松沢裕作のレビュー一覧

  • 歴史学はこう考える

    Posted by ブクログ

    歴史学の考え方を詳細に記載したユニークな著書だ.小生理系で数十本の論文を書いた経験があるが、文系の論文の構成方法を学んだことは非常に嬉しい.著者が最後に述べている 「ひとが言葉を用いて何かを述べているとき、その言葉によって語り手・書き手は何をしているのかに注意を向け、必要であればその根拠を問うということの重要性は、歴史や歴史学に限ったことではないはずです.」 は非常に心に響いた.

    0
    2025年10月29日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    Posted by ブクログ

    三宅夏帆さんがおすすめしてたから読んでみたら面白いし読みやすかった!特に印象に残ったのは当時の女性たちの苦悩と、「通俗道徳」という「頑張れば成功する。そうでなければダメ人間。」という考え方。もしかすると今もどこかに蔓延っている考え方なのかもしれない。

    0
    2025年07月24日
  • 歴史学はこう考える

    Posted by ブクログ

     歴史学とは、資料を正しく読み解き、論文等に知見をまとめていくだけかと思っていたが、自分が想像していた以上に緻密で繊細なプロセスを経ていることに驚いた。
     本書はいわゆる歴史家の方が実践しているスキルの紹介に留まらない、知的解釈の困難さが読み取れるが、さすが専門家とも言うべきほどに内容はやや難解である。歴史に触れる機会が少ない自分のような読者にあっては、少々内容に入るまでに骨が折れることも多かったように感じる。しかし、難しいだけではなく、興味深いトピックを選び抜く筆者の審美眼と文章力は確かなものであり、最後まで読ませる楽しさをあわせ持つ点は素晴らしいの一言である。
     再度、歴史や周辺知識を身に

    0
    2025年06月16日
  • 歴史学はこう考える

    Posted by ブクログ

    読み始めは、何やら退屈な本を買ってしまったと思ったが、気づけば論理の渦に呑まれていた。この本には、論理的に思考し、議論するための方法がたくさん詰まっている。なぜ歴史学というものがあるのか、ということの答えにもつながるだろう。もし、もう少し易しく書き表すことができたなら、歴史を学ぶ最中の学生たちにも手に取ってもらいたいと思える。入り口にはちょっと重いか。

    0
    2025年05月24日
  • 歴史学はこう考える

    Posted by ブクログ

    史料をどのように読むかなどや、論文の組み立て方などを例を上げて説明されているのが、目新しい。第一章:歴史家にとって「史料」とは何か、第二章:史料はどのように読めているか、第三章:論文はどのように組み立てられるか(1)政治史の論文の例、第四章:論文はどのように組み立てられるか(2)経済史の論文の例、第五章:論文はどのように組み立てられるか(3)社会史の論文の例、第六章:上からの近代・下からの近代。

    0
    2025年04月12日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    Posted by ブクログ

    生きづらい明治社会が現代にも通ずるところがたくさんあるというのが驚きでした。著者が一貫して主張していたことは明治の人たちが陥っていた「通俗道徳のわな」というものです。それは「貧困とは怠けてるお前が悪い/努力が足りない/自業自得だ」です。成功した人はもちろん努力をした人なのでしょうが、貧困層は努力をしなかったかというとそうではない。色んな要因があってそこから抜け出せないほどの環境下にいることもあるんだよということ。今のSNSやネットでも同じような光景が垣間見えます。(例えば就職氷河期世代に対する考えとか)

    人間なんて数十年しか生きないのだから150年前と同じような考えを持つ人が多くてもなんら不

    0
    2025年02月25日
  • 歴史学はこう考える

    Posted by ブクログ

    内容的には、近代史を分析するのにあたって、歴史家はどう考えてどう資料を使うのか、政治史、経済史、社会史という観点から論文を分析して解説したもの。勉強にはなった。

    【目次】
    はじめに――歴史家は何をしているのか

    第一章 歴史家にとって「史料」とは何か
    1 根拠としての史料
    2 記録を残す
    3 記録を使う
    4 歴史学と文書館

    第二章 史料はどのように読めているか
    1 史料の引用と敷衍――史料批判の前に
    2 逓信次官照会を読む――「史料があること」が「何かがおこなわれたこと」を示す場合
    3 新聞記事を読む――史料に書いてあることをどの程度疑うか
    4 御成敗式目を読む――史料の書き手と歴史家の距

    0
    2025年02月04日
  • 歴史学はこう考える

    Posted by ブクログ

    歴史学者はどう考えて論文を書いているか。いくつかの事例を挙げながらかなり深く掘り下げていると感じたが、自分がそこまで深く考えて書いているのかという反省も。

    0
    2025年01月31日
  • 歴史学はこう考える

    Posted by ブクログ

    学生時代卒業論文やレポートを書いた時、本書で解説されている様な考えで書けていたかどうか心配になって来た…折よく実家で当時のレポートの下書きが出てきたので、今度読んで見よう。

    本書は学部一年生は勿論、出来たら大学で歴史を学びたい高校生にも読んで欲しい。そしてこんな考えをベースに学んで行く学問が自分にとってふさわしいか否かを判断して欲しい。覚悟と軌道修正を気付かせてくれる一冊だと思う。

    江崎書店BiVI店にて購入。

    0
    2025年01月11日
  • 大人のための社会科--未来を語るために

    Posted by ブクログ

    ・タイトル通り、働く大人が社会の問題点を考えるときの土台を教えてくれる本でした。
    多分学生時代に社会で習ったことも多くあると思いますが、ピンときていないから覚えていないんですよね。
    同じことを学んでも社会に出て経験を重ねることによって「あれは、こういうことだったんだな」と理解出来ることが多くあると思います。
    そういうことが学べる本です。

    ・「労働の義務」ではなく憲法27条「勤労の義務」(まじめに労働にいそしむ)
    を定めているのは日本だけ。
    勤労の義務は25条「すべての国民は文化的で最低限度の生活を営む権利を有する(生存権)」と結びついている。
    勤労の義務を果たしていなければ、生存権は保障され

    0
    2024年11月20日
  • 歴史学はこう考える

    Posted by ブクログ

    一般の人でも分かるように、歴史学研究の方法論が丁寧かつ平易に述べられている。歴史家が史料をどのように扱い、解釈し、論文を書いているかがよくわかる。三氏の論文を例示して、問いの立て方や史料解釈の示し方などを解説している。史学科学生は早い段階で本書を読み、自身の研究の手引書とすべきであろう。
    ただし、著者が日本近代史専攻ということで、例示している三氏の論文は近代史のものであるため、史料の扱い方や論の組み立て方については他時代専攻だと少しアレンジして取り入れる必要があると思う。

    0
    2024年09月29日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    Posted by ブクログ

    ジュニア新書と銘打つ割にはアングラな話題も。

    明治に限らず各時代の社会の暗部における苦しみを照射する
    ことは、現代のそれを見つめ直すことにつながるなにかを持つものだとは思うが
    変革の時代として捉えた明治と現代において、通俗道徳とネオリベラリズムが定立する自己責任論のはびこる競争社会には共通部があることは首肯せざるをえない。

    0
    2023年09月02日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    Posted by ブクログ

    Twitterで見かけたこの本、読みやすい良書だった。
    不景気、大きな社会構造の変化期ゆえに肥大化する大衆の不安、家に搾取される女性たち、貧困者への冷たさ、競争社会、若い男性たちの暴動など。
    切り口もわかりやすく、小学校高学年からでもわかるだろう。
    作者の視線は、明治以降の、成功者=特別努力した者、という思想に嵌まる罠について集中して警句を発してくれる。
    昨今の考えにもおおいに通じるこの感覚は、確かに怖いものだ。
    この罠の背景にある物を見れば、日本社会が、自分は苦労しているのに、のうのうとして怠けている(ように見える)のに生活をみんなのお金から補填してもらうヤツへの冷たさがなにによって起こるの

    0
    2024年11月11日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    Posted by ブクログ

    「社会が大きく変化し、先行き不透明で、不安な現代社会は明治時代とよく似ている」と言われますが、明治時代の社会不安の原因や仕組みや問題点を丁寧に解説してある本書は、私達にとって、とても参考になるものだと思いました。
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

    0
    2023年04月25日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    購入済み

    面白い

    久々に岩波ジュニア新書を読んだが、こんなに面白かったのかと驚く。以前はそんなに面白くなかったのに。
    さて、本書の内容については、実に興味深いという一言に尽きる。詳細はネタバレになるから書かないが、この本は広く大人にも読んでほしいと思う。

    #タメになる #深い

    0
    2023年01月18日
  • 日本近代社会史

    Posted by ブクログ

     本書は大学における講義内容をもとに執筆されたものだが、とても興味深い内容で広くお薦めするに値する本だと思う。
     副題に「社会集団と市場から読み解く」とある通り、「社会集団」と「市場(マーケット)」の2つを軸として、歴史的事象が整序され叙述されていく。
     はじめに示されるのだが、明治期日本社会の構造を示した基本的な見取り図(13頁)が参考になる。

     まず、日本近代社会を理解する前提として、江戸時代の社会(日本近世社会)の構造についての説明がある。
     ・領主制
     ・農村における基本的単位の「村」と、連帯して領主に年貢を納める責任を負う村請制
     ・「町(ちょう)」と、労働提供義務である”役”

    0
    2022年04月29日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    Posted by ブクログ

    「貧しいのは努力が足りないから」「辛いのはお前だけじゃない」「日本にそんな余裕はない」と生活に行き詰まった人を批判するのは現代だけではなかった。明治時代もまた、そうであった。
    明治政府はクーデターを起こした士族の政府で、実際カネはなかったのであるが、投票も一定以上の税金を納めた男子のみ、議員も金持ちばかりだから、当然自分の所属している階層が得するような社会を作る。そうするとますます貧しい人は救われない。
    現在は、18歳以上なら投票できるし、被選挙権も収入とは関係なくある。しかし、国会を見たら二世三世議員ばっかり。小学校から私立で、お金の苦労なんかしたこともない人が政治のトップにいて、自分の所属

    0
    2020年08月14日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    Posted by ブクログ

    この手の話はよく海外との比較で語られ、書き手と読み手の理解や認識に差が出てしまい、緻密に論理を積み上げても伝わらないことが多いように感じるが、これは日本という国の中での比較で面白いと思った。「貧困層」を中心に通俗道徳や生存者バイアスの話が主だが、もう少し明治時代における「普通/中流家庭」と「貧困層」の比較もあるともっと説得力が増すと感じた。

    0
    2020年06月07日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    Posted by ブクログ

    岩波ジュニア新書なので中高生向けに平易に書かれており、1〜2時間もあれば読める。しかし、内容は重要。

    この本のキーワードの1つは「通俗道徳」。明治時代には江戸時代の身分制社会の枠がなくなり、自由になった。しかし、人々は自由な競争社会の中で安心して暮らせるようになったのか。著者の答えは明快であり、頑張れば成功できるという「通俗道徳」によって競争を煽られる社会は決して安心をもたらしはしなかったということである。

    近代の資本主義社会はこうした「通俗道徳」を形を変えながらも発信し続けており、今もなおそうである。もちろん、20世紀に入る頃には(つまり明治が終わり大正期に入ってくると)社会政策的な施策

    0
    2020年05月19日
  • 生きづらい明治社会 不安と競争の時代

    Posted by ブクログ

    共同社会の一員であることを強要された江戸時代から個人主義の明治になって、自由になった一方で、セーフティネットが失われた。もともと資産なり身分なりを持っている成功者が「通俗道徳」を盾にしてセーフティネットを否定する、「生きづらい明治時代」を概説する一冊。
    通俗道徳とは、勤勉、倹約、親孝行といった、これといった深い哲学的根拠に支えられるまでもなく「良いこと」と考えられる行為のことである。この通俗道徳によって「ある人が直面する問題がすべて当人のせいにされる」。ひいては社会保障の否定につながるという話である。(安丸良夫の指摘を紹介している)

    0
    2019年11月30日