【感想・ネタバレ】資本主義全史のレビュー

あらすじ

資本主義の歴史とは「過去」と「現在」
そして「未来」の歴史である

西欧で生まれた資本主義が、拡大し、そして暴走している。資本主義はなぜ限界にむかっているのか。資本主義と持続可能な世界は両立するか。ポスト資本主義とは何か。本書では世界史の流れの中で、資本主義の変遷をたどることより、これまで自明のものとしてあった資本主義の本質をつかむ。予測不可能な未来を切り開くために必須の教養が身につく一冊。

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Posted by ブクログ

タイトルの通り、資本主義の歴史を辿る一冊。
あるいは資本主義から見た近現代史。

ここで言う資本主義とは、18世紀後半に主にイギリスの産業革命を契機に大きな発展を始めた「あくなき利潤を追及するための社会制度」と定義する。
中央集権的な近代国家の成立、大航海時代を経て蓄積された本源的資産、プロテスタントによってもたらされた"節約と勤勉"の精神をその発展の土壌とし、動力をもった機械の発明(産業革命)及び農民の農地からの切り離し(労働力の確保)を最後のきっかけとして、資本主義の世はイギリスから始まった。
以降、「あくなき利潤を追及する」資本主義が、以下に既存の身分制度を崩し、社会を変革していったか、そして資本主義がどのように世界を飲み込んでいったかが歴史と共に描かれる。

まずイギリス国内で生じた貧富の格差はしかし資本主義の発展により埋められていく。すると資本は新たな利潤を求めて海外へとその領域を広げていく。今度は国家間の貧富の差が生まれてくる。その後、戦争や恐慌等の様々な衝突を経て、第二次世界大戦後、自由主義の下で資本主義は世界の隅々まで行き渡ることになる。
かつてのイギリス同様、先進国国内では中産層を含めて国内に富が分配され豊かになった。その結果、資本は途上国に移っていく。社会主義国家の崩壊を経て、世界中隅々に資本主義のマネーが行き渡り、国内ではこれ以上の投資先を失い低迷を始めた先進国と、力をもって次の主役たらんとするアジアとが拮抗するのが現在の世界だと言える。
世界史で勉強した近現代の西洋史が、資本主義を軸とした社会経済制度を背骨に語られ、非常に明快なストーリーをなしている。ここ200年の歴史は資本主義によって作られてきたのではないかとさえ了解される。

上で"西洋史"と書いたが、資本主義はあくまで西欧の歴史文化のなかで生じた社会制度であるゆえ、本書にはその周辺たるアジアアフリカは殆ど取り上げられない。
しかし、資本が投資先を求めて世界中に行き渡るようになった現在、西欧の停滞・アジアの勃興は誰の目にも明白である。次なる社会はどの地域を中心として回っていくのか。先のことは分からない。

だが、どうなるにせよ、嫌が応にも我々が参加させられている資本主義の本質と来し方を知り、未来を見据える際の基礎知識を概観できる一冊として、お勧めできる。

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2025年03月16日

Posted by ブクログ

 資本主義をきちんと捉え直すにはとても良い本だった。ソ連の崩壊以降、世界中が資本主義に統一され、グローバル化が一気に進んだが、冷戦時代に比べて私たちの生活は苦しくなった。東側の人々が競争に参加したこと、そして無国籍企業が国民国家の利益を超えて跋扈するようになったため、先進国の産業は空洞化し技術移転は進む。
 そしてウクライナ戦争のように常に戦争ビジネスを「正義」を語って推進する勢力がいる。もはや政治家の全てが資本家の手先となり、弱者の利益代表は世界中で限りなく消滅している。
 確実なことは、資本主義は人類の未来の責任はとらないということである。正義を語った利益のための戦争は続くし、地球環境は破壊し尽くされるのだが、利益の収奪競争をしている人達がリーダーなのだから、利他を優先するのはポーズでしかないのだ。

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2022年05月26日

Posted by ブクログ

今年(2024)のGWの大掃除で発掘された本のレビューは大方終わりましたが、その前に娘夫婦が宿泊した時に大慌てでスースケースにしまい込んだ本があり、それらの本のレビュー書きを終了させたく思っています。記録によればコロナ騒動が明けて間もない、ちょうど二年前に読んだ本です。

ウクライナ侵攻が始まった頃に出された本で、なぜウクライナ危機が起きたのか、正しいの私が信じて疑ってこなかった「資本主義」とはどのような歴史で生まれてきたのかが、わかると思って読んだ本です。本の内容は忘れてしまっているので、レビューを書きながら見直していきたいと思います。

以下は気になったポイントです。

・資本主義とは何かという点で一致しているのは、資本主義は飽くなき利益を得るための社会制度であるということ(p20)まとめると、資本主義とは、飽くなき利潤獲得を目的とする制度である。人々は社会の利益のために、利潤獲得という本来の目的を変更することは絶対にあり得ない(p28)常に利潤を獲得するために、休むことなく動き続けるしかない社会である(p56)

・カトリック支配に対する抗議(プロテスト)があった、貧しい生活の中から教会に寄付しようとしても仕事の都合もあり教会に行くことができない人にとっては、仕事をしながら、あるいは仕事をすること自体が神を信仰することになるといった新しい方法が必要になってくる。こうして生まれたのがプロテスタントである、信仰よりも自らの仕事(天職)を大事にするようになり、生産力が上昇することになった(p39)

・マルクスは労働者が生み出されていく過程を、二つの自由、という言葉で表現している。1)土地からの自由、2)封建制からの自由(p53)土地を失った労働者は、仕方なく都市へ行って、工場労働者になるしか選択肢はない。こういう労働条件があって、資本主義が発展することになる。資本主義には、機械の発展・労働者(人間)を農村から追い出す、という二つの「発展」が不可欠である(p54)

・ナポレオンの失脚により1814年に崩壊し、イギリス圏が勝利して大英帝国という一極体制が確立する。これで一番困ったのは、欧州、特にドイツ以東の東欧の人たちである。東欧がフランス圏にあった時、ドイツ、ポーランドの小麦はフランスを中心都市た経済圏の中で動いていた、それがナポレオン体制の崩壊と共に、イギリスが支配していた中南米から安価な作物が入ってくる、すると、ドイツ、オーストリア・ハプスブルク帝国、イタリアの農作物が安く買い叩かれることになり、これに天候不順が追い打ちをかけて、東欧・南欧の人達は生活が立ち行かなくなり、人口が希薄であったアメリカが発展する景気が生まれる(p73)

・アメリカの南北戦争によって工業国へ変貌する、奴隷解放戦争ですが、これはアメリカの工業化と関係している、北部は工業が盛ん、南部はイギリスの分業システムに組み込まれていて、イギリスに綿花を売ることで輸出を支えているので黒人奴隷を抱えていたので、南部の経済は綿花無くしてもたないと思われていた。しかし実際には北部の工業製品の輸出でそれを補えることがわかり、北部の工業生産が南部のプランテーションのような植民地的システムを駆逐した(p83)

・明治時代の日本では、官営工場を摂理寿司、それに銀行が融資して民営化した後に、そこに税金を投入する。今でも日本を支配している財閥系の会社はそうしてできている、これが金融資本主義である(p96)

・西洋白人社会は、単なる西洋の支配ではなく、白人内部にもきめ細かい差別構造があった、東欧に対する西欧の優位、アングロサクロンのラテン系・スラブ系に対する優位、プロテスタントのカトリックに対する優位、ユダヤ人を含めた非西洋人、黒人に対する優位、男性の女性に対する優位、WASPという言葉に象徴される、ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタントは、民衆に対する貴族の優位のないアメリカで生まれた新たな貴族であった(p117)

・ロシア革命は、こうした概念の改革を迫る革命であった、労働者が帰属の牙城を侵食することをよく思わない西欧の特権階層は、ロシア革命への干渉を行い、さらに、ハンガrー、ドイツで起こった革命現象に対して厳しい態度で臨んだ、それがドイツに対する第一次世界大戦後の厳しい処置であり、結果的に第二次世界大戦の原因を作ることになった(p117)

・大恐慌の象徴的な出来事は、1929,10,24の株価暴落ですが、実際景気が悪化してどうしようもなくなるのは、その3年後の1932年から、1931年には株価は盛り返している。この恐慌は1937年に再来したが、最終的には第二次世界大戦によって解消された。最初の教皇はバブルによる連鎖的な破綻でかなりの地方銀行が倒産したが、大企業・大銀行は影響を受けていない。それが次第に悪化したのが、独占企業の問題である。業績が悪くなっても大企業はすぐにはリストラ、安売りをしない。しかし最終的には値下げをして安くするから収益が減り、賃金が下がる、そしてものを買わなくなる、こうしてデフレ現象が進んだ(p127)

・1945年から1949年までのドイツは占領下の状態にあった、東ドイツはソ連、北ドイツはイギリス、ライン川沿いの西ドイツはフランス、南ドイツはアメリカで分割し、ベルリンは東はソ連、それ以外の西は北から順に、英仏米が分割統治した。(p155)

・ケインズは、ドルでもポンドでもない「銀行金=バンコール」という新しい通貨の創設を提唱、これは時間によって減価するので受け取ったらすぐに使わなければならない、いずれの国もバンコールを独り占めできないシステム、それは金の自動調整機構にも似ている、一方、ホワイトはドルと中心としたドル基軸体制を主張して、これが採用された(p161)

・ポーランドは大戦後に領土が大きく変化する、東部分をソ連に占領され、その見返りとしてドイツ側の領土(オーデルナイゼせん)国土が大きく西にずれた。この問題が現在のウクライナ問題にも影を落としている、ウクライナには多くのカトリック、ポーランド人がいある(p203)

・ナチス側について戦ったのは、ルーマニア。ブルガリア、クロアチア、そしてハンガリーである。ハンガリー帝国は戦後の選挙では共産党は少数派であったが、ソ連による賠償金免除などにより次第に共産党が力をもち、1947年の選挙で勝利した共産党はやがて他等を解散させて追放し、共産国家が成立した(p205)

・1989年のソ連崩壊に至る流れは、自由を求める声でも、社会主義体制の崩壊でもなく、まさにシャイロック的金融(まずは借金で楽な生活をさせ、やがて身ぐるみはぐ、そのためにレーガンは高金利政策=強いドルの反共政策をとった)によって生まれた。ミサイルではなく、経済で、ソ連・東欧を崩壊させた(p210)

・ソ連、東欧経済は、それぞれの国の物価レベルにおいては、それなりに高いGNPを持っていた、ソ連は第3位の日本とアメリカの間にある、第二位の国でした。その実態は、生産性・技術・品質の低さ・効率の悪さなど、あらゆる点において比較にならないほどの状態であった(p215)国境を西側と接する、東ドイツ、チェコスロバキア、ユーゴスラビア、ハンガリーなどはすぐわかった、ユーゴスラビアは自由に外に出ることができたので、その影響は計り知れなかった(p216)

・過剰な公的債務に対する解決策はこれまで8つ存在する、そして現在もその8つが存在する。増税・歳出削減・経済成長・低金利・インフレ・戦争・外貨導入・デフォルトである。これ以外には解決手段はない(p275)

・今や中国を代表として、第二の資本主義という形で出現している、中国はすでに50近い国が参加している、建設投資銀行と、一帯一路という大きな建設計画を立ち上げた。これはある意味、アメリカ的自由主義経済への大きな挑戦である、国家が大規模インフラ計画を行うが、それを支えるのは各国が拠出する建設投資銀行である。アメリカと日本は参加しなかったが、欧州は参加したのは当然であった。貿易黒字を続ける国家をバックにした信用システムは極めて強い、中国の場合はリーマン時のように最終的に国が助け舟を出したのに対して、最初から国家が全面に出ている(p291)

2022年7月13日読破
2024年7月23日作成

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2024年07月23日

Posted by ブクログ

基本のおさらいにはいいけど、資本主義の歴史に対する考察は薄い。あくまで、歴史の全体感を把握するには良い一冊。

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2022年09月04日

Posted by ブクログ

資本主義の歴史を駆け足で解説。
資本主義が、なぜアジアや中東でなく、ヨーロッパで起きたのか。農民を土地から開放できたこともですが、プロテスタントと資本主義の精神では、働くことを宗教と結びつけることで発展してきた部分もあるのかなと感じました。その後、資本主義が帝国主義と結びつき、2度の戦争を繰り返す。
戦後、アメリカの一強体制やリーマン・ショック、アジアの勃興などを通じて、資本主義の中心地は変遷を続ける。
日本も製造業が強かったバブルの時代もあったかもしれませんが、経済に勢いがある国は、自信に満ち溢れたひとが多い気がします。資本主義が人の豊かになりたいという気持ちを剥き出しにしてきたせいでしょうか。
ウクライナ情勢や、日本のこれからなど行く末は気になることばかりです。

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2022年05月23日

Posted by ブクログ

的場昭弘(1952年~)氏は、慶大大学院経済学研究科博士課程修了、東京造形大学助教授、神奈川大学短期大学部教授等を経て、神奈川大学経済学部教授。専門はマルクス研究、社会思想史。マルクス研究関連の著書多数。
本書は、19世紀のヨーロッパに始まった資本主義が、20世紀の社会主義との競争に勝利しながら、21世紀に入った現在、その限界に突き当たっているように見える中で、その歴史をまとめたものである。
私は従前より、世界に広がる格差と、それを生み出す資本主義に問題意識を持っており、水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』、トマ・ピケティ『21世紀の資本』、ジョセフ・E・スティグリッツ『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』、広井良典『ポスト資本主義』、『無と意識の人類史』、斎藤幸平『人新世の「資本論」』、大澤真幸『新世紀のコミュニズムへ』、柿埜真吾『自由と成長の経済学』、中村隆之『はじめての経済思想史』、荒谷大輔『資本主義に出口はあるか』、ブランコ・ミラノヴィッチ『資本主義だけ残った』、セルジュ・ラトゥーシュ『脱成長』等、幅広い分野、様々なスタンスの本を読んできたが、資本主義の200年の歴史を振り返ったものとして、本書を手に取った。
章立ては以下である。
序章:資本主義とは何か
第1章:資本主義という社会がそれまでの社会とどう違うか
第2章:資本主義の始まり――19世紀のヨーロッパ
第3章:産業資本主義から金融資本主義への移行
第4章:戦後の経済発展と冷戦構造――資本主義対社会主義
第5章:資本主義の勝利へ――グローバリゼーションの時代資本主義を読み説く
第6章:暴走する資本主義――ソ連・東欧の崩壊から金融資本主義へ
第7章:資本主義のゆらぎ――リーマンショック後の世界
終章:資本主義の後に来るもの
歴史を追うことに主眼を置いており、メッセージ性は強くないものの、資本主義のプラス面・マイナス面、更に、資本主義の将来、ポスト資本主義について考えるにあたって理解が不可欠な、資本主義を軸にした近現代史を再確認できる一冊である。
(2022年5月了)

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2022年05月01日

Posted by ブクログ

資本主義の歴史から近代史を学んでいこうという試み。

特筆すべき内容はなかったものの勉強にはなった。

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2025年10月17日

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