黒木登志夫のレビュー一覧
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豊富な症例と合間の短歌で読み手を飽きさせず、ポップな語り口で「死ぬということ」という重苦しいテーマか軽妙に綴られている。
老いや死について興味が増えてきた。自分自身というより両親がいよいよその境地に足を踏み入れているという実感から、先人たちの知見を拝借しその時の心構えをしておきたい、という心境なのだろう。
なによりも、定期検診と規則正しい食生活、交友関係なんかも健康に過ごすには大切。昔から言い伝えられてきたことが、やはり真理なのだと納得。
しかし、ピンピンコロリに対する著者の反対姿勢は新鮮な視点。コロリも逝く人は往生で幸せかもしれんが、後に残された身内は身辺整理等で煩雑な手続きに晒される。 -
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主に論文の書き方、発表の仕方、情報の集め方など学問・研究向けに書かれた本だが、これらのノウハウは応用が効くので読んでよかった。
文章の書き方に関する本はたくさん読んできたが、多分これが一番参考になる。日本語でものを書く時は、
1必要なときには主語は略さない
2短い文章を書く
3名詞の修飾は短く
4読点は、分かりやすさと読みやすさで決める
5語順はわかりやすさで決める
6あいまいな表現は使わない
7英語に直してみる
上記の7点を意識すると、読みやすく、すっきりとした文章が出来上がる。7は今まで見たことのなかった視点で、これは同時に日本語の曖昧さを意味することもあり興味深い発見だった。 -
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昨年末までの新型コロナに関する情報が網羅的にまとめられている。スタンダードな知識や意見がよくまとまっているので、様々な尖った意見に触れる前に最初に読んでおくべき本だと思う。
厚生労働省がPCR検査の拡大に反対したために、病院クラスター等への対応が遅れたと批判しているが、なぜ厚生労働省が検査の拡大にそこまで反対するのかが分からない。
検査で陽性になった者への対応が大変すぎるからというのであれば、検査を無くすより、陽性者への対応の方を変えるべきであろう。検査でできる限り情報を集めることは重要である。
また、1年以上経っても、新型コロナの対応が一部の公立病院や大学病院だけで行われていて、治療体 -
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「何と頭が良く、残酷なウィルス」と著者が恐れる新型コロナウィルス。本書は膨大な資料から、その正体を探ります。大げさな表現かもしれませんが、著者と中公新書の良心が詰まった日本人必読の力作です。
著者の黒木登志夫さんはもともと癌の基礎研究者。2001年以来、現場を離れてから医学を中心としたサイエンスライターとして活躍されています。中公新書の著書も多く、本書も読者を意識したわかりやすい構成で、感染症やウィルスの基礎知識に加え、各国の対策、研究開発の状況、そして、コロナとの共生の未来を迎えるための医療システム、社会システムの改革についての提言が行われています。
個人的に印象に残ったのは:
1)自滅 -
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新型コロナウイルス感染症について、ウイルスの基礎から病状や経過、診断、治療、予防(ワクチン)などの臨床、そして、日本や世界各国の対応などが分かりやすく書かれていて、とても良い一冊でした。
読みやすい文章なので、色んな人に読んで欲しいと思います。
本書は2020年10月23日までの動向と研究成果に基づいて執筆されており、同年11月23日までに明らかになった重要事項が追記されています。
この新型コロナウイルス感染症が収束した時に増補版が出版されることを期待しています。
以下、目次より
序章 人類はパンデミックから生き残った
第1章 新型コロナウイルスについて知る
第2章 新型コロナ -
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コロナ渦の中で最もまともな問題意識を持っているサイエンスライターの方が書いた本です。経歴を見ると、感染症の専門家ではありませんが、忖度なしで活動されているのがブログ等を見てわかりました。といっても、国際的に活躍をされていた超有名な方でした。山中教授のブログでも太鼓判を押しています。
洪水のように『コロナ本』が量産される中で、個人的には一番価値ある本だと思います。他の多くの書籍は、科学的というより「自分の思い」をただ書いているだけといった内容でした。自分が知りたいことは、このわけわからない日本のコロナ対応が何故まかり通っているか、それを理解できるなら、理解したいと思いました。
コロナ渦で一番 -
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ちょうどこの書評を書いている途中に東京都で新型コロナウィルスの陽性者が4桁を超え1,300人余となる事がニュースで流れた。本書はその様な本邦における現状を正しく認識する上でも重要な一冊になる。
本書では、総合的、俯瞰的に新型コロナ(COVID-19, SARS-CoV-2)について書かれている。本書内容は以下のようなことである。
新型コロナに関する字形的な事実、疫学的な解説、このウイルスの特性。各国のこのウイルスに対する対応・政策とその問題点。本邦における対応・政策と問題点、特に厚労省における、自省のメンツにこだわることによって生じる対策の遅れ、作為的な無策、医療技官の問題、官邸主導による根 -
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ネタバレ途中、他の本に手を出してしまったりして読み終わるにはずいぶんかかってしまったけど、決して読むのに抵抗を感じるような内容や文体だったわけではない。むしろ、どこまで読んだか思い出しながら何度も読んだ部分もある。
さすがの黒木先生の文章。わかりやすくテンポがよく、簡潔で、それでいて所々にウィットに富んだ例えや引用がある。硬い内容とは打って変わって、読み進めていきたくなる文章だった。第一人者の研究者であり、すでにご引退もされている著者だけど、いくつになっても時代の変遷に対する努力も謙虚な姿勢も持ちつづけていらっしゃるのだなと思う。こういうすゝめの本を読んだ後には、文章を書きたいと思わせられる。 -
Posted by ブクログ
★現象優先の生命科学の危うさ★生命科学の研究者が研究不正を過去の事例から淡々と分析する。日本だけでもこんなに不正があったのかというのは単純に驚きだ。STAP細胞よりもノバルティスの問題の方が企業に都合のいいように研究が使われていた意味では問題が根深いのがよく理解できた。キャラに引っ張られるのがいかに危ないことか
科学といっても数学などに不正は生じにくく、医学と生命科学で目立つという。後者は理論の前に現象を優先し、抽象化があいまいなまま進んでいくからという。とにかく目の前の人を治すために、という思いがあるのだろうが、確かに同じサイエンスでも言語がまったく違う。
一般の人に分かりやすいようと、 -
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著者は医師で,医学の権威。大学生の本分は,理系だろうと,文系だろうと,「自分の考えを文章にまとめるという,もっとも基本的な訓練」(iii頁)にあり,これからの英語の正規を生きるためには,まずは日本語でしっかり内容のある話ができていかなければならない。こうしたテーマの中公新書には,木下是雄『理科系の作文技術』が先行図書に挙げられるが,そのエッセンスとなる役割が本書にはある。
日本語の非論理性を認識したうえで(第2章),知的な文章を書くために必要な三原則「簡潔・明解・論理的」を確認し(第3章),説得力のある文書の書き方を,論文,申請書,説明書,エッセイなど,媒体別に解く(第4章)。
近年,ス -
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唐突に「理系・文系の区別は日本にしか無い」という話から始まる本書。
この話は、「知的文書の重要性は文理を問わない」ということを伝える切り口となる。このように著者なりの機転やユーモアを交えて、わかりやすい文章とは何か、著者は説く。
本書の特徴を2つ挙げよう。
1つは、様々な参考書籍や論文を引用しながら、知的文書の書き方を分析的に解説している点である。この引用が絶妙で、本書の記載を手堅いものにしている。例えば、他人に理解させるためには、すでに述べたことを前提に論理を展開していく文章構造をとるべきだが、これは "Legget の樹" と呼ばれる構造で的確に示される。
もう1