坂本あおいのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
先日読んで気に入った『ブリット=マリーはここにいた』のフレドリック バックマンの作品です。
訳者曰く“生意気なクソガキ”のエルサ。ハリー・ポッター好きで、理屈っぽくて、どこか夢見がちな変わり者。そのため友達がおらず、学校ではいじめを受けている。そしてエルサのスーパーヒーローがおばあちゃん。若い頃は娘を置いて世界中の紛争や災害の中で患者を救う当時としては珍しい女性外科医。エルサが生まれてからは医者を止め孫娘の養育に専念するが、半裸でベランダに立ち下を行く人にペイントボールを投げつけるような破天荒。無免許運転の常習者でハチャメチャで傍迷惑な女性。二人が共有しているのがおばあちゃんが語る6つの王国の物語。
序盤でおばあちゃんが癌で亡くなります。そしてエルサはおばあちゃんから託された謝罪の手紙を配り始めます。
正直かなり読みづらい。おばあちゃんが語る物語と現実が錯綜する上に、結論までに様々な紆余曲折を経る倒置的な文体。そして婉曲表現。途中でアレッと思い、前に戻って読み直すこともしばしば。でも面白いのです。
どこか軽いミステリーっぽい話の流れの中に、いじめや家庭内暴力、戦争、強制される良識などの重苦しい話を織り交ぜてきます。そして登場人物は皆、心に傷を持ち、どこか頑なで暗い。でも、著者はそれらをすべて温かくまとめ上げて行きます。
もっとも現実にこんなおばあちゃん、孫娘が居たら手に負えないでしょうが(笑)
ちなみに『ブリット=マリーはここにいた』は本作のスピンオフ物語。本作の主要登場人物としてブリット=マリーが登場しています。 -
Posted by ブクログ
職業安定所に行って頓珍漢な会話をしまくり、正直で純粋だけどその場にそぐわない、おばあさんというにはちょっと早いブリット=マリーという主人公登場から始まるお話。
1980年代に流行った「飛べない症候群」の遅れてきた版のような気もするが、所がスウェーデンという国だろうが(だってそういうことにいち早く進んだ国のはず)社会の体制が整っても、性格や気質や成り行きのせいで乗り遅れる場合もあるんだろう。
場が読めない性格でも「前期高齢者、経済危機、過疎地域」のキーワードで小さな田舎町に就職することが出来、そこで始まるリアルのようなおとぎのような話。
部類のきれい好きで、なにもかもきちんとしなくてはならないのは気の利かなさに通じてしまう。家庭でも夫婦関係でも社会でも。その性格に加えて過去も徐々に明らかに・・・それがちょっと哀しいのだけれども。
世界共通の人間観察もいいし、一気に読めるおもしろさもあり、読んでよかったという魅力ある一冊でした。 -
Posted by ブクログ
63歳のブリット=マリーは夫に浮気をされて家を出た。
このブリット=マリーが嫌な女なんです。ずっと家庭にこもり、狭い世間に生きてきた。凝り固まった考えで嫌味を吐く、いわば"鼻つまみ者"。その彼女が働こうと職を得たのが田舎町のユースセンターの管理人。
まあ、ここまでで先は予想が付きます。子供たちとの触れ合いの中で、彼女が"良い人"に変身して行く。最初の1/4くらいは彼女の余りの独善ぶりを読むのが嫌になってきます。しかし、その先が面白い。住民や子供たちの個性が見事ですし、主人公の変身ぶりもありきたりでなく独特。そして最後にさらに一ひねり。単に「良いお話」で終わらずに、深く心に沁みわたり、ぐっと話が締まって行きます。なるほど、国際ダブリン文学賞(良く知りませんが世界最大級の国際文学賞らしい)の候補作と言うのも頷けます。
ただ、文章は私の苦手な書き方。最近のニュースのように最初にキャッチーな一言が書かれ、あとでその事態を解説する文章が綴られる。またスウェーデンの作家さんと言うことで、お国ぶりに基づく感性のようなものが有るのでしょう、ところどころ上手く理解できないところもあります(初めは翻訳がおかしいのかと疑ったりしました)。ただ、そんなマイナスが有っても、読み応えのある本でした。 -
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ネタバレ夫の病気をきっかけに浮気されていたことを知って家をでたブリット=マリー。子供時代に姉を亡くしたことでどこか何かが壊れてしまったのだろうなという、掃除魔の変わった年配の女性で、孤独死をして近所に迷惑を掛けることをなにより恐れ、発見を早めるために人とかかわる仕事を見つけようとする。(仕事に来なければ誰かが不審に思って確かめにきてくれるだろう、ということ)
そんな彼女が仕事に就く為にやってきたのは、経済危機の影響を受けて仕事もないため人が減り、商店も縮小してほぼ何もないスウェーデンの小さな村。
色々なことを諦めてしまっている村人たちの中に、新しい住民として彼女が入り、お互いに影響し合うことで、何かが少し変わる。
ブリット=マリーのそのあまりの個性の強さや(登場人物みんなが強烈な個性の持ち主なのだけれど)周囲を振り回しても自分を貫くマイペースさが初めは面白かったのだが、その背景にあるものがわかってくるにつけ、彼女が愛おしくなっていった。
やっと自分の為に人生の一歩を踏み出した彼女の姿に、胸が温かくなった。
文章が簡潔で、妙に感傷的だったりすることもなかったので、たいへんに読みやすかった。 -
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イギリス人著者によるフランスの農場を舞台にしたミステリ。しかも、主人公は、ロンドンからやってきたいわくありげな青年。シートベルトは血だらけで、トランクには死体という、極めて不穏な状況での登場。物語の出だしとしては極度に不安で緊張を強いられるが、その緊張は留まることを知らない。
獣用のトラップに脚を噛まれ重傷を負ってしまった主人公は、得体の知れない農場に運び込まれ、敵意むき出しの農場主と、彼を介護する二人の娘たちと出会い、逃避行の唐突な展開を、利用すべきと思いつつもその農場の不可解な緊張状態に疑惑を抱き始める。
フランスの実存主義作家の第一人者ジャン・ポール・サルトルの状況劇『出口なし』ではあるまいが、本書はタイトルをそのままにしたような『出口のない農場』に射すくめられるように居住を強いられた青年の物語。しかも彼はロンドンからドーバー海峡をフェリーで渡り、死体をトランクに乗せ、シートベルトや手を血まみれにして逃げてきた人間であり、農場の中にいることが捕まらないただ一つの方法となっている。
ある意味救いであるはずの農場が、実は彼を絡めとり負の方向へ導く何かを秘めている。そんなサスペンスと緊張で満ち溢れた状況を、作者は実に文芸的なレトリックで描き出す。
まるで夢溢れる新人作家みたいな力の入った文体だが、実はこの作家、既に<法人類学者デイヴィッド・ハンター>シリーズというまるで傾向の違う作品で人気を集めているベテラン作家であるらしい。シリーズ作品よりもだいぶ時間をかけて書かれたいわゆる丁寧な作品、精魂込められた何ものかであることは読めば明らで、それゆえに邦訳が実現したというある意味特殊な運命を背負った作品である。そしてそのことは読んでみれば明らかである。本命であるシリーズ作品を差し置いて書かれ、日本の読者にも読まれる機会を得た作品である。
貴重な奇跡により己が手に開かれるページを、大切に読む時間は、手に汗握る大変密度の濃いものであると思われる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ評価もジャンル分けすらも難しい。確かにハヤカワミステリという括りで出版されてはいるが…。
そもそも怪我を負った主人公が農場から出れない、という掴みがある意味違う。いつでも出れるし、街に買い物に行ったりする。出れないのではなく出ない、でありこの農場で暮らすことによって曲がりなりにも”家族”を体感するひと夏の出来事が、この家族に隠された忌まわしい過去によってついに崩壊するまでを描く。
そのため、ストーリーにはさほど起伏は無いので、そういう意味でサスペンスを期待すると大外れとなる。しかし、緻密な人物描写と濃厚な背景描写で読んでいて主人公の心情に共感できるので全く退屈しない。
同時進行で主人公の逃亡?に至る過去もリアルに描かれるのもうまい構成。
エピローグにも余韻が残る。
この作家の他のシリーズも読んでみよう。 -
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大好きなヒストリカルのスピンオフがこんなに揃うなんて、凄くお買い得。私の一番はロレッタ作品でした。
『愛の誓いはひとつだけ』"あなたを夢見て"のデレク・クレーヴンがちょい役で…。ヒロインがイマイチで、ヒロイン母のロマンスの方が好感持てそう。
『眼鏡の花嫁が愛を見つけるまで』スピンオフでは無い。
牧場主クリントと7人の弟に眼鏡の花嫁ドジッ子レイチェルが、ドタバタほのぼのの良い話。
『悩める伯爵と赤毛の魔女』"悪の華に口づけを"の脇役バーティ登場。その他の面々も消息が知れて、後日談としても楽しめます。精神の病で余命短いとされる伯爵と、「伯爵婦人の地位と病院建設の為の財産か欲しいから結婚しましょう」とハッキリ言うグウェンドリンのストーリー。
主人公カップルの好感度高く、凄く楽しめた。
『巡り会うまで』"炎と花"のブランドンの弟ジェフリー・バーミンガムが、一目惚れで花嫁を買う話。超短編。 -
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ルース・レンデルを皮切りに英国ミステリづいている。これはタイトルから脱出サスペンスものかと思ったら、まったく違っていた。謎めいた雰囲気たっぷりのページターナーで、ヨーロッパでベストセラーだというのに納得。
正体不明の逃亡中の男が、森で罠に捕らわれて怪我をする。目が覚めると農場の納屋に運び込まれていて、娘が介抱してくれていたのだが、この農場の様子はどうもおかしい…。
この男がなぜ逃げているのか、また、農場が隠している秘密がなんなのか、並行して語られていく。先へ先へと引き込まれていく書き方で、どっぷり読みふけってしまった。不穏でダークな味わいではあるけれど、英国ミステリらしく、あくまで上品。最後にちょっとした救いがあるのも良かった。 -
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4作の短編集。リサ・クレイパスの名前に惹かれて買ったが、4作品ともなかなか良かった。クレイパス「愛の誓いはひとつだけ」には懐かしい”クレーヴンズ”とデレクが出てきて嬉しかった。安定の内容。キャサリン・アンダーソン「眼鏡の花嫁が愛を見つけるまで」は彼女らしい可愛らしくてほのぼのとしたハートウォーミングな作品。ロレッタ・チェイス「悩める伯爵と赤毛の魔女」が一番印章に残った。陰鬱なダートムアを舞台にダークな雰囲気なのに作品内容は暖かく、女性と医学の組み合わせも珍しかった。キャスリーン・ウッディウィス「巡り会うまで」短い作品ながらスピンオフの元ネタの「炎と花」を読んでみたいと思わせた。2015.4
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Posted by ブクログ
ネタバレシャーロックホームズの元ネタというので読んでみました。同作者の宝島と比べるとエンタメ要素は低いですが、全体的には面白かったです。この時代、ヴィクトリア朝時代は登場人物のご婦人がすぐ気絶するのが特徴みたいなところがありますが、この小説に出てくるヴァンデラー嬢は現代的な感覚で見てもよく行動したヒロインだと思います。
個人的にはジェラルディーンが好きです。王子より年下という設定なので、ちょっと出来が良すぎないか?とも思いますが、「二輪馬車の冒険」に出てくる彼の描写が特に好きで、中性的な色気を感じました。
「ラージャのダイヤモンド」のラストはちょっと納得いきません。これじゃプラダのアンディと変わらないだろうと思っちゃいました。一国の王子の行動としては問題かなと。なぜか、この話にはジェラルディーンは出てこないんです。彼がいたらもっと違うラストになっていただろうと思います。