黒木登志夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書は、2021/9/17に初版が発行された新しい「文章術の本」だ。医学者である著者がすべての読み書きを日常的に行う人々に向けて、そのコツをざっくばらんに簡潔に書いた良書である。
理系に片寄った内容になっておらず、そのバランス感覚が著者の凄みの一つではないか。
タイトルは『知的文章術入門』でありながらも、実際には広く知的発信者としての姿勢や、プレゼンテーションのやり方、パワーポイント資料作成のコツ、さらには英語学習についてまで触れている。
タブーとされるWikipediaの利用についても、「どんなことにどれくらいどのように使うべきか、または使わないべきか」を正面から述べている。
医学者である著者は、本書を書くに当たって、これまでのありとあらゆる「文章術」に関する蓄積を踏まえて、それらを現代版にアップデートしようとした。
その試みは個人的に、ある程度うまく行っていると思う。
今後求められる「言語コミュニケーション」に向けて、誰が読んでも役立つ内容になっている。分量も多くなく、文体がフランクで読みやすい。
筆者は、大学にて毎年1年生向けに「これから一生レポートを書き続ける君たちへ」と題する講義を2016年から毎年行っているという。レポートは、ここではつまり、もっと広く「文章」という意味で使われていると思われる。
本書での学びや発見はまさしく一生ものである。
「読むこと、書くこと、話すこと」に少なからずこだわりを持つ全ての方にオススメする。 -
Posted by ブクログ
経緯や関係者、感染の仕組みや対処方法、治療薬など、網羅的に説明してある。断片的に頭に入れていた情報が整理されたように思う。まず本書を読んでから話をしたり聞いたりすれば、会話や議論もスムーズなのかな。
コラムや横道にそれた話も面白い。
過去、北京で「SARS対策の指揮を執っていた」二人が、「それから17年後、二人は新型コロナ対策の指揮を執ることになる」のくだりは、古代ローマ帝国でカンネの会戦で破れたスキピオ・アフリカヌスがザマの会戦に臨んだのと重なって熱くなった。
メルケル・ドイツ首相が国民に向けて伝えた言葉には、あらためて涙が出る。アーダーン首相や蔡英文・総統の対処の背景にも触れられている。
大部分は新聞や他書で読んだり自分で調べたりした内容であったが、ようやく抗体検査と抗原検査の違いを理解した(何度目かはわからないが)。 -
Posted by ブクログ
色々改めて教えられることもあり、読んで損のない新書かと。色んな国の政治家等の評価はさておき、自分の国はどうかと言われれば、これはまぁまぁ辛い。まぁでも行き着くところ自分たちで選んだ人たちだしね、と言われれば反論の余地もなく。
あと東日本大震災の時も思いましたが、経済を最優先にした効率性重視の政策立案は、結果として究極の不経済を産む、もっといえば国民に不幸をもたらしてしまうんですよね。将来への見通しとか長期的戦略性といったセンスは、もしかすると日本社会全体に足りないものかもしれないです。
ともあれ、早く収まってほしいです、世界全体で。凡民は祈念しつつ、3密回避・手洗い励行・マスク着用に勤しみます。 -
Posted by ブクログ
日本癌学会会長など日本医療の最前線で活躍してきた専門家から、まとまった解説書が出た。冒頭には、山中伸弥さんから「推薦の言葉」があった。私としては、もうそれだけで本書に全幅の信頼を置く。
とてもわかりやすく、尚且つ鋭い分析だと思う。昨年10月末までのデータがほとんどではあるが、昨年の日本ならびに世界のコロナ対策への評価と問題点抽出は出来ているし、我が意を得たりという気もした。
以下。参考になった部分。
⚫︎「新型コロナウィルスについて知る」
・変異。マイク真木「バラが咲いた」を例に説明。この歌は何故か、遺伝子暗号と同じように三つづつに区切れる、のだそう。
「バラガ サイタ バラガ サイタ アカイ バラガ」
→「バカガ サイタ バカガ サイタ アカイ バカガ」
塩基配列1箇所変異で、大違い。
⚫︎「新型コロナ感染症を知る」
・新型コロナが「無症状者からも感染する」論文が出たのが1月30日。しかし、これは直ぐには認められなかった。2月第二週に疑いのない事例が出て、初めて知られるようになり、きちんと確認されたのは5月初め。日本を含む世界は、この恐ろしい現実を軽視した。
・「感染は本人の責任」と思うのは、五大国の中で日本が突出して多い。アメリカ1.0%、イギリス1.5%、イタリア2.5%、中国4.5%、日本11.5%である。←私の周りの印象では、これよりも%は多いと感じる。言うまでもなく、これは間違った考え方である。
⚫︎「すべては武漢から始まった」
⚫︎黒木登志夫さんのウィルス起源についての考え
・武漢の海鮮市場が、感染拡大のクラスターになったのは確かだが、海鮮市場の動物から感染が始まった可能性は低い。
・武漢ウィルス研究所の実験室からウィルスが外に出た可能性は否定できない。
・新型コロナウィルスが、意図的に人工的に作られたウィルスである可能性はない。
⚫︎「そしてパンデミックになった」
・「超過死亡」によって、見逃されていたコロナ死、医療崩壊により死亡したであろう数も予測できる。米国は3-8月で26万人超過死亡者がいたが、うち8万人がそれだと予測できる。
←日本はPCR検査を絞っていたので、これで見逃されていたコロナ死亡がかなりあるのでは?と思っていたが、黒木さんによると日本では未だ確認されていないそう。何故確認されていないのか?理解できない。
←なお、日本の新型コロナの問題については、黒木さんは10月23日出版の臨調『新型コロナ対応・民間臨時調査会 調査・検証報告書』を基に書いている。実は、私は昨年この書を直ぐに購入したが、そのあまりにもの分厚さに躊躇していてまだ紐解けていない。今回、見事な先導役を見つけたので、この後紐解きたい。よって、日本問題は多くは省略する。と思っていたが、黒木さんの見解として、日本の対応のベスト10とワースト10を作ってまとめてくれていた。3ページにかけて書いていて、あまりにも長文なので、末尾に載せる。今のところ、私と同意見である。
⚫︎「世界はいかに対応したか」
・コロナ禍は、社会の二重構造、インフラの整備状況、医療のレベル、健康保険の整備状況などを、図らずも明らかにした。指導者の資質も明らかにした。
⚫︎「新型コロナを診断する」
・PCR検査、抗原検査と抗体検査は大きく違う(特に診断の目的)。
・米国CDCではPCR検査試薬に不純物が発見され、2月4日から3月15日まで使用できず、初動に大きな遅れをとった。
・尿からウィルスは検出されていないし、便から感染性のあるウィルスは分離されないので、トイレ理由の感染はない。
・日本の抗体保有率(6月)東京0.1%、大阪0.17%宮城0.03%。一方でスペイン3.7%(調査時の感染者0.46%)
・黒木さんはPCR検査を(1)感染者(2)医療従事者(3)感染リスク者(4)社会の安全・安心に順次広げていこうと主張しているが、現在は(2)までだという。←私は(2)も未だできていないと思う(特に首都圏以外)。一部批判にあるようにPCR検査を広げれば全て解決するとは書いていない。
・60%の集団免疫が安心な基準だとしているが、まだ世界では確認されていない。
⚫︎「新型コロナと戦う医療現場」
・5月末現在、2105人の院内感染者。全感染者の12.4%。院内感染の致死率は20%。全国平均の約5倍。病院も閉めることになるので、医療崩壊の引き金にもなる。
・欧米では死亡の40%が介護施設。日本は13%。日本ではトリアージによって高齢者を差別していない。インフルエンザ対策で、既にマニュアルがあり、1月31日には厚労省事務連絡が出ていて、初動が早かった。
⚫︎「追記」
・ファーザー、モデルナのワクチンの90%以上は、期待以上で、集団免疫も期待できる。明るいニュースだ。
『ベスト10』
(1)国民。国民は、要請レベルにも関わらず、行動を自粛し、マスク着用、手洗いなどを励行した。経済的に苦しい人もよく耐えた。
(2)三密とクラスター対策。初期のクラスター対策は一定の効果をあげた。その分析から生まれた「三密」キャンペーンは、わかりやすく、みんなそれにしたがった。
(3)医療従事者。未知の新型コロナに対して、検査・防護服などが不足しているなか、使命感から、献身的に貢献した。医師会も、コロナ問題に積極的に関わった。
(4)保健所職員。厚労省が保健所負担軽減対策に積極的でないなか、困難な調整と実務を行なった。公務員の責任ある行動として記憶されることであろう。
(5)介護施設。厚労省福祉関係三局は、いち早く介護施設に注意を呼びかけ、介護施設もそれに応えた。日本の死亡者が少ないのは、介護施設の努力によるところが大きい。
(6)専門家の発言。少なくとも、分科会に編成替え前までの専門家は、使命感から積極的に発言し、国民に警笛を鳴らし続けた。われわれも専門家の発言に注意していた。
(7)中央、地方自治体の担当者。医療従事者だけでなく、関係したすべての公務員は、一生懸命仕事した。
(8)ゲノム解析。国立感染研、地方衛生研は、新型コロナウィルスのゲノム解析し、感染の全貌解明と対策に貢献した。
(9)在留邦人救出。政府は感染の危機にさらされている在外邦人を、パスポートの前文の約束を守り、チャーター便により帰国の便をはかった。
(10)新型コロナ対応・民間臨時調査会。この報告書がなければ、コロナ禍のなか、政府内で何が起こっていたのか、どこに問題があったのかを知ることはできなかった。
『ワースト10』
(1)PCR検査。PCR検査の問題は言い尽くした。 コロナと生きる時代に必要なのは、PCR検査の徹底により社会の安全と安心を保証することである。
(2)厚労省。国民を守ることよりも行政的整合性を守ることに重きをおき、融通性に欠けていた。PCR検査では国民に背を向け、裏で政治工作をした。
(3)一斉休校。文科大臣、専門家の意見を聞かずに、安部首相の側近内閣府官僚によって断行された一斉休校によって、教育の現場、父兄の生活は大きな影響を受けた。
(4)アベノマスク。マスクを配布すれば国民の不安は消えますという首相の側近内閣府官僚の進言によって実行されたマスクは、160億円もの税金の無駄遣いであった。
(5)首相側近内閣府官僚。証拠に基づく政策(EBPM)の重要性が言われているなか、彼らは大臣、専門家を無視し、政策を首相に進言した。それを受け入れた首相は、さらに問題である。
(6)感染予防対策の遅れ。3月のヨーロッパ型ウィルスの流入予防対策に遅れをとった。第二波の最中にgotoトラベルを実行し、感染を広げた。
(7)分科会専門家。分科会委員に格下げされてからの専門家は、政府の政策にお墨付きを与えるだけの立場に甘んじてしまった。専門家が正論を言わなくなったら、専門家ではない。
(8)スピード感の欠如。初動態勢から今日に至るまで、すべての対応が遅すぎた。早かったのは、学校一斉休校とアベノマスクだけである。
(9)情報不足。感染情報は非常に限られていた。感染の実態(院内感染者、死亡者数、発症日別統計など)の発表がなかった。政策決定に至る過程も、不透明であった。
(10)リスクコミュニケーション。現状をわかりやすく説明し、質問に応えるリスクコミュニケーションがなかった。国民はテレビの情報番組に頼らざるを得なかった。
←本書の増補版は必ず出るだろう。コロナが終息したと見られる一年後か、2年後か、それとも3年後か。その時、本書と見比べれば、わかりやすい「コロナの総括」になると思う。
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Posted by ブクログ
序章:人類はパンデミックから生き残った、第一章:新型コロナウイルスについて知る、第二章:新型コロナ感染症を知る、第三章:感染を数学で考える、第四章:すべては武漢から始まった、第五章:そして、パンデミックになった、第六章:日本の新型コロナ、第七章:日本はいかに対応したか、第八章:世界はいかに対応したか、第九章:新型コロナを診断する、第十章:新型コロナを治療する、第十一章:新型コロナ感染を予防する、第十二章:新型kコロナと戦う医療現場、第十三章:そして共生の未来へ。いままさにのコロナについての著作。体制への疑問も書かれている。二兎を追って、より感染を広げてしまったのではないか?
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Posted by ブクログ
がん遺伝子とがん抑制遺伝子、そしてヒトゲノムの解読という現在の分子生物学の基礎が築かれていった80年代のルポ。
難易度が気になる方もいると思いますが、大学初級程度かと思います。バイオや化学に興味のある高校生でブルーバックスの「アメリカ版 大学生物学の教科書」などが理解できる人なら大丈夫です。
ほぼ現在の分子生物学の基礎的な部分と相違なく80年代の遺伝子研究は重要なものだったことがよくわかります。
一方でこの本が出版されてから20年以上経っており、科学系の本としてはそれなりに古いものです。しかし、今も多段階発がんモデル(第7章)は大腸がんしか(確か)無く、遺伝性のがん以外の我々の多くが恐れている普通の人が発症するがんの多くは、研究は進んでいるとはいえ完全な克服へはまだ遠いことがこの本の古さゆえに分かってしまうのは少しショックかもしれません。
また、研究者同士の鎬を削る競争の様子も面白く、退屈しないと思います。今話題のPCRについてもページが割かれています。
一番印象に残った言葉があります。「がんはわれわれ多細胞生物の宿命」という言葉です。
生きた細胞で出来た複雑で精密な構造を維持していくことによって生じた致命的なエラーであるがん、遺伝子(とその周りの機構)の性質故人間に限ってもいつかはすべての家系ががん家系になるのではないか?
ともあれ一度傷が修復されないと取り返しがつかないということは生活のモチベーションにもなる気もします。
新書で量も多くないのでぜひ読んでみて下さい。 -
Posted by ブクログ
iPS細胞が見出された背景について非常に基本的なところから丁寧に解説してくれる上、臨床の場での適用例やその研究・実用段階の記述が極めて豊富。聞き慣れない病変名に有名人のエピソードを絡めたり、Wikipediaなどよりずっとシンプルでキャッチーな図表を用いるなど、専門的な分野への読者の親しみやすさを高める配慮を随所に感じる。
幹細胞に様々な種類がある上互いに相補的な関係にあるものも多く、iPS細胞と他の細胞を切り離して扱うことに全く意味がないことが分かったことが本書を読んでの最大の収穫。iPS細胞を取り巻く「今まで」と「これから」が280頁足らずで一望できる手軽さも良。ただ研究者名や専門用語が頻出し、他所での言及箇所を探す手間が煩わしい。索引が無いのが惜しい。