あらすじ
どんなに時代が進んでも、この世から「いじめられっ子」は無くならない。デブな中学生・ハルユキもその一人だった。 彼が唯一心を安らげる時間は、学内ローカルネットに設置されたスカッシュゲームをプレイしているときだけ。仮想の自分(アバター)を使って≪速さ≫を競うその地味なゲームが、ハルユキは好きだった。 季節は秋。相変わらずの日常を過ごしていたハルユキだが、校内一の美貌と気品を持つ少女≪黒雪姫≫との出会いによって、彼の人生は一変する。 少女が転送してきた謎のソフトウェアを介し、ハルユキは≪加速世界≫の存在を知る。それは、中学内格差(スクールカースト)の最底辺である彼が、姫を護る騎士≪バーストリンカー≫となった瞬間だった――。 ウェブ上でカリスマ的人気を誇る作家の、第15回電撃大賞<大賞>受賞作!実力派が描く未来系青春エンタテイメント! 巻末には、気鋭の作家・川上稔による超豪華な短編小説 & ビジュアル解説企画付き!!
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Posted by ブクログ
最初は取っ付き難い印象が非常に強かったのだが、100ページを超えた辺りからそれなりに読めるようにはなった。電撃大賞<大賞>受賞作品。
ネットツールが進化し国民誰もが首に『ニューロリンカー』と呼ばれる携帯端末を装着している近未来が舞台。主人公のハルユキはその太った容姿から虐められてばかりの無能少年だった。しかし、ある日黒雪姫と呼ばれる生徒会副会長から声を掛けられる。それが少年を変えていくきっかけとなっていく・・・。
最近ではオンラインゲームを舞台にした系統の作品ではネット上の出来事が現実に影響して、やれ死ぬだとかやれ昏睡状態に陥るとかそんな類の設定が多いように思えるのだが、本作ではネット上に広がる加速空間での出来事は一切現実には影響しない。あくまでもちょっと過激なオンラインゲームとして扱われている(同著者の別作品では上記の様な設定が使われているが)。そういったストイックな部分は私的に評価したくなってしまったりする。
この作品で扱われている『加速』。これにも上手い設定が使われている。超高速的に動こうものならその後は疲労状態で連続使用などできないという設定が他の作品では見られるが、本作ではポイント制となっており、ポイントがある限り何度でも加速が使えるようになっていることは驚きだった。だから絶対に失敗したくない時などは遠慮無く『加速』すれば出来ないことなどなくなってしまうのだ。一度でもこの美味しさを知ってしまえばおいそれと手放すことはできなくなってしまう。だからこそ、ここでポイントを得る為の設定が上手く活きて来るのだ。
ライトノベルでは珍しい太っちょで虐められっ子という設定には当初どう反応すればよいのかと戸惑っていたのだが(特にこいつがなぜかモテてしまっていたりとかな!)、中盤辺りからの形振り構わず誰かのために頑張りたいというスタイルを発揮してからは素直に共感できるような魅力あるキャラクターに変貌していたのは驚き。
ただ、登場キャラクターのほとんどが中学生以下というある意味閉鎖的な世界観の中でどれだけ広がりのあるストーリーを持たせられるかは疑問だけれど、そういった点も含めて今後も注目していきたい一品と思えた。