【感想・ネタバレ】裸の王様・流亡記のレビュー

あらすじ

無口で神経質そうな少年・太郎が、ぼくの画塾へと連れられてきた。太郎の父は画材会社を経営しているが、彼が描くのは電車やチューリップの絵ばかり。人間が1枚も描かれていないスケッチブックに彼の孤独を見たぼくは……。閉ざされた少年の心にそっとわけいり、いきいきとした感情を引き出すまでを緻密に描いた芥川賞受賞作「裸の王様」ほか3編。世間を真摯なまなざしで切り取った、行動する作家・開高健の初期傑作集。

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Posted by ブクログ

芥川賞の「裸の王様」はなんとなく勧善懲悪的な痛快譚のように思えるが、よくよく考えると、いくつも「?」が浮かんでくる。なぜ殿様のフンドシ姿の絵が素晴らしいのか、その絵と太郎の心模様がどう関係するのか、スポンサーの子息の作品であることを種明かしすることで主人公が勝ち誇るような流れも、おかしなスカッと感に騙されているように感じてしまう。
「パニック」は鼠の異常発生を巡り混乱する社会を役所のいち担当者の目線で描く。先手を打とうとする進言を斥けられてもなお孤軍奮闘する主人公の姿は昨今のお仕事小説にも通じるものがある。
「なまけもの」は終戦直後?の二人の大学生が主人公。穴倉の中でほぼ裸で生活している人が出てきたりと貧乏の尺度が現代とは隔絶しており、食べ物や衛生観念をめぐっての生理的に受け付けない描写も多い。
「流亡記」。脱歴史的な寓話調で描かれるのは始皇帝の長城建設に駆り出される労務者の半生なのだが、その文体も相まって、昭和の戦争に徴兵された国民の記憶に重ねるところが意図されたのだろう。

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2025年12月13日

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