松沢裕作のレビュー一覧
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生きづらい社会ってのは、何によって生まれているのか?
ってのを、明治時代から学んでみようの巻
生きづらい社会を生んでいるのは、みんなの認識(通俗道徳)のせいなので、これを通俗道徳の罠と呼ぼうとしたところが、良かった。理解を簡単にするには、名前をつけてしまうのは有効だからだ。(まぁ、有効すぎて間違った認識が広まることもあるけど)
作者はいったん現代を離れて明治の分析をすることにより、他人事として認識させることで、現代も未だ蔓延している、通俗道徳の罠に気づかせたかったのではないだろうか。
通俗道徳の罠の根底に、教育すれば誰しも勉強や仕事ができるようになると言う、教育万能説が流れていることにも注 -
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大学の先生が、大人のために、個人主義とかGDPとか多数決とか公正や信頼などについて解説してくれる本。
多数決は何かを決めるときに必ずしもベストな手段ではないとか、なるほど。
利己主義は昔からあるけれど、個人主義は比較的新しいもので、国によって発生過程が異なり、「フランス革命に反対する勢力が、社会を解体する良くないものだと否定する文脈から登場し、19世紀半ば以降の英国では、個人の自由な経済活動が『小さな政府』とセットで強調されるようになり、哲学と文学が盛んだったドイツでは多様な個性を重んじる個人主義が重んじられ、アメリカでは他人の力を借りず一人でやりとげる『セルフ・メイド・マン』の概念と結び -
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現代社会の抱える課題について、経済学・歴史学・政治学・社会学の視点から考えている作品です。
経済成長の基準とされる「GDP」について、その数値が示すものの意味と、GDP値を上昇させることの意味。
また、日本において根深く残る「勤労」感(働かざる者食うべからず、として貧困層をかれらの努力不足と断じる姿勢など)がどのように醸成されてきたのか。
多数決で物事を決定してゆく民主主義が抱えているシステム的な「課題」や、また「社会福祉」として行われる弱者救済が「人びとのニーズ」に合致しなければならないことなど、「これから先の社会」を考える前提としての「現代の社会」について、どのような仕組みで動いているの -
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前々から気になっていた井出英策。今年一発目の本として「日本財政 転換の指針」を開き、ちょうど就任式を迎えたトランプ大統領の移民を排斥しようとする政策がなぜ得票に繋がるのか?の不思議に始めて明快な説明を受けたような気がして、講演会も聴きに行き、そこで民進党の前原誠司のブレーンとして研究だけじゃなく現実にコミットする!という宣言を聴き、著作も辿りながら、「財政」という自分にとっての新しいキーワードを手繰ってきた2017年は「大人のための社会科」を読んでの締めくくりとなりました。たぶん彼の案による「all for all」にも強いメッセージを感じ期待もしていたのですが、呆気なくテイクオフ出来ず瓦解崩
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自由民権運動の研究は1980年代の「民権百年」運動をピークに長らく停滞している(とあえて断言してしまう)が、本書はそうした停滞を打ち破る可能性を感じる労作である。戊辰戦争による近世身分社会の解体に起因する人びとの帰属不安や承認欲求を原動力とする社会変革運動とみなす視点は、明らかに今日の新自由主義下の社会混迷(高度成長期に形成された社会システムの崩壊、貧困・格差の拡大)を投影しているが(氷河期世代の著者の問題意識が垣間見える)、自由民権運動を把握する際にこれまでネックとなった「復古」的要素や「堕落」・「逸脱」と評されがちな事象をも正当に評価する意義を有している。秩父事件を運動の終点とし、大同団
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明治時代という時代の大きな変換期。
IT 革命の最中にいる現代、時代による脅威:簡単に言うと、時代の波に乗れるか、取り残されるか、という不安を漠然と持っている人が多く、自分もそんな一人。
明治時代も同じように、武士という職業がなくなり、社会が大きく変わる中で、近代化が自分の人生にデメリットとして働いてしまった人達も多かったはずで、そんな人達がこの変換期をどう乗り越えたのか。
そんなことを読んでみたくて読んでみたのだけど、そのような話ではなく、
社会制度在り方、特に保障制度が弱者に向けて作られていなかったこと、その要因として、「貧乏なのは努力が足りないから」という通俗道徳が人々の考え方の根 -
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「史料」を根拠に歴史を語るのが歴史家、、
その例として土地の売買の契約書が出てくる。
ん?これって別に歴史家だけでなく、
どんなやり取りでも言えることではないのか?
ビジネス、監査、、、
エビデンス、証跡、証憑。
極めてごもっとも、まっとうなこと。
その検証に?事例が3つ。
征韓論、マルクス主義、民衆運動、、、
政治史、経済史、社会史の例として。
わからないのが、
ただの例として著者がとりあげたのか、
それとも意図をもって、内容を伝えようとして挙げたのか。
書きぶりだと例のような気がするし、
でもそれにしては紙面を割いているし、、、
何を得ればよい新書だったのか。
もしかして昨今増 -
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明治社会が生きづらくないわけがない。家電もなければコンビニもスマホもないし。というレベルの低い話ではなくて、本書で特に勉強になったのは先ずは「生きづらさを測る指標」について。
明治の時代には、都市に下層市民の貧民窟があったというが、所謂、失業者のような存在で実入りがない。食べていけない。こうした存在に対するセーフティネットの有り様から、明治社会の暮らしを覗き見たのが本書。
現代でいう「生活保護」のような制度だが、それ以外の法整備も未熟である中、まだまだ弱者救済にまで行き届かない。それでも、恤救規則という1874年に制定された法令にたどりつく。現在の生活保護法に類似した役割を果たしていたのが -
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ネタバレ明治時代に関しては江戸時代が終わって、鎖国が終わり、産業革命で日本は近代化が進んだと教科書どおりの知識しかなかった。
大河ドラマや時代小説の影響で幕末のアグレッシブでエネルギーに満ちた時代から明治時代に移るあの時代は日本は凄く元気も未来もあって、現代より良いとさえ思っていた。当時の普通の人々の生活について、ちゃんと思いを馳せた事がなかったので、この本を読む事で視点が変わった。今までの社会システムがガラッと変わってしまうのだから、当時の普通に生きている大多数の人たちはとても不安もあっただろうなと思う。そして今と何だか凄く似ているな、と思う。明治時代から脈々と続いてきた資本主義社会が段々と限界を迎 -
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Twitterで話題になっていた本。歴史学という馴染みがあるようでよく実態がわからない学問では何をどうやるのかを紐解いている
史料というものが歴史学ではどういうものか、記録とは、それらを使って論文はどう組み立てられているのか。政治史、社会史、経済史の区分けによって論文の組み立て方が違うのは言われてみれば納得なんだけれども、何かの根拠に歴史を引っ張ってくることもそういう歴史の種類による違いを知らないとでたらめなものになるよなあと思ったんであった。最近恣意的に歴史や生物学の一部分を引用してくるようなもっともらしいデマやガセも多いのでこういう本で〇〇学というもの自体がどんなものかを知るのは不確かな情