あらすじ
寝込んでいる若だんなのもとに、妖狐の老々丸と笹丸が訪ねてきた。老々丸は、力の尽きかけた笹丸を若だんなの祖母・大妖おぎんのいる神の庭で暮らせるようにしてほしいという。だが、おぎんに知らせる術はない。困った三人は名僧・寛朝の力を借りようとするが、そこでは化け狸にまつわる信じられない事件が待っていた。そして笹丸に隠された秘密とは!? 優しさと切なさにあふれるシリーズ第21弾。(解説・南沢奈央)
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Posted by ブクログ
しゃばけシリーズ第21弾。近年はマンネリの中でも一ひねりを加えていた感があるが、本作は通常運転というか、敢えてマンネリに徹したのか?
「おくりもの」。薬種問屋・長崎屋の取引先が、贈り物をしたいと藤兵衛に相談してきた。悩んだ末に、贈り先の意向を確認しようというだが、話がどんどん贈り物から逸れていき…。そもそもの背景には、現代に通じる時事的なテーマを感じる。
表題作「こいごころ」。読み始めてすぐには、なせこのタイトルなのかわからないだろう。妖狐の老々丸と笹丸の願いの裏にある事情とは。こういう切ないパターンは、何回かあった気がする。狸を巡るドタバタは必要だったのか?
「せいぞろい」。一太郎の誕生日を盛大に祝おうとしたら、正体する妖がどんどん増えてオールスターの様相に。会場に選ばれたのは…。「こいごころ」から一転、単純に楽しめる1編だろうか。ある意味、盗賊どもは災難であった。
「遠方より来たる」。長崎屋と一太郎、そして通町界隈にとって一大事。長年地域を支えた源信医師が、隠居することになった。当然、長崎屋の意向が跡目を決めることになるが…適任と言うべきか、またかよと言うべきか。
本作の一押し「妖百物語」。百物語という怪談方式には触れないが、当時江戸で流行していたそうで、一太郎たちも招待されてしまう。当然ただで済むわけがなく…。百物語の流行は、一気に下火になりましたとさ。チャンチャン。
極端に重い話も、一太郎が酷い目に遭う話もなく(十分に大騒動だが)、読みやすいけど、熱心なファンに響いたのかどうか。シリーズ第21弾にしてまだまだ通過点という感がある。一太郎のかかりつけ医が変わったことが、今後を左右するか?
京極夏彦さんのあのシリーズと、どちらが先に完結するだろう。