あらすじ
大河が南北を隔てる巨大工場は、ひとつの街に匹敵する規模をもち、環境に順応した固有動物さえ生息する。ここで牛山佳子は書類廃棄に励み、佳子の兄は雑多な書類に赤字を施し、古笛青年は屋上緑化に相応しいコケを探す。しかし、精励するほどに謎はきざす。この仕事はなぜ必要なのか……。緻密に描き出される職場に、夢想のような日常が浮かぶ表題作ほか2作。新潮新人賞、織田作之助賞受賞。(解説・金井美恵子)
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Posted by ブクログ
街のすべてが工場で
成り立っているような
巨大な工場がある
そこで働くことは誇らしい
ことらしい
いったいなんの工場なのか?
自分の仕事は
なんのためにあるのか
はたして必要なのか?
それぞれが疑問に思いながら
毎日過ごす
工場特有の鳥がいる
工場特有の動物がいる
工場特有のトカゲがいる
謎は深まるばかり
小学生の書いた研究論文が
校正に回されてくる
そしてそれは
シュレッダーに回されるのだろうか
きっとそうだろうな
そして黒いウは‥
いこぼれのむしを読んでから
また工場を読むと
なんだか
はっ!とする言葉があったりする
これは
永遠に読むのを
やめられないのかもしれない!
何かを求めてはいけない
そんな小説かもしれない
Posted by ブクログ
初めて読む作家さんの作品。
収録されている3遍で、好みは
いこぼれのむし>工場>>>ディスカス忌
いこぼれのむしと工場は、この仕事意味あるの?という仕事をただ淡々と行うという点で少し似ている。いこぼれのむしのほうが人物の内面描写が多くて読みやすい(視点変化は多い)。
工場は読みにくさとそれに伴う意識の分散も魅力のうちだと思った。
同作者のほかの作品も読みたい。
Posted by ブクログ
頭に浮かんだのは富山県にある工場
地元の人にとっては有名で近所の誰かはそこで働いている
しかしその工場で生産性の無い仕事をしているやる気のない人達
自分が何を作って何をチェックしているのか知らずにただ言われたことだけを黙々とやるだけの仕事...
意味あるのか?
とても不思議だけど、田舎の腐った大企業なんてこんな感じだよねと腑に落ちた
世にも奇妙な物語のような結末にゾゾゾ...となる
高瀬隼子さんの本が好きな人は好きだと思う
3つの短編集で、中でも『いこぼれのむし』が特にすきだった
小山田浩子さんにハマりそう
Posted by ブクログ
読んでいる間ずっと不穏だった。
私の生活の中に暗い雰囲気が入り"混む"。
工場で勤務する普通の日常のはずなのに...。
どこかおかしい。何が起きてるのか。
何も起きていないのか。
読み進める手が止まらない一冊。
Posted by ブクログ
これは何のための仕事なのか、どこから来て何に繋がっている仕事なのか、そしてこの巨大工場は何を作っているのか。それらが分からない労働。目的や繋がりが分からない労働は働き手を無気力にし、探究心を奪う。
Posted by ブクログ
一歩外から見ると仕事とかその中での人間関係ってこんなに気色悪いものなんだけど、自分が働いている時にはあんまり気付けない。
常々仕事なんかクソだと思いながら働いている私からするとかなり共感できる部分が多いけど、分からない人には全く刺さらないだろう。
『工場』は労働と人間の関係が抽象的というか、引いた目線で表現されているのに対して、『いこぼれのむし』は労働によって無作為に集められた人間のどうしようもない相容れなさを近い視点で描く。正直かなりキツイ、同僚は家族だなんて言うやつは個人的にはぶん殴りたいと思う。どちらかと言うと私も職場から排斥される方だろう。
三編ともに人間以外の生き物に存在感がある。物語に生々しさが出ていて、大体それは気色悪さにつながる。『ディスカス忌』は特にそれが強い。
Posted by ブクログ
中編が3本、どれもよかった。最近は死んだ人の本の方がおもしろいことが多いということがわかってきたので新しい作家をあまり読まないんだけど、ジャケ買いで当たるとやはり嬉しい。
モノローグの雰囲気がなんとなく『中二階』を思い出す感じで、好き。
金井美恵子氏の解説がひどくつまらないこと以外はいい本でした。
Posted by ブクログ
「工場」が一番好き。不思議な世界観でうっすら嫌な夢をずっと見ているような気持ち悪さが面白い。文章の構成は確かに最初読みにくいと思ったけど、慣れてくれば場面の転換や時系列の前後も把握できるようになった。
Posted by ブクログ
「工場」は文章が読みづらくて苦戦。
どれも面白いかと言われたら面白くはないし、人には勧められないけど、靴の裏にこびりついたガムみたいに、頭に残る。たまに思い出す。
Posted by ブクログ
他の方も言ってることだけど、とても読みやすく、現代版カフカのような空気感を感じた。読んでいる間の映像は常にこの装丁のような灰色で満ちている。少しも明るさや陽気さは感じない。
嫌いじゃない。
でも、個人的にはもう少し何かが起きて欲しかった。
タイトルになってるいない他の作品もすきだけど、なんとなく何かが物足りない。私にとっては。
Posted by ブクログ
何を作っているか不明な巨大な工場で働く人々の生活を細かく描写した作品。
特に派遣社員や契約社員と言った立場が弱い人達の心情がリアルに描かれる。
Posted by ブクログ
ずっと奇妙なままで終わった。主人公、コケ、古笛、後藤、老人、孫、兄、恋人、工場、生き物、仕事、職員、、出てくるもの全てが奇妙。工場の敷地てわ生活ができるなんてあるの??ベースのような印象を受けた。工場にしかいない鳥とか!こわい。しかもそれが鵜の一種ということで、カワウとかウミウという言葉がたくさん出てきたんだけど、、それも気持ち悪かった。そして最後も???で終わった。黒い鵜の正体は職員なの?わからない。
そして他の2つもよくわからなかった。熱帯魚好きの男の出産祝い。相手の女性はきっと餌の海老をもらっていた子なんだろう。なんで男性は死んだの?
三つ目もよくわからない。よくありそうな会社のシーンなんだろうけど。女の嫌さも十分あったけど、男の嫌さもあった。これも登場人物がほとんどひどい。でもリアルな思いで安心もしたし悲しくもなった。
読み終わりはモヤモヤしたけど、楽しかった。
Posted by ブクログ
『工場』
工場で働けたことは幸運なことだ。
正社員ではないことや、仕事内容や、存在理由に、若干疑問は残るものの。
日々目の前にある仕事をこなしていけば、時間は過ぎ去る。
疑問は……、とりあえず棚上げしておこう。
従順に、ひたすら働くこと。
そうして人間は、動物に戻っていく。
解説には「ライトなカフカ」とあったけれど、私はカフカとは少し違うように感じた。
『ディスカス忌』
昭和初期くらいによく見受けられる文体で書かれているが、内容は明らかに昭和初期ではない。
ディスカスの遺伝と、人間の遺伝と。
浦部はそれを同等のものとして研究しているような節もあって。
浦部は一体、なぜ死んだのか。
「僕」は一体、何を怖れているのか。
『いこぼれのむし』
皆、自分の見たいものだけを見る。
だから同じ職場で働きながらも、微妙に世界が食い違っている。
勘違いしたまま、勘違いしていることにも、勘違いされていることにも気付かない。
そういうことはよくあることで、むしろそういうことしかないとさえ言える。
気が付いたら虫でいっぱいで、底の方の虫はつぶされる。
虫の存在に気付いてしまったら嫌悪感でいっぱいになるので、むしろ気が付かない方が良い。
見ていなければ、普通に過ごせる。
でも虫はいつも腹の中にいるのかもしれない。
Posted by ブクログ
製品不明の大工場にわんさか人が集まっていて、一つの街を作っている。工場には真っ黒の工場ウと呼ばれる鳥と肥大化したモルモットのような姿のヌートリアが繁殖し、さらに増え続けている。何を生き甲斐にしているのかわからない意味のない仕事をしている勤務者。オチとしてカフカの「変身」のような場面が最後に衝撃的に現れるが、そこを引っ張り出すのにもう少しストーリーを短くできたのでは、と感じた。2025.7.29
Posted by ブクログ
とにかく全編通して薄ら居心地悪く、薄気味悪く、落ち着かない。特に食事のシーンは、こんなに嫌な感じのする食事があるか!というくらいゾワゾワする。
読んでいる間中少しずつ生気を削られていくような妙な力があって、それが魅力でもあるのかもしれないが、2周目を読むのはちょっとしんどい。
特に虫嫌いはやめておいた方がいい。
コロコロと語り手や時系列が変わる形態は「意識の流れ」っぽくて面白い。
Posted by ブクログ
「工場」
2010年第42回新潮新人賞
2013年第30回織田作之助賞
不可思議な巨大工場での日々
三人の従業員の視点から
契約社員の女
その兄の派遣社員の男
研究者の正社員の男
非現実的な工場を寓話的に描き
現実的な作業、働くという持続性を
一つの社会として完結する中に読む…のかな?
次作「穴」で芥川賞作家となる事を予測させる作風
「ディスカス忌」
熱帯魚の飼育をする金持の男
若い妻と結婚して子供が産まれる
友人ふたりはお祝いに行く
その後金持の男は妻子を残して亡くなるが
その理由はわからない
語部の僕は不妊について悩み熱帯魚の繁殖
金持夫婦の生殖について蝕むように純文的に
いわゆるわからないという
「いこぼれむし」
心身の失調から虫の幻視
いこぼれるは、溢れる感じかな
主人公の女性の不安感を表現、というか
彼女には実像として見えている
同じ職場の同僚である他人達との
コミュニケーションとパワーバランス
その違和感を不穏に
Posted by ブクログ
不思議な文章だった。ずっと気持ち悪い感覚が残るいい作品でした。話は基本的に多視点で述べられるが、人が変わるだけでこんなにも印象が変わるのかと考えさせられるものでした。
Posted by ブクログ
不気味な面白さだった!
はじめは工場についてで、
不穏な描写と、発展の象徴とのギャップに心穏やかに読めず笑
けど、次第に工事で働く一職員たちの視点で後半の物語は語られていく。
何気ない日常にある、何気ない悪意がとてもリアルで読み進める手が遅くなるくらいじっとりしていて読み応えあり、、。
癖になる文体で、他の作品も読みたいと思った
Posted by ブクログ
工場、ディスカス忌、いこぼれのむしの3篇どれももうホラーで一番恐ろしいのは人間!
工場が一番まともくらいの感覚。
他人のことなんて、絶対にわからないのに、わかったように毎日が過ぎていく不思議。その事を日々の中で、小説でこうしてハッと見せられることがある。
人間はすごいバランスで保っている。
Posted by ブクログ
「いこぼれのむし」から感じたのは
主観と客観のあまりのずれ
意思疎通の難しさに非常に共感した
表題作「工場」はあまりに不思議な世界で
どう読めばいいか正直戸惑っている
これからどなたかの考察でも読んでみることにする
Posted by ブクログ
すごい話題作だから読んでみたけどまさかの短編集で(ちゃんとみない私が悪いw)題名の工場は微妙だった、、、
書き手がコロコロ変わって、大抵行開けたりするけどこれは急に変わるから分からず、難しすぎた。そしてそもそも論癖ありすぎるから難しい!
最後の芋虫のやつはちょうど良い気持ち悪さと人間のあるあるの気持ち悪さで最高だった笑
Posted by ブクログ
「工場」「ディスカス忌」「いこぼれのむし」の3編。
表題作は語り手が3人いる。あともう、雰囲気が灰色。
個人的には「いこぼれのむし」が一番好みだった。
すごくこう…モヤっとするのだが、実際あるよなーと思った。一番身近だったからかも。
Posted by ブクログ
工場は事前に主人公になる人物が三人いることを頭に入れておかないと、途中でよくわからなくなる。
場面や心情をあらわにしている人間がよく変わるがイマイチわかりずらいのでサクサク読むよか、じっくり読んだ方が良い。
話は爽快なオチとか読み終わった後のスッキリ感はない。世にも奇妙な物語を不気味なエッセンスを希釈して私たちの日常やらに少し寄り添った感じである。
正直私は「ディスカス忌」と「いこぼれのむし」のほうが好みであった。
ディスカス忌の方は分かりやすいしスルスル話が入ってきた。これは自分が熱帯魚に明るい部分があるからかもしれない。
いこぼれのむしは読んだ後に、いや読んでいる途中にも節々のリアルさに気分が悪くなった。登場する多くの人物の主張にに頷くことができるし、実際こういう人はいるよなと感じた。また、途中プレゼントを受け取った側の心中が描写されるのだが…。心がキュッとなった。
職場の微妙な、大人が集まって居場所を作っているところの独特な雰囲気が良く伝わってきた。
どの話も読み手のライブイベントの経過によって印象が強く変わる話だと思った。
Posted by ブクログ
小山田さんと柴崎さんと、近くに平積みされて、共に初挑戦でしたが、お2人とも芥川賞の純文学派で、率直に難しかったです。工場の異なる職場で働く3人の日常か非日常か?を描く。ほか硬派な合計3編でした。
Posted by ブクログ
ひとつの街…っていうか市くらいありそうなボリュームの敷地を持つ工場で働くことになった3人。
工場は異様な広大さで、南北を分つ大河があり、それに架かる巨大な橋があり、橋は自動車やバスがひっきりなしに往来している。
工場の敷地内には、レストランから旅行代理店から住宅街から釣り堀から何でもあり、っていうか、逆に無いのん何よ?ってぐらい何でもある。
なんなら、工場敷地内の固有種の動物までいて、え?ってなる。
この辺りの人は、何かしらこの工場に関わる仕事に従事していて、小学生時代は社会科見学に訪れるほどなのに、この工場の業種が全く書かれてなくて不気味だし、この3人が工場で従事する内容の関係性が全く見出せないのも気持ち悪い。
仕事内容も、えらい丁寧に細かい描写なんだけど、その作業目的が何って書いてないのも、薄気味悪い。
そしてこういう、不気味で気味悪い雰囲気、好きだなぁ。
仕事って、従業員は職位(ここでいうところの、正社・契約・派遣)別の歯車にならざるを得なくて、コレってなんのためにやってんすかね?って思いながらも、まあなんやかんや言うて繰り返しやってる。
目的もわからずやる作業って、単純であるほど、自由度が高いほど、なんか不安になるんよな。
そして、最後は工場ウになっちゃうんよね、牛山妹。
そうやって、なんだかわかんない仕事だけど、その工場の歯車=固有種として生きていくってこと?
あるいは、契約社員の牛山妹は、工場ウになって使い捨てみたいな扱いを工場から受けるってこと?
またまたあるいは、印刷課分室の人が工場ウを羽交締めにしてるシーンがあって、多分海に近い河に捨ててるんだろうけど、印刷関連で、工場ウは黒いトナーに見立てられているってこと?
あ、でもトナーは結局、使い捨てか。
なんか色々考えちゃう。
牛山妹の面接も後藤さんで、古笛さんが参加したウォークラリーとかの担当も後藤さんだけど、違う後藤さんだけど何で一緒にしてん?って思ったり、なんかイチイチ気持ち悪い(いい意味で)。
p39に、牛山兄が従事する書類等への赤入れ作業の際に登場する、「メンタルケア・ヘルスブック」が、「いこぼれのむし」にも登場してて笑えた。
繋がってんのかな?
この、「いこぼれのむし」も気持ち悪い雰囲気で面白かった。
(が、元来虫苦手なので、いちいち虫のくだりは背筋がぞぞっとした。)
Posted by ブクログ
大きな工場の話。
工場で、ただひたすらシュレッダーをするパートタイムの女性。
工場で、コケによる屋上の緑化企画を任された正社員の男性。
工場で、さまざまな文章の校正を行う契約社員の男性。
工場にいる黒い鳥、洗濯機トカゲ、灰色ヌートリア。
文体?が新鮮で面白かった。改行せずに会話と相槌が続いていてテンポが良い。
オチはないけど小説を読んでいる、という実感があって面白かった。
自分がやっている作業の意味がわからず何か大きな流れに取り込まれて生かされている、という漠然とした不安感が伝わってきた。
三つ目の職場の話の方が面白かった。退職した奈良さんが餞別にもらった袋の中になにもはいってなかったのは、本当に入ってなかったのかそれとも奈良さんの錯覚なのか、どっちなんだろう。そんなものだ、ってそんなことそうそうないよ!て心の中で思わずつっこんだ気がする。
Posted by ブクログ
三つの短編。奇妙で不気味なパラレルワールドの一つを覗いた感じ。
人々が住んでいる巨大な工場が出てくる短編には興味が沸き、住んで働いてみたいとさえ思った。