開高健のレビュー一覧
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戦中戦後の騒乱を駆け抜けていく、恐らく開高少年の生き様で自伝的小説。"的"はいらないか。
戦中の鉄道整備をしていた少年時代を書いた第一部は、第二部以降にくらべて、独特の熱に浮かされたような文体である。戦後の第二部以降は、綱渡りをするような、スリリングな唯一無二の人生を描く。
第一部は読みやすいが、第二部以降は結構読みにくい。特に死体についての会話や改行のない情景の羅列は、内容も伴って、なかなか読み進めることが難しい。
かといって難しくて読みにくい文ではない上に、ついグイグイと引き込まれてしまって、電車の乗換えを忘れてしまいそうになるほどである。
また、当時の世俗を表 -
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「開高健最後の文学作品」というタグがあるらしいんですが、まあ、それはおいておいて。
3つの石をモチーフに記憶や現在が描かれる”石小説”、もしくは作家本人の回顧、老境小説と呼んでもいいでしょう。
光の当たりかたによって表情を変える石の煌きのように、人の人生も光の当て方でいろいろに映しだされる、記憶が引っぱり出される、もしくは今現在の輝きをふと感じる。
「文學」というものは具体的に存在しなくてね、「文學する」「文學している」という状況があるのだ、というのはあたしの師匠の受け売りなんですが、人生の間に間に「文學する」瞬間がある。その瞬間瞬間を石の煌きにリンクさせた、というのが本作の、文学作品 -
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釣りエッセイ。「釣りを知らないわたしが読んでも仕方ないんじゃないか……」とそこはかとなく不安に思いながら読み始めたのだけれど、何の、ど素人にもじゅうぶん面白かった。
変わり種の釣りに挑むべく、リュックサックに釣り道具と原稿用紙を詰めて日本中の湖や川や海を巡った記録。書かれた時代が時代なので、数を減らしてゆく魚たちを惜しみ、破壊される自然を嘆きながらのエピソードが多くなる。
語り口が軽妙で、釣れないときの負け惜しみなど、釣りそのものについてもつい微笑ましくなるような描写が多々あるが、それ以上に現地の自然のようすや、各地の名人たちの魅力的なエピソードに心を傾けた本だと思う。楽しい読書だった。 -
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映画化された怪作「チャーリーとチョコレート工場」など、特に児童文学で有名なイギリスの作家・ダールの短篇集。
素朴なユーモアストーリーと見せかけて、毒と恐怖をほんのり混ぜてくる所が素晴らしい。幼少期からこんな人のこんな話ばっかり読んでりゃ、そりゃイギリスジョークもバリバリになるわな。感想を読んで興味を惹かれた方は、ぜひお子様に読み聞かせていただきたい。
1.女主人
下宿を探しにやってきた小さな町で学生の少年が出会った女主人。台帳に書かれた失踪者の名前と動物たちの剥製が嫌な展開を想起させるが、想起させるところで終わりの掌編。
2.ウィリアムとメアリイ
難病で死んだウィリアムが妻メアリイに残し -
Posted by ブクログ
6つの短編小説を収めた短編小説集。それぞれがいつ書かれたのかは分からないけれども、晩年の作かと思う。それぞれの小説は酒やグルメ、阿片、釣り等がテーマ、というよりはモチーフとなって書かれている。阿片はともかく、酒・美食・釣りは開高健が生涯愛したものであるが、これらの小説は、酒について/美食について/釣りについて書かれたものではなく、それらは単なる小説の中の道具立てとして使われているだけである。それぞれの作品毎にテイストも違うが、例えば、希望、というような明るいものを書こうとした訳ではないだろう。どちらかと言えば、重い、悲しい、というようなカラーの小説ばかりである。6編全部でも文庫で200ページに