黒木登志夫のレビュー一覧

  • 死ぬということ 医学的に、実務的に、文学的に

    Posted by ブクログ

    死に至る病の解説本だった。
    各病気の事例、出所の確からしい統計、メカニズム、対策がまとまっている。冒頭で「死についてのファクトフルネス本」と著者が言っていた通り、死亡する要因のメカニズムと統計を知ることができた。

    また、各病気・原因の実事例があることで具体的に想像しやすくなったり、各章の冒頭に短歌があることで取っつきやすくなったりと内容に反して全体的に読みやすさを感じる本だった。

    著者のいう「ピンピンゴロリ」にはあまり賛同できなかった。十分に死ぬ準備をしていれば「コロリ」でもいいと感じる。

    0
    2026年02月12日
  • 研究不正 科学者の捏造、改竄、盗用

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    過去に起こった研究不正事件について、詳細に調べた結果が紹介されている。
    データの改ざんや捏造は、決してやってはいけないことだが、一人で研究しているといつでもできる状態にあり、良い結果が出ない場合は、そのような誘惑にとらわれることがあることは理解できる。
    その誘惑を断ち切るかどうかは個人にゆだねられている。
    論文提出時に、自己申告させる項目を増やし、不正ができないようにすること。
    その項目の中に、第三者が確認したかどうか、ということも入れると良いのではないかと思った。

    0
    2025年06月15日
  • 死ぬということ 医学的に、実務的に、文学的に

    Posted by ブクログ

    豊富な症例と合間の短歌で読み手を飽きさせず、ポップな語り口で「死ぬということ」という重苦しいテーマか軽妙に綴られている。

    老いや死について興味が増えてきた。自分自身というより両親がいよいよその境地に足を踏み入れているという実感から、先人たちの知見を拝借しその時の心構えをしておきたい、という心境なのだろう。

    なによりも、定期検診と規則正しい食生活、交友関係なんかも健康に過ごすには大切。昔から言い伝えられてきたことが、やはり真理なのだと納得。
    しかし、ピンピンコロリに対する著者の反対姿勢は新鮮な視点。コロリも逝く人は往生で幸せかもしれんが、後に残された身内は身辺整理等で煩雑な手続きに晒される。ここは、財産相続やウィリングリブの表明など詳しく記載されており、昔流行った終活の大切さを思い知る。
    立つ鳥跡を濁さずが気持ちのいい最後だよね、いざ当事者として考えるとそんな余裕と気遣いできるかなーと自分に不安。 

    大切な人との別れ、残された側になる可能性が自分は高いとは思っている。
    残された側のグリードからの立ち直り方として、いっぱい泣く•誰かに話す•生活負担を減らしてしっかり悲しむ。今までとは異なるものになってしまうけど、グリードを胸にしまったまま人生は続いていくのだ。
    自信はないけど、その時が来たらちゃんと乗り越えられるよう本書の提言を頭の片隅にしまっておこう。

    0
    2025年05月12日
  • 死ぬということ 医学的に、実務的に、文学的に

    Posted by ブクログ

    国や文化によって死への考え方は大きく違う。

    胃ろうは日本特有。それがなければ2週間程度で穏やかに亡くなる。

    安楽死に自殺幇助を含むか。鬱によるものは治療できる。スイス、オーストリア、イタリア、スペイン、オーストラリアの一部で認められている。

    孤独死は後に残された人が大変。

    固有の理由があるにしても非常にためになりました。

    0
    2025年02月12日
  • 知的文章術入門

    Posted by ブクログ

     本書を読んで得られた一番の成果は、「ウィキペディアの賢い活用法」である〔本書p102〕。ウィキペディアの記載を信頼しないことは大前提である。しかし、使うなと言うのは「現実的でない」。著者は6項目に分けて、活用法を指南してくれる。
     思い返してみても、ウィキペディアの使い方についてちゃんと解説した本を見たことがない。私が見逃しているだけかもしれない。少なくとも今後は、その使い方について他人から尋ねられれば、本書を勧めたい。
     ほかにも、著者はインターネット上における情報収集術や情報発信術も指南してくれる。いわゆる「フェイク・ニュース」の見分け方も言及している〔本書p113〕。本書の核心は、「知的インターネット参照術」といってよいだろう。類書にはない最大の特色である。

    0
    2021年12月21日
  • 知的文章術入門

    Posted by ブクログ

    日本語の論文の文章の書き方、英語の論文の書き方についての心構えを書いた本である。卒論を書いている最中に自分の文章が長すぎたり、主語が一貫していなかったり、として注意するために読んでみるのはいいと思える。
     英語については大学院生向けあるいは留学を準備している学生向けである。
     新しい文章教室としては簡単に読めるので読んでおくことはいいと思われる。

    0
    2021年11月23日
  • 知的文章とプレゼンテーション 日本語の場合、英語の場合

    Posted by ブクログ

    主に論文の書き方、発表の仕方、情報の集め方など学問・研究向けに書かれた本だが、これらのノウハウは応用が効くので読んでよかった。

    文章の書き方に関する本はたくさん読んできたが、多分これが一番参考になる。日本語でものを書く時は、

    1必要なときには主語は略さない
    2短い文章を書く
    3名詞の修飾は短く
    4読点は、分かりやすさと読みやすさで決める
    5語順はわかりやすさで決める
    6あいまいな表現は使わない
    7英語に直してみる

    上記の7点を意識すると、読みやすく、すっきりとした文章が出来上がる。7は今まで見たことのなかった視点で、これは同時に日本語の曖昧さを意味することもあり興味深い発見だった。

    0
    2021年06月27日
  • 新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ

    Posted by ブクログ

    昨年末までの新型コロナに関する情報が網羅的にまとめられている。スタンダードな知識や意見がよくまとまっているので、様々な尖った意見に触れる前に最初に読んでおくべき本だと思う。

    厚生労働省がPCR検査の拡大に反対したために、病院クラスター等への対応が遅れたと批判しているが、なぜ厚生労働省が検査の拡大にそこまで反対するのかが分からない。

    検査で陽性になった者への対応が大変すぎるからというのであれば、検査を無くすより、陽性者への対応の方を変えるべきであろう。検査でできる限り情報を集めることは重要である。

    また、1年以上経っても、新型コロナの対応が一部の公立病院や大学病院だけで行われていて、治療体制が強化されないこと、保健所の業務がパンクしているのに、いつまで経っても体制の増強が行われないことなど、厚生労働行政には疑問を感じる点が多い。

    ワクチンによって現在の感染状況が一段落したら、厚生労働省は早急に改革するべきだろう。

    0
    2021年05月30日
  • 新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ

    Posted by ブクログ

    「何と頭が良く、残酷なウィルス」と著者が恐れる新型コロナウィルス。本書は膨大な資料から、その正体を探ります。大げさな表現かもしれませんが、著者と中公新書の良心が詰まった日本人必読の力作です。

    著者の黒木登志夫さんはもともと癌の基礎研究者。2001年以来、現場を離れてから医学を中心としたサイエンスライターとして活躍されています。中公新書の著書も多く、本書も読者を意識したわかりやすい構成で、感染症やウィルスの基礎知識に加え、各国の対策、研究開発の状況、そして、コロナとの共生の未来を迎えるための医療システム、社会システムの改革についての提言が行われています。

    個人的に印象に残ったのは:
    1)自滅してしまったSARSウィルスと新型コロナウィルスの戦略的違い
    2)無症状者からの感染という現実の恐ろしさ
    3)「8割おじさん」の数学的根拠とコロナ禍における数理系研究の重要さ
    4)テドロスWHO事務局長の自信のなさ
    5)バットウーマン石正麗の功績
    6)新型コロナウィルスの起源に関する著者の考え
    7)飛沫を飛ばさない日本語の発音
    8)日本の対応のベスト10とワースト10。ベストワンは要請レベルであっても耐えて対応した国民。ワーストワンは一向に進まなかったPCR検査。最大の問題は「厚労省が政治的に動いて、国民の目の届かないところで、自分たちの主張を遠そうとする態度」。
    9)医療現場と同様に厳しい保健所

    「新型コロナの科学」と学術書のような題名ですが、中身は85歳のベテランサイエンスライターによって書かれた科学読み物。「新型コロナ解析の集大成」と帯で山中伸弥さんが推薦されていますが、それよりも「とても面白い本」と私は思っています。本書が扱っているのは2020年11月23日までの事実。したがい、既に出現している第四波については書かれていません。続編の出版をお願いしたいと思います。

    0
    2021年04月20日
  • 新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ

    Posted by ブクログ

    新型コロナウイルス感染症について、ウイルスの基礎から病状や経過、診断、治療、予防(ワクチン)などの臨床、そして、日本や世界各国の対応などが分かりやすく書かれていて、とても良い一冊でした。
     読みやすい文章なので、色んな人に読んで欲しいと思います。

     本書は2020年10月23日までの動向と研究成果に基づいて執筆されており、同年11月23日までに明らかになった重要事項が追記されています。

     この新型コロナウイルス感染症が収束した時に増補版が出版されることを期待しています。


    以下、目次より

    序章 人類はパンデミックから生き残った
    第1章 新型コロナウイルスについて知る
    第2章 新型コロナ感染症を知る
    第3章 感染を数学で考える
    第4章 すべては武漢から始まった
    第5章 そして、パンデミックになった
    第6章 日本の新型コロナ
    第7章 日本はいかに対応したか
    第8章 世界はいかに対応したか
    第9章 新型コロナを診断する
    第10章 新型コロナを治療する
    第11章 新型コロナを予防する
    第12章 新型コロナと戦う医療現場
    第13章 そして共生の未来へ

    0
    2021年01月24日
  • 新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ

    Posted by ブクログ

    新型コロナウイルスに関するわかりやすい解説で大変参考になります。参考資料や図表が理解の助けになります。紹介されていたグーグルの感染予測を見てみると東京都は1月21日まで増加し、その後減少し2月に入ると1500人ぐらいで推移しています。16日は4000人を超える予測だったけど、実際には2000人を下回っていたので、予測は更新されていくのでしょう。

    0
    2021年01月17日
  • 新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ

    Posted by ブクログ

    コロナ渦の中で最もまともな問題意識を持っているサイエンスライターの方が書いた本です。経歴を見ると、感染症の専門家ではありませんが、忖度なしで活動されているのがブログ等を見てわかりました。といっても、国際的に活躍をされていた超有名な方でした。山中教授のブログでも太鼓判を押しています。

    洪水のように『コロナ本』が量産される中で、個人的には一番価値ある本だと思います。他の多くの書籍は、科学的というより「自分の思い」をただ書いているだけといった内容でした。自分が知りたいことは、このわけわからない日本のコロナ対応が何故まかり通っているか、それを理解できるなら、理解したいと思いました。

    コロナ渦で一番疑問に思ったことは、
    なぜ日本は、コロナ渦の実態を把握する上で、適切な情報を展開するのに「積極的ではない」か?です。

    なぜPCR検査が絶望的に少ないのか?
    なぜなら検査をしない限り、感染の拡大および縮小がわからないからです。毎日、毎日、絶対数だけ感染者を叫ぶ報道を見て、何を言いたいのか、さっぱりわかりませんでした。

    今の検査は、無症状の人は、
    積極的な検査対象にはなっていません。
    何故か?厚生労働省の「当初の方針」だからです。何故、こういう方針かは、本書を読むとわかります。理解に苦しみますが。。。

    ニューヨークが毎日数十万の検査を行い、国民に対して、コロナの実態把握ができるように、積極的に情報公開していますが、日本は、あれこれ理由をつけて、
    実態を、積極的にわからなくしようとしています。

    メディアも、毎日何百万人も利用する電車、地下鉄の密は無視をしていますし、何千万人利用しているコンビニからは、ほとんど感染者の情報はありません。大企業も自前で従業員の実態を把握するためにPCR.抗体検査をする企業は皆無です。恐らく実態がわかると混乱するからでしょうが。ほんと、わけわからないというのが、日本のコロナ対策です。

    この書籍を読んで、厚生労働省の酷さが
    よくわかります。頭が腐っていると、その下も全部腐る。今の日本人は、規範を失って、何を信じたらわからない状態になっています。一体、この1年間で何人の方が、感染して、亡くなったのか、、、実態は決してわからないようになっています。

    アメリカ、ヨーロッパの感染拡大は納得がいきます。彼らは自由を多大なる犠牲を持って体現していますし、国の成り立ちからして、そうです。ただ、正確な情報や実態調査は、国の威信をかけて行っています。

    日本は、威信をかけて実態をわからなくさせて、利権構造や政治権力の移譲に、持ち得る全てのエネルギーを傾け、死ぬ気で頑張っています。

    こういうエビデンスに基づいた非常に説得力のある本は、今の日本人の視界には入らないでしょう。新聞、テレビと、ほんとデタラメな報道をしています。福島原発報道と、まさに瓜二つです。大本営発表とそっくりです。

    毎日、何百人、何百人と、単なる数字をグラフにした全く意味不明なものが喧伝されています。せめて、分母である検査数と、日にち、年齢構成を言ってほしいものですが、それは「やらないこと」になっています。

    なぜなら、政府やマスメディアの目的は、
    国民に対して、コロナ渦の実態をわからないように全力を上げているからです。

    ちょうど、先日、友人の留学生が、
    帰国の挨拶にと、スカイプで話す機会がありました。ほんとに日本は、わけわからない、コロナの感染拡大防ぎたいのに、なんでGOtoするんですか?ホテル、旅館に滞在したら、ウィルスが付着して危ないですよね。なんで、お年寄りが毎日、毎日、何回もスーパーに行くんですか?ほんとわけわからないと。あなたは、わかりますか?と。

    わかるよ。日本人は、日本では、主体的に生きることが出来ないんだ。コロナ渦の中、満員電車に乗って、会社に行くのは、戦地に行く兵隊と同じなんだ。だから、君は、こんなヤバい国にいる必要はなくて、いつか観光ができるようになったら、来れば良いとアドバイスしておきました。

    何をすべきか?その答えは自分しか知りません。適切な判断材料を与えてくれる上で、この書籍を是非、手にとってみることをすすめます。

    0
    2021年01月12日
  • 新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ

    Posted by ブクログ

    ちょうどこの書評を書いている途中に東京都で新型コロナウィルスの陽性者が4桁を超え1,300人余となる事がニュースで流れた。本書はその様な本邦における現状を正しく認識する上でも重要な一冊になる。

    本書では、総合的、俯瞰的に新型コロナ(COVID-19, SARS-CoV-2)について書かれている。本書内容は以下のようなことである。
    新型コロナに関する字形的な事実、疫学的な解説、このウイルスの特性。各国のこのウイルスに対する対応・政策とその問題点。本邦における対応・政策と問題点、特に厚労省における、自省のメンツにこだわることによって生じる対策の遅れ、作為的な無策、医療技官の問題、官邸主導による根拠のない政策実行の問題。治療薬。医療の現場(院内感染が広まったことに対してもPCR検査を抑制しようとした厚労省に責任がある)。介護の現場。保健所の現場。そして政策的な提言を含めた共生への未来について。
    本書は以上内容を含んでおり、現状における新型コロナウィルスについての最高のテキストであると思う。

    0
    2020年12月31日
  • 新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ

    Posted by ブクログ

    一気に読んでしまいました。
    第3章の数学のところ以外はリアルタイムなので腑に落ちて分かりやすかったですし、興味を持って理解することができました。厚労省の不誠実さに唖然としました。
    ウイルスのしたたかさや、これからのヒト(自分)の生活様式などなど、これから考えるべき事の多さに頭がクラクラしました...

    0
    2020年12月30日
  • iPS細胞 不可能を可能にした細胞

    Posted by ブクログ

    iPS細胞の再生医療に期待している患者さんは多岐にわたる。臨床試験を行い早く様々なところで病気を治してほしい。

    0
    2020年10月01日
  • 研究不正 科学者の捏造、改竄、盗用

    Posted by ブクログ

    研究不正のありがちなポイントを並べるだけでなく、研究不正の事例を挙げて事実を述べていく構成。
    卒業や任期の締め切りがある中で成果=論文を出すことが求められる。いいデータが出ると上司に承認され、研究室での立場も向上する。そんな中、自分が欲しかった結果やデータ、統計結果が出ない時にどうするか、時間もない…となった時に果たして魔が差さないとは言い切れるか。考えさせられた。

    0
    2020年09月14日
  • 知的文章とプレゼンテーション 日本語の場合、英語の場合

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    途中、他の本に手を出してしまったりして読み終わるにはずいぶんかかってしまったけど、決して読むのに抵抗を感じるような内容や文体だったわけではない。むしろ、どこまで読んだか思い出しながら何度も読んだ部分もある。
    さすがの黒木先生の文章。わかりやすくテンポがよく、簡潔で、それでいて所々にウィットに富んだ例えや引用がある。硬い内容とは打って変わって、読み進めていきたくなる文章だった。第一人者の研究者であり、すでにご引退もされている著者だけど、いくつになっても時代の変遷に対する努力も謙虚な姿勢も持ちつづけていらっしゃるのだなと思う。こういうすゝめの本を読んだ後には、文章を書きたいと思わせられる。

    0
    2020年08月31日
  • 研究不正 科学者の捏造、改竄、盗用

    Posted by ブクログ

    ★現象優先の生命科学の危うさ★生命科学の研究者が研究不正を過去の事例から淡々と分析する。日本だけでもこんなに不正があったのかというのは単純に驚きだ。STAP細胞よりもノバルティスの問題の方が企業に都合のいいように研究が使われていた意味では問題が根深いのがよく理解できた。キャラに引っ張られるのがいかに危ないことか

    科学といっても数学などに不正は生じにくく、医学と生命科学で目立つという。後者は理論の前に現象を優先し、抽象化があいまいなまま進んでいくからという。とにかく目の前の人を治すために、という思いがあるのだろうが、確かに同じサイエンスでも言語がまったく違う。

    一般の人に分かりやすいようと、ところどころに笑いを交えようとするのが、こなれていなくてむしろおかしい。

    0
    2020年08月02日
  • 知的文章とプレゼンテーション 日本語の場合、英語の場合

    Posted by ブクログ

     著者は医師で,医学の権威。大学生の本分は,理系だろうと,文系だろうと,「自分の考えを文章にまとめるという,もっとも基本的な訓練」(iii頁)にあり,これからの英語の正規を生きるためには,まずは日本語でしっかり内容のある話ができていかなければならない。こうしたテーマの中公新書には,木下是雄『理科系の作文技術』が先行図書に挙げられるが,そのエッセンスとなる役割が本書にはある。
     日本語の非論理性を認識したうえで(第2章),知的な文章を書くために必要な三原則「簡潔・明解・論理的」を確認し(第3章),説得力のある文書の書き方を,論文,申請書,説明書,エッセイなど,媒体別に解く(第4章)。
     近年,スティーブ・ジョブズやアル・ゴアのように,人を惹きつけるプレゼンテーションを感じる若者が多い。しかし,彼らは決して魅せることだけに力を入れていたわけではない。ここでも必要とされるのは,「簡潔・明解・論的的」の知的三原則であって,彼らが事前の十分な準備なし成し遂げてきたわけではない。
     結局のところ,文系と理系は,筋道を立てて考える点で,本質的に同じであり,英語を話すにしても,ネイティブをめざすのでなく,Globish=「英語を母語としない人々(ノン・ネイティブ)の間の共通言語」として話すのが,日本人にふさわしい知的な表現力であると,著者は主張する。
     各章の最後には,「3行にまとめた大事なこと○点」と名付けられた節が設けられ,まさに「簡潔・明解・論理的」に章内の内容を要約している。また,新書レベルとしては,巻末の引用文献,参考文献が充実している。このあたりは,著者の拘りであるととともに,文章の書き方に拘りを持つ中公新書らしさといえよう。学部ゼミの副読本としても使用した。

    0
    2019年01月27日
  • 知的文章とプレゼンテーション 日本語の場合、英語の場合

    Posted by ブクログ

    唐突に「理系・文系の区別は日本にしか無い」という話から始まる本書。
    この話は、「知的文書の重要性は文理を問わない」ということを伝える切り口となる。このように著者なりの機転やユーモアを交えて、わかりやすい文章とは何か、著者は説く。

    本書の特徴を2つ挙げよう。

    1つは、様々な参考書籍や論文を引用しながら、知的文書の書き方を分析的に解説している点である。この引用が絶妙で、本書の記載を手堅いものにしている。例えば、他人に理解させるためには、すでに述べたことを前提に論理を展開していく文章構造をとるべきだが、これは "Legget の樹" と呼ばれる構造で的確に示される。

    もう1つは、医学系研究者である著者の知識である。例えば日本語の欠点として著者は以下のように述べている。
    -------------------------
    (「第2章 日本語は非論理的か」より抜粋)
    医師としての私の診立てによると,日本語は次の三つの症状あるいは病気にかかっている.
    (1)主語欠乏症
    (2)文法不定愁訴
    (3)あいまい症候群
    この三大症状を把握し,対処療法を施せば,日本語で論理的に表現し,知的な作業を行うことができるはずである.
    -------------------------
    文法が人によりころころと変わる日本語文法の不定性を、医学用語を援用して「不定愁訴」と表現できるのは、著者くらいだろう。

    後半は「英語の重要性」「パソコンの登場」というトピックに対する著者の散文に近いものになっているが、機知に富んだ表現で最後まで面白く読むことができると思う。

    0
    2018年01月31日