小山田浩子のレビュー一覧
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「工場」
2010年第42回新潮新人賞
2013年第30回織田作之助賞
不可思議な巨大工場での日々
三人の従業員の視点から
契約社員の女
その兄の派遣社員の男
研究者の正社員の男
非現実的な工場を寓話的に描き
現実的な作業、働くという持続性を
一つの社会として完結する中に読む…のかな?
次作「穴」で芥川賞作家となる事を予測させる作風
「ディスカス忌」
熱帯魚の飼育をする金持の男
若い妻と結婚して子供が産まれる
友人ふたりはお祝いに行く
その後金持の男は妻子を残して亡くなるが
その理由はわからない
語部の僕は不妊について悩み熱帯魚の繁殖
金持夫婦の生殖について蝕むように純文的に
いわゆるわからないという
「いこぼれむし」
心身の失調から虫の幻視
いこぼれるは、溢れる感じかな
主人公の女性の不安感を表現、というか
彼女には実像として見えている
同じ職場の同僚である他人達との
コミュニケーションとパワーバランス
その違和感を不穏に -
Posted by ブクログ
⚫︎受け取ったメッセージ
虫のような小さな生き物、匂い、共通して庭も登場する短編15篇。
何か引っ掛かる。何かゾワっとする。
日常に起こりそうな不穏。
生きるということは、いつも不確か。
不確かだからこそ、惹きつけられる。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
私は夫と離婚をする。そのことを両親に報告せねばならない――。
日常の不穏と不条理を浮き彫りにする15編。
芥川賞受賞後初となる作品集、ついに文庫化!
実家へ向かう路線バスのなかで、老人たちがさかんに言い交わす「うらぎゅう」。聞き覚えのない単語だったが、父も母も祖父もそれをよく知っているようだ――。 彼岸花。どじょう。クモ。娘。蟹。ささやかな日常が不条理をまといながら変貌するとき、私の輪郭もまた揺 らぎ始める。自然と人間の不可思議が混然一体となって現れる15編。
目次
うらぎゅう
彼岸花
延長
動物園の迷子
うかつ
叔母を訪ねる
どじょう
庭声
名犬
広い庭
予報
世話
蟹
緑菓子
家グモ
⚫︎感想
実家の部屋だったり、借りた家の庭だったり、何が潜んでいるかわからないものに対する畏怖。これらの短編たちから、生物としての人間を強く思わせられる。身近な人であっても不確かさを含んでいる。
ちょっと不穏で不確か、でも描写が克明なので、場面の印象をくっきりと強く感じた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ表題作を読み終わって「ああ、土地の人になったんだ……」と腑に落ちた気がした。これまではどこかお客さんのようなぎこちなさや、生活に実感もなく暮らしてる感じだったけど、義祖父の死をきっかけに嫁としてそこに居着いたという感覚。
田舎には田舎のルールがあるとでもいうような通夜の席は異様だったけど、あの場で自覚も出たのかな。そうと決まってからはグズグズ考える頼りなさみたいなものが消えている。役割を得て姑のような人になるんだろう。
義兄の言う事が印象的だったし存在自体も面白かったから、現実に居なかったのはちょっとショックだなぁ。
「いたちなく」と「ゆきの宿」は、夫目線では妻の考えが分からず不気味な人物に映った。これは夫が妻のことを何も分かっていない証拠かもしれない。洋子の前では妻は涙を見せているのである。
「穴」の主人公も夫との意思疎通は出来ていない感じだった。義父と義母の関係もそう。家族ってそういう孤独なものかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2022年、34冊目です。
小山田浩子さんの短篇集です
主人公の目の前にある情景を、注意深く正確に描写していく文章は、
作者の文章の特徴です。どうでもいいような些細な日常を精緻に描いていく中に、
ふと感じる違和感が、ところどころに埋め込まれています。
そして、物語の最後に、その違和感の顛末が出てきます。
それは、少し奇妙な顛末になることが多いのですが、
それまでの文章が、淡々と事実を描写しているので、
一層、その顛末の奇妙さが印象付けられる感じを受けます。
これまで、「工場」、「穴」などの作品も読んでいますが、
「工場」に代表されるように、主人公の女性が、工場で働いている物語の最後に、
工場の中にたくさんいる黒い鳥になってしまうような”奇妙さ”が、
多くの物語に通底するものだと感じています。
おわり -
Posted by ブクログ
読書開始日:2021年9月7日
読書終了日:2021年9月12日
所感
【穴】
難解だった。
「しんせかい」に似た空気感。
全く歩み寄ってくれない感じ。
あさひの未来が姑なのは予感がしていた。
田舎は日々の動きが少なく、それも専業主婦となると時間を持て余し「穴」にじっといるような感覚に陥る。
だからこそあさひは「穴」に固執していたのだと思う。
こう考えたら楽をしているようになってしまうが、義兄と穴の獣は完全に妄想だと思う。
義祖父の置き去りにされたような痴呆も不気味だ。
義祖父はもうすでに意識が朦朧としていて、穴に篭りたかったのだと思う。
あの地域の「穴」は、何も動きのない日々の恐怖からの逃げ場や、動きとして表現されていた気がする。
なんとも難しく時間がかかった。
【いたちなく+ゆきの宿】
斉木はわかっていた。
主人公が生き物に対する気持ちが希薄なことを。
妻はもちろんわかっている。
夫婦のこれまでの背景が、斉木家の出会いから吹雪の泊まりの日でかなり表現されている。
主人公の「堪能したか」の一言は、かなり危険だ。
一見違和感が無いが、こう言った事柄に悩んだことがある人物からしたら、たまったものではない。
もうしばらくないんだから、記憶に焼き付けろといっているようなもの。
それは妻も夜な夜な泣く。
もちろん主人公に悪気は無かった。
妻は托卵した。
細い腕時計がその証拠だ。
後半2篇はかなり好み。
穴
2人分を時間差で作ると必ずどちらかの方が不本意になってしまう
もし地上に出た日からしばらく雨が続いたら蝉はどうするのだろう
業務や、責任や、愚痴や苦痛は、全てアパートの中空の2dk分の価値しかなかった
調和した、土の内部から染み出たような湿り方だった
いたちなく
ゆきのやど
堪能ね
お前じゃうまくいかないよ
インテリアのようだが、やはり生き物だからな