読み始めは物語の中に入るのに少し苦労した。最後までとても安定している小説。紀元前九世紀という、イエスキリストより昔の話、旧約聖書の数少ない資料を元によく作られている。
当時の人々の文化、信仰、思考は、現代の我々にとっては突拍子が無く、無知であるという印象もあるが、同時に人間の本質は今でも全く変わら
...続きを読むない。物が溢れテクノロジーの発達した現在や未来でも、環境が変わっても、人間そのものは変わらないということだ。災害や戦争、死が起こってしまうのは決められていたので止められない。しかし、そこから学ぶこと、常に自分で選択して戦っていくことをやめてはいけない。そこで諦めて屈してしまったら、そのまま過去を捨てないで先に進めない人間になってしまう。
余計な明かりがない方が星が良く見えるように、余計な物事がなくシンプルな当時の生活から、真の人間の姿と自然の摂理、起こるべきして起こることの前には何もできないこと。それをどう乗り越えていくかを伝えている。
また、後書きで触れているように、小説はひとつの国の再建の物語である。
国の再建といえば、日本の戦後。復興から世界一の経済大国になるまでに、私たちの祖先は皆、絶え間ない努力と明るい未来を想像し、ここまで平和で幸せな国を残してくれた。わたしたちがもしこのことを忘れ、感謝を怠るようになったとしたら、盲目なわたしたちを目覚ませるよう、万能な神が試練を与えることになるのか。
宗教色が濃いところで、好き嫌いが分かれそうだけど、壮大な過去の記憶を思い描くことができる小説。