あらすじ
未曾有のパンデミックはなぜ起きたか――。世界を一変させた新型コロナウイルス。本書は、治療薬やワクチン開発を含む研究の最前線を紹介。膨大な資料からその正体を探る。ロックダウン前夜のベネチア、雲南省の洞窟、武漢ウイルス研究所、ダイヤモンド・プリンセス号と舞台を移してウイルスの変遷を辿り、見えない敵に立ち向かう人々のドラマを生き生きと描く。日本政府の対応にも鋭く迫り、今後の課題を浮き彫りにする。
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Posted by ブクログ
昨年末までの新型コロナに関する情報が網羅的にまとめられている。スタンダードな知識や意見がよくまとまっているので、様々な尖った意見に触れる前に最初に読んでおくべき本だと思う。
厚生労働省がPCR検査の拡大に反対したために、病院クラスター等への対応が遅れたと批判しているが、なぜ厚生労働省が検査の拡大にそこまで反対するのかが分からない。
検査で陽性になった者への対応が大変すぎるからというのであれば、検査を無くすより、陽性者への対応の方を変えるべきであろう。検査でできる限り情報を集めることは重要である。
また、1年以上経っても、新型コロナの対応が一部の公立病院や大学病院だけで行われていて、治療体制が強化されないこと、保健所の業務がパンクしているのに、いつまで経っても体制の増強が行われないことなど、厚生労働行政には疑問を感じる点が多い。
ワクチンによって現在の感染状況が一段落したら、厚生労働省は早急に改革するべきだろう。
Posted by ブクログ
「何と頭が良く、残酷なウィルス」と著者が恐れる新型コロナウィルス。本書は膨大な資料から、その正体を探ります。大げさな表現かもしれませんが、著者と中公新書の良心が詰まった日本人必読の力作です。
著者の黒木登志夫さんはもともと癌の基礎研究者。2001年以来、現場を離れてから医学を中心としたサイエンスライターとして活躍されています。中公新書の著書も多く、本書も読者を意識したわかりやすい構成で、感染症やウィルスの基礎知識に加え、各国の対策、研究開発の状況、そして、コロナとの共生の未来を迎えるための医療システム、社会システムの改革についての提言が行われています。
個人的に印象に残ったのは:
1)自滅してしまったSARSウィルスと新型コロナウィルスの戦略的違い
2)無症状者からの感染という現実の恐ろしさ
3)「8割おじさん」の数学的根拠とコロナ禍における数理系研究の重要さ
4)テドロスWHO事務局長の自信のなさ
5)バットウーマン石正麗の功績
6)新型コロナウィルスの起源に関する著者の考え
7)飛沫を飛ばさない日本語の発音
8)日本の対応のベスト10とワースト10。ベストワンは要請レベルであっても耐えて対応した国民。ワーストワンは一向に進まなかったPCR検査。最大の問題は「厚労省が政治的に動いて、国民の目の届かないところで、自分たちの主張を遠そうとする態度」。
9)医療現場と同様に厳しい保健所
「新型コロナの科学」と学術書のような題名ですが、中身は85歳のベテランサイエンスライターによって書かれた科学読み物。「新型コロナ解析の集大成」と帯で山中伸弥さんが推薦されていますが、それよりも「とても面白い本」と私は思っています。本書が扱っているのは2020年11月23日までの事実。したがい、既に出現している第四波については書かれていません。続編の出版をお願いしたいと思います。
Posted by ブクログ
新型コロナウイルス感染症について、ウイルスの基礎から病状や経過、診断、治療、予防(ワクチン)などの臨床、そして、日本や世界各国の対応などが分かりやすく書かれていて、とても良い一冊でした。
読みやすい文章なので、色んな人に読んで欲しいと思います。
本書は2020年10月23日までの動向と研究成果に基づいて執筆されており、同年11月23日までに明らかになった重要事項が追記されています。
この新型コロナウイルス感染症が収束した時に増補版が出版されることを期待しています。
以下、目次より
序章 人類はパンデミックから生き残った
第1章 新型コロナウイルスについて知る
第2章 新型コロナ感染症を知る
第3章 感染を数学で考える
第4章 すべては武漢から始まった
第5章 そして、パンデミックになった
第6章 日本の新型コロナ
第7章 日本はいかに対応したか
第8章 世界はいかに対応したか
第9章 新型コロナを診断する
第10章 新型コロナを治療する
第11章 新型コロナを予防する
第12章 新型コロナと戦う医療現場
第13章 そして共生の未来へ
Posted by ブクログ
新型コロナウイルスに関するわかりやすい解説で大変参考になります。参考資料や図表が理解の助けになります。紹介されていたグーグルの感染予測を見てみると東京都は1月21日まで増加し、その後減少し2月に入ると1500人ぐらいで推移しています。16日は4000人を超える予測だったけど、実際には2000人を下回っていたので、予測は更新されていくのでしょう。
Posted by ブクログ
コロナ渦の中で最もまともな問題意識を持っているサイエンスライターの方が書いた本です。経歴を見ると、感染症の専門家ではありませんが、忖度なしで活動されているのがブログ等を見てわかりました。といっても、国際的に活躍をされていた超有名な方でした。山中教授のブログでも太鼓判を押しています。
洪水のように『コロナ本』が量産される中で、個人的には一番価値ある本だと思います。他の多くの書籍は、科学的というより「自分の思い」をただ書いているだけといった内容でした。自分が知りたいことは、このわけわからない日本のコロナ対応が何故まかり通っているか、それを理解できるなら、理解したいと思いました。
コロナ渦で一番疑問に思ったことは、
なぜ日本は、コロナ渦の実態を把握する上で、適切な情報を展開するのに「積極的ではない」か?です。
なぜPCR検査が絶望的に少ないのか?
なぜなら検査をしない限り、感染の拡大および縮小がわからないからです。毎日、毎日、絶対数だけ感染者を叫ぶ報道を見て、何を言いたいのか、さっぱりわかりませんでした。
今の検査は、無症状の人は、
積極的な検査対象にはなっていません。
何故か?厚生労働省の「当初の方針」だからです。何故、こういう方針かは、本書を読むとわかります。理解に苦しみますが。。。
ニューヨークが毎日数十万の検査を行い、国民に対して、コロナの実態把握ができるように、積極的に情報公開していますが、日本は、あれこれ理由をつけて、
実態を、積極的にわからなくしようとしています。
メディアも、毎日何百万人も利用する電車、地下鉄の密は無視をしていますし、何千万人利用しているコンビニからは、ほとんど感染者の情報はありません。大企業も自前で従業員の実態を把握するためにPCR.抗体検査をする企業は皆無です。恐らく実態がわかると混乱するからでしょうが。ほんと、わけわからないというのが、日本のコロナ対策です。
この書籍を読んで、厚生労働省の酷さが
よくわかります。頭が腐っていると、その下も全部腐る。今の日本人は、規範を失って、何を信じたらわからない状態になっています。一体、この1年間で何人の方が、感染して、亡くなったのか、、、実態は決してわからないようになっています。
アメリカ、ヨーロッパの感染拡大は納得がいきます。彼らは自由を多大なる犠牲を持って体現していますし、国の成り立ちからして、そうです。ただ、正確な情報や実態調査は、国の威信をかけて行っています。
日本は、威信をかけて実態をわからなくさせて、利権構造や政治権力の移譲に、持ち得る全てのエネルギーを傾け、死ぬ気で頑張っています。
こういうエビデンスに基づいた非常に説得力のある本は、今の日本人の視界には入らないでしょう。新聞、テレビと、ほんとデタラメな報道をしています。福島原発報道と、まさに瓜二つです。大本営発表とそっくりです。
毎日、何百人、何百人と、単なる数字をグラフにした全く意味不明なものが喧伝されています。せめて、分母である検査数と、日にち、年齢構成を言ってほしいものですが、それは「やらないこと」になっています。
なぜなら、政府やマスメディアの目的は、
国民に対して、コロナ渦の実態をわからないように全力を上げているからです。
ちょうど、先日、友人の留学生が、
帰国の挨拶にと、スカイプで話す機会がありました。ほんとに日本は、わけわからない、コロナの感染拡大防ぎたいのに、なんでGOtoするんですか?ホテル、旅館に滞在したら、ウィルスが付着して危ないですよね。なんで、お年寄りが毎日、毎日、何回もスーパーに行くんですか?ほんとわけわからないと。あなたは、わかりますか?と。
わかるよ。日本人は、日本では、主体的に生きることが出来ないんだ。コロナ渦の中、満員電車に乗って、会社に行くのは、戦地に行く兵隊と同じなんだ。だから、君は、こんなヤバい国にいる必要はなくて、いつか観光ができるようになったら、来れば良いとアドバイスしておきました。
何をすべきか?その答えは自分しか知りません。適切な判断材料を与えてくれる上で、この書籍を是非、手にとってみることをすすめます。
Posted by ブクログ
ちょうどこの書評を書いている途中に東京都で新型コロナウィルスの陽性者が4桁を超え1,300人余となる事がニュースで流れた。本書はその様な本邦における現状を正しく認識する上でも重要な一冊になる。
本書では、総合的、俯瞰的に新型コロナ(COVID-19, SARS-CoV-2)について書かれている。本書内容は以下のようなことである。
新型コロナに関する字形的な事実、疫学的な解説、このウイルスの特性。各国のこのウイルスに対する対応・政策とその問題点。本邦における対応・政策と問題点、特に厚労省における、自省のメンツにこだわることによって生じる対策の遅れ、作為的な無策、医療技官の問題、官邸主導による根拠のない政策実行の問題。治療薬。医療の現場(院内感染が広まったことに対してもPCR検査を抑制しようとした厚労省に責任がある)。介護の現場。保健所の現場。そして政策的な提言を含めた共生への未来について。
本書は以上内容を含んでおり、現状における新型コロナウィルスについての最高のテキストであると思う。
Posted by ブクログ
一気に読んでしまいました。
第3章の数学のところ以外はリアルタイムなので腑に落ちて分かりやすかったですし、興味を持って理解することができました。厚労省の不誠実さに唖然としました。
ウイルスのしたたかさや、これからのヒト(自分)の生活様式などなど、これから考えるべき事の多さに頭がクラクラしました...
Posted by ブクログ
自民党新書と同時的に読んだこともあり、メインテーマのコロナのことより、政策の失敗の方にどうしても目が行ってしまうのは致し方なし。ただ無駄に長く、国民を蔑ろにし続けた安倍政権が、その晩期において犯した失策である”マスク”と”一斉休校”は、こうして各方面から、世紀の大愚策として銘記されるべき。閑話休題。本書はほぼ一年前のものながら、コロナを総括的に見るのに役立つ一冊。PCRについての見解とか、個人的には賛成し兼ねる部分もあったけど、総じて分かりやすい良書。
Posted by ブクログ
新型コロナの2020年の状況を詳細にわたり書かれていて、整理されている。感染力のあるデルタ型が急激に増えている昨今、コロナ疲れなどとは言っていられない学びがあり、改めてコロナとの付き合い方を考えさせられた。ネットやメディアの情報に惑わされないようにしたい。2021年の状況は山中伸弥さんのコロナ情報のサイトで読める。
Posted by ブクログ
経緯や関係者、感染の仕組みや対処方法、治療薬など、網羅的に説明してある。断片的に頭に入れていた情報が整理されたように思う。まず本書を読んでから話をしたり聞いたりすれば、会話や議論もスムーズなのかな。
コラムや横道にそれた話も面白い。
過去、北京で「SARS対策の指揮を執っていた」二人が、「それから17年後、二人は新型コロナ対策の指揮を執ることになる」のくだりは、古代ローマ帝国でカンネの会戦で破れたスキピオ・アフリカヌスがザマの会戦に臨んだのと重なって熱くなった。
メルケル・ドイツ首相が国民に向けて伝えた言葉には、あらためて涙が出る。アーダーン首相や蔡英文・総統の対処の背景にも触れられている。
大部分は新聞や他書で読んだり自分で調べたりした内容であったが、ようやく抗体検査と抗原検査の違いを理解した(何度目かはわからないが)。
Posted by ブクログ
やはり厚労省がPCR検査を忌避していることが、蔓延の大きな要因と言う事だと確認できた。ただ、何故にここまで頑なに誤った施策に固執するのか、政治はなぜそれを是正出来ないのかは解明できない。医系技官の力の源泉はどこにあるのか、菅首相の力を持ってしても動かせないのか、動かす気がないのか、理解できない。
本書の内容はやや古くなったが、それでも基本的な事項は今も同じであり、ここに書かれた対策等が実現して行くことを願うばかりだ。
ガン治療を継続していてハイリスクの自分にとっては、早急な解決を望みたい。
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色々改めて教えられることもあり、読んで損のない新書かと。色んな国の政治家等の評価はさておき、自分の国はどうかと言われれば、これはまぁまぁ辛い。まぁでも行き着くところ自分たちで選んだ人たちだしね、と言われれば反論の余地もなく。
あと東日本大震災の時も思いましたが、経済を最優先にした効率性重視の政策立案は、結果として究極の不経済を産む、もっといえば国民に不幸をもたらしてしまうんですよね。将来への見通しとか長期的戦略性といったセンスは、もしかすると日本社会全体に足りないものかもしれないです。
ともあれ、早く収まってほしいです、世界全体で。凡民は祈念しつつ、3密回避・手洗い励行・マスク着用に勤しみます。
Posted by ブクログ
がん研究者でサイエンスライターの黒木登志夫氏による新型コロナについての最新の知見をまとめた好著。状況は日進月歩なのですぐに読むべき。
巻頭でで山中先生が言われているように、今の世に必要な物は健全な批判である。
未知で未経験の事態に対して日々難しいかじ取りを担っているリーダーに対する敬意があっての批判が求められていると思う。社会に警鐘を鳴らすのがジャーナリズムの役割というのはわかるけれども、政権や総理を批判するがための批判には辟易していたので、科学的検証に基づく本書の批判の姿勢に喝采を送りたい。
この一年間、新型コロナに関するニュースを聞かなかった日は一日もなかったしネットには情報が溢れかえっている。ところがこうして専門家によって系統的にまとめられた本を読むと、改めて知らなかったことがこれほどあったのかということに気づかされる。
かつて、ネットでいくらでも検索できるのに情報を得るために本を読むという手間には耐えられないといった人がいたが、大量の雑多な情報に触れていても何かを分ったり知っているということにはならないのである。
Posted by ブクログ
新型コロナウイルスとは何者なのか、どこから来て、人類は何ができて、何ができてないのか?
わからないから漠然とした不安をもつテーマですが、現在わかっているデータを元に『現状』を丁寧に解説した一冊。
ここまでの情報があれば、トンデモ情報に惑わされることなく、冷静に日々のニュースを見ることができると思います。
Posted by ブクログ
日本癌学会会長など日本医療の最前線で活躍してきた専門家から、まとまった解説書が出た。冒頭には、山中伸弥さんから「推薦の言葉」があった。私としては、もうそれだけで本書に全幅の信頼を置く。
とてもわかりやすく、尚且つ鋭い分析だと思う。昨年10月末までのデータがほとんどではあるが、昨年の日本ならびに世界のコロナ対策への評価と問題点抽出は出来ているし、我が意を得たりという気もした。
以下。参考になった部分。
⚫︎「新型コロナウィルスについて知る」
・変異。マイク真木「バラが咲いた」を例に説明。この歌は何故か、遺伝子暗号と同じように三つづつに区切れる、のだそう。
「バラガ サイタ バラガ サイタ アカイ バラガ」
→「バカガ サイタ バカガ サイタ アカイ バカガ」
塩基配列1箇所変異で、大違い。
⚫︎「新型コロナ感染症を知る」
・新型コロナが「無症状者からも感染する」論文が出たのが1月30日。しかし、これは直ぐには認められなかった。2月第二週に疑いのない事例が出て、初めて知られるようになり、きちんと確認されたのは5月初め。日本を含む世界は、この恐ろしい現実を軽視した。
・「感染は本人の責任」と思うのは、五大国の中で日本が突出して多い。アメリカ1.0%、イギリス1.5%、イタリア2.5%、中国4.5%、日本11.5%である。←私の周りの印象では、これよりも%は多いと感じる。言うまでもなく、これは間違った考え方である。
⚫︎「すべては武漢から始まった」
⚫︎黒木登志夫さんのウィルス起源についての考え
・武漢の海鮮市場が、感染拡大のクラスターになったのは確かだが、海鮮市場の動物から感染が始まった可能性は低い。
・武漢ウィルス研究所の実験室からウィルスが外に出た可能性は否定できない。
・新型コロナウィルスが、意図的に人工的に作られたウィルスである可能性はない。
⚫︎「そしてパンデミックになった」
・「超過死亡」によって、見逃されていたコロナ死、医療崩壊により死亡したであろう数も予測できる。米国は3-8月で26万人超過死亡者がいたが、うち8万人がそれだと予測できる。
←日本はPCR検査を絞っていたので、これで見逃されていたコロナ死亡がかなりあるのでは?と思っていたが、黒木さんによると日本では未だ確認されていないそう。何故確認されていないのか?理解できない。
←なお、日本の新型コロナの問題については、黒木さんは10月23日出版の臨調『新型コロナ対応・民間臨時調査会 調査・検証報告書』を基に書いている。実は、私は昨年この書を直ぐに購入したが、そのあまりにもの分厚さに躊躇していてまだ紐解けていない。今回、見事な先導役を見つけたので、この後紐解きたい。よって、日本問題は多くは省略する。と思っていたが、黒木さんの見解として、日本の対応のベスト10とワースト10を作ってまとめてくれていた。3ページにかけて書いていて、あまりにも長文なので、末尾に載せる。今のところ、私と同意見である。
⚫︎「世界はいかに対応したか」
・コロナ禍は、社会の二重構造、インフラの整備状況、医療のレベル、健康保険の整備状況などを、図らずも明らかにした。指導者の資質も明らかにした。
⚫︎「新型コロナを診断する」
・PCR検査、抗原検査と抗体検査は大きく違う(特に診断の目的)。
・米国CDCではPCR検査試薬に不純物が発見され、2月4日から3月15日まで使用できず、初動に大きな遅れをとった。
・尿からウィルスは検出されていないし、便から感染性のあるウィルスは分離されないので、トイレ理由の感染はない。
・日本の抗体保有率(6月)東京0.1%、大阪0.17%宮城0.03%。一方でスペイン3.7%(調査時の感染者0.46%)
・黒木さんはPCR検査を(1)感染者(2)医療従事者(3)感染リスク者(4)社会の安全・安心に順次広げていこうと主張しているが、現在は(2)までだという。←私は(2)も未だできていないと思う(特に首都圏以外)。一部批判にあるようにPCR検査を広げれば全て解決するとは書いていない。
・60%の集団免疫が安心な基準だとしているが、まだ世界では確認されていない。
⚫︎「新型コロナと戦う医療現場」
・5月末現在、2105人の院内感染者。全感染者の12.4%。院内感染の致死率は20%。全国平均の約5倍。病院も閉めることになるので、医療崩壊の引き金にもなる。
・欧米では死亡の40%が介護施設。日本は13%。日本ではトリアージによって高齢者を差別していない。インフルエンザ対策で、既にマニュアルがあり、1月31日には厚労省事務連絡が出ていて、初動が早かった。
⚫︎「追記」
・ファーザー、モデルナのワクチンの90%以上は、期待以上で、集団免疫も期待できる。明るいニュースだ。
『ベスト10』
(1)国民。国民は、要請レベルにも関わらず、行動を自粛し、マスク着用、手洗いなどを励行した。経済的に苦しい人もよく耐えた。
(2)三密とクラスター対策。初期のクラスター対策は一定の効果をあげた。その分析から生まれた「三密」キャンペーンは、わかりやすく、みんなそれにしたがった。
(3)医療従事者。未知の新型コロナに対して、検査・防護服などが不足しているなか、使命感から、献身的に貢献した。医師会も、コロナ問題に積極的に関わった。
(4)保健所職員。厚労省が保健所負担軽減対策に積極的でないなか、困難な調整と実務を行なった。公務員の責任ある行動として記憶されることであろう。
(5)介護施設。厚労省福祉関係三局は、いち早く介護施設に注意を呼びかけ、介護施設もそれに応えた。日本の死亡者が少ないのは、介護施設の努力によるところが大きい。
(6)専門家の発言。少なくとも、分科会に編成替え前までの専門家は、使命感から積極的に発言し、国民に警笛を鳴らし続けた。われわれも専門家の発言に注意していた。
(7)中央、地方自治体の担当者。医療従事者だけでなく、関係したすべての公務員は、一生懸命仕事した。
(8)ゲノム解析。国立感染研、地方衛生研は、新型コロナウィルスのゲノム解析し、感染の全貌解明と対策に貢献した。
(9)在留邦人救出。政府は感染の危機にさらされている在外邦人を、パスポートの前文の約束を守り、チャーター便により帰国の便をはかった。
(10)新型コロナ対応・民間臨時調査会。この報告書がなければ、コロナ禍のなか、政府内で何が起こっていたのか、どこに問題があったのかを知ることはできなかった。
『ワースト10』
(1)PCR検査。PCR検査の問題は言い尽くした。 コロナと生きる時代に必要なのは、PCR検査の徹底により社会の安全と安心を保証することである。
(2)厚労省。国民を守ることよりも行政的整合性を守ることに重きをおき、融通性に欠けていた。PCR検査では国民に背を向け、裏で政治工作をした。
(3)一斉休校。文科大臣、専門家の意見を聞かずに、安部首相の側近内閣府官僚によって断行された一斉休校によって、教育の現場、父兄の生活は大きな影響を受けた。
(4)アベノマスク。マスクを配布すれば国民の不安は消えますという首相の側近内閣府官僚の進言によって実行されたマスクは、160億円もの税金の無駄遣いであった。
(5)首相側近内閣府官僚。証拠に基づく政策(EBPM)の重要性が言われているなか、彼らは大臣、専門家を無視し、政策を首相に進言した。それを受け入れた首相は、さらに問題である。
(6)感染予防対策の遅れ。3月のヨーロッパ型ウィルスの流入予防対策に遅れをとった。第二波の最中にgotoトラベルを実行し、感染を広げた。
(7)分科会専門家。分科会委員に格下げされてからの専門家は、政府の政策にお墨付きを与えるだけの立場に甘んじてしまった。専門家が正論を言わなくなったら、専門家ではない。
(8)スピード感の欠如。初動態勢から今日に至るまで、すべての対応が遅すぎた。早かったのは、学校一斉休校とアベノマスクだけである。
(9)情報不足。感染情報は非常に限られていた。感染の実態(院内感染者、死亡者数、発症日別統計など)の発表がなかった。政策決定に至る過程も、不透明であった。
(10)リスクコミュニケーション。現状をわかりやすく説明し、質問に応えるリスクコミュニケーションがなかった。国民はテレビの情報番組に頼らざるを得なかった。
←本書の増補版は必ず出るだろう。コロナが終息したと見られる一年後か、2年後か、それとも3年後か。その時、本書と見比べれば、わかりやすい「コロナの総括」になると思う。
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序章:人類はパンデミックから生き残った、第一章:新型コロナウイルスについて知る、第二章:新型コロナ感染症を知る、第三章:感染を数学で考える、第四章:すべては武漢から始まった、第五章:そして、パンデミックになった、第六章:日本の新型コロナ、第七章:日本はいかに対応したか、第八章:世界はいかに対応したか、第九章:新型コロナを診断する、第十章:新型コロナを治療する、第十一章:新型コロナ感染を予防する、第十二章:新型kコロナと戦う医療現場、第十三章:そして共生の未来へ。いままさにのコロナについての著作。体制への疑問も書かれている。二兎を追って、より感染を広げてしまったのではないか?
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まずは著者の黒木登志夫氏の年齢に驚く。
1936年生まれの85歳 84歳で出版ということである。
感染症は氏の専門外と思われるが、新型コロナで騒ぐ世間に正確な情報が提供されていない事を憂いての著作と思われる。
次に武漢ウイルス(病毒)研究所の石正麗がBSL2で新種のコロナウイルス扱っていた事には驚かされた。しかもアメリカとの危険な共同研究を行っていたとは!
厚労省、首相官邸、内閣府 官僚機構の対応が多分そうだろうと考えていた以上に拙かったことも・・いや、これはそれほど驚かなかった。
この著書が出版されてから、ワクチンでまたまたまずい対応が続くことに納得した。
いや、本当に情けない。
毎日同じことの繰り返しで不安を煽る朝のワイドショーへの嫌悪から、まとめて俯瞰できなかった新型コロナの情報が、今となってはかなり古くなっている感も否めないが、見事に整理されていてタイムリーな良書ではないだろうか。
Posted by ブクログ
わかりやすくはあるが、所々で「それ個人の感想ですよね?」感が拭えない。
事実と感想をわけて読み進めないといけないので注意が必要。
個別箇所としては武漢研究所の安全性や、厚労省のPCR検査に対する姿勢が参考になった。
Posted by ブクログ
いろいろな論点が、バランス良く整理されているようには感じるが、著者自身が、すべての論点について専門家としての見地で科学的なコメントをすることができる、というわけでもなさそうな感じを受けた。それだけコロナの問題は、複数の専門分野が広く関係する困難問題であるということがわかるとも言える。
Posted by ブクログ
わかりやすいし、信頼がおけると思う。
しかし、情報が断片的に並べられている(まとまりがない)感と、内容によって表現の砕け方が気になる(取りようによっては、ちょっと上から的だったりする…)ところがあり、読み手の好き嫌いは分かれるだろう。
日経書評は「巷にコロナ本は山ほどあれど、なにはさておきまず読むべき本だ。」「一家に一冊、必携のコロナ対策ハンドブック」と手放しの褒めようである。
ただし、「唯一残念なのは検索がないこと」ということなので、購入するなら電子書籍がいいかもしれない。
・感染の大元は口と鼻。口から出た飛沫が口に入って感染する。だから「口は災いの元」の病。うまい!
・新型コロナ感染を防ぐには、無症状の人をスクリーニングしなければならない。←意見の分かれるところ。著者は政府のPCR検査に対する態度について、非常に批判的。
・屋内は屋外より19倍もクラスターの発生率が高い。←ということは、やはり人と会って飲み食いするなら川原でバーベキューがいいのかな。
・感染を「自業自得」「個人責任」とするのは、感染者排斥し差別することにつながり、ひいては科学的な対策の障害になる!
・普通に外歩いて感染するリスクは非常に少ない。マスクをし、手洗い励行していればそれほど神経質になることはない。
・糖尿病、慢性肺疾患以外に、脂質異常症と通風の人のリスクが高い。肥満も高い。しかし、高血圧はリスク要因から外れた。
・新型コロナウイルスが意図的に人工的に作られたウイルスである可能性はない。
・クラスター対策と三密は日本の新型コロナ対策の成功例。
・日本語の発音が飛沫感染を防ぐのに役立っている。
・ネアンデルタール人の遺伝子を持つ人は、人工呼吸器を使うリスクが3倍高い。
・日本政府の対応はほとんどが遅い。早かったのは、学校一斉休校とアベノマスクだけ!←痛烈な批判。
・ワクチンの副作用で最も恐ろしいのは抗体依存性感染増強(ADE)と呼ばれる、本来、ウイルスなどから体を守るはずの抗体が、免疫細胞などへのウイルスの感染を促進。その後、ウイルスに感染した免疫細胞が暴走し、症状を悪化させる現象。
・集団免疫の獲得には60%の人が免疫を獲得すれば良い計算。しかし、新型コロナに対する中和抗体は、早く消えてしまうことがわかってきており、繰り返しワクチン接種が必要になるかもしれない。
・スウェーデンでは、パンデミックに先立ち、80歳以上の患者、70歳以上で一つ以上の臓器障害を持つ患者、60歳以上で二つ以上の臓器障害を持つ患者は、ICU治療の対象外とするトリアージ方針を立てた。重症の高齢者は治療を受けられず、死亡するほかない。スウェーデンでは終末期医療に際して、無駄な延命治療を行わないことで国民が理解していることがあるという。
・厚労省は1月31日に「社会福祉施設等における新型コロナウイルスへの対応について」という通知を出し、マスク、手洗い、消毒などを励行するよう注意を促してた。日本の対策の中では、異例の早さである。高齢者である著者もこれには感謝している。
Posted by ブクログ
PCR原理主義と厚労省批判
コロナウイルスとは、何かを科学的に解説しているが、やや専門的すぎてとっつきにくい。
さらに、厚労省批判は、同感として、兎にも角にもPCR検査という主張は「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実 」(峰 宗太郎)を読んだあとだっただけに違和感を感じた。
偽陰性を出す感度と、偽陽性を出す特異度については触れられていたが、検査を2度やれば問題ないとの考え。とにかく、陽性者を社会の中から抽出し、隔離するのが一番というように聞こえてしまった。
他方、PCRを増やすことにより偽陽性が生じることによる医療逼迫については、あまり言及していない。
著者は結構なご年齢で、岩田健太郎さんの本にも書いてあったが、ある一定の年齢以上の医師は、ベイズ定理の知識がないためにPCR原理主義に陥りやすいのとのこと、そのために上記の峰さんや岩田さんとPCRに関するお考えが違うのかなと思う。
個人的には岩田さんの本の方が全然わかりやすいし、腑に落ちる。