北岡伸一のレビュー一覧
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明治維新を否定的に捉える過激で感情的な原田伊織氏の本を読んだ後なので、北岡伸一氏の資料に基づく冷静な学者としての見解は対照的であった。
確かに倒幕は下級武士たちが権力奪取を狙ったクーデターであり、そこにテロリズムと言われるようなやり過ぎな行為もあったのだと思う。
ただ、若い下級武士の政権であったからこそ、廃藩置県、地租改正などで旧来の体制を完全に作り変える、短期間での富国強兵を実現できたのは間違いないと思う。また柔軟な思考で必死で勉強したからこそできた事。
大久保利通や伊藤博文といった優れたリーダーが、意志と能力のある人の意見を集めて手続き論や世論の支持は二の次として取り組んだのが明治維 -
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著者の北岡伸一さんは東京大学法学部教授、日本政府国連代表部次席代表や国際大学理事長、JICA理事長、政策研究大学院大学客員教授と歴任されており、日本の外交を最もよく知る人の一人である。
本書は北岡さんの実際に訪れた国での経験をベースに、日本の外交がどうあるべきか、大国とどのように付き合っていくべきなのかを記述している。地政学について造詣が深いわけではない私が読んでも理解しやすく、読みやすい本である。地政学ビギナーが初めに手に取る本として、とっつきやすくていいのではないか。
外交は二国間で語られることが多い。例えば、日米関係、日中関係、日露関係、日韓関係など。しかし本書では、外交がマルチになって -
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非常に勉強になる良書。読み終わると、確実に知識が増え、少し世の中がクリアに見える。地政学の重要性は、ロシアによるウクライナ侵攻でまさに感じている所だが、我が国にしても、近隣諸国との関係性には常から課題を抱えたままだ。
ランドパワー、シーパワーという用語に加え、ハートランド、それを巡って衝突し易いリムランドの位置づけ。ハイブリッド戦争、クリミア併合からウクライナ危機。アフリカの角。国際保健協力の目的まで。物理的距離から、各国の思惑や多様な制度上の繋がり。複雑化する社会で、いかに自衛し、利害を調整していくのか。
戦争を避ける手段は、決して降伏ではない。知ることから、逃げない事が重要だ。 -
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政治史や外交史の碩学である著者の明治維新論。1912年9月、まだ無名のジャーナリストであった石橋湛山(当時28才)が『東洋時論』(東洋経済新報社が出していた雑誌)で明治時代の最大の事業は、日清日露の戦争に勝利し、植民地を拡大したことではなく「政治、法律、社会の万般の制度および思想に、デモクラチックの改革を行ったことにあると考えたい」と書いていることを紹介しつつ、著者も湛山の意見に賛成であると言う(p.11)。著者は講座派的な明治維新を低く評価する立場を批判しつつ、明治維新革命の意義を丁寧に世界史的な文脈の中で考えていく。現在、JICA理事長として感じている途上国の発展の困難さの実感が背後にある
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[unknownからUN knownへ]ときに期待をもって、ときに失望をもって語られる国際連合。次席大使として、アカデミックの分野から国連における実務の分野に飛び込んだ著者が目にしたものとは、そして日本が国連でなすべきこととは......。実体験を踏まえて書かれた国連の入門書です。著者は、日本政治史及び外交史を専門とされている北岡伸一。
概説的な紹介と著者自らの体験談が一冊に収められているため、多角的な視点から国連について学ぶことができます。巨大すぎて何が行われているのかわかりづらい組織であることは間違いないのですが、その巨大さが何から構成されていて、どのような役割を果たしているかの一端は -
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国連次席大使を務めた北岡伸一氏の、国連に関する著作。
もっともinternationalで一番のマルチ外交の場である国際連合における、「政治力学」を描き出してある本である。日々の安保理における活動や、安保理改革運動についての記述は実に興味深い。
中国に対する北岡先生流の反論、北朝鮮問題に対するアプローチは、まさに北岡伸一「らしい」記述であり、北岡伸一個人としてのハッキリとした態度を示すあたり、単純な保守とは一線を画していて実に気に入っている。決して思考停止には陥らないこと。そういったことが非常に重要であることを気づかされる。
気軽に手に取れて、北岡氏の思考を丁寧に読むことができる貴重な本 -
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幕末好きにも楽しめる本。
明治維新は、「下級武士による国家創造のプロジェクト」であり、欧米の帝国主義に対する応答でもあった。近代国家の枠組みを取り入れながらも、文化的・精神的には天皇制という伝統を中核に据えた点で、日本独自の道を歩んだ革命。
今日の国家体制への第一歩として必要なステップだったと思うが、真の意味で近代化と言えるのか。支配層が交代しただけで、国民の意識はいきなりは変わらず、そこに急速に天皇思想を染み込ませる事で国民意識を浸透させる必要があった。実際には、旧態依然の意識解体は、第二次世界大戦の敗戦で決定づけられる事になる。
天皇を名目的主権者とする中央集権国家により、統一法制( -
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福沢諭吉の生涯の全体をたどった評伝です。
巻末に収録されている「福沢諭吉と伊藤博文」は、著者の講演内容をまとめたものですが、そのなかで著者は、思想史の研究者による従来の福沢研究では「あるときの福沢の主張が現実の政治でどういう意味を持っていたのかとか、どういう状況のなかでどう判断したのかということが、やや見えにくい」と指摘しています。そして、「長らく批判されておりました福沢の朝鮮中国に対する外交論にしても、私などから見ると、かなり自然な無理のない主張であったように思えるのです」と語っています。著者自身は、岡義武のもとで学んだ日本外交史研究の専門家であり、本書では従来の福沢研究の死角になっている -
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保守派政治学者北岡伸一が国連大使として外交実務に携わった際の記録。想像以上に生々しい現場が垣間見えて、自分の中の国連のイメージがガラッと変わった。
Ⅰ国連システム
米国よりも途上国の方が強いのではと思える程に平等主義が徹底されているようだ。日本の分担金負担も重く、それに見合うだけの発言力の必要性を感じた。経済協力はそうだが、人間の安全保障が日本中心の発想だったことは驚いた。
Ⅱ国連代表部
国連に居る外交官は選りすぐりで、その中で激しい知的競争が行われていることが分かった。電話や交渉、会議を繰り返し、利害のすり合わせへと持っていくのは一苦労だろう。安保理での活動(特にハイチ・スーダンへの視察)は