北岡伸一のレビュー一覧
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JICA(国際協力機構)の理事長を務めた著者による、世界各地域の途上国を中心とした地政学的見解をまとめたエッセイ集である。選ばれている国々がユニークで、非常に興味深い内容であった。
例えば、キリスト教徒が多数派のフィリピンにおいても、ミンダナオ島では「モロ」と呼ばれるイスラム教徒との間で内戦があったという事実は大きな発見であった。また、南米の中でも特にパラグアイに多くの日系人が移住していることも初めて知った。さらに、タリバンが復活する情勢下で、パキスタンがいかに地政学的な重要性を帯びているかも再認識させられた。現場の知見に基づいた著者の視点に触れ、他の著作もぜひ読んでみたいと感じた。 -
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明治維新を否定的に捉える過激で感情的な原田伊織氏の本を読んだ後なので、北岡伸一氏の資料に基づく冷静な学者としての見解は対照的であった。
確かに倒幕は下級武士たちが権力奪取を狙ったクーデターであり、そこにテロリズムと言われるようなやり過ぎな行為もあったのだと思う。
ただ、若い下級武士の政権であったからこそ、廃藩置県、地租改正などで旧来の体制を完全に作り変える、短期間での富国強兵を実現できたのは間違いないと思う。また柔軟な思考で必死で勉強したからこそできた事。
大久保利通や伊藤博文といった優れたリーダーが、意志と能力のある人の意見を集めて手続き論や世論の支持は二の次として取り組んだのが明治維新の改革だった。
しかし統治機構が整うにつれ政治の制度化と合理化が起こり、強力なリーダーが出にくくなった。
そこでは多数をとることに優れたリーダーや組織の利益をもたらすリーダーが見識や能力に関わらず組織を率いる事になって行った事が、先の大戦での敗戦に繋がって行ったという。
創業者や建国者から代が進むにつれて組織がおかしくなるのは今も昔も同じ。
1945年の敗戦後、リーダー達が新しい日本を作り、70年以上の平和と経済的な繁栄をもたらした事は疑いようのない事実。
一方でGHQの息がかかった憲法や押し付けられた価値観に大きな影響を受けたのも事実。
世界は大きく変化しており、日本も変わらないといけないが、どちらの方向に進めば良いのだろう。
真に教養をもたないと判断を誤り、同じ歴史を繰り返す。
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著者の北岡伸一さんは東京大学法学部教授、日本政府国連代表部次席代表や国際大学理事長、JICA理事長、政策研究大学院大学客員教授と歴任されており、日本の外交を最もよく知る人の一人である。
本書は北岡さんの実際に訪れた国での経験をベースに、日本の外交がどうあるべきか、大国とどのように付き合っていくべきなのかを記述している。地政学について造詣が深いわけではない私が読んでも理解しやすく、読みやすい本である。地政学ビギナーが初めに手に取る本として、とっつきやすくていいのではないか。
外交は二国間で語られることが多い。例えば、日米関係、日中関係、日露関係、日韓関係など。しかし本書では、外交がマルチになってきている今こそ、二国のみに注目するのではなく、その周辺国まで含めて理解することで、日本の国際的な立ち位置を見極めることが外交上重要と説く。
本書の構成は以下の通り
序章 自由で開かれたインド太平洋構想――日本の生命線
第1章 ロシアとその隣国たち――独立心と思慮深さを学ぶ
ジョージア、アルメニア、ウクライナ、トルコ、フィンランド、バルト三国
第2章 フロンティアとしてのアフリカ――中国の影と向き合う
ウガンダ、アルジェリア、南スーダン、エジプト、ザンビア、マラウイ
第3章 遠くて近い中南米――絆を強化するために
ブラジル、コロンビア
第4章 「海洋の自由」と南太平洋――親密な関係を維持できるか
パプア・ニューギニア、フィジー、サモア
第5章 揺れるアジア――独裁と民主主義の狭間で
ミャンマー、ベトナム、東ティモール、タジキスタン
終章 世界地図の中を生きる日本人
日本の脅威となるロシア、中国を中心に、彼らの影響力や脅威が世界でどのように効いているのかを書き出している。その上で、日本の立ち振る舞いがどうあるべか、を意見を述べている。
著者の見識は的確で、例えば「ロシアは安全保障に敏感な国、四方から包囲されているという被害意識が強い」という認識は、ロシア隣国の国民として必ず持っておかないといけないと思う。まさにそこを見誤ってしまったのがウクライナであった(西側諸国が煽ったのもあるが)。大国と隣り合う国の安全を保つためには、相手のことを正しく理解して、逆鱗に触れない立ち回りが求められる。
私としては、日本という資源を持たない、国土も狭い小国が生き延びていく生命線は、日本を支持してくれる国を増やすことだと思っている。日本という国を理解して友好的な関係を築いてくれる人材を世界中に作ることが、広義での安全保障につながる、という著者の意見は完全に賛同する。領土問題など、直接的な利害関係を持っている国との友好関係を作るのは絶妙な距離感が必要であるが、第三国と友好関係を作っておくことは、国際社会の中でのプレゼンスを高め、これが日本という国を守ることにつながると思う。
日本国内では海外にお金を使いすぎ、という批判が出ることもあるが、これは保険のようなものなので、予算の中で一定の支出を国外に使うことは必須と思う。これまでに日本が築いた日本の信用を落とさないような振る舞いを今後も政府には期待したい、国民も理解すべきかと思う。 -
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政治史や外交史の碩学である著者の明治維新論。1912年9月、まだ無名のジャーナリストであった石橋湛山(当時28才)が『東洋時論』(東洋経済新報社が出していた雑誌)で明治時代の最大の事業は、日清日露の戦争に勝利し、植民地を拡大したことではなく「政治、法律、社会の万般の制度および思想に、デモクラチックの改革を行ったことにあると考えたい」と書いていることを紹介しつつ、著者も湛山の意見に賛成であると言う(p.11)。著者は講座派的な明治維新を低く評価する立場を批判しつつ、明治維新革命の意義を丁寧に世界史的な文脈の中で考えていく。現在、JICA理事長として感じている途上国の発展の困難さの実感が背後にある。
本書は、序章以下終章まで13章構成。第1章「江戸時代の遺産」から第11章「議会政治の定着」までがここで考えられている広義の明治維新の範囲である。全体の叙述は最新の研究成果にも目配りが行き届いていて、かつ平易にバランス良く叙述されている。大久保利通や伊藤博文、原敬や福澤諭吉への評価が高いが原資料からの直接の引用などに基づいており、素晴らしい。とくに大久保の評価は高く、彼の政治家としての資質の高さには驚かされる。残念ながら、大久保も伊藤も原もみんな暗殺されてしまった。
明治維新の成功は、最良の人材が徹底的に議論し、国益のためにベストを尽くしたことであり、それが大久保の言う「公議輿論」だった。しかし、「日露戦争以後、様々な集団において制度化、合理化(マックス・ヴェーバー)が進み、それとともに、リーダーの凡庸化、平凡化が進んだこと」(p.322)が昭和の失敗につながっていったと著者は考えている。これはまた現代の私たちになお突きつけられている課題であると言える。 -
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[unknownからUN knownへ]ときに期待をもって、ときに失望をもって語られる国際連合。次席大使として、アカデミックの分野から国連における実務の分野に飛び込んだ著者が目にしたものとは、そして日本が国連でなすべきこととは......。実体験を踏まえて書かれた国連の入門書です。著者は、日本政治史及び外交史を専門とされている北岡伸一。
概説的な紹介と著者自らの体験談が一冊に収められているため、多角的な視点から国連について学ぶことができます。巨大すぎて何が行われているのかわかりづらい組織であることは間違いないのですが、その巨大さが何から構成されていて、どのような役割を果たしているかの一端は本作で大まかなりとも把握できるかと。
〜どちらかといえば国連の枠外で起こった日本の発展と東アジアの発展の経緯を、国連を通して世界に提供していくことが、日本と世界の利益にかなうと考える。〜
一度足を運んでみたいものです☆5つ -
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国連次席大使を務めた北岡伸一氏の、国連に関する著作。
もっともinternationalで一番のマルチ外交の場である国際連合における、「政治力学」を描き出してある本である。日々の安保理における活動や、安保理改革運動についての記述は実に興味深い。
中国に対する北岡先生流の反論、北朝鮮問題に対するアプローチは、まさに北岡伸一「らしい」記述であり、北岡伸一個人としてのハッキリとした態度を示すあたり、単純な保守とは一線を画していて実に気に入っている。決して思考停止には陥らないこと。そういったことが非常に重要であることを気づかされる。
気軽に手に取れて、北岡氏の思考を丁寧に読むことができる貴重な本。 -
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福沢諭吉の生涯の全体をたどった評伝です。
巻末に収録されている「福沢諭吉と伊藤博文」は、著者の講演内容をまとめたものですが、そのなかで著者は、思想史の研究者による従来の福沢研究では「あるときの福沢の主張が現実の政治でどういう意味を持っていたのかとか、どういう状況のなかでどう判断したのかということが、やや見えにくい」と指摘しています。そして、「長らく批判されておりました福沢の朝鮮中国に対する外交論にしても、私などから見ると、かなり自然な無理のない主張であったように思えるのです」と語っています。著者自身は、岡義武のもとで学んだ日本外交史研究の専門家であり、本書では従来の福沢研究の死角になっている論点をとりあげて、あらためて福沢の評価をおこなっています。
また著者は、これまで大学の授業でくり返し福沢の『文明論之概略』や『学問のすゝめ』をとりあげてきたといい、その理由として「維新の変革を理解するために格好の本であるからであり、また日本政治の特質を見事に描きだした本であるからであった」としつつ、「しかしそれ以外に、福沢の生き方それ自体を、学生諸君に知ってほしいと思ったからである」と述べています。
かつて丸山眞男は、「福沢惚れ」によっては福沢は理解できないという服部之総のことばを受けて、逆に「福沢惚れ」によってはじめて理解することのできるような福沢像をえがき出しました。本書もまた、一人の「福沢惚れ」によって書かれた、すぐれた評伝ではないかと思います。 -
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保守派政治学者北岡伸一が国連大使として外交実務に携わった際の記録。想像以上に生々しい現場が垣間見えて、自分の中の国連のイメージがガラッと変わった。
Ⅰ国連システム
米国よりも途上国の方が強いのではと思える程に平等主義が徹底されているようだ。日本の分担金負担も重く、それに見合うだけの発言力の必要性を感じた。経済協力はそうだが、人間の安全保障が日本中心の発想だったことは驚いた。
Ⅱ国連代表部
国連に居る外交官は選りすぐりで、その中で激しい知的競争が行われていることが分かった。電話や交渉、会議を繰り返し、利害のすり合わせへと持っていくのは一苦労だろう。安保理での活動(特にハイチ・スーダンへの視察)は体力的にもきつそうだった。その中でも筆者は知的な仕事を魅力的に感じたという。
Ⅲ安保理常任理事国
筆者の歯痒い思いが伝わってきた。国連で日本の存在感を増すには常任理事国入りは必須だろうが、本交渉では米中の思惑やコーヒークラブ(初耳!)の反対をかわすために悪戦苦闘した結果、結局アフリカのよくわからない要求のせいで頓挫するという残念な結果に終わってしまった。G4は日本にしては画期的な戦略だとは思うが、安保理や国際関係の原理上なかなか難しいものがあったのだろう。
Ⅳこれから
キーワードはODA、PKO、安保理。筆者は国連重視を強調しているが、日本の経済低迷、少子化、アジアの台頭、米中対立を鑑みるに日本の国連での存在感(特に経済協力)は段々と薄れていくと思う。そういう意味では2005年の交渉がラストチャンスだったのかもしれない。ただ、最近は国連外の多国間連合(ASEAN/TPP)で日本が主導できる場所が増えている。そういう場所で巧みな外交を展開できれば国力低下を緩和できるかもしれないと思う。もう20年前の本なので、アフリカはもっと親中だし、日本の分担金は減った(19%→8%)。気候変動でも後れを取った日本が次にリードできる分野は何なのだろう。