上岡伸雄のレビュー一覧
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19世紀のアメリカ中西部・オハイオ州の田舎町の人々を描く短篇集。
冒頭「いびつな者たちの書」で語られるとおり、この作品で描かれるのは「孤独・不安・疎外感」を感じている「完璧でない者たち」である。
いずれの話も個人的な葛藤を題材にしているものの、それらを主人公の視点からとりまとめることで、19世紀後半の中西部の雰囲気を上手く描いている。
ここで語られた「いびつな者たち」が、まさしく現在のラストベルトの労働者階級(ヒルビリー)になっていったのだと思うと非常に興味深い。
個人的には、「考え込む人」のいかにもウブなセス・リッチモンドに最も感情移入できた。
アメリカの田舎町の鬱屈を描くという点で、時代も -
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1960年にアメリカで発行され、映画も有名な本書。1930年代のアメリカ南部が舞台。主人公のジーン・ルイーズ・フィンチ(スカウト)が6歳(小1)から3年生のハロウィンまでが描かれる。父は州議会議員で弁護士のアティカス。母はスカウトが2歳の頃死亡、兄のジェムは4つ上。カルパーニアという黒人女性が家政婦に来ている。スカウト6歳の夏に一つ年上のディルが夏の間だけその地の叔母のところに来ているのに出会い、3人で夏を過ごすようになる。近所には仲良しのミス・モーディーの家もあるが、嫌みたらしいミセス・ドゥボーズの家と三軒先にラドリー家がある。ラドリー家はその地域全体で不可侵のような場所になっていて(引きこ
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1930年代の南部アメリカ、6歳の少女スカウトは4歳年上の兄ジェムと、弁護士の父アティカスと田舎町に暮らしている。母親はスカウトが小さいころになく亡くなっており、家の中のことは黒人女性のメイド・カルパーニアがやってくれている。その頃の南部の町では、まだまだ黒人の差別が厳しく、ニガーと公言してはばからない人が多くいる。黒人だけでなく、貧しい白人たちは学校にも行けず劣悪な生活から抜け出すことができずにいる。アティカスの偏見にとらわれない態度は、町の人々から信頼を持たれている。そんな町でおきた白人女性のレイプ事件。アティカスは被害者の白人女性が犯人だと名指しする黒人の弁護をすることになる。
ずいぶ -
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あなたは、『アメリカの映画俳優グレゴリー•ペック(1916〜2003)の代表作と言ったら何だと思いますか』と聞かれたら何と答えますか?
日本で多いのは「ローマの休日」でしょうか。あとは「オーメン」。映画好きならば「ナバロンの要塞」「マッケンナの黄金」「渚にて」「アラベスク」等が出て来るかも。
しかし、本国アメリカで評価が高いのは、何と言ってもこの小説を映画化した「アラバマ物語」だそうです(アカデミー主演男優賞受賞)
1933年のアメリカ南部アラバマ州メイコムという架空の町。スカウトことジーン•ルイーズ•フィンチは母を早くに亡くし、弁護士の父アティカス、兄ジェムと暮らしている。純朴なスカウトの -
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ハーパー・リーが自分自身が生まれ育ったアメリカ南部、1930年代のアラバマ州の架空の町メイコンを舞台に描いた自伝的小説。
世界恐慌以来貧困に苦しむ農村、そしてさらにその貧困の底辺にある黒人たち。
主人公のスカウトはまだ小学生になったばかりの少女だが、いつも男の子のようにオーバーオールを着て、兄のジェムと一緒に遊ぶ。そして、二人には夏休みの間だけ、メイコンに来て過ごすディルという友人がいる。
物語はスカウトと二人の少年を中心に、子どもたちの目線で見た当時の南部の社会を描く。
前半は学校には年に1日だけ来て、毎年落第する貧困家庭の子どもたちや、黒人と白人という明確な差別が残る社会、そして、白人の中 -
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以前、気になったことがあって、読まねばならぬと自分なりにリストアップしていた。
今回、手に取ったのは、検閲で削除された数か所が原作のまま、翻訳されての発刊。
その個所を気になって読むと、やはり・・というか、性的描写の生々しさを感じさせ、それに人種的なニュアンスが影響している個所であった。
ガーディアン誌が選ぶ「読んでおくべき本」にリストアップされている。
そもそも、この選書に従う気持ちがないあまのじゃくの私・・一層、読んだ上でのやりきれない感情が一層ネガティブのベクトルに傾いた。
構成は心理的描写(白人、アカ、黒人それぞれにおいて)がこれでもかというほどに、生々しく綴られ、幾度、読むのを投 -
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17,8年前に新聞の書評で知り、即購入。
以来塩漬け…なのに突然読めたのです。そして、とてもおもしろかったのです!
87分署や、映画を観たりして、行ったこともないのにニューヨーク好き。それもきっかけでした。
ニューヨークの成り立ちから、刊行当時まだ記憶が生々しかった911まで、歴史をふり返りながらそれぞれの時代を映す純文学が紹介されています。
ニューヨークを好きと言いながら、ほとんど何も知らなかった。ギャツビーもライ麦畑もオースターも読んでいない…反省。これから読みます…
なのにアメリカンサイコだけ読んでました…今思うとちょっと気恥ずかしい…と思いながら、今読んだらどうなんだろう、とも考 -
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人生が複雑怪奇であるということは真実だ。平凡な人生というものはありはしない。と、解き明かすような、アメリカの想像上のある町「ワイインズバーグ」に住む人々の暮らしや心模様の物語群でした。ひとつひとつの物語でもあるが、若い地方新聞記者ジョージ・ウィラードは聞き役でもあり、つなぎ役でもあり語り部です。
1900年代の初めに書かれたアメリカ文学、ヘミングウェイやフォークナーに影響を与え、モダニズム文学のさきがけということです。この前に読んだ佐藤泰志『海炭市叙景』の下敷きのようなものということで読みました。
なるほど、あるまちを創造、住人の人生模様を癖や性格などを素材にして物語るのは同じようです。で