小山田浩子のレビュー一覧

  • ものごころ

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    短編集9篇
    コロナ期の設定が多く、文章が切れない独特の文体で思考の途切れない流れのような味わい。
    ハツという捨て犬繋がりの「心臓」と「ものごころごろ」、みみずの「おおしめり」、子どもの飲み込んだスモモの種を心配する「種」が良かった。

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    2026年02月03日
  • 穴

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    もし目の前に「穴」があいていたら何が居るのか覗いてみたくなりませんか?
    本書はまさに「最近退屈だー、刺激がほしい」という人には劇薬のような作品かもしれない。

    物語は夫の転勤で田舎に引っ越した主人公が散歩中に見慣れない黒い獣を追い掛けタイトルにある通り「穴」に落ちるというちょっと間の抜けた話。…のはずが読み進めていくと不穏な空気が漂い始め「あれ、何かこれちょっとヤバイ系?」と背筋がうすら寒く感じ、得体の知れぬ怖さがひしひしと伝わってくる。

    正体不明の黒い獣、毎日延々と庭に水を撒く義祖父、存在しているのかどうか分からない義兄、なぜか線香の臭いを放つ世良さんと謎のともちゃん、この世かあの世か分か

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    2025年12月18日
  • 作文

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    時間や空間を隔てた惨事に世間は驚くほど無関心。けれどそこで起きたこと(あるいは起きていること)は、少しずつ形を変えつつも、世間の中で細々と伝わっていき消えることはない。伝え伝えられることに私たちは思わず知らず関わっているのかもしれない。作者の眼差しは、シニカルなようでいて、実は真っ直ぐに一縷の望みを求め、それを描いているように見える。

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    2025年12月07日
  • 作文

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     祖父母の戦争体験を聞き綴った2人の小学生の作文。教師から称賛されるも、子どもならではの脚色等があり、その後の現代パートへ波及します。
     記憶とは? 継承とは? 物語のもつ意味や力、体験の聞き取りの再構築は真実か、複雑な世の中への向き合い方等々、本書を読みながらそんなことをつくづく考えてしまいました。

     小山田浩子さん初読でしたが、思いの外軽やかな筆致で、重い問題提起をされながら最後に上手く爽やかにかわされた感じです。でも、この120ページ程度の中編小説は一読の価値ありと思いました。全ては読み手の受け止め方次第なんでしょうね。

     むかしむかーし、若者の「無気力・無関心・無責任」気質を指して

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    2025年11月22日
  • 工場(新潮文庫)

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    まさに「ライトなカフカ」。
    今という時代で生きることの
    耐えられない違和感。
    久しぶりに「読みたくなる」新しい作家さんに
    出会えて嬉しい。

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    2025年11月08日
  • 工場(新潮文庫)

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    読んでいる間ずっと不穏だった。
    私の生活の中に暗い雰囲気が入り"混む"。
    工場で勤務する普通の日常のはずなのに...。
    どこかおかしい。何が起きてるのか。
    何も起きていないのか。

    読み進める手が止まらない一冊。

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    2025年10月09日
  • 作文

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    ハンドレッドミニッツノヴェラ
    約100分夢中で読める中編小説。

    よく行く書店の新刊コーナーで、
    金原ひとみさんの「マザーアウトロウ」と言う作品の横に棚差しで陳列されていた本書。
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    戦後80年
    広島生まれの芥川賞作家が
    いま“戦争”について描く
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    書店を見回すと各コーナーには
    戦争にまつわる本が複数展開されていて。

    夏休みだもんな〜、そーゆー時期だよな〜、
    でも重たいのは読めないなあ、
    と見送っていたんですが、
    本書ならばと思い、手に取りました。

    子どもの

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    2025年08月03日
  • 工場(新潮文庫)

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    これは何のための仕事なのか、どこから来て何に繋がっている仕事なのか、そしてこの巨大工場は何を作っているのか。それらが分からない労働。目的や繋がりが分からない労働は働き手を無気力にし、探究心を奪う。

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    2025年07月29日
  • 穴

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    主人公は派遣社員として働いており、正社員との関係や待遇について、同じく派遣社員の同僚と語り合う場面から物語が始まる。夫の転勤に伴い仕事を辞める際には、その同僚から小言を言われる場面も描かれている。 物語には、夫の義兄や穴、獣、子どもたちといった不可解な存在が登場するが、これは主人公が新しい土地に移り住んだことによる環境の変化から生じた妄想のようにも思える。物語の後半、主人公がコンビニで働き始めようとする場面では、彼女の内面的な変化が表れているように感じられた。

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    2025年07月11日
  • 最近

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    初めて読んだ作家さん。改行なしでどんどん続いていく独特な文体。語り手の視覚や聴覚に入ってくる情報や、あちこちに飛びまくる思考が、そのまま読み手に途切れなくだーっと伝達されてくる。読み手は考えを挟む隙もなく一方的にそれを受け取る感じで、脳内処理が他の読書とは違う体験だった。
    内容は、どうということもない日常なようで、不穏さを孕んでいる感じ。好き嫌いはよくわからないが、印象に残る本だった。

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    2025年07月11日
  • ものごころ

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    はね、心臓、おおしめり、絵画教室、海へ、種、ヌートリア過ぎて、蛍光、ものごころごろ
    小山田浩子はいつもいい

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    2025年06月18日
  • 工場(新潮文庫)

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    一歩外から見ると仕事とかその中での人間関係ってこんなに気色悪いものなんだけど、自分が働いている時にはあんまり気付けない。
    常々仕事なんかクソだと思いながら働いている私からするとかなり共感できる部分が多いけど、分からない人には全く刺さらないだろう。

    『工場』は労働と人間の関係が抽象的というか、引いた目線で表現されているのに対して、『いこぼれのむし』は労働によって無作為に集められた人間のどうしようもない相容れなさを近い視点で描く。正直かなりキツイ、同僚は家族だなんて言うやつは個人的にはぶん殴りたいと思う。どちらかと言うと私も職場から排斥される方だろう。

    三編ともに人間以外の生き物に存在感がある

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    2025年04月26日
  • 最近

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    これまで読んできた著者の作品と比べて日常的な内容の話が多く、滝口悠生の小説を読んでいるような気分になった。が、独説明不可能な小さな怪異のようなものが垣間見えるとやっぱり著者の作品を読んでいるのだと思った。

    滝口悠生の小説は登場人物が特徴的なキャラクターだが、この本の登場人物たちは物語の登場人物的な引っ掛かりのない現実的な存在で、かつストーリーの起伏も乏しく、段落も改行も全くないのに、何故か読みやすく先が気になる。不思議な読書だ。

    悪い人では全然ないが微妙に噛み合わない点がある半田君のリアリティが印象に残った。

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    2025年04月22日
  • ものごころ

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    息も継がせぬ文体に気圧される。句点一切なしの『おおしめり』は頁一面余白なし。カギ括弧や改行も省略。くどさを感じつつも、読み難くないのが不思議。『心臓』と後日譚の『ものごころごろ』が良かった。

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    2025年03月31日
  • ものごころ

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    「最近」に続くコロナ禍の生活を細かく描写している。小山田文学の真骨頂。改行がなく油断すると思考の主体が入れ替わっているので混乱することもあるが、視点、思考、時間、場所が自由に浮遊する感覚は、慣れると心地よい。

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    2025年03月25日
  • 最近

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    精緻な描写 表現で普通の日常が
    濃密な日常に変わった
    あたりまえに過ぎていく今を
    もっと意識的に生きたいと思った

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    2025年03月10日
  • ものごころ

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    著者初読み。

    9編の短編集。
    といっても、どれも独特で濃厚な物語である。

    「心臓」と「ものごころ」は連作になっていて、幼少期の微妙な友達との機微が自分事として伝わってきた。

    子どもの頃の記憶をたどるとこんな世界だったのだと、代弁してくれているようでなんだかうれしいような、くすぐったいような気分。

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    2025年03月02日
  • 穴

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    主人公は市街から県境の田舎にある夫の実家の隣に引っ越してきた主婦
    田舎の何もない虚無感と自分は一体何をこの町でやればいいのかもわからず、隣の姑、ボケた義祖父を見て見ぬふりしながら暮らしていく
    葬式の下りなど田舎あるあるで共感した

    穴はとても不穏に感じる
    そういえば吉田修一の「愛に乱暴」でも少しずつ狂ってきた嫁が離れに穴を掘るという物語だった

    主人公が徐々に田舎に馴染んでいくんだろうなという余韻を残してる

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    2025年02月17日
  • 工場(新潮文庫)

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    個性的な文章 短編がいくつか入っているうちの、タイトルにもある「工場」は特に文章が個性的。改行しない長文なので、人によっては読みづらいかもしれないけれど、そこが独特な空気感を作っている。メッセージをきちんと受け止めきれているか自信がもてないところはあるけれど、個人的には読んで良かったと思う一冊だった。

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    2026年01月12日
  • 最近

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    日常の連作短編集。

    コロナワクチンが何回目だとか、自粛が少し緩くなった頃だとかのことを思い出した。

    夫が救急搬送された深夜の待合室で、ひとり思い出していた子どもの頃…から始まり、弟の話や旦那の友だちの話、おおばあちゃんの話やはとこの話、はとこの知り合いと付き合うことになった弟の話などなど。
    その話の隙間に店にいた客の会話まで入ってくる。
    改行もなくつらつらとひたすら会話が続いていくのにイヤな感じはなく聞いてられるのは何故なんだろうと不思議な気持ちになりながら次の話を楽しんでしまう。
    独特な流れに乗っかって字面みっしりを違和感なく味わった。
    この物語には生活の匂いを感じた。


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    2025年01月17日