小山田浩子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ第150回芥川賞受賞作。表題作に2篇の短編を加えたものが本書です。
古今東西のさまざまな文学を渉猟し、吸収して、敬愛の情を持っている人が書いた作品という気がしました。膨大に読みこんだ読書経験の量を背景に持っているので、どこかブルドーザー的な力強さを執筆に転じて発揮できているのではないか。
以下、ネタバレのある感想と解釈です。
見たことのない獣を追って穴に落ちる主人公の主婦・あさひ。主人公にとってはずっと問題のなかった「世界」を見る視座が、穴に落ちたあと気付きもせずにぐらりと変わっているといいますか、世界のほうがごろっと妙な角度に曲がってしまうといいますか。そこも僕には、読んでいて物理 -
Posted by ブクログ
なんだろう・・・何とも言えない不気味な読後感。
仕事を辞め、夫の実家の隣に住み家賃はただで、嫁姑問題も無くゆったりとした時間の中で進む話。
見たことの無い黒い獣。至るところにある深い穴。
見る度に庭の水撒きをしている義祖父。
1人っ子と聞いていたはずの夫の兄だと名乗る義兄の存在。
穴に落ちたあの日から、何かが変わったような、ありふれた日常に見えて、自分だけが異世界にでも足を踏み入れてしまったかのような時間の進み方が怖い。ああ見えて、義兄が一番まともな気がしていたのに、果たして本当に存在していたのかさえわからなくて、しばらく本を閉じたまま考え込んでしまった。
初作家さんだったが、この世界観 -
Posted by ブクログ
不条理小説なのか幻想小説なのかジャンル分けはよく分からないけど三篇収録の中編集。
文字数ぎっしり、ページいっぱい文字、というタイプの文章です。読んで爽快、というタイプのお話ではなく、日常の細々とした違和感が積み重なって…まあ、嫌な気持ちになる系のお話でした。私は合わなくて、最後はほぼ飛ばし読み。
「工場」はまるでラジオを聴いているような感覚。密度の高い実況にたまに混戦した音声が混じるような。とにかく物理的に文字数が多い。ページにぎっしり文字が書いてあり、時系列や場面を無視した文章やフレーズがたまに挟まってくる。とにかく活字を浴びたい人におすすめしたい。
物語の流れや結末は目新しくはないけれ -
Posted by ブクログ
異世界に迷い込んだかのような「穴」。異世界でありながら、実のところリアルな現実でもあるような不思議な感覚。結局のところ義兄はなに??
義兄は語る。家族制度が薄気味悪いと。子孫を残すためにつがいになる。父は子供のために身を粉にして働き、母や嫁は滅私奉公だと。たとえばこんな僕のような子供を残すことに、それほどの価値があるのかと。これは子供をあまり欲しがってない主人公の心の声なのだろうか?だが、最後の一行。主人公もまたその家族制度の中で生きる人になっていくということなのか。
「いたちなく」も「ゆきの宿」もいまひとつ心情がわからない。全体的に薄気味悪く描かれている。妻は妊娠を何故夫に伝えてなかったの -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと奇妙なままで終わった。主人公、コケ、古笛、後藤、老人、孫、兄、恋人、工場、生き物、仕事、職員、、出てくるもの全てが奇妙。工場の敷地てわ生活ができるなんてあるの??ベースのような印象を受けた。工場にしかいない鳥とか!こわい。しかもそれが鵜の一種ということで、カワウとかウミウという言葉がたくさん出てきたんだけど、、それも気持ち悪かった。そして最後も???で終わった。黒い鵜の正体は職員なの?わからない。
そして他の2つもよくわからなかった。熱帯魚好きの男の出産祝い。相手の女性はきっと餌の海老をもらっていた子なんだろう。なんで男性は死んだの?
三つ目もよくわからない。よくありそうな会社のシーンな -
Posted by ブクログ
『工場』
工場で働けたことは幸運なことだ。
正社員ではないことや、仕事内容や、存在理由に、若干疑問は残るものの。
日々目の前にある仕事をこなしていけば、時間は過ぎ去る。
疑問は……、とりあえず棚上げしておこう。
従順に、ひたすら働くこと。
そうして人間は、動物に戻っていく。
解説には「ライトなカフカ」とあったけれど、私はカフカとは少し違うように感じた。
『ディスカス忌』
昭和初期くらいによく見受けられる文体で書かれているが、内容は明らかに昭和初期ではない。
ディスカスの遺伝と、人間の遺伝と。
浦部はそれを同等のものとして研究しているような節もあって。
浦部は一体、なぜ死んだのか。
「僕」は