Posted by ブクログ
2016年06月09日
フロイトに始まる精神分析の歴史、精神科医としての臨床経験、日本における研究、米国の診断統計マニュアル DSM-III などに基づいて、独自のパーソナリティ障害の独自分類を提案する。独自と言っても、それほど奇抜なものではなく、日本固有の事象も加味した DSM-III +α くらい。
様々な症例で繰り...続きを読む返されるパターンは、年齢相応の生活を送っていた人が、(就職や結婚など)些細な社会的ストレスで均衡を崩し、神経質から精神病へと転落する姿だ。それは、ちょっとした完璧主義者であるとか、やや過剰気味な楽天家であるといった「パーソナリティ」が、「パーソナリティ障害」へと変化していく過程でもある。こうした症例を多く読むと、パーソナリティ障害は決っして他人事であったり、珍しい話ではなく、薄皮一枚隔てただけの世界だということを認識させられる。ちなみに僕は典型的な schizoid だと思う
近年では、反社会性パーソナリティを始め、多くの精神疾患は遺伝的な脳機能に依存することが判ってきていて、フロイトの学説は完全にその役割を終えている(し、著者もそのことは知ってるはずである)が、本書の記述はところどころにフロイト的な解釈から脱却できていない記述が目立ち、そこだけあからさまに論理が飛躍的である。