あらすじ
鉄道のシステムがダウン。都市銀行も同様の状況に陥る。社会インフラを揺るがす事態に事件の影を感じた竜崎は、独断で署員を動かした。続いて、非行少年の暴行殺害事件が発生する。二件の解決のために指揮を執る中、同期の伊丹刑事部長から自身の異動の噂があると聞いた彼の心は揺れ動く。見え隠れする謎めいた“敵”。組織内部の軋轢。警視庁第二方面大森署署長、竜崎伸也、最後の事件。(解説・増田俊也)
※本作品は、2018年発売の単行本版「棲月―隠蔽捜査7」を文庫化した作品となります。重複購入にご注意ください。
同じキャリア警察官の主人公「竜崎」と、幼馴染「伊丹」の物語。
とにかく「竜崎」のキャラ設定が秀逸!万事の『原理原則』に忠実で、しがらみの多い警察機構の中、ただひたすら『正論』『理屈』を武器に超合理的に全てを進めていく姿が痛快になってくると、あなたは立派な「竜崎」ファンです。堅物過ぎてヤな奴なのは否めませんが、対照キャラの「伊丹」が、それだけじゃないことを読者に説明してくれます。
的確な判断と部下への指示。こんな上司なら一生ついていきたいっす(かなり堅苦しいけど)。
ドラマ出演者が形容したのは「警察版 半沢直樹」。主人公のキャラは全く違えど、組織内の権力争いとスッキリする読後感は確かに似ているかも。1巻ごとの完結ですが、続巻も読みたくなること必至!そして続巻も期待以上です。(書店員・ラーダニーバ)
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
サイバー犯罪と殺人事件が交錯した今作であり、竜崎署長最後の事件。
少しリアルなサイバー犯罪が絡んでおり面白かった。アカウントの乗っ取りを使った犯罪など、これから増えそうな犯罪を題材にしており、面白かった。
完璧と思える犯人であってもミスをするし、それを優秀な捜査員が発見するというのは、良いフレーズだった。
Posted by ブクログ
途中7巻だけ読み落としていた!ので寄り道。大森署長としての最後の大仕事。私鉄と銀行のシステムがハッキングにあい次々とダウンしていく。大森署署長・竜崎の判断で、いち早く署員を鉄道会社、銀行に向かわせる。一方警視庁の生安部長からの苦情。しかし竜崎は一切妥協しない。さらに管内で殺人事件が発生、非行少年がリンチされ殺害される。2つの事件がまさかのリンク。竜崎と大森署署員の事件に関するフランクなやり取りから犯人の糸口が見つかっていく。左遷された竜崎の成長、息子・邦彦の旅立ち、冴子の家族愛、見どころいっぱいでした。⑤
Posted by ブクログ
ついに竜崎署長が異動になってしまった。大森署での活躍は大いに楽しませてもらいました。門外漢であるコンピュータもうまく人を使い解決していました。更なる活躍に期待です。
Posted by ブクログ
2020年(発出2018年) 430ページ
大森署長・竜崎伸也、最後の事件です。
今回の事件、今までの事件に比べると盛り上がりに欠けます。サイバー犯罪という性質上、はっきりと目に見えるものではないためか、地味な感じでした。非行少年の暴行殺害事件も、目に見えないものに怯えている、その恐怖感がいまいち伝わらなかった。正直、最初の方が珍しく退屈に感じました。
しかし、今作は、竜崎伸也と大森署員たちのお別れシーンが最大の山場なんです。
ちょっと涙が出そうになったんだけど、誰よりも感傷的になっていたはずの竜崎があまりにも淡々としていたので、結局涙は出なかった……
さあ、神奈川県警が竜崎を待っています。
Posted by ブクログ
とうとう大森署を去る事が決まり、最後の事件と対峙する。誰に対しても平等、時間を無駄にしないをモットーに今回もみんなを籠絡していきます。次回から、また新しい場所で新しいメンバーを次々と籠絡していく様を見るのが楽しみです。
Posted by ブクログ
【321冊目】裏表紙に書いてあるとおり、サイバー犯罪の回で、かつ、竜崎の大森署最後の事件。
とはいっても、サイバー犯罪に関する知識はまったく必要ないくらい事件そのものはあっさり描写されたており、どちらかというとメインは少年がリンチで殺された事件。
まず、警察小説、犯罪小説、ミステリ好きとして言わせてもらうと、話の筋と犯人がちょっとご都合主義に走りすぎではないかと思います。竜崎の推論も「こう考えればしっくりくる」ぐらいのもんで、そういう感想にあっさり説得されちゃう周りもどうなの、と。さすがに戸高ぐらいはもっと疑ってくれよと思いました(笑)
ただ、このシリーズの魅力はそこじゃないのです。はい、このシリーズのファンなのでそれは分かっています!合理主義の竜崎が警察のめんどくさい慣例やしがらみをバサバサ切っていき状況を打破していくところに、我々読者はカタルシスを感じるのです。そして、もう一つの魅力が、鉄面皮の竜崎が署員との交流や事件を通じて柔らかな人間性を得ていく過程。今回も、大森署から離れることに寂しさを覚える竜崎に、我々読者はにやにやしながら、「うんうん、分かってるよ。竜崎は成長したんだよね」とうなずいてしまうのです!その意味で、シリーズの面白さは今回も健在です!
ただ、ハッカーや不良少年の描き方があまりにも典型的にすぎ、また、竜崎の妻も昭和型刑事の妻すぎることが気になり始めました、、、これまで気になることはなかったのですが、シリーズが進むのに合わせて現実の世界はより多様化しています。そのため、物足りなさを感じてしまいました。シリーズ第1作の「隠蔽捜査」は斬新なインパクトを与える作品でしたが、いまや水戸黄門的カタルシスを提供する読み物となってしまいました。その意味で、もはや「おじさん小説」と化しているのかもしれません。
あ、面白いんですけどね!