開高健のレビュー一覧

  • 珠玉

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    人生の鮮やかな記憶を宝石に擬えた3篇からなる、開高氏の遺作。
    本当に日本語が巧く重い。性(色)・食・美への気迫ある表現に息を呑む。
    大き目の活字と200p弱というボリュームに反し、内容は濃厚。作家が、こういった作品でキャリアの最後を締めれるのは幸せな事なのではと余計な事を考えた。

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    2023年01月16日
  • パニック・裸の王様

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    初めて読んだ開高健。
    純文学作家のイメージが強かったので、内面と個人がテーマの作家なのだとばかり思い込んでいた。
    実際に読んだ印象としては、「社会と個人」「組織と個人」「システムと個人」がテーマの作家である。内へ内へと向かう純文学作家は多いが、世の中を俯瞰するような視点で外へ外へと向かう作家は珍しい気がする。社会現象の中で翻弄される個人。争う個人。開高作品の主人公に「自分が間違っているのではないか」というナイーブさはなく、まずは環境の中でいかに呼吸するか、という強さがある。生きるべきか死ぬべきかという地点で悩む主人公が多い純文学の中で、生きることが前提で、どう生きるかを模索する姿は戦っているよ

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    2022年11月02日
  • パニック・裸の王様

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    ネタバレ

    『パニック』
    一つの自然災害が火種となって、政治家の汚職や若者のデモに飛び火していく展開は、コロナ禍の今と重なるものがあるなと思った。

    人間の文明や知略、そして生命までもを食い殺した鼠の群が、そんな事は全く無関係に湖に一直線に飛び込んで死んでいく光景がとても鮮烈。生命の不条理を感じた。

    パニックは120年後にまた訪れる。鼠達の群れは湖の底でまたギロリと目を光らせるのだろう。そのようなパニックの中に置かれてこそ、人間の生命は生々しく輝きを放つのかもしれない。

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    2022年10月05日
  • パニック・裸の王様

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    「開高健」の短篇作品集『パニック・裸の王様』を読みました。

    『ベトナム戦記』に続き「開高健」作品です。

    -----story-------------
    【開高健 生誕80年】
    甦れ、反抗期。
    偽善と虚無に満ちた社会を哄笑する、凄まじいパワーに溢れた名作4篇。

    とつじょ大繁殖して野に街にあふれでたネズミの大群がまき起す大恐慌を描く『パニック』。
    打算と偽善と虚栄に満ちた社会でほとんど圧殺されかかっている幼い生命の救出を描く芥川賞受賞作『裸の王様』。
    ほかに『巨人と玩具』 『流亡記』。
    工業社会において人間の自律性をすべて咬み砕きつつ進む巨大なメカニズムが内蔵する物理的エネルギーのものすごさ

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    2022年09月17日
  • パニック・裸の王様

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    ネタバレ

    表題にもなっている「パニック」と「裸の王様」がおもしろい。「パニック」は県庁が舞台で、鼠大量発生に困る話と分かった時からぐっと入りこんだ。社会派の話は普段はあまり読まないのだけれど、これはいい。鼠が集団でただまっすぐ走りつづけるという習性にとても象徴的なものを感じた。
    「裸の王様」はそれまで権力のきたなさを各作品で感じてきているからこそ、ここに出てくる太郎が心を獲得していく過程にうんと感激した。最後の最後、審査会で大人をアッと言わせる場面はなくてもいいと思ったけれど。なんだか太郎の描いた裸の王様さえも利用されてしまった気がしたのだ。

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    2022年08月08日
  • キス・キス

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    ネタバレ

    11篇の「奇妙な味」の作品集。

    『あなたに似た人』と比べると意外と粗が目立つ作品集かも。

    個人的お気に入り
    「ウィリアムとメアリイ」
    夫が科学の勝利を得た代償に立場が逆転する夫婦。

    「天国への登り道」
    ささいな(でも精神的負担は甚大な)嫌がらせを続けたため夫婦関係にひびが入る、どころか…。

    「牧師のたのしみ」
    エセ牧師と農家の人たちとのやり取りが面白い。騙された側の善意が仇となるのはお約束。

    毎年GWにロアルド・ダールを読み、3冊目だからか話のオチが少し読めてしまうようになってきました(;'∀')

    今回は旧版で読みましたが翻訳が開高健さんでちょっとお得感あり。

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    2022年05月07日
  • ベトナム戦記 新装版

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    開高健(1930~89年)氏は、大阪市生まれ、大阪市立大卒の小説家、ノンフィクション作家。『裸の王様』で芥川賞、『玉、砕ける』で川端康成賞、一連のルポルタージュ文学により菊池寛賞を受賞。
    本書は、ベトナム戦争初期の1964年末~65年初に100日間、臨時特派員としてサイゴン(現ホーチミン)に赴いた開高氏が、「週刊朝日」に毎週送稿したルポを、帰国後本人がまとめ、1965年3月に出版したもの。1990年に文庫化、2021年に(一緒に赴任したカメラマン秋元啓一氏の写真を新たに加えて)新装版として再刊された。
    私はノンフィクション物を好んで読み、ベトナム戦争について書かれたものとしては、「安全への逃避

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    2022年02月13日
  • ベトナム戦記 新装版

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    真実の在処を-仮に真実があるのならば-探して
    何が起こっているのか、起こっていることの本質は何なのか
    見えない何かを描写しようと開高健はもがく
    そのもがきが滲み出る本著はわかりやすいルポタージュの類では全くない
    かといって、難解さのために難解さを重ねたような本でもない
    この難解さこそが真実なのである
    これこそ作家の仕事だと痛み入った

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    2021年12月07日
  • 私の釣魚大全

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    開高健の釣りエッセイ。流石の筆達者と思わされる。釣りの話ではあるのであるが、ベトナム戦争中のベトナムで魚釣りをする話があったり、文明論につながったり、それでいてやはり魚釣りという遊びの話であるなあ、という。

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    2021年06月19日
  • 魚の水(ニョクマム)はおいしい 食と酒エッセイ傑作選

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    若い世代にはあんまり知られていないかもしれないが、40代以上には懐かしい著者だ。

    サブタイトルに「食と酒エッセイ傑作選」と銘うたれているとおり、食と酒にまつわるあれこれが登場。

    あらためて読み直すと、学生時代に読んだときとは違うところに目が行った。

    例えば、「結婚するまでは仔猫だけれど、結婚したらメス虎になります」というベトナム女性。実際、嫁から電話がかかってきて、目が泳ぎはじめたベトナム人男性と、飲み会で一緒になったことがある。

    かつての豊田真由子氏(最近は丸くなられたようで…)みたいな嫁に「何してんの!早く帰ってきなさい!このボケ!ハゲ!」とでもいわれていたのだろう。

    著者の開高

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    2021年04月17日
  • 【電子特別版】オーパ!

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    連載のために用意された旅行がベースとなっているため熱量はあまり感じないが、それでも十分に面白い。著者が限られた期間での旅行だと認めた上で書いているので、嫌味がないところもいい。活き活きと釣りを楽しむ一方、ブラジルの首都の成り立ちを冷静な目線で論じるところもあって全く侮れない。

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    2020年12月20日
  • 【電子特別版】オーパ!

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    世代の違いなのか、上手く言えませんが、沢木耕太郎の方が文体含めてスッと入ってくるのは否定できないけれども、まぁ何と言うか生命を感じるという意味ではこっちの方に分があるかな。
    釣りが本題だったのかもしれないけれども、それはたまたまの手段で、まさに全てに「喰らいつく」感じ。写真がその猥雑さというか、生命力をさらに際立たせて、とにかく凄いの一言。
    有名な本なんでしょうが、一読の価値ありです。ってほんと、当方レベルが言う話ではないんでしょうが。

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    2020年05月13日
  • パニック・裸の王様

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    初開高健。
    前々から気になってはいたが、こんなに面白いとは。
    四つの作品で扱っている題材は様々だけれど、題材を通してその舞台である社会を見つめているという点が一貫している。
    どの作品も面白いが読むのにかなりのエネルギーを要した。
    表題作の『パニック』と『裸の王様』が比較的分かりやすくて良かったかな。

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    2020年02月02日
  • パニック・裸の王様

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    ネタバレ

    ずっと気になっていた作者の、有名な小説を読んだ。

    「パニック」「巨人と玩具」「裸の王様」「流亡記」の4編あり、僕はタイトルとなっているパニックと裸の王様が印象に残った。
    流亡記はちょっと描写がグロかった。

    パニックは、役人機構の腐敗をうまく表しているが、それがメインではなく、ネズミの群れがもはや一つの巨大な物体となり、台風のように人を襲い、それが湖へ消滅していく圧巻を描いている。

    裸の王様は、審美眼を持った「大人」たちの目には映らない、というよりむしろいかに我々がなにも見ていないかを表している。
    いや、知らんがな。感想が陳腐だ。これこそ裸の王様の家来になった人の感想だ。

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    2019年05月24日
  • パニック・裸の王様

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    ネタバレ

    開高健 なるほどの再会
    再読してみて、筆力に脱帽。
    裸の王様」裸だったのはだれか。2重にも3重にも読み取れる。そして太郎の存在。
    パニック 漫画で見たが、原作の迫力。最後レミングみたい川で全滅にしなければならないか。他の結末を期待したけれども、そこが肩透かし。人類の滅亡を暗示?

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    2019年05月18日
  • 私の釣魚大全

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    私の尊敬する経営者がよく「こいとりまあしゃん」の話をする。その方のお話ではやや神格めいた人物像が語られるが、いやはや本作品では女好きの俗物扱いでなかなか興味深い。まあしゃんにとって鯉獲りは趣味のようなもので、しかし数日の女人断ちや過度な肉食をし鯉獲りの名人芸は真剣勝負の神々しさを感じる。

    「釣魚大全」としつつ釣果日記はあまりなく(文庫化の追録パート?はほぼソレだが)、開高健氏は釣りを通して物事の真理めいたものを語ろうとしており、釣りに興味のない人にとっても面白い内容となっている。

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    2019年02月08日
  • パニック・裸の王様

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    開高健氏の代表作『ベトナム戦記』『輝ける闇』と続けて読んだが、それらとは違う、芥川賞作家としての開高健がここにあった。『パニック』『裸の王様』『流亡記』、いずれも甲乙つけ難い珠玉の作品だが、自然現象と厭らしい人間模様を描いた『パニック』と、始皇帝を題材として人間の残酷さと時代の流々転々を描いた『流亡記』が面白かった。

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    2018年12月17日
  • 日野啓三/開高健

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    「向う側」日野啓三

    2004年に1度、ベトナム・ホーチミンに旅行したことがある。そのときベトコン体験ツアーという日帰りのバスに乗車して郊外のベトコン基地に向かった。既にベトナムでは高度経済成長は始まっていたが田舎は多く、バスは長い幹線道路を通り過ぎると、一時間ほどで長閑な田んぼ風景になり、やがて平地のジャングルに入っていった。そこでは土地の至るところに、小さなベトナム人だけが入れるトンネル入口の「穴」があり、蟻 の巣のような抵抗基地が広がっていた。この短編では、こちら側(米国・南ベトナム)の街(サイゴン現在はホーチミン市)から、おそらくあの幹線道路の雑多な街のひとつに降りて、向う側に行く迄が

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    2018年11月20日
  • 珠玉

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    司馬遼太郎「十六の話」より
    *老医師、中華料理店主、阿佐緒は 全て 空の転じたもの
    *開高健は 「珠玉」によって みずからの生を送り、みずからの葬儀をしつらえ、みずから声明梵唄をとなえた

    開高健 「 珠玉 」3つの短編小説。最後の「一滴の光」だけだと変態小説だが、司馬遼太郎の書評を 参考に 3編連作の遺作として読むと、著者の死を迎えた空の境地が見えてくる

    珠玉=宝石=尊いもの。3編とも尊いものとは何かを問うている。「掌のなかの海」では 息子の記憶。「玩物喪志」では 作家としての志。「一滴の光」では 慈悲の世界

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    2018年01月15日
  • パニック・裸の王様

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    懐かしくて手に取り、「パニック」だけ読んだ。
    高校時代以来か。
    あの頃には分からなかった役人、というか大人の嫌な世界が、実感を伴って感じられた。が、それ以上に自然の前では無力化な人間の姿を描いた作者に思いを馳せられる作品。
    残りの作品も読もう。

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    2017年12月18日