斉藤悦則のレビュー一覧
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[人>>>食の図]等比級数的に駆け上がっていく人口数に対して、どれだけ尽力しても等差級数的にしか食糧の量は増加しない故、人口は一定数にとどまざるを得ないということを明確に指摘した古典的作品。マルクスを始めとする社会主義者から徹底的に嫌われる一方で、今日に至るまで影響力を有している一冊です。著者は、その名にちなんで「マルサス主義」という言葉も生まれたトマス・ロバート・マルサス。訳者は、フランスの社会主義者であるプルードンの研究で知られる斉藤悦則。
名前とおおまかな内容は他の作品での引用中の言及などで知っていたのですが、改めてしっかりと内容を読んでみるとその説得力の強さに驚かされます。どうして -
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マルサスの提示した有名な命題が、果たして今も有効であるか?ということについての議論が決着していないことは、その命題が提示した議題が現在進行形のそれである、と言える。
産業革命以降、マルサスの命題はかろうじて破られてきているが、いよいよ食糧問題が危機的になるにつれて、改めてこの命題が輝きを放ち始めることになる。それが果たして幸せなことなのかは、分からない。
この命題に対して明確な反論が出来ていないことに、我々は、もっと畏怖すべきではないのか?そう、これは未解決の問題なのだ。
この新訳は、その読みやすさから、新たな読者が増えることが期待できることを併せると、意義深い出版だと信じる。 -
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人口のこと調べるんなら、この本だよね~、的に某I氏に言われて読みました。
内容としてはひたすら「人口は等比級数的に増加するけれど、食糧は等差級数的にしか増えない」、つまり人口は爆発的に増えるけど、食料はそんなに増えないから、結局養えないんだよね、そこで人口の増加はセーブされるんだよねって話をマルサスさんはしています。
難しいことをいっているようで、データとか細かいことを言わないので、とても読みやすいです。人口論というより哲学チックなところも多い気がします。
この本は1798年(本居宣長が古事記伝書いてた頃)に刊行されているんだけど、もう地球とかエコノミストっていう単語がでてくるあたりに感動し -
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都度に有名なヴォルテールの「寛容論」。
内容はタイトル通り《寛容》を説くものである。ヴォルテールが生きた時代の知識や教養が無いと読み辛い個所が多々あるが…
(注釈を読むだけでも結構苦労する)
ヴォルテールの言う《寛容》は主に宗教上の対立であり、キリスト教のみを正しいとし、その中でも派閥間での争いが多々あることに対する戒めであったのだと思う。
狂信的な信仰・不寛容が生む悲劇を憂い、信仰の異なる人々の間での和解なき闘争に心を痛めていたヴォルテールは、人が人を認め合う《寛容》な人間関係を深く望んだ。
だが、ヴォルテールの《寛容》は、世界には多様な意見を持つ人々が存在することを認め、互いの違いを排 -
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人間が思う「正しさ」など幻想だ。そうでないならば、なぜ人間の欲望は直感的にその正しさに反するのだろうか。反するからこそ、誰かが暴走しないように約束事を決め、その遵法精神により「都合の良い正しさ」を人間社会共通の価値観にしているだけである。所詮、我々には我々の範囲で語り得る信仰を生きるしかないはずだ。
私はこのように考えるが、この思考と響き合うはずの書がこのヴォルテールの『カンディード』。だが、単純な読み解きはできない。
ライプニッツの「最善説」は、私にとってはカルヴァンによる「予定説」を想起させるもので、起こり得る事は〝人間の価値によらない“という類の思想である。人間にとっての幸も不幸も時 -
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原題 On Liberty 1859年発行
世界史の教科書ではベンサムの次の典型的な「功利主義者」(お父さんがベンサムの盟友らしい)だが、著作はまったく読んだことがなかったので読んでみた。
自分自身はリバタリアンだと思っているので、「元祖はこの人か」と感心する記述が満載だ。
異論反論を言う言論の自由の重要性を主張するにあたり、攻撃の対象となる言説が間違っている場合に異論反論が価値があるのは当然として、正しい場合であっても、異論に耐えるプロセスを経ることで質が上がるため、歓迎すべきである、という説明は説得的だ。
女性の権利に関しても、当時としては相当進歩的と思われる主張(男性と全く同 -
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ライプニッツの最善説、カトリックに対する痛烈な皮肉だが、そうならざるを得ない苛烈な現実認識があり、その元となった「リスボン大震災に寄せる詩」も収録されている。
カンディードは、どんな無体な現実の体験をしても、哲学の眼鏡を通してしか認識することができないが、最後になってようやく、目の前の畑を耕すことの方が重要である、と言う事実に気づくことになる。
カンディードのあまりに過酷な経験に目を覆いたくなったり、キリスト教的な道徳や、救いの少ない結末に違和感を持つ読者もあるだろうが、それが、リスボンの大震災の経験に基づいている、と思うと日本人としては途端に親近感を覚えることも事実。 -
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「正当な理由なしに他人に害を与える行為は、いかなる種類のものであろうとも、周囲の人々の不快感によって、さらには周囲の人々の積極的な干渉によって、抑制されることが許される。
もっと重大な場合には、その抑制は絶対に必要である」(P137)
現在、リアリティ番組「テラスハウス」に出演していた木村花さんの死の原因がSNSによる誹謗中傷であるとして世間を騒がせている。
自民党の三原じゅん子議員が座長として、自民党政務調査会にインターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策PTが立ち上がり、法整備が検討されているが、詳細は発表されておらず、三原議員がTwitterで明らかに偏向的な発言に賛同するような考えを -
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バーンスタインがミュージカル化しているこの作品。ミュージカルは観てないけど、気になっていたので読んでみた。登場人物が皆悲惨な目にあってるのに結構あっけらかんとしていて、コメディタッチで読みやすい。途中で著者の私怨も盛り込まれていたりしてもう何でもあり。机上の空論より身体を動かして働こう、と登場人物たちがオプティミスティックな思想が最後リアリスティックになるのがなるほどと思った。途中で出てくる登場人物ですべてを批判する人、一般の人が美しいと思っているものに欠点を見つける人は、それを楽しめないことを楽しんでいる、と分析しているのはとても腑に落ちた。