つめながら、ぼくはそんな感想をもらしました。
髪型を変え、服やくつなども交換すれば、まったく見分けがつかないでしょう。
「実はふたごだった……なんて、あなた、そんなトリック、いまどき、ありえないわよ。そんなものが通用するわけがないでしょう。」
お嬢様は片手をひらひらとさせて、あきれたようにおっしゃいます。”[P.32]
3巻目。
豪華客船良いなー凄 -
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“「人間が、悪意をもって、ほかの人間の命をうばうのよ。その行為にたいして、執事、あなたはどう感じるかしら?」
「こわい、と思います。それに、かわいそうだと……。」
「そうね。それが正常な人間の感覚よ。けれども、そうじゃない人種がいる。」
お嬢様は宙を見つめ、なにかをにらみつけるような目をなさいます。
「なんておもしろい事件だ。そんなふうに思ってしまう、呪われた人間もいるの。」
それが、お父上である秋麻呂氏なのでしょうか。
そういえば、秋麻呂氏は自分のことを「名探偵」だと言っていました。
だからこそ、お嬢様は名探偵という肩書に強い嫌悪感をしめされるのかもしれません。”[P.41]
4巻目。
あ -
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“「あなた、小さいころから、少しずれているというか、かんちがいしやすい性格だったようね。」
お嬢様はそうおっしゃると、かすかに笑みをこぼされました。
......はい、否定はいたしません。
「でも、そういう経験って、わたしにもあるわ。ほかの人間たちがふしぎだ不可解だという、密室だとか人間消失だとかの事件も、わたしにはすぐに真相を見破ることができるから、まったくもって合理的な現象でふしぎでもなんでもないと思ってしまうのよ。」
お嬢様のおっしゃっていることは、ぼくの思いちがいとは別次元の話のような気がしますが、共感していただけたようでよかったです。”
アップルタルト食べたい。
ゆきとくんは将来的 -
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“「……うむ。」
わずかにうなずくと、お嬢様は手をのばして、スコーンをつかみました。そのあいだも、書類から目をおはなしになりません。
お嬢様はベッドの上にひざを立ててすわり、書類と本を交互にごらんになりながら、スコーンにかじりつきます。
とても行儀が悪いのですが、とがめる者はだれもおりません。
このありすお嬢様こそ、二ノ宮家の当主でいらっしゃるのです。
ぼくはじっとベッドサイドに立って、お嬢様が食事を終えられるのを待ってました。
お嬢様は無言で、スコーンをほおばります。
薄暗い中、ベッドにうずくまり、何日間も同じパジャマで、髪はねぐせだらけでもじゃもじゃとあれば、そのお姿は女の子というより、野