小山田浩子のレビュー一覧
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工場は事前に主人公になる人物が三人いることを頭に入れておかないと、途中でよくわからなくなる。
場面や心情をあらわにしている人間がよく変わるがイマイチわかりずらいのでサクサク読むよか、じっくり読んだ方が良い。
話は爽快なオチとか読み終わった後のスッキリ感はない。世にも奇妙な物語を不気味なエッセンスを希釈して私たちの日常やらに少し寄り添った感じである。
正直私は「ディスカス忌」と「いこぼれのむし」のほうが好みであった。
ディスカス忌の方は分かりやすいしスルスル話が入ってきた。これは自分が熱帯魚に明るい部分があるからかもしれない。
いこぼれのむしは読んだ後に、いや読んでいる途中にも節々のリアルさ -
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ネタバレひとつの街…っていうか市くらいありそうなボリュームの敷地を持つ工場で働くことになった3人。
工場は異様な広大さで、南北を分つ大河があり、それに架かる巨大な橋があり、橋は自動車やバスがひっきりなしに往来している。
工場の敷地内には、レストランから旅行代理店から住宅街から釣り堀から何でもあり、っていうか、逆に無いのん何よ?ってぐらい何でもある。
なんなら、工場敷地内の固有種の動物までいて、え?ってなる。
この辺りの人は、何かしらこの工場に関わる仕事に従事していて、小学生時代は社会科見学に訪れるほどなのに、この工場の業種が全く書かれてなくて不気味だし、この3人が工場で従事する内容の関係性が全く見 -
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大きな工場の話。
工場で、ただひたすらシュレッダーをするパートタイムの女性。
工場で、コケによる屋上の緑化企画を任された正社員の男性。
工場で、さまざまな文章の校正を行う契約社員の男性。
工場にいる黒い鳥、洗濯機トカゲ、灰色ヌートリア。
文体?が新鮮で面白かった。改行せずに会話と相槌が続いていてテンポが良い。
オチはないけど小説を読んでいる、という実感があって面白かった。
自分がやっている作業の意味がわからず何か大きな流れに取り込まれて生かされている、という漠然とした不安感が伝わってきた。
三つ目の職場の話の方が面白かった。退職した奈良さんが餞別にもらった袋の中になにもはいってなかったのは -
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⚫︎受け取ったメッセージ
虫のような小さな生き物、匂い、共通して庭も登場する短編15篇。
何か引っ掛かる。何かゾワっとする。
日常に起こりそうな不穏。
生きるということは、いつも不確か。
不確かだからこそ、惹きつけられる。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
私は夫と離婚をする。そのことを両親に報告せねばならない――。
日常の不穏と不条理を浮き彫りにする15編。
芥川賞受賞後初となる作品集、ついに文庫化!
実家へ向かう路線バスのなかで、老人たちがさかんに言い交わす「うらぎゅう」。聞き覚えのない単語だったが、父も母も祖父もそれをよく知っているようだ――。 彼岸花。どじょう。クモ。娘。蟹。さ -
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ネタバレ表題作を読み終わって「ああ、土地の人になったんだ……」と腑に落ちた気がした。これまではどこかお客さんのようなぎこちなさや、生活に実感もなく暮らしてる感じだったけど、義祖父の死をきっかけに嫁としてそこに居着いたという感覚。
田舎には田舎のルールがあるとでもいうような通夜の席は異様だったけど、あの場で自覚も出たのかな。そうと決まってからはグズグズ考える頼りなさみたいなものが消えている。役割を得て姑のような人になるんだろう。
義兄の言う事が印象的だったし存在自体も面白かったから、現実に居なかったのはちょっとショックだなぁ。
「いたちなく」と「ゆきの宿」は、夫目線では妻の考えが分からず不気味な人物に映 -
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ネタバレ2022年、34冊目です。
小山田浩子さんの短篇集です
主人公の目の前にある情景を、注意深く正確に描写していく文章は、
作者の文章の特徴です。どうでもいいような些細な日常を精緻に描いていく中に、
ふと感じる違和感が、ところどころに埋め込まれています。
そして、物語の最後に、その違和感の顛末が出てきます。
それは、少し奇妙な顛末になることが多いのですが、
それまでの文章が、淡々と事実を描写しているので、
一層、その顛末の奇妙さが印象付けられる感じを受けます。
これまで、「工場」、「穴」などの作品も読んでいますが、
「工場」に代表されるように、主人公の女性が、工場で働いている物語の最後に、
工