松沢裕作のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
生きづらい明治社会が現代にも通ずるところがたくさんあるというのが驚きでした。著者が一貫して主張していたことは明治の人たちが陥っていた「通俗道徳のわな」というものです。それは「貧困とは怠けてるお前が悪い/努力が足りない/自業自得だ」です。成功した人はもちろん努力をした人なのでしょうが、貧困層は努力をしなかったかというとそうではない。色んな要因があってそこから抜け出せないほどの環境下にいることもあるんだよということ。今のSNSやネットでも同じような光景が垣間見えます。(例えば就職氷河期世代に対する考えとか)
人間なんて数十年しか生きないのだから150年前と同じような考えを持つ人が多くてもなんら不 -
Posted by ブクログ
・タイトル通り、働く大人が社会の問題点を考えるときの土台を教えてくれる本でした。
多分学生時代に社会で習ったことも多くあると思いますが、ピンときていないから覚えていないんですよね。
同じことを学んでも社会に出て経験を重ねることによって「あれは、こういうことだったんだな」と理解出来ることが多くあると思います。
そういうことが学べる本です。
・「労働の義務」ではなく憲法27条「勤労の義務」(まじめに労働にいそしむ)
を定めているのは日本だけ。
勤労の義務は25条「すべての国民は文化的で最低限度の生活を営む権利を有する(生存権)」と結びついている。
勤労の義務を果たしていなければ、生存権は保障され -
Posted by ブクログ
Twitterで見かけたこの本、読みやすい良書だった。
不景気、大きな社会構造の変化期ゆえに肥大化する大衆の不安、家に搾取される女性たち、貧困者への冷たさ、競争社会、若い男性たちの暴動など。
切り口もわかりやすく、小学校高学年からでもわかるだろう。
作者の視線は、明治以降の、成功者=特別努力した者、という思想に嵌まる罠について集中して警句を発してくれる。
昨今の考えにもおおいに通じるこの感覚は、確かに怖いものだ。
この罠の背景にある物を見れば、日本社会が、自分は苦労しているのに、のうのうとして怠けている(ように見える)のに生活をみんなのお金から補填してもらうヤツへの冷たさがなにによって起こるの -
Posted by ブクログ
本書は大学における講義内容をもとに執筆されたものだが、とても興味深い内容で広くお薦めするに値する本だと思う。
副題に「社会集団と市場から読み解く」とある通り、「社会集団」と「市場(マーケット)」の2つを軸として、歴史的事象が整序され叙述されていく。
はじめに示されるのだが、明治期日本社会の構造を示した基本的な見取り図(13頁)が参考になる。
まず、日本近代社会を理解する前提として、江戸時代の社会(日本近世社会)の構造についての説明がある。
・領主制
・農村における基本的単位の「村」と、連帯して領主に年貢を納める責任を負う村請制
・「町(ちょう)」と、労働提供義務である”役”
-
Posted by ブクログ
「貧しいのは努力が足りないから」「辛いのはお前だけじゃない」「日本にそんな余裕はない」と生活に行き詰まった人を批判するのは現代だけではなかった。明治時代もまた、そうであった。
明治政府はクーデターを起こした士族の政府で、実際カネはなかったのであるが、投票も一定以上の税金を納めた男子のみ、議員も金持ちばかりだから、当然自分の所属している階層が得するような社会を作る。そうするとますます貧しい人は救われない。
現在は、18歳以上なら投票できるし、被選挙権も収入とは関係なくある。しかし、国会を見たら二世三世議員ばっかり。小学校から私立で、お金の苦労なんかしたこともない人が政治のトップにいて、自分の所属 -
Posted by ブクログ
岩波ジュニア新書なので中高生向けに平易に書かれており、1〜2時間もあれば読める。しかし、内容は重要。
この本のキーワードの1つは「通俗道徳」。明治時代には江戸時代の身分制社会の枠がなくなり、自由になった。しかし、人々は自由な競争社会の中で安心して暮らせるようになったのか。著者の答えは明快であり、頑張れば成功できるという「通俗道徳」によって競争を煽られる社会は決して安心をもたらしはしなかったということである。
近代の資本主義社会はこうした「通俗道徳」を形を変えながらも発信し続けており、今もなおそうである。もちろん、20世紀に入る頃には(つまり明治が終わり大正期に入ってくると)社会政策的な施策 -
Posted by ブクログ
生きづらい社会ってのは、何によって生まれているのか?
ってのを、明治時代から学んでみようの巻
生きづらい社会を生んでいるのは、みんなの認識(通俗道徳)のせいなので、これを通俗道徳の罠と呼ぼうとしたところが、良かった。理解を簡単にするには、名前をつけてしまうのは有効だからだ。(まぁ、有効すぎて間違った認識が広まることもあるけど)
作者はいったん現代を離れて明治の分析をすることにより、他人事として認識させることで、現代も未だ蔓延している、通俗道徳の罠に気づかせたかったのではないだろうか。
通俗道徳の罠の根底に、教育すれば誰しも勉強や仕事ができるようになると言う、教育万能説が流れていることにも注 -
Posted by ブクログ
大学の先生が、大人のために、個人主義とかGDPとか多数決とか公正や信頼などについて解説してくれる本。
多数決は何かを決めるときに必ずしもベストな手段ではないとか、なるほど。
利己主義は昔からあるけれど、個人主義は比較的新しいもので、国によって発生過程が異なり、「フランス革命に反対する勢力が、社会を解体する良くないものだと否定する文脈から登場し、19世紀半ば以降の英国では、個人の自由な経済活動が『小さな政府』とセットで強調されるようになり、哲学と文学が盛んだったドイツでは多様な個性を重んじる個人主義が重んじられ、アメリカでは他人の力を借りず一人でやりとげる『セルフ・メイド・マン』の概念と結び -
Posted by ブクログ
現代社会の抱える課題について、経済学・歴史学・政治学・社会学の視点から考えている作品です。
経済成長の基準とされる「GDP」について、その数値が示すものの意味と、GDP値を上昇させることの意味。
また、日本において根深く残る「勤労」感(働かざる者食うべからず、として貧困層をかれらの努力不足と断じる姿勢など)がどのように醸成されてきたのか。
多数決で物事を決定してゆく民主主義が抱えているシステム的な「課題」や、また「社会福祉」として行われる弱者救済が「人びとのニーズ」に合致しなければならないことなど、「これから先の社会」を考える前提としての「現代の社会」について、どのような仕組みで動いているの -
Posted by ブクログ
前々から気になっていた井出英策。今年一発目の本として「日本財政 転換の指針」を開き、ちょうど就任式を迎えたトランプ大統領の移民を排斥しようとする政策がなぜ得票に繋がるのか?の不思議に始めて明快な説明を受けたような気がして、講演会も聴きに行き、そこで民進党の前原誠司のブレーンとして研究だけじゃなく現実にコミットする!という宣言を聴き、著作も辿りながら、「財政」という自分にとっての新しいキーワードを手繰ってきた2017年は「大人のための社会科」を読んでの締めくくりとなりました。たぶん彼の案による「all for all」にも強いメッセージを感じ期待もしていたのですが、呆気なくテイクオフ出来ず瓦解崩
-
Posted by ブクログ
自由民権運動の研究は1980年代の「民権百年」運動をピークに長らく停滞している(とあえて断言してしまう)が、本書はそうした停滞を打ち破る可能性を感じる労作である。戊辰戦争による近世身分社会の解体に起因する人びとの帰属不安や承認欲求を原動力とする社会変革運動とみなす視点は、明らかに今日の新自由主義下の社会混迷(高度成長期に形成された社会システムの崩壊、貧困・格差の拡大)を投影しているが(氷河期世代の著者の問題意識が垣間見える)、自由民権運動を把握する際にこれまでネックとなった「復古」的要素や「堕落」・「逸脱」と評されがちな事象をも正当に評価する意義を有している。秩父事件を運動の終点とし、大同団