【感想・ネタバレ】いまこそ「社会主義」 混迷する世界を読み解く補助線のレビュー

あらすじ

池上彰がマルクス経済学の専門家と対談。資本主義や社会主義の歴史を振り返り、世界経済の現在・過去・未来をわかりやすく解説。混迷の時代を生き抜くために我々は何をすべきか? アメリカ大統領選挙後の動向も見据えつつ、未来への指針を提示。

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Posted by ブクログ

やはり池上さんは広く民衆的な範囲で物事を話してくれるから分かり易い。
的場さんは専門的で知識がとても深いから時に「それは何だろう」と思うような単語や文が出てくる。
2人のバランスがとても良く、広くも深くも考えられる本だった。
コロナ禍の日本、世界の今後の社会のあり方を見据えていて、モヤのかかった未来に少しずつ道筋を見せてくれるような本。

ここまで日本や世界の行く末を注視したことが無かったけど、資本主義の限界、社会共通資本のあり方、日本の記録の薄さ、菅政権の現状もよく分かる。

こういう本をどんどん読んで、自分なりに将来を予測出来る人間になりたいと思う。

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2021年03月16日

Posted by ブクログ

タイトル「今こそ社会主義」からして、ロシアや中国の政治体制を礼賛するのではないかとやや不安に思いながらも本書を手に取った。本書は中国共産党や旧ソビエト連邦を模範とせよ、と言うものではなく、社会主義に対する考え方である資本主義、その中で国民生活を支える経済面の問題提起と、今回のコロナ対策などに見られる、国家が積極的•主導的に役割を果たすべき活動•政策の面から、社会主義的の良し悪しを考えていく内容となっている。社会が未成熟な状態では国家があらゆる国民活動に制約やルールを設けて、国民を纏めて国家全体を計画的に発展させていく、と言うやり方は合理的であり、かつてのソビエト連邦が第一次、第二次5カ年として実践、発展させた事は言うまでもない。国家に必要な要素を完成品から詳細に分析を重ね、部品一つ、ネジ一つに至るまで定量数値化していく事で資源の無駄や労働力の無駄が省かれる。そうした中で、従事する職業によって格差が生まれないよう、成果や利益を国家のものとし、国民に再配分していく考え方、社会主義の一形態として共産主義が生まれてくる。富は国家に帰属すると言う考え方は個人の頑張りや努力の度合いによる格差を生じさせないから、どれだけ頑張ろうがサボろうが同じ賃金になると考えるなら、努力しない方が楽である。そこから共産主義が限界を迎えるのは当然の事のように見える。かつての中国がそれであり、彼らはそこに新たな考え方、余剰利益を個人に帰属させる仕組みを作る。これにより現在の中国社会の様な、共産主義と言いながらも、農村部と都市部の決定的な所得格差や、成功者と失敗者の大きな格差を生んだ。資本主義は国家が国民の生産活動や取引に自由を与え、頑張るものは富を得られる状態にする必要があるため、これを称して自由主義と呼ぶが、現在の中国の在り方はその富の格差が表すように「共産主義的自由主義」と呼ぶ方が合っている。本書はそうした社会主義の形態含め、ソビエト連邦、今は解体されたユーゴスラビア、キューバ、旧東側諸国を例に挙げ、社会主義の問題について触れながらも、良い点についても述べていく。
最近アメリカでまたトランプ氏が大統領選で当選した。その背景にはアメリカ社会の中に広がる所得格差への大衆の不満があるのは間違いないし、それを海外からの不法移民に矛先を向け、解りやすい政策を打ち出した事が勝因の一つだろうと思う。資本主義•新自由主義の限界や、サービス産業に富が著しく偏り、日本製鉄の買収に見られる様に、アメリカの製造分野の衰退から生じる失業も背景にある。再び製造業を下地とする強いアメリカを目指して、世界で行きすぎたグローバリズムに楔を打ち込みに行く。世界はまた資本主義の在り方について再考を求められるし、それについての充分な議論が出来ない国は淘汰されていくに違いない。
近年新型コロナの対策が国によって大きく異なった結果、封じ込めの成否がそのまま国と政府の評価につながった。全体主義的な強烈な外出制限を国民に課した国もあれば、日本の様に、人々の自主性に任せた国もある。歴史的に疫病の封じ込めだけでなく医療に関しては国家がある程度の制御を加えない事には、生命の危機に影響を及ぼす事もあり得る。全て合理化を最優先する民間の営利に医療やその他生命に関わることを委ねるのは危険だ。軍事などもその代表格ではあるが、ウクライナ戦争を見てもわかる通り、近年は民間軍事会社が戦場に大量投入される。様々なシーンで社会が、資本主義が変わりつつある現代。本書は今一度、人間らしく平和に安全に安定的な人生を送る為にも、国がどこまで介在するか、体制から考え直してみる良い機会になる。

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2024年11月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

以前神保町で『マルクスだったらこう考える』を読んで、的場さんの存在を知り、興味を持った身として、現在の的場さんの思想を知りたくて読んだ一冊。
池上さんの知識量もさることながら、改めて的場さんの経済学的・哲学的・歴史的知見の幅広さに感銘を受けた。
ここからはネタバレだが、的場さんの思想は、地方分権型社会主義、らしい。詳しくは書いていないが、斎藤さんの脱成長コミュニズムに出てくるアソシエーショニズムやミュニシパリズム、シューマッハーの社会主義と大差は無いのだろうと理解した。
次は是非若手マルクス学者の斎藤さんとの対談本を出して欲しい。

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2022年05月08日

Posted by ブクログ

社会主義ばんざい! な内容ではまったくない。世界各国のコロナ対策を検証し、現在の資本主義・自由主義経済の問題点を洗い出していく対談本である。当たり前の話だが、やることなすこと全て上手くいく理想郷など、存在しないと思わされる。前進よりも漸進が大事だな。

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2021年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 検証を拒むことの危険。歴史に学ばないことの愚かさ。
 なぜこのような赤字体制に陥ったのかを、政府は、誰も説明しようとしない。本当に奇妙で恐ろしいことだ。
 社会民主主義的な「余裕」を無くしたことが、現代日本の脆弱さにつながっている。
 
 この本からも、社会主義の理念と、共産主義国家体制の違いを再認識する。
 

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2021年03月18日

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あまり好きではない池上彰とよく知らない的場昭弘の対談本。「社会主義」についてなにを語るのか???
勉強にはなったなあ。世界のなかでのもろもろの社会主義の形に興味がわいた。

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2021年02月13日

Posted by ブクログ

コロナ禍にさまざまな価値観が変わった今、改めて社会主義を考える。
社会主義といっても、中国、旧ソ連、旧ユーゴスラビア、キューバなど国によっての違いを学べた。

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2025年01月18日

Posted by ブクログ

池上彰とマルクス経済学者である的場昭弘の対談本。資本主義の行き詰まりから注目度の高まる社会主義。これらイデオロギーの問題点を追求する。

ネクタイをした単純労働のプロレタリアート。経済成長を原動力とする資本主義において、社畜たちはその歯車となり、労働に一生を費やす。商品はやがて成熟して凝り固まり、イノベーションを起こさずに定量消費の世界に行き着けば打ち止め。経営者と労働者の差のついた利益配分が蓄積する事で益々格差は拡大するのみで、救いがない。しかし、イノベーションが続けられるならば、常にそこには大貧民の革命可能性は残るはずだった。しかし、そうしたスタートアップにも限界があり、大多数は歯車のまま。

資本主義側から見れば、社会主義の地域は、単なる資本主義世界の外部市場として組み込んでしまう。その意味で、世界同時革命が必要としたトロツキーが正しく、社会主義と資本主義は世界市場で両立不可能だと本著。即ち、資本家階級は世界を巻き込み搾取システムを維持する。

本書では、社会主義という言葉に、一般に流布している以上の意味を込めたとのこと。社会性、すなわち、公共性を重視するという意味。物質的な豊かさを追い求めるだけではなく、幸福を感じながら暮らせる社会へ。これだとまるで社会主義が素晴らしいものに見えるが、しかし、社会主義の方が緩くて平等で「人間らしい」人生を送れるわけではない。生産計画の管理下では、官僚制と大差がない。何より、世界市場において、資本主義から「一抜けた」ができない以上、極端な主義転換は幻想であり、世界同時、あるいは特定業種からといった価値転換が必要なのだろう。

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2024年03月16日

Posted by ブクログ

自国ファーストが進む中で社会主義。コレラの後に社会主義ができたらしいので、コロナの後にもくるかもですね。

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2021年01月23日

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