種村季弘のレビュー一覧
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種村季弘の晩年のエッセイ集。
東京の街を種村季弘が自分の過去の思い出を回想しつつ蘊蓄を語るという、もともとは雑誌「サライ」の連載をまとめたもの。雑誌掲載時は1回、原稿用紙3枚の分量だったとのことだが、そりゃネタ的に収まりきる訳ないだろうということで書籍化にあたり大幅に増量されてる。
読んでると「この...続きを読むPosted by ブクログ -
十年ほど前に、旧版の文庫をガイド代わりに、本書のなかで著者が歩いているコースを歩き回った。全部で三十箇所だから、一年以上かかったと思う。東京とひとくちにいっても、とてもとても広い。普段の生活圏からすぐそこの慣れ親しんだつもりの場所も、はじめて訪れたところも、著者の目を通して歩いてみると、新鮮だったり...続きを読むPosted by ブクログ
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谷崎が大正時代に発表した作品集。「細雪」などの作品と比べると此処に収録された作品達は「雅」「耽美」というよりはどろっとした陰鬱さのある悪魔的な美しさだ。変態的と言ってもいいかもしれない(褒めてます)。「美食倶楽部」は「食魔人」との名がぴったりな、食に貪欲な谷崎らしい作風。「白昼鬼語」「友田と松永の話...続きを読むPosted by ブクログ
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「チリの地震」息が止まる衝撃。
今まで読んだ短編の中で、一番の傑作。
救われた喜び、再会の喜び、困難な中での一体感、待ち受けていたかのような人間の醜悪さ、夫婦に託された微かな希望。Posted by ブクログ -
目次
・病蓐の幻想
・ハッサン・カンの妖術
・小さな王国
・白昼鬼語
・美食倶楽部
・或る調書の一節―対話
・友田と松永の話
・青塚氏の話
それほど谷崎潤一郎作品を読んできたわけではないけれど、明らかにこれは今まで読んできた谷崎とは全然違う。
耽美というよりあからさまに変態寄りだったり、悪夢のよう...続きを読むPosted by ブクログ -
魔術的リアリズムは別の本で名前だけは知っていたけど、それを掘り下げるにはマイナーな分野である。第二次産業革命後の技術革新と戦争不安でわちゃわちゃしてる時代の文化ってめちゃ魅力的。日本の文豪の時代とか、今の感覚でなかなか生まれない面白さがあった。背伸びしすぎて前提知識足りんかったけど、ちょっとだけ魔法...続きを読むPosted by ブクログ
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魔術的リアリズム、新即物主義。日本ではそれ自体がマイナーな派閥ではある。しかしそんなマイナーな派閥の中でも筆頭格として名を挙げたベックマン、カーノルト、ディクス、グロス、ショルツらではなく、本国でもマイナーな気味(らしい?)な画家たちにスポットライトを当てている。
シュリンプフやグロスベルク、ヴァッ...続きを読むPosted by ブクログ -
名前は前から知っていて、なんとなく知った気になってた種村季弘さん。
衒学的な感じかと思ってたけど全然気取りがないのに、めちゃくちゃ知識多いおじいさんという感じでとても面白く読めた。
酒の話が多いのもなんか良い。
岡本綺堂の話も出てきてタイムリーでうれしい。Posted by ブクログ -
さすが種村先生。自然誌、博物誌的な関心から中世神学、女性性、声と音楽までという諸テーマによって、ヒルデガルトの多面性が活き活きと描き出されています。他のヒルデガルト本読む前にこれ読んでおくといいのではないかなあと思いました。Posted by ブクログ
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タイトルに違わず、ビンゲンヒルデガルトが生きた現実の世界と、その精神世界の両方について詳細に解説されています。装飾写本好きとしては「スキヴィアス」のカラー写真が多数掲載されているのが嬉しいです。Posted by ブクログ
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不気味で滑稽でもあるが艶めかしい。
「或る調書の一部」の掛け合いなんかは笑ってしまう。
しかし、善いことができるはずがないから、
気持ちの好い悪い事をするという一節にどうも心を惹かれる。Posted by ブクログ -
今まであまり読んだことのなかった系統ですが、新しいものを読んでみたくて手に取りました。
素直に素晴らしいと思える作品ばかりです。
しかし、ところどころ翻訳が怪しいところがあるようで……それも話の筋に関わるレベルみたいです。
全集なんかと読み比べもしてみたいところです。Posted by ブクログ -
大学のころ、独文の講義をとった。いくつかの短編小説(時代はバラバラ)を読んでいき、そのうち一つについてレポートを提出するという形式だったのだが、それら短編のうちの一つが、この本所収の聖ツァツィーリエだった。その講義は結局出席しなくなり(たぶん面倒だったんだろう)単位を落とした。もったいないことをした...続きを読むPosted by ブクログ
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以前に読んだ種村の『不思議な石のはなし』とかパワーストーンの本にも出てきたので、時間をかけつつちまちまと読んでみました。
雑誌『イマーゴ』に連載されたエッセイをまとめた聖ヒルデガルトの評伝。長年の研究の成果ではないとご謙遜されているけど 、日本語での類書はあまり見当たらないし、依然、本書の存在価...続きを読むPosted by ブクログ -
文章が読みにくい。
他、難しい熟語、雅語などが出てくる。
『エンデの読んだ本』より「マリオネット芝居について」で興味を持ち購入。
この評論の切れ味が良すぎて、ほかの短編作品もいいのだが、それを読んだ時ほどの衝撃は得られなかった。Posted by ブクログ -
「チリの地震」
首都サンチャゴで、何千という人間が落命した1647年のあの大地震のまさにその瞬間、さる犯罪のために告訴された、その名もジェローニモ・ルグェーラという一人の若いスペイン人が、監禁されていた牢獄の柱の下に立っていましも自ら首をくびろうとしていた。(p11)
どよめきの中に投げ込まれたあ...続きを読むPosted by ブクログ -
【チリの地震】
処刑という絶望の中、起こった大地震。そして、地震は離れ離れになっていた男と女と二人の子どもを再会させる。一瞬、希望が彼らを包む。まるで、それはユートピア。
しかし、たくさんの人々の「犠牲」の上に成り立つ再会と幸せなど長続きすることはない。
一組の男女を生かすのも、許すのも、裁くのも、...続きを読むPosted by ブクログ -
谷崎潤一郎のイメージというと、耽美、エログロナンセンスあたりが思い浮かびます。
私も若いころ「痴人の愛」「卍」「細雪」らを読んで、驚嘆した覚えがあります。いわゆるフェティシズムのはしりといえるかもしれませんが、明治生まれの人があそこまで極端な性癖を文章として露出できることに感激したものです。といっ...続きを読むPosted by ブクログ