開高健のレビュー一覧
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芥川賞の「裸の王様」はなんとなく勧善懲悪的な痛快譚のように思えるが、よくよく考えると、いくつも「?」が浮かんでくる。なぜ殿様のフンドシ姿の絵が素晴らしいのか、その絵と太郎の心模様がどう関係するのか、スポンサーの子息の作品であることを種明かしすることで主人公が勝ち誇るような流れも、おかしなスカッと感に騙されているように感じてしまう。
「パニック」は鼠の異常発生を巡り混乱する社会を役所のいち担当者の目線で描く。先手を打とうとする進言を斥けられてもなお孤軍奮闘する主人公の姿は昨今のお仕事小説にも通じるものがある。
「なまけもの」は終戦直後?の二人の大学生が主人公。穴倉の中でほぼ裸で生活している人が出 -
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酒と煙草、ばっかりだ。
どちらもやらないものにとっては、本当にどうでもいい話である。
しかし、なぜか、面白い。
パイプがいかに芸術的で、吸うのにも技術と時間が必要なのか。
ライターへのこだわり。私はタバコも吸わないのに、この本に触発されて「イムコ」という元々オーストリアで作られていて、今は日本で作っているライターを買ってしまった。
酒の種類も数多い。アブサンやそれに似たものなど、聞いたことのない、飲むことのない、飲んだとしても違いも味わいも値打ちもわからないものが出てくる。
あまりに酒、煙草の連発なので、どちらもやらない、どちらかというと嫌いな人間には、本当に堪能した作品であった。 -
Posted by ブクログ
パニック、非常に面白かった!
開高健の作品を最近読み始めたばかりで、先に血生臭い作品を読んでいたため、こんな作品も書くのか・・・!と驚いた。
序盤はちょっと残虐な描写もあるが、読み進めていくと作品の世界にどんどん引き込まれる。
裸の王様も同じく、読んだ後に一息ついて余韻を楽しんだ作品。
一人の少年の心に寄り添い救いたいという主人公の想いと行動は、こんな大人がいたら子供は嬉しいだろうなぁと思った。
一方、その主人公は大人だけを相手にしている時はまるで別人。そこがまたこの作品の魅力かと思う。
巨人の玩具、これは熾烈な企業競争の世界に引きづり込まれる主人公の奮闘が面白かった。
流亡記、グロい。残虐 -
Posted by ブクログ
ネズミの大発生による街の混乱、それを予見していた役人による奔走、そして現実を直視しようとしない官僚による保身。おそらく21世紀においても、現代の寓話と読めてしまう「パニック」。主人公の男性は、よくある近年の小説(いわゆる「お仕事小説」)における公務員のように奮闘をするのですが、どこか事態を――そして自身すらを――冷めて見てもいます。
後年になって作者は、初期の作品を「遠心力」だけで書いたと述べていたそうです。なるほど、作者の視線は主人公の感情よりも外側の社会に向いていますし、それはつづく「巨人と玩具」においても類似しています。子ども向けの製菓産業を舞台にして、主人公が勤める会社の悪銭苦闘と、