英米文学の専門家が、ハーレクイン・ロマンスについて書いた本。ハーレクイン・ロマンスは読んだことがなかったが、タイトルは知っているわけで、なぜ、読んだこともないし、周りで話題になったこともないのに、有名なのかがわかった。学術的に分析がなされており、ステレオタイプ的な表現もあるのかもしれないが、面白く読
...続きを読むめた。ハーレクイン・ロマンスについてかなり詳しくなった気がする。
「ハーレクイン・ロマンス:「恋は本屋さんで売っている」というキャッチ・コピーで日本でもお馴染みの、カナダ生まれの翻訳ロマンス叢書である。現在は「ハーレクイン・ロマンス」に加え「・イマージュ」「・ディザイア」「・セレクト」「シングルタイトル」といった様々なバリエーションがあり、各バリエーションとも月2回、5日と20日に3冊程度の新刊が出るので、合計すると月に30冊以上、年間で言えば400冊ものカナダ産ロマンス小説が日本の愛読者に提供されている」p10
「ハーレクイン・ロマンスの読者はほぼ100%、女性に限定されているので、男性にとってはあまり縁がない」p10
「(内容はほとんどどれも、単純なハッピーエンドの恋愛小説)世の女性たちは本当にこんなロマンス小説を読んで夢見心地になっているのか?と、男の私からすれば目が点にならざるを得ないのだが、売れているのである。それもとんでもない数が。何しろハーレクイン・ロマンスはオリジナルである英語版のほかに28か国語に翻訳され、日本を含む世界114か国で売られていて、これまでに累計67億部が売れている。書店の片隅の専用ラックにひっそりと並べられたハーレクイン・ロマンスは、実はとんでもないシロモノだったのである」p19
「1957年、イギリスのミルズ&ブーン社とカナダのハーレクイン社は紳士協定を結び、両者の業務提携が始まった。提携後、初の出版物となったのは、ハーレクイン叢書407番 アン・ヴィントンの『ブワンボの病院』という病院を舞台にしたロマンス小説」p26
「ミルズ&ブーン社とハーレクイン社との関係は、イギリスのミルズ&ブーン社からハードカバー本として出版されたロマンス小説の再版権をカナダのハーレクイン社が買い取り、それをペーパーバック化して「ハーレクイン・ロマンス」という名称の下、カナダで売り出すというものであった」p27
「有名な1人の作家よりも大勢の無名作家」p34
「ミルズ&ブーン社が「1週おきに2冊から4冊の本を出版する」という過密な出版スケジュールを確立したのは、貸本屋を訪れる女性顧客の心を捉えるための重要な戦略だったのである」p36
「(内容の均質化)一般にロマンス小説を愛好する女性読者というのは、先の見えないハラハラ、ドキドキのストーリー展開を嫌う。ロマンス小説にそんなものを期待していないのだ。彼女たちがロマンス小説に求めているのは「たとえどんな状況であろうとも、いずれヒロインはヒーローと恋に落ち、結婚して、幸せになる」という安心感であって、その安心感を多少なりとも揺るがすような要素は要らないのである」p37
「(アメリカ市場)1965年、年間600万部のセールスだったハーレクイン・ロマンスが、毎年35%の伸び率で売り上げを伸ばし、77年にはついに1億部の大台に乗るところまで急成長を遂げた」p65
「(公式・約束事)大まかにいえば「ヒロインがヒーローに出会い、二人は障害を乗り越えて恋に落ち、そして結婚する」ということに尽きる」p66
「ヒロインは、20歳そこそこの若い女性と相場が決まっている(読者はヒロインより常に経験豊富ということになる)」p67
「ヒーローは、すべての登場人物の中で一番背が高い。しかも背が高いだけでなく、胸板も厚い。実質、ハーレクイン・ロマンスでは筋骨隆々のマッチョマンしかヒーローになれない」p72
「(釣り合わないカップルであること)どう見ても釣り合わない二人、どう見ても出会いのなさそうな二人、どうみても気が合わなそうな二人、そんな二人がなんと恋に落ちる、というところがいいのである」p73
「(3条件)「ヒロインの視点から物語が語られること」「ヒロインの内面の美しさによって高嶺の花のヒーローの心を捉えること」「ヒーローとの幸福な結婚により、ヒロインの社会的・経済的地位が上昇すること」」p79
「(ハーレクイン・ロマンスの成功)「ハーレクイン・ロマンスはどれも同じであるから、読者はすぐに飽きて買わなくなるであろう」ではなく「どれも同じであるから、それを好む読者は安心して継続的に買っていくであろう」」p81
「(パミラ)上流階級として地位もお金もある男が、貧しい平民の娘と結婚するのであるから、二人の結婚は政略結婚ではなく恋愛結婚だったのだ。これは当時としては、それこそビックリものである」p100
「読者を赤面させない上品なロマンス小説が今、最も受け入れられるのは、東欧・中東・アフリカ・アジア市場であり、とりわけ巨大な中国市場である」p181