蓮實重彦のレビュー一覧
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購入済み
必読の書
早速購入させていただいた本書は、日本映画の過去と現在を鋭く見つめる批評の傑作です。
長年、映画批評家として活躍した蓮實が、小津安二郎、溝口健二から是枝裕和、濱口竜介まで、日本映画の美学と文化的意義を深く掘り下げていきます。
映画を単なる娯楽ではなく、思想と芸術の交差点として捉える蓮實の視点を集大成した一冊となっています。
本書は三部構成で、戦前・戦後の日本映画史、個々の作品論、現代映画の課題を論じています。
特に、小津の『東京物語』の低位置カメラや溝口の『雨月物語』の映像美を、形式と感情の融合として分析する論考は、蓮實の批評の奥深さを示しています。
また、濱口竜介の『ドライブ・マイ・カー』を称 -
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衝撃の評論。
何度読んでもその衝撃は消え去らない。
何度も手に取り、そのたびに一気読みしてしまう、青春の一冊。
誰もが、蓮實重彦の生み出した魅惑の評論スタイルの模倣を試みるが、見事に失敗する。
唯一、蓮實の教え子である松浦寿輝のみが、そのスタイルを継承し、磨きをかけたと言える。
松浦のみが皇位継承ができたのは、彼が詩人であり、評論家であり、フランス文学者で、蓮實並にずば抜けた頭脳を持っているからだ。
ただ、文体を真似し、スタイルを真似するだけでは、悲しい猿真似に終わってしまう。
蓮實重彦の精神的そのものを継承しなければ、本質的な意味で、文体もスタイルも継承し得ないのだ。
過去の漱石論を鮮や -
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蓮實重彦によるジョン・フォード論。いつも通りの蓮實重彦節でジョン・フォードの主要作品を中心に、馬、投げるとこと、囚われによる自由、白いエプロンなどなどについて語りつつ、ジョン・フォードの映画の魅力を語る。当然ながら映画の魅力とはストーリーに還元されるものではなく、その映像、映像の連なりなどにあるわけで、それがいつもの蓮實節で語られる。小津論のときもそうだったけれど、映画をみる喜びとは本書で語られているような体験であって、蓮實重彦は小津やフォードの映画をみる喜びをその独特な表現で語ってくれていて、本書を読んだ読者はフォードの映画をみたくてたまらなくなることは必定だと思う。
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Posted by ブクログ
小津の研究本は数多出ている。フランスでも人気だという。ローアングルなども言われ尽くしている。だからこそ実際に映画を見るのが一番。「東京物語」が傑作なのは周知だか、自分はカラー作品になってからの小津が好き。くすんだ赤をワンポイントにした画面がいい。また、今となっては貴重な昭和の衣装、街並み、会話が逆に新鮮。
好きな作品は遺作となった「秋刀魚の味」。結果として最後にふさわしい無駄のない集大成な作品となっている。好きなシーンは「彼岸花」の十国峠でのやりとり。家族旅行で一番幸せな時。その次のシーンでは娘の結婚話が出て、幸せな家族の崩壊が始まる。 -
Posted by ブクログ
本当に時間がかかったが、ようやくこの大書を読破した。明らかにこの本を読む前と比べて映画の見方が変わった、というかふくらんだ。これまでのように説話論的な機能のみを求めて画面に注意を向けていると、見えていないものがあまりに多くなってしまいかねない、そんなリスクをはじめて認識した。
「記念写真をとってしまったゆえに、その家庭は崩壊せざるをえない」・・・記念撮影は、小津の映画の説話論的な構造にあって、別れという主題体系と深く結びついている、との指摘が特に強力。無論、自分はそんな見方をしたことがなかったから、インパクト大。
このような論旨が盛りだくさんで、本当に重く読み応えのある本でした。