あらすじ
知力ではギリシア人に劣り、体力ではケルトやゲルマン人に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣るローマ人だけが、なぜ巨大な世界帝国を繁栄させることができたのか? ささやかな建国伝説から始まる一千年の興亡史がいま幕を開ける。もはや古典といっても過言ではない歴史大作シリーズの電子版が待望の配信開始! ※当電子版は単行本第I巻(新潮文庫第1、2巻)と同じ内容です。地図・年表なども含みます。
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Posted by ブクログ
【後編3 歴史的同時性の時代】
同時性における復帰摂理延長時代の「ローマ帝国迫害時代」。メシヤ降臨準備時代部分にも関わる。キリスト教史をローマ帝国抜きで語ることは出来ない。はじめはキリスト教徒に対する迫害者として、のちは保護者として。コルプスクリスティアヌムという言葉は覚えておくべき。ヨーロッパ共同体の根っこにある3つの精神のことである。ギリシャの哲学、ユダヤの宗教、ローマの法。この三つの現実的精神的要素が共同体の中に根付き、世界史の中心ヨーロッパが築き上げられていく。
ローマ帝国の歴史を学ぶにはいろいろとあるが、ここでは現代的に著名な「ローマ人の物語」を取り上げたい。塩野七生の著である。小説家が書いたローマ史なので、歴史家からすればいろいろと言いたい事があるようだが、そういったことを差し引いても、ローマ史を学ぼうとするときにはこの読みやすさがアドバンテージになる。難易度を★5としたのは、その長さ(大型本で15巻、文庫本では43巻)故であって、内容は読みやすい。簡単に書いてあるということよりも、ドラマチックで非常に読ませる。
同時性のみではなく、メシヤ論、イエス路程などを学ぶ際のバックグラウンドとしても重要。著者の情熱も伝わりグッドである。
ローマ人の物語(大型本:15巻、文庫本:43巻)
Posted by ブクログ
初代王ロムルスから最後の王「尊大なタルクィニウス」。共和制となったローマと王位復活をねらうタルクィニウスの戦い。周囲のエトルリア人を巻き込んだ戦い。タルクィニウスを追放した共和制の父ブルータス、追放の発端となったルクレツィアの自殺。ブルータスの2人の息子の陰謀。ローマから派遣されたギリシアへの視察団。当時のギリシア世界の様子。
Posted by ブクログ
ローマの事を全く知らない人間が読んでも、グイグイ引き込まれる文章で、漫画を読むような感覚で歴史理解を深める事ができた。長丁場になるが全巻読んでみたいと思う。ローマ建国からカルタゴ(現 北アフリカ)との戦争であるポエニ戦役勃発前までが描かれる。ローマに最初に拠点を築いたのは所謂「ならず者集団」で、サビニ人の女性たちを拉致して結婚して子孫を残したというのは驚きであった。共和制移行後のパトリキ(貴族)中心の政治から平民を取り入れた政治体制の確立(リキニウス法)や同盟国出身の者に違和感なく最高権力であるコンスル(執政官)の地位を与えるなど、外部リソースの活用の上手さがローマが今後ライジングしていくことのバックボーンになっているのだと感じた。
ローマ興隆の要因
一部ご紹介します。
・ペリクレス「貧しいことは恥ではない。だが、貧しさから脱出しようと努めないことは恥である。」
・プルタルコス「敗者さえも同化する、ローマ人の開放的な性向こそローマ興隆の要因。」
・多神教では、人間の行いや倫理道徳を正す役割を神に求めない。多神教の神は、努力を惜しまない人間を側面から援助する守護者。
・多神教では、他者の神を認める。それは、他者の存在を認める寛容の精神を育む。
・国民の義務は、税金を払うことである。もうひとつの義務は、国を守ることである。
・宗教は、それを共有しない人との間では効力を発揮しない。だが、法は、価値観を共有しない人との間でも、効力を発揮できる。
・戦争は、それがどう遂行され、戦後の処理がどのようになされたかを追うことによって、当事者である民族の性格が実によくわかるようにできている。歴史叙述に戦争の描写が多いのは、戦争が歴史叙述の、言ってみれば人間叙述の格好な素材であるからだ。