北岡伸一のレビュー一覧
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幕末から明治維新については、何となく知っている気がしていたが、改めて当時の国際関係を含む政治史についての本書を読んで、大久保利通の偉大さや伊藤博文の博学さなどを認識した。明治維新は、無血とは言わないが、旧体制の指導者も取り込んだ革命であり、後に元勲や元老と呼ばれる有能な下級士族の個人的資質や能力に大いに助けられて実現したものと言えそうだ。当時の政治指導者の国際感覚や内政に対するバランス感覚がすごい。その明治維新という偉業が制度化・合理化され、天皇大権の絶対視と軍の政治介入が進んでいくというその後の展開は、明治維新に胎蔵されていたものなのかどうかについて、著者は否定的だが、そこは色々な意見がある
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政治学者である著者が実際に国連で外交官として勤務していた経験を綴った1冊。
2007年刊行の本なので少し古いが、実際の現場の様子がわかりやすく書かれていて、読んでいて楽しかった。
この本を読んで実際の様子と日本のメディアが報道している内容は随分と違うのだな…と感じた。
日本のメディアは優秀な人材を潰したり貶したりすることが多く、それに迎合する国民が多いことはある意味で国益に反する、との著者の意見は正しいと思う。
そういった「国民」にウケそうな報道をするのだろう。
国連の予算の20%ほど(当時)を負担しても日本は常任理事国にはなれない。大国も小国も1国1票の投票権。
この本の時点で既に12年 -
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この本で著者は、国際協力機構(JICA)の取り組みを通して"他国の国々と協力しあえる信頼関係"と"他国の理不尽な強制を退ける力の必要性"を伝えてくれます。旅行記ではありません。
また日本に馴染みのある近隣諸国をメインにするよりも、他の国々との関係性から日本の国際的な立ち位置について述べていきます。本書で取り上げた国は、インド・ロシア・ジョージア・アルメニア・ウクライナ・トルコ・フィンランド・ウガンダ・アルジェリア・南スーダン・エジプト・ザンビア・マラウイ・ブラジル・コロンビア・パプアニューギニア・フィージー・サモア・ミャンマー・ベトナム・東ティ -
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ネタバレ[ 内容 ]
国家を超える結束の場として構想された国連が誕生して六十年。
冷戦とその後の激動を経て、その地位と役割は大きく変動した。
国際社会でアメリカ中心のシステムが機能するなか、国連は世界の平和と安全の維持という最大の目的を果たしうるのか。
また、一九二の「対等」な加盟国をもつ組織の意思決定はどうなされているのか。
研究室から外交の現場へ身を移した著者の二年半の体験から、国連の現在と未来を照らし出す。
[ 目次 ]
1 国連システムとアメリカ・システム(世界の中の国連、国連の中の日本 二〇〇五年世界サミット―総会のダイナミクス 戦後日本外交と国連)
2 国連代表部の仕事(外交という仕事 -
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西洋では、絶えざる戦争がより強大な軍備を必要とし、それを支えるためにブルジョワジーに対して課税し、そのためにブルジョワジーの政治参加を認め、議会が成立するという流れがあった。日本では、徳川氏を中心とする盤石の態勢ができたために、それは起こらなかった。
明治維新から、内閣制度の創設、憲法の制定、議会の開設に至る変革は、既得権益を持つ特権層を打破し、様々な制約を取り除いた民主化革命、自由革命であり、人材登用革命であった。
明治6年の地租改正によって、作物の出来高に応じ、天候などに左右されていた税収は予測可能なものになった。地租は貧しい農民には重かったので、土地を手放すものが増え、一方で地主への -
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アルバート・ハーシュマンによる分析
一国と他国との間に交易が成立すると、厚生効果と影響力効果の2種類の効果が生じる。
「厚生効果」とは、貿易や金融取引のありかたが、関係国のGDPや雇用などで測定される経済的厚生に及ぼす効果をさす。
自由な市場における競争が、経済的厚生を向上する上で望ましい。
国際的な経済交流によって世界の富の増量が増えることが強調される。
「影響力効果」とは、経済的交流によって、ある国が他国に対して力を行使できるチャンスが生ずることを意味する。
一個が他国に対して貿易その他の経済的関係を持てばらそれが停止されることによって、相手国に損害が発生する。
ロシアのグランドス -
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まず、アカデミックな地政学の本かと言えばそうではない。
端的に言って、知的な旅行記といった風情。
具体的には、日本の援助機関のトップとして各国に(やや表敬気味の)出張に行ったときの楽しい思い出話である。
著者の他の本のような骨太かつややライト寄りな論考を期待して手に取るとちょっと違うな、となるだろう。
著者は、安倍政権の積極的平和主義構想の思想面でのリーダーのひとりでもあり、したがって日本が世界で評価されるにはこれこれだ、とか、あるいは援助を通じてこんなに評価されている、というエピソードが多い。それが悪いわけではなく、やはり誇らしいものはある。もっとも、こうした国際支援の現場のあの独特の「ノ -
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国土は引越しできないので、日本はずっと朝鮮半島の隣。中国のご近所さんで居続けなくてはならない。その地理的要因が政治にも影響する。
そういった地政学を現代の視点で考察したような本でした。
世界的規模で概観すると日本の特異性がよくわかる。
日本は人口減が問題だけど世界的には人口爆発が問題だし、貧困と紛争と言えばアフリカのイメージだけど、実際はアジアのほうが貧困も紛争も多い。視野を広げる意味では読んで良かったです。
ただ、現代の地政学上の国際紛争を概説する本のようでいて、最終章は丸々1章を使って中曽根康弘さんと自民党による憲法改正を特に批判もなく是としていたから、実は自民党の応援本だったのか?…