開高健のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
第38回芥川賞で、大江健三郎の「死者の奢り」と争って受賞した「裸の王様」を含む4つの作品が掲載されている。
「パニック」…街に大繁殖したネズミ駆除を行う役所
「裸の王様」…子供の絵画コンクールを巡る関係者の駆け引き
など、扱っている題材はそれぞれ異なるが、
どれも「組織」「体制」の中で、無力さを感じ葛藤しながらも一人奮闘する個人を描いている。
どの主人公もまっすぐな熱血漢ではなく、自己中心的な心情を見せたり、他人の行動を冷ややかに観察し批判したり、?と思うところはあったが、同じ社会人として、「組織」の中で生き抜くには、一筋縄ではいかないこともあるのだよ、と同感する部分は多かった。 -
Posted by ブクログ
戦中戦後の騒乱を駆け抜けていく、恐らく開高少年の生き様で自伝的小説。"的"はいらないか。
戦中の鉄道整備をしていた少年時代を書いた第一部は、第二部以降にくらべて、独特の熱に浮かされたような文体である。戦後の第二部以降は、綱渡りをするような、スリリングな唯一無二の人生を描く。
第一部は読みやすいが、第二部以降は結構読みにくい。特に死体についての会話や改行のない情景の羅列は、内容も伴って、なかなか読み進めることが難しい。
かといって難しくて読みにくい文ではない上に、ついグイグイと引き込まれてしまって、電車の乗換えを忘れてしまいそうになるほどである。
また、当時の世俗を表すものとして、ステレオタイプではない当時の流行語などが、会話に挟まれている。これが非常にすばらしい。登場人物の行動が一気にみずみずしいものとなり、キャラクターが立ってくるのだ。
よく考えて見れば、最近の小説ではそういった「無駄な会話」が行われるのは稀なのではないか。 -
Posted by ブクログ
「開高健最後の文学作品」というタグがあるらしいんですが、まあ、それはおいておいて。
3つの石をモチーフに記憶や現在が描かれる”石小説”、もしくは作家本人の回顧、老境小説と呼んでもいいでしょう。
光の当たりかたによって表情を変える石の煌きのように、人の人生も光の当て方でいろいろに映しだされる、記憶が引っぱり出される、もしくは今現在の輝きをふと感じる。
「文學」というものは具体的に存在しなくてね、「文學する」「文學している」という状況があるのだ、というのはあたしの師匠の受け売りなんですが、人生の間に間に「文學する」瞬間がある。その瞬間瞬間を石の煌きにリンクさせた、というのが本作の、文学作品としての値打ちではないでしょーか。
老境小説だなーって思って読んでいると最終話でいきなりふんだんなエロ展開が待っているので、期待していいぞ! -
Posted by ブクログ
釣りエッセイ。「釣りを知らないわたしが読んでも仕方ないんじゃないか……」とそこはかとなく不安に思いながら読み始めたのだけれど、何の、ど素人にもじゅうぶん面白かった。
変わり種の釣りに挑むべく、リュックサックに釣り道具と原稿用紙を詰めて日本中の湖や川や海を巡った記録。書かれた時代が時代なので、数を減らしてゆく魚たちを惜しみ、破壊される自然を嘆きながらのエピソードが多くなる。
語り口が軽妙で、釣れないときの負け惜しみなど、釣りそのものについてもつい微笑ましくなるような描写が多々あるが、それ以上に現地の自然のようすや、各地の名人たちの魅力的なエピソードに心を傾けた本だと思う。楽しい読書だった。 -
Posted by ブクログ
映画化された怪作「チャーリーとチョコレート工場」など、特に児童文学で有名なイギリスの作家・ダールの短篇集。
素朴なユーモアストーリーと見せかけて、毒と恐怖をほんのり混ぜてくる所が素晴らしい。幼少期からこんな人のこんな話ばっかり読んでりゃ、そりゃイギリスジョークもバリバリになるわな。感想を読んで興味を惹かれた方は、ぜひお子様に読み聞かせていただきたい。
1.女主人
下宿を探しにやってきた小さな町で学生の少年が出会った女主人。台帳に書かれた失踪者の名前と動物たちの剥製が嫌な展開を想起させるが、想起させるところで終わりの掌編。
2.ウィリアムとメアリイ
難病で死んだウィリアムが妻メアリイに残した手紙には、脳を取り出し生き長らえる実験に参画するまでの経緯が記されていた…。脳だけになった夫を前に、抑圧され続けた妻の歓喜が溢れるラストは、自分が「どちら側」にいると思っているかで感想が変わる。自分がウィリアムの立場なら発狂モンだなー。
3.天国への登り道
「待ち合わせ時間に間に合うか」を必要以上に気にする神経過敏の妻に対し、主人が嫌がらせを働く話。読みきったときにタイトルの皮肉に気づく。この作者は本当に亭主への意地が悪いな。
4.牧師のたのしみ
こち亀ばりのベタなコント。田舎で掘り出し物の骨董品を買い叩き高値で売りさばく男がど田舎のボロ屋で見かけた極上のアンティーク箪笥。朴訥フェイスな住人と口八丁で何とか購入契約を結ぶが…。主人公の灰化シーン直前で物語を打ち切る構成がクール。
5.ビクスビイ婦人と大佐のコート
大佐との不倫を楽しんでいた妻が、手切れにと貰ったミンクの高級コートを我が物とするため四苦八苦する、これまたジョーク心満載のいいコント。「アメリカは、女性が恵まれている国である。」から始まる、アメリカ人男性の悲哀を淡々と語る冒頭のシークエンスが最高。この話は夫勝利エンドだが、それも基本的には「酒場で男同士で語られる空虚な慰め話」であると釘を刺されているのが辛すぎる。
6.ローヤル・ジェリィ
ミルクを飲まない赤ちゃんに、養蜂研究が趣味の夫が与えたものとは…。今じゃすっかり有名なローヤルゼリーだけど、調べたら栄養補助食品としての効果を裏付ける科学的研究は発表されていないらしい。へー。そもそも赤ちゃんにハチミツ与えちゃダメ、ってのも、当時はあまり知られてなかったのかなぁ。現代だとそっちへのツッコミが入って物語趣旨へのノイズになっちゃうんで、さすがに「賞味期限切れ」の物語かなぁ。
7.ジョージイ・ポーギイ
超奥手な若神父(でもムッツリ)の苦闘。シュールなオチより、彼の幼少期のトラウマ「お母さんから授かった性教育でウサギの出産を見てたら母ウサギが生まれたての子ウサギを食べちゃって絶叫」のハイレベルさが際立っている。そりゃ心折れるよ。
8.誕生と破局
「ある男」が産まれた直後の病室を切り取った数ページの掌編だが、実在人物である「ある男」の正体が明らかになるシーンは戦慄。
9.暴君エドワード
迷いネコの前世が大作曲家のリストだと言い張るプッツン嫁と、そのネコを火にくべるプッツン夫とのやりとり。これまた「貴方はどっちに感情移入できる?」が試される。
10.豚
不条理ノワールの傑作にして、グリム童話の新作として子供に読ませたいけど読ませたら絶対ヤバい大問題作。くっだらない事故により生後数日で両親を失ったレキシントンは、田舎に住む超ベジタリアンの叔母の元で料理の才能を開花させていく。彼女の死後都会に出たレキシントンはレストランで初めて豚を食し…。それまでの写実的な展開から一変、ラストの不条理さはぶっ飛び過ぎて何度もページを読み返してしまうほど。
11.ほしぶどう作戦
領主の禁猟区で雉を大量ゲットするべく、冴えない2人組が一大作戦に挑む。干しぶどうを使ったこの作戦、実際に効果ってあるのかなー。