【感想・ネタバレ】棲月―隠蔽捜査7―(新潮文庫)のレビュー

同じキャリア警察官の主人公「竜崎」と、幼馴染「伊丹」の物語。
とにかく「竜崎」のキャラ設定が秀逸!万事の『原理原則』に忠実で、しがらみの多い警察機構の中、ただひたすら『正論』『理屈』を武器に超合理的に全てを進めていく姿が痛快になってくると、あなたは立派な「竜崎」ファンです。堅物過ぎてヤな奴なのは否めませんが、対照キャラの「伊丹」が、それだけじゃないことを読者に説明してくれます。
的確な判断と部下への指示。こんな上司なら一生ついていきたいっす(かなり堅苦しいけど)。
ドラマ出演者が形容したのは「警察版 半沢直樹」。主人公のキャラは全く違えど、組織内の権力争いとスッキリする読後感は確かに似ているかも。1巻ごとの完結ですが、続巻も読みたくなること必至!そして続巻も期待以上です。(書店員・ラーダニーバ)

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Posted by ブクログ 2023年07月22日

途中7巻だけ読み落としていた!ので寄り道。大森署長としての最後の大仕事。私鉄と銀行のシステムがハッキングにあい次々とダウンしていく。大森署署長・竜崎の判断で、いち早く署員を鉄道会社、銀行に向かわせる。一方警視庁の生安部長からの苦情。しかし竜崎は一切妥協しない。さらに管内で殺人事件が発生、非行少年がリ...続きを読むンチされ殺害される。2つの事件がまさかのリンク。竜崎と大森署署員の事件に関するフランクなやり取りから犯人の糸口が見つかっていく。左遷された竜崎の成長、息子・邦彦の旅立ち、冴子の家族愛、見どころいっぱいでした。⑤

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Posted by ブクログ 2021年06月01日

今野敏「隠蔽捜査」シリーズ第9作目(2018年1月単行本、2020年8月文庫本)、長編集としては7作目だ。
竜崎が大森署署長としての最後の物語。1作目だけが警察庁長官官房総務課長としての物語で2作目以降は全て警視庁大森署署長としての物語だ。

私鉄のシステムダウンで電車が止まった。大森署の管内を通っ...続きを読むているが本社があるのは高輪署管内だ。管轄外のその私鉄の本社まで捜査員を行かせて原因を聞いてこさせるように竜崎は指示を出す。
時を空けずに都市銀行がシステムダウンする。本店があるのは丸の内署管内。ここにも竜崎は捜査員の派遣の指示を出す。派遣されたのはITに詳しい生活安全課の田鶴喜久夫巡査部長だ。
竜崎は同時サイバーテロの犯罪の可能性を考えていた。所轄も本部も動いていないのであれば管轄なんて関係ない、捜査で事実を掴むことを優先すべきだと。
当然クレームが入る。まず第二方面本部の弓削本部長、次に警視庁生活安全部の前園部長だ。いづれも管轄外が理由で引き揚げの命令だ。弓削には方面本部長としての役目を果たせと逆要求し、前園には事情が判るまですぐには引き揚げさせないと拒否する。

そして今度は大森署管内で少年リンチ殺人事件が発生、大森署に捜査本部が設置される。殺害されたのは玉井啓太18歳、札つきの不良で、恐喝で半年の少年院送致の後、出所したばかりであった。
玉井グループの構成員3人を任意で事情聴取するも何かを恐れて供述拒否する。調べても暴力団とも半グレ組織とも関係なさそうだった。
調べていくうちに彼らが恐れているのは「ルナリアン」という都市伝説となっている正体不明の人物だとわかる。また玉井は自分が虐めていた芦辺雅人16歳に嵌められたと言う情報も入ってくる。

そして3件目のサイバーテロが起こる。3件目は文部省ホームページへのサイバー攻撃。まるで自分の力を見せつけているかのようだ。
前園の部下でサイバー対策課の風間課長から竜崎に田鶴をサイバー犯罪専任チームに参加協力の要請を受け、田鶴を行かせる。田鶴は優秀でチームで力を遺憾なく発揮するが、竜崎には知り得た情報を報告していた。
竜崎は田鶴からルナリアンというのは元ハッカーで、3件のサイバーテロ事件の犯人はそのルナリアンではないかと聞かされ、少年リンチ殺人事件にも関与していると推測する。そしてルナリアンは芦辺雅人だと断定する。芦辺が玉井グループ3人を操り玉井を殺害させたと。

3件のサイバーテロ事件と少年リンチ殺人事件を同時に解決した竜崎に前園生安部長も弓削方面本部長も屈服し表敬訪問するのであった。そして風間課長も野間崎管理官と同様に竜崎シンパになっていた。
竜崎が神奈川県警の刑事部長に赴任、大森署を去る日、大森署署員全員が制服で敬礼するシーンは最初に大森署に赴任した時の何か歓迎されていない雰囲気と比較して、感動で胸が熱くなった。是非これからも続編がずっと続いて欲しいと思う。

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Posted by ブクログ 2024年03月02日

2020年(発出2018年) 430ページ
 
大森署長・竜崎伸也、最後の事件です。

今回の事件、今までの事件に比べると盛り上がりに欠けます。サイバー犯罪という性質上、はっきりと目に見えるものではないためか、地味な感じでした。非行少年の暴行殺害事件も、目に見えないものに怯えている、その恐怖感がいま...続きを読むいち伝わらなかった。正直、最初の方が珍しく退屈に感じました。

しかし、今作は、竜崎伸也と大森署員たちのお別れシーンが最大の山場なんです。
ちょっと涙が出そうになったんだけど、誰よりも感傷的になっていたはずの竜崎があまりにも淡々としていたので、結局涙は出なかった……

さあ、神奈川県警が竜崎を待っています。

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Posted by ブクログ 2023年09月30日

とうとう大森署を去る事が決まり、最後の事件と対峙する。誰に対しても平等、時間を無駄にしないをモットーに今回もみんなを籠絡していきます。次回から、また新しい場所で新しいメンバーを次々と籠絡していく様を見るのが楽しみです。

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Posted by ブクログ 2020年08月19日

 『隠蔽捜査』シリーズ長編第7作。降格人事で所轄の大森署に着任後、様々な事件や人間たちと向き合ってきた竜崎。彼の信念は警察庁長官官房時代から揺るぎないが、大森署勤務が長くなり、自身の変化を自覚しつつあった。

 鉄道や銀行のシステムダウンが相次ぎ、事件の影を感じた竜崎は、独断で大森署員を動かす。警視...続きを読む庁の生活安全部長が薩摩弁で怒鳴り込むが、もちろんあっさり引き下がる竜崎ではない。一方、大森署管内では非行少年の殺害事件が発生した。

 同時進行する複数の事件と、警察組織内のせめぎ合い。まさにこのシリーズの王道的展開だが、今回の大きな注目点は、竜崎に異動の噂が持ち上がること。刑事部長の伊丹から告げられた竜崎は、かつてないほど動揺していた。

 そう、署員とも気心が知れたここ大森署は、竜崎にとって居心地がよい場所になっていたのだ。警察庁勤務では決して味わったことがない感覚。妻は、あなたは成長したのだと言う。はっきり口には出さないが、大森署を離れるのが名残惜しいことを認めるのは、何だか気恥ずかしい。

 ここで指揮を執れる日は残り少ない。無駄に張り切るわけではなく、あくまで自然体。部下の声に耳を傾ける柔軟性も、すっかり身についた。いくらネット時代とはいえ、にわかには理解しがたい構図が、竜崎には見えてきた。

 しかし、肝心の事件そのものは、過去作品と比較してあっさりしているというか、スーパー署長の最後の仕事にしてはやや小粒な印象を受けた。もっと大事件に発展する前に、芽を摘んだと言えるかもしれないが。

 さて、大森署を離れた竜崎は、神奈川県警刑事部長に着任する。そういえば神奈川県警に乗り込んだこともあったなあ。彼は本来キャリアだが、大森署での功績の数々と、一時的に対立しても敵は作らなかったことが、この人事の一因だろう。

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Posted by ブクログ 2023年10月27日

【321冊目】裏表紙に書いてあるとおり、サイバー犯罪の回で、かつ、竜崎の大森署最後の事件。

 とはいっても、サイバー犯罪に関する知識はまったく必要ないくらい事件そのものはあっさり描写されたており、どちらかというとメインは少年がリンチで殺された事件。

 まず、警察小説、犯罪小説、ミステリ好きとして...続きを読む言わせてもらうと、話の筋と犯人がちょっとご都合主義に走りすぎではないかと思います。竜崎の推論も「こう考えればしっくりくる」ぐらいのもんで、そういう感想にあっさり説得されちゃう周りもどうなの、と。さすがに戸高ぐらいはもっと疑ってくれよと思いました(笑)

 ただ、このシリーズの魅力はそこじゃないのです。はい、このシリーズのファンなのでそれは分かっています!合理主義の竜崎が警察のめんどくさい慣例やしがらみをバサバサ切っていき状況を打破していくところに、我々読者はカタルシスを感じるのです。そして、もう一つの魅力が、鉄面皮の竜崎が署員との交流や事件を通じて柔らかな人間性を得ていく過程。今回も、大森署から離れることに寂しさを覚える竜崎に、我々読者はにやにやしながら、「うんうん、分かってるよ。竜崎は成長したんだよね」とうなずいてしまうのです!その意味で、シリーズの面白さは今回も健在です!

 ただ、ハッカーや不良少年の描き方があまりにも典型的にすぎ、また、竜崎の妻も昭和型刑事の妻すぎることが気になり始めました、、、これまで気になることはなかったのですが、シリーズが進むのに合わせて現実の世界はより多様化しています。そのため、物足りなさを感じてしまいました。シリーズ第1作の「隠蔽捜査」は斬新なインパクトを与える作品でしたが、いまや水戸黄門的カタルシスを提供する読み物となってしまいました。その意味で、もはや「おじさん小説」と化しているのかもしれません。

 あ、面白いんですけどね!

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