斉藤悦則のレビュー一覧

  • 自由論

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    「正当な理由なしに他人に害を与える行為は、いかなる種類のものであろうとも、周囲の人々の不快感によって、さらには周囲の人々の積極的な干渉によって、抑制されることが許される。
    もっと重大な場合には、その抑制は絶対に必要である」(P137)

    現在、リアリティ番組「テラスハウス」に出演していた木村花さんの死の原因がSNSによる誹謗中傷であるとして世間を騒がせている。
    自民党の三原じゅん子議員が座長として、自民党政務調査会にインターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策PTが立ち上がり、法整備が検討されているが、詳細は発表されておらず、三原議員がTwitterで明らかに偏向的な発言に賛同するような考えを示しており、早速先行きが懸念されている。

    他国の例では、イギリスでは日本と同じくリアリティ番組出演者の自殺が相次ぎ、法律制定についての署名活動が起こり、ドイツ、フランスではSNS事業者に対して脅迫や攻撃的な内容を含む投稿は24時間以内の削除を義務付ける法律が制定されている。
    削除の基準は民間の事業者にゆだねられており、今後議論の余地がある状況である。

    意見、批判、誹謗中傷の定義は難しい。
    個人的には、人格・容姿など生来持って生まれたもの、後天的に自分と切り離せないことを死や侮辱的な言葉を用いて過度に否定することは誹謗中傷といえると考える。
    意見・批判は、言葉や行動に対して事実や経緯とともに語られており、第3者がその意見、批判に対して、ある程度納得できるものである。
    どちらにも、感情は含まれると思うがあくまでも常識的な範囲で事実に基づいて発せられたものであるか、第3者がその意見、批判に至った経緯を把握した時に、納得できるものであるかそうでないかという違いが意見・批判と誹謗中傷にはあると思う。

    ミルは「議論における中傷」について、表現の自由の限界としてこう語っている。
    「真理と正義のためには、支配的な意見の側にこそ、相手を中傷非難する表現を控えさせることが重要なのである」(P133)
    先の自民党議員にはインターネットよりまず現実での国会ヤジをどうにかすることも考慮して頂きたいところである。

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    2020年05月30日
  • 人口論

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    フランス革命直後に書かれ、当時の地球の人口は1億程度、農地拡大の限度が人口限界と看做されたが。現在、文明国では貧困層も肉食が普通となり、適切に配分されれば70億でも餓えることは無いはずで。マルクスの「労働者団結せよ」は大間違いであったが「生物は繁栄するほどより困難なボトルネックに直面する」と指摘したマルサスの正しさは否定できない。著者の言う「性欲は不変」は子孫繁栄願望だが、今日先進国各国は少子化で移民受け入れしないと人口を維持できない。予期しなかったが都市化の最大の問題は失業で良質の仕事が不足しているのだ

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    2019年03月25日
  • カンディード

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    バーンスタインがミュージカル化しているこの作品。ミュージカルは観てないけど、気になっていたので読んでみた。登場人物が皆悲惨な目にあってるのに結構あっけらかんとしていて、コメディタッチで読みやすい。途中で著者の私怨も盛り込まれていたりしてもう何でもあり。机上の空論より身体を動かして働こう、と登場人物たちがオプティミスティックな思想が最後リアリスティックになるのがなるほどと思った。途中で出てくる登場人物ですべてを批判する人、一般の人が美しいと思っているものに欠点を見つける人は、それを楽しめないことを楽しんでいる、と分析しているのはとても腑に落ちた。

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    2018年11月17日
  • 自由論

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    訳が素晴らしく読みやすかった。
    簡単な言葉で書かれているが立ち止まり考えてしまう本だった。
    今読んでも全然古くなく現代でも当てはまることばかりで驚いた。

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    2016年04月30日
  • 自由論

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    ネタバレ

    だいぶ昔の本なのと、時代背景が
    禁酒法があった時代のときなので、
    相当自由が狭められている、
    というのを理解して読まないとつらいかも。

    それと一部分に
    矛盾するのでは?
    という部分も見受けられます。

    ですが、この本は昔の本ですが、
    批判している部分は、
    今でこそいかして欲しいものだと思います。
    特にネットという時代があって
    誰しもが情報を発信できる時代ならば。

    そして、自分を持つことって
    こういう本を読むと、大事だなと感じました。

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    2014年05月29日
  • 人口論

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     日垣さんの古典塾の先月の御題。

     よみ遅れてしまったが、読んでみたら、新しく知る事実が多い。

     まず、マルサスが、フランス革命を批判的にみていた、イギリスのバークなどと同じグループだということ。あと、後半はゴドウィンという今ではほとんど知られていない理想主義の学者の批判であること。

     その他、おもしろい指摘

    (1)人口はなんの抑制もなければ等比級数的に増加する。一方、人間の生活物資の増え方は等差級数的である。(p33)

     これしか、マルサスの文章は知らなかった。マクロでいえば、科学技術による農産物の増産、新しい農地の開墾などによって、人口は増加してきたが、ミクロでいえば、農家の次男坊以下は、部屋詰めとして、結婚もゆるされず、長子だけが家をついて子供がつくれた江戸時代などは、その農牛お生産力の限界で、「人口抑制」をしていたと考えられる。

    (2)今の社会の醜さと新しい社会の美しさを長々といいたてるだけで、その新しい社会への移行を促進する方策、それもすぐに適用できる具体的な方策をまったく示さない人よりも、かっこうは悪くとも達成可能な方策を示してくれる人の方が、人類にはるかに大きな恩恵をもたらす。(p213)

     マルサス、いいこというな。まさにそのとおりだと思う。恰好悪くても、すこしでも現状をかえる方策を採り続けたいもの。

    (3)知的な快楽のほうが肉体的な快楽よりもすぐれている。しかし、それは持続する時間の名が長さとか、対象範囲の広さとか、その空きにくさの点でそういえるだけである。(p159)

     マルサスは、人口が等比級数的に増える前提として、性欲が世代を通じて衰えないことをあげている。性欲は衰えなくても、女性の社会進出などによって、子供をつくることが抑制されることはあるのだろうが、フランス革命当時はそのような発想はわかなかったのだろう。

     当時の時代の雰囲気として「性欲」をどうどうと語っていることにちょっとおどろく。

     いずれにしても、とてもわかりやすい訳で、よみやすかった。皆様にご推薦。

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    2012年03月04日
  • エミール 1

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    古典が好きなので、近年の研究をもとに書かれた実用的な本よりはルソーが考えていた教育論の方に惹かれる。ルソーの本とか哲学っぽい本を読みたいというよりは、個人的に結婚を考える時期というのが読み始めた動機に大きく寄与している。

    読み手に「こういう考え方が正しい」という主張をしたい場合は、研究データを持ってきてロジカルに説明するのが今や当たり前になっているのだが、本書は単にルソーの個人的な思想をぶちまけている感じがあって「いや、何を根拠に言ってんねん」みたいな感情をまさかルソーに抱くとは思わなかった。

    しかも結構現代のコンプライアンスに引っかかりそうなフレーズが飛び交う。しかし、これくらい自分の感覚に任せた主張は清々しいし、自分も似たような感覚や主張もあるので「ふむふむ」と思うことももちろん多かった。

    それにしても「教育」とか「育児」って本当に正解がない(結論が出ていない)分野なんだなと改めて実感した。

    個人的には『ロビンソン・クルーソー』を素晴らしい書物として紹介していてちょっと気分が上がった。

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    2026年06月07日
  • エミール 1

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    正直おもしろいとは思いにくかった…!
    小説だと思ってたからかもしれない、あくまでエミールという少年を仮定した哲学本だった笑

    ところどころに光る金言と当時の価値観が垣間見える例え話は興味深かったけど、教育に関心がないと結構きついかも。

    あと結構「そうか〜?」って思う教育方法が書いてあったり。

    2巻と3巻もう買ってしまったけど、一旦別の本で休憩しよう、、w

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    2026年05月19日
  • カンディード

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    バーンスタインのミュージカル、キャンディードの曲をどこかで聞いて、元ネタがヴォルテールと知り、いずれ読んでみようと思ったのは数年前だろうか。
    ようやく手に取ってみたが、思った以上にハチャメチャなギャグ小説なので驚いてしまった。
    現代の感覚ではそうとしか思えないのだけど、そもそもこれはおそらく小説というジャンルではないし、小説というものの立ち位置もこの時代と今ではかなり違うだろうと思うが…。
    とにかく、ハア?の連続で、下ネタぽいのもちょくちょくあるし、中世のコロコロコミックたる、ティル・オイレンシュピーゲルからの流れを思い浮かべた次第。まああれもドイツ人キャラの話だったよな。
    今回も内容は、表紙から推して知るべしだ。

    運命とは。最善とは。宗教とは。
    パングロス先生の人生にもビックリしたけど、主人公のカンディードが素直な人間なので読みやすかった。
    死んだと思ったキャラが生きてたパターンは昔のジャンプ漫画みたいに多かった。
    黄金郷で大金を手にしてからはストーリーがスムーズになる。
    しょせんは金だな、というのが私の印象であった…。
    パングロス先生、恋人クネゴンデなどのサブキャラより、クネゴンデのお付きの老婆や、前半の相棒ガガンボ、後半の相棒である悲観的な学者先生、ベネチアの悲観的な政治家などのキャラクターが生き生きとしていて面白かった。
    クネゴンデの兄だけはあの展開にビックリしたまま…。

    注釈多め、読みやすい口語セリフ、やはり光文社古典新訳は上手いシリーズである。
    コレでなければ最後まで読めなかったかも。

    カンディードの終わり方はなかなか良い。
    関係者みんなが一緒に助け合って暮らすけど、その実、文句たらたらなところも、しょっちゅう皆で哲学について話し合っているというところも。
    そして最後のセリフ。
    私も、自分の畑を耕さなくちゃ。

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    2026年02月21日
  • 自由論

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    ネタバレ

    (AI壁打ちまとめ)
    ミル『自由論』の論理展開の総整理
    ミルの議論は、究極的には**「個性」の発展を通じた社会全体の幸福(功利)の最大化を目指すものであり、そのために「自由」**が不可欠であると論じられます。
    1. 核心原則:他者危害の原則(Harm Principle)
    出発点は、社会が個人に干渉できる唯一の正当な根拠を定めることです。
    * 定義: 個人の行動が他者に危害(harm)を加えるのを防ぐ目的を持つ場合にのみ、社会(国家や世論)は干渉することが許される。
    * 結論: この原則の裏返しとして、他者に迷惑をかけない限り、人は完全に自由であるべきである。
    2. 自由の固有の領域(私的領域)
    他者危害の原則によって守られる、個人の絶対的な自由が認められる領域です。ミルはこれを3種類に分類しました。
    * ① 内面における良心の自由
    * 具体的な内容と役割:思想、感情、意見を持つ自由。人間の能力の源泉。
    * 他者危害の原則との関係:完全に「自己にのみ関わる」ため、絶対的に不可侵。
    * ② 人生設計の自由
    * 具体的な内容と役割:自分の性格、嗜好に基づき、生き方や生活計画を自由に選択・実行する自由。
    * 他者危害の原則との関係:行動は他者に影響を与えるが、他者が自由かつ自発的に同意し、関与しているなら保護される。
    * ③ 団結の自由
    * 具体的な内容と役割:他者に危害を与えない限り、個人同士が自由に集まり、結社を組む自由(家族、友人関係など)。
    * 他者危害の原則との関係:他者危害を防ぐという条件のもとで、原則的に保護される。
    3. 個性の重要性(自由を擁護する究極的根拠)
    「なぜ自由が必要なのか?」という問いへの答えが「個性」です。ミルにとって、個性は自由の究極的な功利(幸福)的価値です。
    * 個性の定義: 習慣や世論に流されず、自ら判断し、自ら選択し、自らの能力を最大限に発達させるプロセス。
    * 役割:
    * 個人の幸福:個性がなければ、人間は理性的な能力を発揮できず、真の幸福を得られない。
    * 社会の進歩:個性的な少数意見こそが、社会の誤りを正し、新しい真実や生き方を発見する原動力となる。個性を圧殺することは、社会の停滞を意味する。
    4. 現代的課題:境界線の曖昧さと「危害」の性質
    ミルの原則を現代の複雑な社会に適用する際の主要な論点です。
    * 家庭内での自由の衝突
    * 適用される原則と論点:原則として、①信仰は自由だが、②行為は他者危害の原則と責任が伴う。
    * 結論:妻の負担(危害)を伴う夫の信仰活動は、夫の絶対的な自由とは言えない。夫の自由は、妻の自由と権利を防衛するために調整・制限されるべきである。
    * SNSと自由
    * 適用される原則と論点:原則として、言論の自由(①)は最大化されたが、他者危害の原則が試されている。
    * 結論:ネット上の誹謗中傷は、精神的・名誉的な**「危害」として扱われるべき。SNSは「世論の専制」**を加速させ、個性を萎縮させる脅威となっている。
    この論理展開を通じて、ミルは**「個性」という進歩の源泉を守るために、「他者危害の原則」**という強力な防壁を設けたと言えます。

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    2025年09月29日
  • エミール 1

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    学生の頃、教育学の講義で読んだ一冊。
    3人と先生で、1章ずつ読んでは、その意味について語り合い、解釈の違いを話しながら真理を探していくという、密度の高い授業だった。

    さらっと読めてしまう内容でありながら、意図する哲学は難解で、だからこそ教科書としてはとても優れてると感じた。
    本に引かれた、たくさんの線や汚いメモまでがとても愛おしい。

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    2025年09月25日
  • エミール 1

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    教育の原典と言われるものを読んでみようと手に取りました。自然を大切にありのままの人間として育てる教育のことが書かれていて面白かったです。しかし、目次もなく、筆者の思いのままに書き綴られていて後で読み返す時にどこになにが載っていたか探せませんでした笑。

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    2025年08月04日
  • 人口論

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    著者マルサスは、人間には食糧が不可欠であることと、性欲を持っていることを前提に、持論を展開する。解説にあるように、マルサスは弱者切り捨てを主張したわけではない。

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    2025年05月11日
  • 寛容論

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    真偽不明な情報を狂信し、徹底的に「悪」と定義されたものを叩くことを是であるかのように振る舞う現代に読むべき1冊だった

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    2025年05月08日
  • 寛容論

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    18世紀(1763年)の本。
    主にキリスト教の宗派間の血みどろの闘争を諌め、寛容を説く内容。

    発端は、ジャン・カラス事件における大誤審。最終的には冤罪と認定され、名誉回復されるのだが、死刑執行後ではほぼ意味がない。

    ヴォルテールは延々と狂信の悪例をこれでもかと挙げていく。その一方で、イエス・キリストへの敬愛は揺るがない。

    八百万の神の国に住むものとしては、この世に一神教が無ければ、人類はもっと幸せに暮らせているだろうと思ってしまう。イエス・キリストに救われた人もまた無数にいるだろうけれど。

    「賢者ナータン」と同じくらい、一神教の信徒に読んで欲しい。



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    2024年12月20日
  • 自由論

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    19世紀イギリスを代表する哲学者・経済学者ミルの代表作。ミルといえば、功利主義の穏健派という印象。この『自由論』では、個人の才能を十分に発揮させるべく、言論や経済などの自由主義が主張されているが、功利主義については一切触れていない。とくに印象に残ったところが、「思想と言論の自由」の項目。世間で認められている意見こそが真理だと盲目的になった時点で、人は排他的になり、成長が止まり、その意見の意味自体にも無関心になる。だからこそ対立した意見との議論が必要だというところは、身につまされる思いであった。

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    2021年09月09日
  • 人口論

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    1798年に,匿名で本書が刊行された。現代では「マルサスの罠」として有名な主張が記されている。その考え方は,のちに産業革命期においてマルサス主義として流布することになる。

    マルサスの思想は,経済学のうえでは,人間理性の啓蒙による理想社会の実現を主張するウィリアム・ゴドウィンやニコラ・ド・コンドルセへの批判とも位置づけられる。これはフランス革命と付随する思想に対する懸念ともとれる。

    で,肝心の本文はというと,話がとっ散らかっていて,考察のない出来の悪いレポートを長々読まされているようで苦痛であった。全体的な印象はビジネス書に近い。

    経済学を考える上で重要な,本書の議題についていくつか整理した。

    主張(p30):
    人口は,何の抑制もなければ等比級数的に増加する。生活物資の増え方は等差級数的にしか増加しない

    自明の前提(p29):
    1 食糧は人間の生存にとって不可欠である
    2 男女間の性欲は必然であり,ほぼ現状のまま将来も存続する

    ※特に重要なのが「何の抑制もなければ」の部分で,「貧困や悪徳」(p45)がその抑制として命題として掲げられる

    抑制の観察(p62):
    事前予防的な抑制→家族を扶養するのが難しそうという予見
    積極的な抑制→下級階級の生活苦(救貧法に対する批判)

    マルサスから見たゴドウィンの主張の要素:
    平等社会,性欲の消失,寿命は無限に伸びる,理性のみの存在


    解説よりメモ:
    ・コンドルセへの批判・フランス革命に対する嫌悪,理性による進歩主義に対する懸念・ゴドウィン「政治的正義」・女性に怯えた中世のヒエロニムスの生まれ変わり,性欲の誇大・マルサス主義・1815年穀物法の成立・貧困の正当化?・プルードン,自由主義原理との関連・マルクス「資本論」での検証

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    2021年05月06日
  • カンディード

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    東浩紀が書いた『観光客の哲学』に本書が参照されていたので、読んでみた。梅毒にかかったり、絞首刑で死にかけたりしながらも、最後まで「最善説」を肯定するパングロス博士が滑稽で仕方がない。ところで、今の時代で最善説を信じている人はどれくらいいるのだろうか。もし私が災害などの不幸にあって苦しんでいる際に、「全体の善のために、あなたの不幸があるのだ」とか彼らに言われたら、間違いなくブン殴るだろうな(笑)

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    2019年06月02日
  • カンディード

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    レナード・バーンスタインのオペレッタ「キャンディード」は、この物語をベースにして作曲されたとのことである。確かに、その序曲からは主人公の波乱万丈の物語がよく表現されている。
    この物語のキーワードである「最善説」とは、「性善説」と勘違しがちであるが、それとは少しく異なっている。「この世にある個別の悪は、ことごとく全体的な善である」という考えである。作者ヴォルテールは、どうやらカトリック教会が中心になって流布していた権威的な「最善説」をこの作品で批判したかったようだ。

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    2017年08月15日
  • 寛容論

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    数百年も前の本なのに著者の知的レベルの高さ、思考の深さ、良心に感動した。

    ただ、寛容を説くためには冗長すぎ、また悪い例(寛容ではない虐殺の事例)が延々と書かれていて辟易してしまった。

    そしてヴォルテール自身が他の宗派や民族に対して全く寛容的でない記載も多く、複雑な心境になった。

    個人的には寛容的であった方が非寛容であるよりも絶対に幸せな人生になると思うので、「寛容」であろう思う。

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    2017年06月07日