的場昭弘のレビュー一覧
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タイトルの通り、資本主義の歴史を辿る一冊。
あるいは資本主義から見た近現代史。
ここで言う資本主義とは、18世紀後半に主にイギリスの産業革命を契機に大きな発展を始めた「あくなき利潤を追及するための社会制度」と定義する。
中央集権的な近代国家の成立、大航海時代を経て蓄積された本源的資産、プロテスタントによってもたらされた"節約と勤勉"の精神をその発展の土壌とし、動力をもった機械の発明(産業革命)及び農民の農地からの切り離し(労働力の確保)を最後のきっかけとして、資本主義の世はイギリスから始まった。
以降、「あくなき利潤を追及する」資本主義が、以下に既存の身分制度を崩し、社会 -
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やはり池上さんは広く民衆的な範囲で物事を話してくれるから分かり易い。
的場さんは専門的で知識がとても深いから時に「それは何だろう」と思うような単語や文が出てくる。
2人のバランスがとても良く、広くも深くも考えられる本だった。
コロナ禍の日本、世界の今後の社会のあり方を見据えていて、モヤのかかった未来に少しずつ道筋を見せてくれるような本。
ここまで日本や世界の行く末を注視したことが無かったけど、資本主義の限界、社会共通資本のあり方、日本の記録の薄さ、菅政権の現状もよく分かる。
こういう本をどんどん読んで、自分なりに将来を予測出来る人間になりたいと思う。 -
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21世紀におけるマルクス主義。
グローバリズムは「労働者の国際連帯」の契機である。
マルクス主義は「国際的に連帯」することで初めて意味を持つ。逆に一国だけの連帯では、新たな差別を生むだけであるのだ。
「共産主義」とはあらゆる階級が融和した社会である。資本主義は「内部」と「外部」の関係で成り立つのであるが、「共産主義」では外部も内部も存在しない。
今までの「共産主義」という名目で存在した「ソ連型社会主義」は、徹底した「内部」と「外部」が存在した。基本的に国家への忠誠を強いられるからである。
(経営者=共産党幹部、従業員=労働者とみなせば、ソ連型社会主義国家はひとつの大きな企業のようなものである -
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タイトル「今こそ社会主義」からして、ロシアや中国の政治体制を礼賛するのではないかとやや不安に思いながらも本書を手に取った。本書は中国共産党や旧ソビエト連邦を模範とせよ、と言うものではなく、社会主義に対する考え方である資本主義、その中で国民生活を支える経済面の問題提起と、今回のコロナ対策などに見られる、国家が積極的•主導的に役割を果たすべき活動•政策の面から、社会主義的の良し悪しを考えていく内容となっている。社会が未成熟な状態では国家があらゆる国民活動に制約やルールを設けて、国民を纏めて国家全体を計画的に発展させていく、と言うやり方は合理的であり、かつてのソビエト連邦が第一次、第二次5カ年として
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今年(2024)のGWの大掃除で発掘された本のレビューは大方終わりましたが、その前に娘夫婦が宿泊した時に大慌てでスースケースにしまい込んだ本があり、それらの本のレビュー書きを終了させたく思っています。記録によればコロナ騒動が明けて間もない、ちょうど二年前に読んだ本です。
ウクライナ侵攻が始まった頃に出された本で、なぜウクライナ危機が起きたのか、正しいの私が信じて疑ってこなかった「資本主義」とはどのような歴史で生まれてきたのかが、わかると思って読んだ本です。本の内容は忘れてしまっているので、レビューを書きながら見直していきたいと思います。
以下は気になったポイントです。
・資本主義とは何か -
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最近改めてマルクスの「資本論」が話題になっているのはなぜだろうかと気になり手にした一冊。
資本主義とは、その課題は
資本主義の根底には収奪と侵略の正当化がある
利潤の追求においては互恵はあり得ない
=win winはない
資本主義は私的所有を前提としているため労働によって生み出される富が私的分配されてしまう
=格差が生まれ、拡がる
マルクスの資本論の本質は
資本主義が追求する目的や発展過程の運動法則を網羅したもの
資本主義の矛盾を指摘しいずれ限界がくることを示す
=共産主義、社会主義を推奨した訳ではない
有名な「共産党宣言」は資本の性質から労働者にもグローバル化への覚悟を示したもの
今後 -
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資本主義には"オチ"がある
■概要
資本論を解説するのではなく、「落語と結びつけるとこう理解できるのでは、現代社会に活かせるのでは?」という落語家の筆者からの提言。
・人間の業を肯定する資本主義と落語
>そんな談志の理念の一つが、「落語とは人間の業の肯定である」 という歴史的な落語の定義であり、 これをはじめとするいくつもの落語の理論化を打ち出しました。 マルクスと談志、落語と『資本論』。 まったく異質なものですが、あえて無理やり共通項を見出そうとすると、「人間のシステム エラー大全」ではないかと思います
・資本主義のオチ (解釈の解釈)
まず資本主義社会は、産 -
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冷戦の終戦を機に、マルクス主義の影響力は弱まった。これで、マルクスの思想は過去の遺物だと、そう思われた。しかし、21世紀アメリカ一強の時代となった矢先に、イスラム勢力が台頭し、その象徴たる同時多発テロ事件は世界を震撼させた。これ以降、世界情勢は混乱を極める。そのような時代だからこそ、マルクスの書物に目を向けるべきだと著者は説く。たしかに、社会主義や革命の必然性は誤りであったが、それでもなお、マルクスが現存する資本主義システムの見方は今も色あせない。このように、本書は『資本論』を含むマルクスの著書を、改めて読み直し、今後の社会の動向、システムにどのように向き合うべきかを考えさせてくれる。
本 -
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著者はマルクス経済学が専門なので、特に19世紀は経済の記述が多い。
19世紀に、歴史学は王朝の正当性を語る宮廷史に代わって、客観的な史料史学、実証史学が出現したが、解釈の問題が残った。シュペングラーは、「西洋の没落」で世界史=西洋史であることに疑問を提示した。アーノルド・トインビーは、アマチュア歴史家だが、あらゆる国について網羅する世界史「歴史の研究」を書き上げた。
資本主義は国民国家の市場の枠内で成長し、資本が蓄積すると近隣諸国へ資本を輸出して、国外市場の獲得に手を付け始めた。西欧では、それぞれの市場が閉鎖的だったため、アジアやアフリカ、南アメリカが狙われることになった。安価な工業製品を -
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資本主義をきちんと捉え直すにはとても良い本だった。ソ連の崩壊以降、世界中が資本主義に統一され、グローバル化が一気に進んだが、冷戦時代に比べて私たちの生活は苦しくなった。東側の人々が競争に参加したこと、そして無国籍企業が国民国家の利益を超えて跋扈するようになったため、先進国の産業は空洞化し技術移転は進む。
そしてウクライナ戦争のように常に戦争ビジネスを「正義」を語って推進する勢力がいる。もはや政治家の全てが資本家の手先となり、弱者の利益代表は世界中で限りなく消滅している。
確実なことは、資本主義は人類の未来の責任はとらないということである。正義を語った利益のための戦争は続くし、地球環境は破 -
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資本主義の歴史を駆け足で解説。
資本主義が、なぜアジアや中東でなく、ヨーロッパで起きたのか。農民を土地から開放できたこともですが、プロテスタントと資本主義の精神では、働くことを宗教と結びつけることで発展してきた部分もあるのかなと感じました。その後、資本主義が帝国主義と結びつき、2度の戦争を繰り返す。
戦後、アメリカの一強体制やリーマン・ショック、アジアの勃興などを通じて、資本主義の中心地は変遷を続ける。
日本も製造業が強かったバブルの時代もあったかもしれませんが、経済に勢いがある国は、自信に満ち溢れたひとが多い気がします。資本主義が人の豊かになりたいという気持ちを剥き出しにしてきたせいでしょう