小山田浩子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
不条理小説なのか幻想小説なのかジャンル分けはよく分からないけど三篇収録の中編集。
文字数ぎっしり、ページいっぱい文字、というタイプの文章です。読んで爽快、というタイプのお話ではなく、日常の細々とした違和感が積み重なって…まあ、嫌な気持ちになる系のお話でした。私は合わなくて、最後はほぼ飛ばし読み。
「工場」はまるでラジオを聴いているような感覚。密度の高い実況にたまに混戦した音声が混じるような。とにかく物理的に文字数が多い。ページにぎっしり文字が書いてあり、時系列や場面を無視した文章やフレーズがたまに挟まってくる。とにかく活字を浴びたい人におすすめしたい。
物語の流れや結末は目新しくはないけれど、このぎっしり書き込む様式が「実験的」で「斬新」なのかしら。芥川賞受賞作家さんだからたぶん「プロ受け」のする文章なんだろうな。私はよく分からなかったし心地よいとは思えず…。
「ディスカス忌」は文字ぎっしりではないけれど、何を感じとっていいのか…少なくとも美しい友情や何かでないことは確か。
「いこぼれのむし」。これが特にダメだった。タイトル通り、虫が出てきます。あまり綺麗じゃない話しで、今でも胸がムカムカしてる。人間関係も最悪で、こんな職場絶対嫌だ。
この作家さんは二作目はいいかな…と思ってしまったけど、好きな人にはすごくハマると思うよ! -
Posted by ブクログ
異世界に迷い込んだかのような「穴」。異世界でありながら、実のところリアルな現実でもあるような不思議な感覚。結局のところ義兄はなに??
義兄は語る。家族制度が薄気味悪いと。子孫を残すためにつがいになる。父は子供のために身を粉にして働き、母や嫁は滅私奉公だと。たとえばこんな僕のような子供を残すことに、それほどの価値があるのかと。これは子供をあまり欲しがってない主人公の心の声なのだろうか?だが、最後の一行。主人公もまたその家族制度の中で生きる人になっていくということなのか。
「いたちなく」も「ゆきの宿」もいまひとつ心情がわからない。全体的に薄気味悪く描かれている。妻は妊娠を何故夫に伝えてなかったのか。何故泣いていたのか。アロワナはなんの象徴??
うーむ、、難しい。 -
Posted by ブクログ
小山田浩子さんといえば「母の友」で連載していたエッセイでも感じられた、それは有り得るとも、それはないでしょうとも思えそうな、奇妙なんだけれど現実に起こったとしても何だか肯けそうな、フィクションとノンフィクションの境界線に佇むような、その絶妙さ加減が味とも思えるエピソードが印象的だったことを思い出す。
そして本書では(久々のU-NEXT100min.)、広島県出身の小山田さんが戦争を題材にしたということなんだけれども、ものすごく深刻な感じというよりは、人間だからこうしてしまうというような、真面目で直向きな様も可笑しみを交えて描いていたり、令和の時代だからこそ感じなくなってきている何気ない違和感をユーモラスに皮肉っていたりする点に独特さを感じられて、読み終えた時には戦争というよりは家族を題材にしているのかと思えたような、飄々とした中にもある真摯さが魅力なのかもしれないし、よくよく考えてみれば戦争と家族というのは切っても切り離せない関係性だ。
また、小学校六年生の頃に書いた戦争を題材にした作文が、大人になった現代の人生に色濃く影響を及ぼしているといった、物語としての面白さも本書にはあって、そこには子どもだから、そうなってしまった的なものも垣間見えそうだけれども、結局そうしたものは人生に於いて、あまり重要ではなく、自らの意志を信じて生きていれば自然と何とかなるのかもしれないというような、あまり句点や段落分けの少ない文章の書き方に根拠のない不安感を抱きながらも、そんなゆるい前向きさに励まされたような気がしたのも、また彼女ならではの独特な作風なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと奇妙なままで終わった。主人公、コケ、古笛、後藤、老人、孫、兄、恋人、工場、生き物、仕事、職員、、出てくるもの全てが奇妙。工場の敷地てわ生活ができるなんてあるの??ベースのような印象を受けた。工場にしかいない鳥とか!こわい。しかもそれが鵜の一種ということで、カワウとかウミウという言葉がたくさん出てきたんだけど、、それも気持ち悪かった。そして最後も???で終わった。黒い鵜の正体は職員なの?わからない。
そして他の2つもよくわからなかった。熱帯魚好きの男の出産祝い。相手の女性はきっと餌の海老をもらっていた子なんだろう。なんで男性は死んだの?
三つ目もよくわからない。よくありそうな会社のシーンなんだろうけど。女の嫌さも十分あったけど、男の嫌さもあった。これも登場人物がほとんどひどい。でもリアルな思いで安心もしたし悲しくもなった。
読み終わりはモヤモヤしたけど、楽しかった。 -
Posted by ブクログ
『工場』
工場で働けたことは幸運なことだ。
正社員ではないことや、仕事内容や、存在理由に、若干疑問は残るものの。
日々目の前にある仕事をこなしていけば、時間は過ぎ去る。
疑問は……、とりあえず棚上げしておこう。
従順に、ひたすら働くこと。
そうして人間は、動物に戻っていく。
解説には「ライトなカフカ」とあったけれど、私はカフカとは少し違うように感じた。
『ディスカス忌』
昭和初期くらいによく見受けられる文体で書かれているが、内容は明らかに昭和初期ではない。
ディスカスの遺伝と、人間の遺伝と。
浦部はそれを同等のものとして研究しているような節もあって。
浦部は一体、なぜ死んだのか。
「僕」は一体、何を怖れているのか。
『いこぼれのむし』
皆、自分の見たいものだけを見る。
だから同じ職場で働きながらも、微妙に世界が食い違っている。
勘違いしたまま、勘違いしていることにも、勘違いされていることにも気付かない。
そういうことはよくあることで、むしろそういうことしかないとさえ言える。
気が付いたら虫でいっぱいで、底の方の虫はつぶされる。
虫の存在に気付いてしまったら嫌悪感でいっぱいになるので、むしろ気が付かない方が良い。
見ていなければ、普通に過ごせる。
でも虫はいつも腹の中にいるのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
「工場」
2010年第42回新潮新人賞
2013年第30回織田作之助賞
不可思議な巨大工場での日々
三人の従業員の視点から
契約社員の女
その兄の派遣社員の男
研究者の正社員の男
非現実的な工場を寓話的に描き
現実的な作業、働くという持続性を
一つの社会として完結する中に読む…のかな?
次作「穴」で芥川賞作家となる事を予測させる作風
「ディスカス忌」
熱帯魚の飼育をする金持の男
若い妻と結婚して子供が産まれる
友人ふたりはお祝いに行く
その後金持の男は妻子を残して亡くなるが
その理由はわからない
語部の僕は不妊について悩み熱帯魚の繁殖
金持夫婦の生殖について蝕むように純文的に
いわゆるわからないという
「いこぼれむし」
心身の失調から虫の幻視
いこぼれるは、溢れる感じかな
主人公の女性の不安感を表現、というか
彼女には実像として見えている
同じ職場の同僚である他人達との
コミュニケーションとパワーバランス
その違和感を不穏に