上岡伸雄のレビュー一覧

  • ウォーターダンサー

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    19世紀アメリカ南部ヴァージニア州。
    奴隷であった主人公は、解放組織「地下鉄道」に救われる。彼には奴隷たちの物語を忘れない記憶力と不思議な力が備わっていた…。

    それはスピリチュアルな力“導引”。
    その謎が、暗く苦しいストーリーを文字通り引っ張っていく。

    物語のチカラの一側面を考えたとき、逃避であったり、耐える力を私達に授けてくれたりするし、中にはある本を読んで救われた、そう語る人もいる。

    それは著者が描いたこの不思議な力の肝なのかもしれない。力強い物語です。

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    2021年10月24日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    19世紀後半(推定)
    オハイオ州ワインズバーグ――架空の地名――に暮らす人々の
    悲喜こもごもが、
    主に地元新聞の若き記者ジョージ・ウィラードの目線で描かれる
    掌短編連作集。
    地味だが奇妙な味わい深さがある。

    流行らなくなったホテルの経営に悩みつつ
    打開策を見いだせない女性(ジョージの母)、
    スキャンダルで職場を追放された元教諭、
    ほとんど診察しない医師、
    狂信的に神を愛す農場主と、それに反発する家族、
    流れ物の身の上話と教訓に深く感じ入る女児、
    心の平衡を失った牧師の強硬策、etc。

    興味深いのは、人間関係が密な昔の田舎町を舞台にしながら、
    本当は誰も共同体内の真実を知らない、
    といったス

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    2021年08月01日
  • レス

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    ピューリッツァー賞受賞。ほーん。ゲイの作者。なんかなー。後書きに最近賞を取る人っていうのは所謂マイノリティ、移民とか、その人ならではの生い立ちが繁栄された作品ばかりで、こういう普通の感じのコメディっぽい作品が受賞するのが驚きだそうな。9年間位同棲してた男性の結婚に呼ばれる。絶対行きたくないので仕事を詰め込み、逃げる。普段引き受けないようなやつで見も心もバタバタする。一応仕事はこなす。主人公の今までの男性遍歴が思い出と共に回想される。これが重いし、なんでかこう、嫌らしい意味でなく、生々しく、疲れる。

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    2020年12月26日
  • ビリー・リンの永遠の一日

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    イラク帰還兵が、アメリカ的なものを一杯詰め込んだものを見たら、あまりに醜悪で俗悪でした。

    そんな私たちもこちら側で生きてる。
    クソだ。

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    2020年10月11日
  • レス

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    タイトルの「LESS」は主人公の名前であり,英語の「〜less」にも掛けられている.レスは冴えない作家で,ゲイであり,かつての恋人の結婚式に出たくないために,半ば無理矢理用事をつなぎ合わせて旅に出かける.
    彼は愛すべき人物であり(昔のジーン・ワイルダーのような感じか),行く先々でキッチリとトラブルを起こしつつ世界を一周するが,その旅のエピソードと回想が交互に語られ,最後に自宅に帰るところまでが描かれる.
    果たしてレスは愛を見つけることができるのか?

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    2019年10月02日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    シャーウッド・アンダーソン、初めて読んだ。
    ヘミングウェイとか、カーヴァーとかに影響を与えた作家らしいのでとっても楽しみにしてた。

    すっかり長編小説と思ってたのだがなんとオムニバス形式の小説だった・・・。

    【オハイオ州のワインズバーグという架空の町を舞台にした22編の短編からなる】それぞれは独立した短編作品だが、登場人物が他の物語に再登場する相互リンクの要素があり、多くの作品に登場する青年、ジョージ・ウィラードが作品集全体の主人公格である。】

    ジョージ・ウィラードが不器用でいとおしい。
    この世代の小説、土着のもの多くないか?なんでだろう。
    次は長編読みたいなあ。

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    2019年03月12日
  • ワインズバーグ、オハイオ(新潮文庫)

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    オハイオ州にあるワインズバーグという架空の町を舞台にし、そこに住んだり関わったりしている人の日常的な話を短編として綴ったもの。よく登場する人物はいるが、一人だけに焦点を当てているのではない。かといってキャラクター小説というわけでもない。
    話に盛大なオチがあるわけではない。大事件が起きるわけでもない。日々過ごしている中で自分の中に突如現れる衝動とそれに対する行動に焦点を当てていると感じる。登場人物は町のなかでも変わり者扱いされている人も多く不可解な言動も多いが、突然沸き起こる感情や衝動、その行動の中には何か納得するものもあるから不思議。納得できないと読み手がおいてけぼりになることもあるが。

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    2019年01月19日
  • ビリー・リンの永遠の一日

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     若い兵士のビリー・リンは、イラクの戦闘で英雄的な働きをしたため、小隊全員で凱旋帰国させてもらった。NFLの試合でハーフタイムショーに招待され、ヒーローインタビューだ。招待席に戻っても、握手を求められ、讃えられるかと思えば、喧嘩騒ぎも起こしてしまう。1週間後には前線に送還され、戦争に戻る不安定さがそうさせるのだろうか。
     英雄的な戦闘では、友を亡くしている。次の戦闘では自分が戦死するかもしれない。でも、今は酔った頭でビヨンセが歌い踊るのを目の前に見ている。自分たちをモデルにした映画ビジネスの話も持ち上がっている。全てアメリカの現実だ。
     アメリカで、社会的に取り残されたものを待っている現実だ。

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    2017年12月18日
  • さあ、見張りを立てよ

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    ネタバレ

    ニューヨークで暮らす主人公が、南部の田舎町に帰省してくる。
    故郷の町では昔と変わらず人が暮らしており、人種差別的な匂いもしている。
    ただ、違いは主人公を取り巻く人たちが、歳をとったということ。

    南部の田舎町を描いた作品には似たような匂いがする作品が多い。でもそのなか本書にはなぜか既視感が強かった。
    その時頭に浮かんでいたのは、アラバマ物語という名前。
    そして、あとがきをよんで疑問が氷解。アラバマ物語の20年後を描いた作品と書いてあった。よく見れば、表紙カバーの折り返しにも...

    人種隔離政策が制度として廃止されていく中、南部人たちが心情的にどのように考え、また、それに対しニューヨークで暮ら

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    2017年04月20日
  • ビリー・リンの永遠の一日

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    ネタバレ

    裏表紙に書かれていたイラク戦争版のキャッチ22ということば。私の感覚も、同じようなものでした。
    そこで感じた、戦場の狂気。そして、戦場を離れ祖国に戻った時の狂気。

    アメリカの19歳の若者、戦闘に巻き込まれ生き残った仲間は、米国に呼び戻され、戦意高揚のためにフットボールのハーフタイムショーに引きずり出される。
    でも、その間も仲間の狂気、戦場の記憶は続いている。
    そして、祖国では、別の狂気が続いている。
    そして、自宅に戻って自分の部屋で静かに自慰をする。
    彼の部隊はまた戦場に戻っていく。
    そして、狂気は残り続けていく、彼の周りでも、彼の祖国にも。

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    2017年03月30日
  • ビリー・リンの永遠の一日

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    主人公のビリー・リンはワケあって軍に入隊、イラク戦争に送られ、英雄にまつりあげられ、愛国心のアイコンもしくは見世物パンダとして全米凱旋ツアーに駆り出され、スーパーボールのハーフタイムショウでビヨンセと共演する-

    という感じのあらすじを見ただけで面白そうだなと思って読みました。
    戦争や愛国心、アメリカに対するアイロニーが込められた作品なんだろうなとは容易に想像できるけれど、
    読んでみるともう1文ごとに何かしらの皮肉、揶揄のオンパレード。すべてがジョークのようなのになぜかリアル。

    ビリーたちの体験を映画化しようと企む人物がいて、
    ビリー(男)の役をヒラリー・スワンクに演じさせようと計画するエピ

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    2017年03月29日
  • 存在感のある人 アーサー・ミラー短篇小説集

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    「パフォーマンス」は惹きこまれました。
    他のもそれなりに…だけど、自分に合わなかったのか、体調が悪かったのか読んでいてやたら眠気に襲われました。
    それでも退屈だとは思わなかったのはなぜ?それはやはりこの人の作風がただ者ではないということなのだと思います。
     以前、この人の「るつぼ」という作品をとりこんだ演劇を見たことがありますが、すごい迫真の演技で圧倒されました。

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    2017年03月13日