黒木登志夫のレビュー一覧
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がんが遺伝子の異常であることは何となく判るのであるが、遺伝子の異常がどうしてがんになるのかはじつはよく判らない。がん遺伝子にはがん遺伝子とがん抑制遺伝子がありがんが発生するには複数のがん遺伝子が絡んでいるらしい。人は歳を重ねるごとにがんになる可能性を増すのだが、遺伝子の変異する確率をかけ算していくと現実のがん発生の率と比べるととんでもなく低い確率になるらしい。遺伝子がダメージを受けてもたいていの場合、修復酵素がダメージを解消するらしい。すなわちDNA修復遺伝子というのがあるらしく、こいつが変異してしまうと細胞が遺伝子不安定状態になりがん遺伝子、がん抑制遺伝子のダメージが累積しはじめがんに至るのである。
このような遺伝子の異常ががんを発生させるメカニズムを専門外のものにも判るように説明し、こういったメカニズムが発見されていく医療の歴史を概説したのが本書である。 -
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2001から8年まで法人化を挟んで岐阜大学の学長を2期務めた黒木学長の回想記。理系の一流の基礎医学者であるためか、文章が簡潔で読みやすく、理解しやすい。加えてユーモアのセンスもあり、おもしろかった。
本書によって、例えば遠山プランにおける国公私「トップ30」の30という数字が、21世紀COE,留学生30万人計画など多くの高等教育政策に現れていることなど遠山プラン、運営費交付金の構造、移動官職、教育GPといった国立大学法人における重要事項について、初めて少し理解することができた。
印象に残った箇所は以下のとおり
p.95
法人化という全面的なシステム改革により、国立大学は、文科省の一地方組織ではなく、独立した組織として、学長と役員会が最終責任を負って運営する企業型組織になった。
p.113
わが国の国立大学の授業料は、世界の中では群を抜いて高額である。
~その上、入学金をとっているのは日本だけである。
p.254
移動官職であるのですから移動閑職ではないはずです。
p.311
すべてに合意形成を求め、手続き論を重視し、迅速に進めようとすると拙速と非難する。それが大学という文化である。
p.347
正論をいったから、すべてが通るなどと思っているわけではありません。しかし、言わないことには、何も進まないのは確かです。
国立大学法人職員にとって、法人化以降の問題を捉えることができる良書だと考える。 -
購入済み
医学的面からの強い死に対する内容でした。副題に「医学的に、実務的に、文学的に」とあり、私は個人として「文学的に」の意味を大きくとりすぎたのか、少し不満の残る印象です。
確かに医学的に考えた「死ぬこと」はこれまで明確に書かれた一般的な書籍は少ないのかもしれません。その点は、良かったと思います。
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ネタバレWHOは、死因として病死と事故のみを記載している。老衰は寿命の限界に近づいたから。
フランスは結婚を登録制度に改めて出生率が上昇した。
定期的に検診を受ける。
前立腺がん、大腸がん、胃がん、肺がん、肝がんの順に多い。
高齢者が増えているからがんが増えている。年齢構成で補正すると、がんは減少している。
循環器は突然死が多い。多くはカテーテルで治せる。
循環器は、生活習慣病。
高血圧の薬はタイプがいろいろある。高血圧のため倒れるより、毎日薬を飲む方がコスパがいい。
コレステロールの薬は、スタチン系の薬品が使われている。
糖尿病は、合併症が怖い。患者数は1000万人、グレーゾーンが1000万人。合計すると総人口の15%を超える。
認知症は高齢化のスピードよりも増え方が早い=年齢調整有病率でも増えている。がんとは対照的。
認知症は予防法も治療法もない。老年期の喫煙、うつ、社会的孤立、聴覚障害などがなりやすい。
認知症に対しては、なにもせず見守ること。認知症は、穏やかな最後を迎えるための適応現象。就活機能。
老衰死は80歳以上。老衰死は指数関数的に増えている。自然の死が受け入れられるようになって、老衰死が増えた。世界的には、その他、の死に方。
誤嚥性肺炎は死因の第6位。毎食後の歯磨き、口腔ケアで半減する。喉の力を強くする。誤嚥性肺炎は、話せることとトレードオフも結果。
転倒の多くは朝方に家の中で起きる。
在宅看取りはたいへん。希望者は55%いても自宅で死ぬのは17%しかいない。
孤独死は後始末がたいへん。
死ぬときは、1週間程度の入院で死ぬのがよさそう。
80歳すぎて一人暮らしなら、健康でも孤独死への備えをする。
安易に在宅ひとり死を勧めるべきではない。
オランダの死因の4.2%は安楽死。死刑は廃止。
日本は逆方向に向かっている。
終末期は食べられない。食べないから死ぬ、ではなくしむから食べない。
90%が延命治療を望まない。
非オピオイド系鎮痛剤、オピオイド、モルヒネの順に強くなる。強いオピオイドと弱いオピオイドがある。モルヒネと同じように脳内で働く。
死が日常化。2/3が80歳以上、1/3が90歳以上で死ぬ。老衰が12%。
理想的な死はピンピンゴロリ。コロリは心筋梗塞など。ゴロリは少し寝込んで少しずつ死に向かう。ゆっくり死のほうが本人にも周囲にもやさしい死に方。 -
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86歳になるというもともとはガンの研究者の先生が、新型コロナウイルスについて解説する本の第2弾。第1弾は2020年の12月で、この本は2022年の3月。第6波が終わる頃だから、この時点ではまだ第7波というものすごい波が来る前の状況なので、今だと著者はどう思うのだろうか。「ちょっと増えては消えていくような小さな波、あるいは、オミクロン株並みの高さではあるものの病原性の弱い波などが、繰り返す可能性がある。」(p.228)という「終わりの始まり」シナリオが有力、というのが著者の考える有力な可能性なんだけど、なんか「始まりの終わり」というシナリオ2か、「終わりなき始まり」のシナリオ3に寄っているのか?それともこの第7波が本当の終わりの始まりであることを願うばかりなのだけど。
あんまりこういう、今流行っていることについての本ってそんなに読みたいと思わなかったけれど、この第7波でついに本当に自分の身近なところまで来てしまい、なんとなく買ってしまった。全体としては、ワクチンを含めた治療の話や医療の状況、ここまでの政府の対応に対する評価。ニュートラルな理系本というよりは、大ベテラン的な、ちょっとしたユーモアや脱線、手厳しい書きっぷりもあるのだけど、そんなには気にならないかな。
まずワクチンについて、というよりもプロジェクトX的なワクチン開発の歴史についての話が結構ある。おれはそんなに興味持てなかったけど、たぶん面白い話なんだろうと思う。「巨人の方の上に立つ」(p.43)という比喩を聞いたことがあったけど、これはベルナールというフランスの哲学者の言葉だったらしい、とかそういう部分に興味を持った。あとは「シュード・ウリジンを作っているのは、銚子のヤマサ醤油である。ヤマサは、うまみ成分の研究から生まれた核酸関連分子を1980年代から試薬として販売していた。ファイザーとモデルナのmRNAワクチンにはヤマサのシュード・ウリジンが使われている。」(p.62)とか。ヤマサってすごい。リケンとかもそうだけど、食品の会社かと思ったら、研究する会社だった、みたいな会社って結構あるんだろうか。あとはワクチン忌避の記事を前に読んだり、実は自分の身近にもこういう人がいるのだけど、色んな解説やデータが示された後、結局「問題にするにも足りない反応のためにワクチンを打たないなんて、損得から言ったら、全く割に合わない。」(p.110)ということに、おれは納得した。(これもバイアスなのかもしれないけど。まあおれはそもそも積極的に反対するポリシーもないけど。)「驚いたことに、ワクチンを信用していない国は、発展途上国ではなく、発展した国に多かった。」(p.126)というのも訳がわからない。「『世界の1歳の子供の何%がワクチンを受けていると思うか』という質問を世界の28ヵ国にしたところ、一番成績が悪かったのは日本であった。(略)ちなみにその答えは『85.8%』である。」(p.127)ということだそうだ。そして、「ワクチンは、パンデミックの世界を生き抜くための『シートベルト』」(p.135)という比喩が分かりやすい。そして話は、なぜ日本はワクチン開発に遅れているのか、という話はリアル。「私のこれまでの経験では、新しい提案をしたとき、優秀な事務官ほど即座に『先生、それは無理です』と答え、できない理由を得意げに話す。提案はそこで止まってしまう。日本には、非難を恐れ、『石橋を叩いて、橋を壊す』文化があるのだ。(略)日本の政府効率性を64ヵ国中41番目とあランク付けするのも頷ける。」(pp.153-4)ということだそうだ。ほんと、組織って難しい。という凡人のおれも組織の一員なんだけど、集団浅慮?みたいな感じなのもあるし。
あとは雑多な内容で、エクモって、ちょっと前はよく聞いたけど、最近聞かないなあ。でもそのエクモがどういうものなのかひとつも知らなかった。「太い静脈からポンプで血液を抜き出し、人工肺を用いて、体外で血液中のガス交換を行い、体内に戻す。」(p.183)って、そんなことするのか…。あとは救急車がアメリカは有料という話。「高い掛け金の保険に加入していても、基本料金だけで500〜1000ドル(6.3〜12.5万円)はかかる。G7のほかの国、たとえば中国などは有料である。日本のように、救急車は無料なのは少数派である。(アメリカに行くときは保険に必ず入っておくように。それでも、救急車を呼ぶのは慎重に)。」(p.197)ということらしい。具体的な金額を出されると説得力がある。
最後にコロナの話で、「コロナ病院医師の日誌から」(p.207)ということで、実際に大田区にある荏原病院の内科部長の話というのがあるのがリアル。そんなに大袈裟とか悲壮感が漂わないところが逆にリアルなんだと思う。恐ろしい話なのは「重症化、致死率は60歳を境に大きく変わる。(略)Cov-2は、まるで、高齢化社会を補正しているように思える。」(p.224)、「60歳を境に致死率がこんなに違うとは、高齢者のひとりとして恐ろしくなった。」(p.250)という、なんかSF映画みたいな話なのが怖い。
正確な予測はもちろん出来ないにしても「この後も、波がいくつか押し寄せてくるとしても、2023年春までには実質的に終わるのではないだろうか。」(p.250)という見解を信じて、おれは学校で働いている人間なので、色々な経験を奪われたせいなのか、過去に比べると、その分、生徒が身につけるべき力が弱ってるんじゃないかと思わずにいられない場面に直面していると、さっさと終わって頂かないと本当に困る。(22/09/18)