開高健のレビュー一覧
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「開高健」の短篇作品集『パニック・裸の王様』を読みました。
『ベトナム戦記』に続き「開高健」作品です。
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【開高健 生誕80年】
甦れ、反抗期。
偽善と虚無に満ちた社会を哄笑する、凄まじいパワーに溢れた名作4篇。
とつじょ大繁殖して野に街にあふれでたネズミの大群がまき起す大恐慌を描く『パニック』。
打算と偽善と虚栄に満ちた社会でほとんど圧殺されかかっている幼い生命の救出を描く芥川賞受賞作『裸の王様』。
ほかに『巨人と玩具』 『流亡記』。
工業社会において人間の自律性をすべて咬み砕きつつ進む巨大なメカニズムが内蔵する物理的エネルギーのものすごさ -
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ネタバレ表題にもなっている「パニック」と「裸の王様」がおもしろい。「パニック」は県庁が舞台で、鼠大量発生に困る話と分かった時からぐっと入りこんだ。社会派の話は普段はあまり読まないのだけれど、これはいい。鼠が集団でただまっすぐ走りつづけるという習性にとても象徴的なものを感じた。
「裸の王様」はそれまで権力のきたなさを各作品で感じてきているからこそ、ここに出てくる太郎が心を獲得していく過程にうんと感激した。最後の最後、審査会で大人をアッと言わせる場面はなくてもいいと思ったけれど。なんだか太郎の描いた裸の王様さえも利用されてしまった気がしたのだ。 -
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ネタバレ11篇の「奇妙な味」の作品集。
『あなたに似た人』と比べると意外と粗が目立つ作品集かも。
個人的お気に入り
「ウィリアムとメアリイ」
夫が科学の勝利を得た代償に立場が逆転する夫婦。
「天国への登り道」
ささいな(でも精神的負担は甚大な)嫌がらせを続けたため夫婦関係にひびが入る、どころか…。
「牧師のたのしみ」
エセ牧師と農家の人たちとのやり取りが面白い。騙された側の善意が仇となるのはお約束。
毎年GWにロアルド・ダールを読み、3冊目だからか話のオチが少し読めてしまうようになってきました(;'∀')
今回は旧版で読みましたが翻訳が開高健さんでちょっとお得感あり。
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開高健(1930~89年)氏は、大阪市生まれ、大阪市立大卒の小説家、ノンフィクション作家。『裸の王様』で芥川賞、『玉、砕ける』で川端康成賞、一連のルポルタージュ文学により菊池寛賞を受賞。
本書は、ベトナム戦争初期の1964年末~65年初に100日間、臨時特派員としてサイゴン(現ホーチミン)に赴いた開高氏が、「週刊朝日」に毎週送稿したルポを、帰国後本人がまとめ、1965年3月に出版したもの。1990年に文庫化、2021年に(一緒に赴任したカメラマン秋元啓一氏の写真を新たに加えて)新装版として再刊された。
私はノンフィクション物を好んで読み、ベトナム戦争について書かれたものとしては、「安全への逃避 -
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若い世代にはあんまり知られていないかもしれないが、40代以上には懐かしい著者だ。
サブタイトルに「食と酒エッセイ傑作選」と銘うたれているとおり、食と酒にまつわるあれこれが登場。
あらためて読み直すと、学生時代に読んだときとは違うところに目が行った。
例えば、「結婚するまでは仔猫だけれど、結婚したらメス虎になります」というベトナム女性。実際、嫁から電話がかかってきて、目が泳ぎはじめたベトナム人男性と、飲み会で一緒になったことがある。
かつての豊田真由子氏(最近は丸くなられたようで…)みたいな嫁に「何してんの!早く帰ってきなさい!このボケ!ハゲ!」とでもいわれていたのだろう。
著者の開高 -
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ネタバレずっと気になっていた作者の、有名な小説を読んだ。
「パニック」「巨人と玩具」「裸の王様」「流亡記」の4編あり、僕はタイトルとなっているパニックと裸の王様が印象に残った。
流亡記はちょっと描写がグロかった。
パニックは、役人機構の腐敗をうまく表しているが、それがメインではなく、ネズミの群れがもはや一つの巨大な物体となり、台風のように人を襲い、それが湖へ消滅していく圧巻を描いている。
裸の王様は、審美眼を持った「大人」たちの目には映らない、というよりむしろいかに我々がなにも見ていないかを表している。
いや、知らんがな。感想が陳腐だ。これこそ裸の王様の家来になった人の感想だ。 -
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「向う側」日野啓三
2004年に1度、ベトナム・ホーチミンに旅行したことがある。そのときベトコン体験ツアーという日帰りのバスに乗車して郊外のベトコン基地に向かった。既にベトナムでは高度経済成長は始まっていたが田舎は多く、バスは長い幹線道路を通り過ぎると、一時間ほどで長閑な田んぼ風景になり、やがて平地のジャングルに入っていった。そこでは土地の至るところに、小さなベトナム人だけが入れるトンネル入口の「穴」があり、蟻 の巣のような抵抗基地が広がっていた。この短編では、こちら側(米国・南ベトナム)の街(サイゴン現在はホーチミン市)から、おそらくあの幹線道路の雑多な街のひとつに降りて、向う側に行く迄が -
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第38回芥川賞で、大江健三郎の「死者の奢り」と争って受賞した「裸の王様」を含む4つの作品が掲載されている。
「パニック」…街に大繁殖したネズミ駆除を行う役所
「裸の王様」…子供の絵画コンクールを巡る関係者の駆け引き
など、扱っている題材はそれぞれ異なるが、
どれも「組織」「体制」の中で、無力さを感じ葛藤しながらも一人奮闘する個人を描いている。
どの主人公もまっすぐな熱血漢ではなく、自己中心的な心情を見せたり、他人の行動を冷ややかに観察し批判したり、?と思うところはあったが、同じ社会人として、「組織」の中で生き抜くには、一筋縄ではいかないこともあるのだよ、と同感する部分は多かった。